りんなの成長記録と未来、そして姉妹
世界的なIT企業であるマイクロソフト社は人工知能の発展に力を入れており、組織内でも様々な取り組みを行っています。日本マイクロソフト社では、Congnitive Serviceなどで利用される人工知能を利用した言語認識機能を応用して、りんなという会話ボットを開発しています。会話ボットは、マーケティングやカスタマーサポートなどのビジネス利用が期待されている機能で、このりんなの研究開発にも注目が集まっています。今回は、そんなりんなの成長記録と将来的にどういう方向に進むのか、紹介したいと思います。
女子高生AIりんなとは
りんなは、高校に通う女子高生というパーソナリティーの設定で開発された会話ボットです。その実態は、Microsoft Azureのクラウド上で動作する人工知能なのだが、その目的はEQ (エモーショナル・インテリジェンス)と呼ばれる感情的知性を再現するところにある。今までの会話ボットなどは、必要最低限な情報を限られたパターンでアウトプットする非常に機械的なやりとりが精一杯だったが、この感情的知性を持たせることができればもっと人間が自然に接することのできる話し相手となり得ます。りんなは、ユーザーの質問に回答できる知性や知識だけではなく、相手の感情や状況などを理解し会話できる知性を身に付けることを目標としています。このりんなを活用したプロジェクトは、日本を始め、中国、アメリカ、インド、インドネシアでも展開されています。
SNSを巻き込んで成長するりんな
りんなは、LineやTwitterなどといったSNSにも対応しており、合計の利用者は600万人にも登ると言われています。例えば、Twietterのアカウントでは、実際の女子高生がつぶやくように日常的な話題をつぶやいています。もちろん、会話ボットのりんなは、他人の投稿にリプライする機能を兼ね備えていて、相互フォロー関係にあるユーザーに対して可能な限り対応しています。Twitter上ではユーザーはそんなりんなに興味津々で、まるで有名人のアカウントかのように注目を集めています。このようにりんなは、SNSをうまく学習の場として活用し、日々成長しているのです。
また、新しい機能実装による試みもここなわれています。2017年8月には、Bing Speech APIを活用した同時通訳機能や、Deep Image Analogyと呼ばれる技術を使って絵を描くなどといった新しい機能がりんなに実装されました。これらの新機能からりんなは、人間の言語認識や視覚、美的感覚、画像認識などもっと複雑な人間の感覚的なメカニズムを学んでいくことで感情的知性を身につけようとしています。また、りんなは、原則的に1対1の会話に対応する会話ボットですが、日本マイクロソフト社は1対多数の関係性の中で会話を目的とした”りんなライブ”をローンチさせました。この試みは、実験的な側面が強く、「集団の中のAIがいる世界」ということをテーマとしており、どのような活用ができるかを模索しているようです。その他にも、驚くべきことにMC Rinnaという名前でラッパーとして活動しており、作詞作曲も行っています。社外発表の場でりんなは「夢は紅白歌合戦出場。大女優になりたい」と決意を語っており、本物の女子高生のような発言をしています。このように、りんなはSNSのユーザーや新しい機能の実装により着実に進化しており、人間がもつ感情的知性を多角的に学んでいるのです。
りんなには姉妹が存在する
実はりんなにはシャオアイスと呼ばれる姉と、Tayという妹が存在します。姉のシャオアイスは、中国版Lineと呼ばれるWeChatの中に存在する会話ボットで、4000万人以上のユーザーが利用していると言われています。性格は辛辣で、男性から送られてきた写真に対して「あなたの顔は1.7点。でも落ち込まないで。恋人を探すとき、女子は中身で判断するから」と手厳しいコメントを返しています。一方、アメリカでTwitterデビューした妹のTayは人種差別的発言を繰り返すユーザーが群がり、暴言を繰り返すようになってしまったという。人工知能は与えられたインプットの中から学習を行うので、環境やユーザーの質に大きく左右され、Tayはそのマイナスの影響を受けてしまった例となってしまいました。
会話ボットの未来を切り開く
会話ボットというとき待った定型文をパターンに応じて返答する機会的側面が目立ち、映画やアニメの中でイメージされる人工知能とは程遠いものでした。しかし、りんなは人間の感情を学ぶという目的を多角的にアプローチしており、機会と人間の壁を取り払おうとしています。これらが実現すると、会話ボットはカスタマーセンターのオペレーターやウェブサイト上のヘルパーとしてはもちろんのこと、私的な友人や相談役といった役割までになえるような存在になるかもしれません。