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Autodesk-Unity間の連携が生み出すBIMインポート体験が建築・設計の未来を物語る

この記事で以下の3つのことが分かります。
①AutodeskとUnityの広汎な連携
②BIM importerによるBIMデータのUnityへのインポート
③Unityインポート用パッケージセットJapan office projectの特徴と利用方法

この記事ではUnity寄りの視点で、2017年の発表から急激な勢いで進んでいるAutodeskとUnity間の提携を取り上げます。また、2社による提携の結実が、知識豊かな建築・設計の専門家だけではなく、テクノロジーに興味がある一般Unityユーザーの手が届くところまでやってきた事実にも触れています。

AutodeskとUnityの広汎な連携

1982年にAutoCADをリリースし、建築におけるコンピュータの新たな地平を描いたAutodeskは、今でも新たなテクノロジーを生み出し続け、CADの本流であり続けています。
そのAutodeskがさらなる建築や製図、土木業界におけるデータ化、効率化を目指した際、提携先となったのが、ゲーム制作エンジンを開発するUnityです。

間口の広いゲーム制作エンジンであるUnityの強み

3Dオブジェクトの扱いや、物理演算が得意であるUnityはただゲームエンジンとして各社に使われるだけではなく、よりよい協力関係を求めた提携先としても選ばれています。
(*1)
ゲーム制作というジャンルに留まらない、様々な企業と協力関係を結んでいることが公式ページから見て取れます。
Unityは高機能ながら、収益や調達した資金が10万米ドル以下の個人であれば、無料で入手可能なゲームエンジンです。ゲーム制作に関する学習用プロジェクトを提供したり、新規開発者向けの動画をリリースしているため、利用者の間口は広いものとなっています。
また、ゲームの各種素材となるデータをUnityソフトウェア内で探せるAsset Storeが含まれており、無料素材を含めた数多くのパーツを利用することが可能です。Unityを構成するプロジェクトやパーツはC#で作られているものの、ソフトウェアを操作し、素材パーツを組み合わせるだけであれば、プログラムの知識は不要です。この二点も一般のユーザーがUnityを始めやすい要素となっています。

AutodeskがUnityと提携する意味

AutoCADによって、建築設計の世界に革新をもたらしたAutodeskですが、当初のAutoCADのデータは2Dです。コンピュータの性能が上がり、テクノロジーが発達するにつれ、建築や設計、土木に使うデータも3Dへと進化を遂げています。そしてUnityは3Dデータを扱うことに長けており、エクスポートされた以下の拡張子をもつ3Dファイルが読みこみ可能です。
・fbx
・dae
・3DS
・dxf
・obj
・skp
また以下のソフトウェアの専用ファイルはインポートされ、自動的に.fbxファイルに変換されます。ただし、インポートされる側のソフトウェアとUnityの両方が同一コンピュータ上に存在する必要があります。
・Max
・Maya
・Blender
・Cinema4D
・Modo
・Lightwave
・Cheetah3D
Autodeskも建築、設計、土木におけるソフトウェア業界をけん引する形で、バージョンアップされたAutoCADを含む、Fusion360、Inventor、Sketchbook Pro、Revit、Civil 3D、3ds Max、InfraWorks、VRED、Shotgunなどの3Dデータを利用した製品をリリースしています。
この時、3Dモデルの汎用的なフォーマットである.objファイルを出力するだけではなく、一歩先を行こうとするのがAutodeskの試みです。ソフトウェアをUnityと連携させることによって、シームレスで入出力の負担が少なく、データの齟齬が少ない方式を目指します。そのコンセプトによってAutodesk製品とUnity間の連携が誕生します。
(*2)
また、シームレス化は、ソフトウェアやファイルの互換性だけではなく、業種の壁そのものを取り払おうという流れに向かっています。それがBIMというコンセプトです。

BIM importerの誕生により強固となるAutodesk-Unity間の結びつき

まずはBIMの概念について公益財団法人日本建設情報技術センターのサイトから引用します。

“BIM(ビム)とはBuilding Information Modelingの略語で、そのまま直訳すると建築物に関する情報のモデリング手法となります。モデリング手法というとイメージが沸きにくいのですが、「ICTインフラの力でどう活用するか?」ということと言えなくありません。
このように大きな概念も含んでいるため、BIMには一言で説明しきれない様々な要素があります。例えば設計のプレゼンテーションにおいて3D-CG画像として使用されたり、施工の段階において壁の内部の見えない配管を画像出力したりもします。また、設計の段階において耐久性のシミュレーションに使用されたり、補修の段階において分析のために使用されたりもします。
つまり、BIMとはこれまでの建築のあり方を大きく変えることが期待される概念であり技術なのです。”
出典:公益財団法人日本建設情報技術センター

企画・設計の段階から、施工時や完成後の問題をBIMデータ上で確認できるため、実際に起こる問題を予見しやすく未然に干渉などの問題を防ぎ、大幅なコスト削減につながります。また、感覚的に理解しやすい3Dモデルに属性情報のデータが紐づいているため、全体像の把握から細部の確認までBIMで対応できるのも強みです。
この属性情報を含めたBIMファイルを、3Dモデル作成に関わった各種ソフトウェアの専門知識なしに確認できる環境が求められていました。その時白羽の矢が立ったのが、以前よりAutodeskと連携していたUnityです。Unityはゲームエンジンだけあって、3Dオブジェクトの自由な配置、カメラや照明の変更のほか、物理演算も備えており、設計された3Dモデルが配された世界に入り込み、一人称視点でウォークスルーを行うことに長けています。
BIMデータの中に含まれた建造物の中をゲーム感覚で探索する、ゲームエンジンならではの特性を生かしたスタイルは、企業間のプレゼンに適しており、仮想空間においける直感的な理解を可能にするVR、AR使用例も、BIM importerの発表に含まれています。Unite Tokyo 2018で行われたBIM importerの実演でもVR、MRが取り上げられています。
そして後述するUnity Japan Office Projectにも登場する積木製作が、BIMデータとBIM importerを利用したVR環境を閲覧できるVR CAD Viewerサービスをリリースしており、デザイン確認や施主へのプレゼンテーションとして既に利用されていることが確認できます。

