1. TOP
  2. ブログ
  3. ついにサービスをスタートしたGoogle Stadiaの特徴と評価

ついにサービスをスタートしたGoogle Stadiaの特徴と評価

昨年、世界14ヶ国でサービスをスタートしたGoogleのクラウドゲームサービス「Stadia」ですが、今のところあまり良い評判は聞かれないようです。「失敗」と評価する人も多いようですが、実際のところ何が問題なのでしょうか?拡大を続けるゲーム市場において、新しいプラットフォームとして注目される「クラウドゲームサービス」の動向にも関係の深い、Stadiaについてまとめてみましょう。

この記事でわかること
・クラウドゲームサービスとは
・Google Stadiaの特徴と問題点
・クラウドゲームサービスは今後主流となるか

クラウドゲームサービスとは

クラウドゲームではサーバー側で演算などの処理を行うため、ユーザーの方で特別な専用端末を準備する必要がなく、コンピューターのブラウザやスマートフォンなどの様々なデバイスでゲームができるという特徴があります。現在主流となりつつあるオンラインゲームの場合、映像処理などの演算は端末側で行なっていますので、大きく異なる点であると言えます。

4Kに対応した高解像で精細な画面描画を処理するため、端末側では「GPU」というCPUとは独立して、画面描画専門の処理を高速で行う半導体チップが必要となります。GeForceシリーズのNVIDIAと、RadeonシリーズのAMDがコンピューターグラフィックスの世界では、GPUメーカーとして有名です。進化を続ける最先端のゲームを楽しむには、ハードウエアにもそれなりの投資が求められていたのですが、クラウドゲームサービスの場合、その必要がなくなるというメリットがあります。*注1

クラウドゲームサービスの種類

現在、サービス提供中、または提供予定でベータ版やプレビューを実施中のクラウドゲームサービスをまとめてみました。名称とサービスの開始時期は次の通りです。*注2

・Google Stadia 2019年11月
・GeForce NOW by Softbank 2019年12月(ベータ版)
・PlayStation NOW (ソニー) 2015年10月(日本)
・Project xCloud(マイクロソフト) 現在プレビュー実施中

2019年はクラウドゲーム元年

年表を見るとPlayStation NOWは以前からサービスを提供していますが、当初はプレステ利用者に限定されたサービスでした。2019年はGoogle Stadiaを皮切りに、GeForce NOW・Project xCloudなど今後の主流となりそうなサービスが順次スタートしていることから、「クラウドゲーム元年」と表現する人もいるぐらいです。本格的に利用者が増加するまではもう少し時間を要するでしょうが、2019年は新しいプラットフォームの登場となった記念すべき年になりました。

Google Stadiaの特徴と問題点

Google Stadiaの特徴

ソニーのPlayStation NOWやマイクロソフトProject xCloudは、すでに多くの専用端末ゲームユーザーを抱えているメーカーが提供しているサービスです。GeForce NOWは、GPUメーカーであるNVIDIAが提供元ですが、こちらも現在ハイエンドゲームユーザーがいるPCゲームを母体としていることに特徴があります。一方のStadiaの場合、このような特定の母集団をベースとしない、独立系・新規のプラットフォームということになります。

Google Stadiaのサービス内容

◯料金体系は2種類
・Stadia Pro  月額9.99ドルのサブスクリプション
・Stadia Base 無料

◯ゲームタイトル
・スタート時点では22タイトルがラインナップ
※2020年1月に「今年度中に120以上のゲームをリリースする予定」と発表

◯エリア
・北米など14ヶ国(日本は対象地域外)

◯スペック
・Stadia Pro  4K・60fps・HDR・5.1chサラウンド
・Stadia Base 1080p、60fps、2ch
※ただし、回線速度に依存する

◯デバイス
・Pixelシリーズなどのスマートフォン、Win PC、Mac、Chromecast Ultra接続のテレビなど(iOSデバイスには非対応)