(*3)

BIM importerの概念

Unity利用者であればBIM importerを探す際に、Unityソフトウェアを起動し、いつもの癖でAsset store内を探してしまうことでしょう。
現時点(2020年1月15日)でもBIM関連のアセットはごく少数見つかりますが、Unityが公式に発表したBIM importerは見つかりません。

Unite2018での講演にあった通り、BIMデータをUnityにインポートするBIM importerはディックスのソフトウェアで、対応するBIMソフトウェアのデータをUnityで閲覧できる独自形式に変換します。Unity側に機能を追加し、各社のBIMファイルを直接読みこむシステムではありません。
(*4)
ディックスのBIM importer公式ページでは、対応しているBIMソフトウェア、BIMデータ情報のインポート例、エクスポータプラグインの存在、2種類の利用プランと価格(※教育版は無償)、対応するUnityのバージョン(Mac版は非対応)情報が記載されています。
また、エクスポータを含むBIM importerの単一、複数PCでの構成例と実際の費用も紹介されています。前述したUnite Tokyo 2018と、Unite Tokyo 2019の講演資料も併せて用意されており、Unityとの深い結びつきも確認できます。

BIM importerの発展、対応ソフトの増加

2018年の発表当初、BIM importerは、AutodeskのRevitと、GRAPHISOFTのARCHICADのみに対応していました。
2019年にはBIM importerに新たな機能が追加され、更にMcNeel RhinocerosとAutodesk Navisworksに対応するようになりました。
(*5)
1990年代や2000年代に比べると、コンピュータの高速化、高性能化には頭打ち感がありますが、これ以降も処理速度の高速化が進むことを考えると、ハード的な負担は大きいものの直感的に理解できるBIM、そしてBIM importerを経由してのVR化はより身近で、ニーズが高いものになっていくでしょう。その一端を垣間見えるものがUnityから無料で公開されています。

Unity Japan Office Project

Unity Japan Office Projectという言葉だけでは、一体どんな内容をともなうプロジェクトなのか見当がつきません。しかし実際にサイトを訪れてみると、どんな意図をもって上記のプロジェクトが公開されているのかほんの数秒でわかる、直感的なデザインとなっています。
(*6)
AutodeskのRevitによるBIMデータ(がUnity用に変換されたパッケージ)とUnityのプロジェクト、そして点群データがダウンロード可能となっています。

それはAutodesk RevitとUnityの連携を実際に確認できるプロジェクト

Unity Japan Office ProjectではUnity側が用意したデータを使い、BIMデータ内におさめられたオフィスをUnityで閲覧し、照明や視点の切り替え、扉や床の変更など各種データを操作することが可能です。VRでこそありませんが、ゲームエンジンらしい「その場に入りこんだような」没入感がそこに存在します。

Unity Japan Office Project使用上の注意と裏話

サイトに記載された推奨環境は、
CPU:Intel Core i7-4770Kもしくはそれ以上 (Core i7 以上推奨)
メモリ:8GB 以上推奨
グラフィックボード:GEFORCE GTX1070 / RTX 2070
ディスク容量:7GB
OS:Windows10(8GBのメモリが推奨されているため実質的に64ビット推奨)
となっております。UnityやHDRPの対応バージョンや実際の使い方は、Unityのページで解説されています。

(*7)

また、実際のUnity日本オフィスをBIMデータとして取りこむ際の裏話的なものも公開されています。公式ブログという形で、日本のUnityもコンスタントに情報発信している様子がうかがえます。
(*8)
製作に携わった人であれば思わず共感してしまう内容となっており、無機的になりがちな技術系の話題に人間味という彩りを加える内容です。ちなみに、Unity Japan Office Project
はUnityクライアントのAsset store内でも入手することができます。

まとめ

AutodeskとUnityの幅広い連携、ソフトウェア業界のシームレス化を進めるBIMとBIM importerが提示する可能性について触れて参りました。
またAutodesk RevitによるBIMとUnityの連携を個人レベルで体験できる、Unity Japan Office Projectと利用方法、その製作情報も紹介しました。
あくまで業界内にとってのコンセプトであったBIMがUnityを介し、個人ユーザーが手元のPCで体験できるレベルまで来ていることがお分かりいただけたと思います。AutodeskとUnityの連携が、建築や設計の世界に更なるシナジーをもたらすのが楽しみですね。

参考URL
(1) https://unity.com/ja/partners
(
2) https://blogs.unity3d.com/jp/2018/11/13/unity-and-autodesk-powering-immersive-experiences-with-more-efficient-workflows/?_ga=2.102241089.1110200645.1578974313-704942623.1553691782
(*3) https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1807/06/news012.html
(*4) https://www.dix.ne.jp/departs/it/bimimporter/
(*5) http://aec.unity3d.jp/topics/229/
(*6) http://aec.unity3d.jp/
(*7) http://aec.unity3d.jp/topics/711/
(*8) http://aec.unity3d.jp/topics/765/


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