月額1,000円程度を支払えば、専用端末を持たなくても大画面・高精細の最新ゲームを楽しめるとなるとかなり魅力的に思えます。大昔の話になりますが、アーケードゲームが主流だった時代には月に1,000円ぐらいは普通に使っていましたので、、、。
ところが、スタートしたばかりのStadiaの評判は散々で、多くのレビュー記事には「失敗」のタイトルがつけられています。いったいどんな問題があるのでしょうか?*注3

Google Stadiaの問題点1 回線速度

致命的と言える部分は「現在の回線状況では快適なゲームができない」という点です。実際にプレイをした人のレビューでは

・低速な回線の場合、解像度やフレームレートがかなり落ちてしまい「ガクガクのボケボケ」になってしまう
・シューティングゲーム、バトル系のゲームではレイテンシーが問題になる
・グラフィックはXbox One Xより悪くて、実際にはほとんどのゲームは4k画質ではない

など、画質とレートに関するネガティブな意見が多く挙げられています。

サービスが提供されている北米では、地域によって回線スピードが十分でないところがあり、Stadiaの性能をフルに活かせないユーザーが多いということです。ただし、Stadiaに限らずクラウドゲームサービス自体が、今後普及するはずの5G回線を想定したものですので、現状の4G回線ではもともと不十分であると考えることもできます。
残念ながら日本でサービスが提供されたとしても、かなり恵まれた回線状況にある方でないと、快適なゲーム環境を満喫することは難しいかもしれません。

Google Stadiaの問題点2 料金体系

有料版であるStadia Proであっても、基本的にソフトは個別に購入する必要があります。この部分が他のプラットフォームに比べて安いという訳ではないので、結果的に割高になる可能性があります。専用コントローラー(69ドル)、月額利用料(9.99ドル)に加えて、ソフト代を別に負担するとなると、2年ぐらいで専用端末を購入するぐらいの総額になってしまいそうです。

Stadia Proでは割引特典やフリーで遊べるゲームもありますが、まだタイトルが揃ってないこともあり、それほど魅力的には感じられない状況です。実は、2019年11月のローンチ時点で、3ヶ月分の利用料込みの「Stadia Founder’s Edition」に申し込んだユーザーが継続するかどうかを、2020年1月の時点で判断する必要がありました。このタイミングでGoogleは「年内に120タイトルをリリース予定」と発表をしたのは、初期ユーザーの引き止めが目的であることは明らかでしょう。しかし、発表時点で具体的なタイトル名は非公開ということもあり、ユーザーに訴求したかどうかは微妙なところです。*注4

Google Stadiaの問題点3 ユーザーコミュニティ

ソニーが提供するPlayStation NOWは、当初PlayStation3のタイトルをクラウド化することでスタートしました。その後、PlayStation4やWinPCなどのタイトルが利用できるよう、順次拡張してきた経緯があります。どちらかというと、専用端末ユーザーに対して選択肢を広げるような進化といえます。世界中にいる多くのPlayStationユーザーコミュニティが母体となっている強みがあります。また、マイクロソフトのProject xCloudはXboxの「GeForce NOW」は、PCゲームのユーザーコミュニティがターゲットです。

それぞれが、すでにゲーム業界でネームバリューがあるメーカーが提供しているサービスであるのに比べて、Google Stadia自体はゲームユーザーのコミュニティが存在していません。Stadia専用ゲームタイトルがリリースされたとしても、全く新規でユーザーを確保していく必要があります。他のプラットフォームからの移植タイトルにしても、そこから新しいプラットフォームに月額課金とタイトル利用料を個別に支払って参加するであれば、ハードルが高そうです。

Google Stadiaの問題点4 多くのサービスを終了した過去

ゲーム開発者からしてみると、「Googleがいつサービスを停止するか」という思いが拭えないようです。検索サービスで絶対王者のポジションを持つGoogleですが、過去に多くのサービスをローンチしては終了を繰り返してきた前歴があります。Facebookに対抗してスタートしたSNSサービスのGoogle+、Spotifyのような音楽サービスのGoogle Play Musicなどが最近の事例です。あまりにこうした例が多いので、「Googleの終了したサービスのお墓」というサイトが存在するぐらいです。*注5

IT系のスタートアップでは「リーン・スタートアップ、フェイル・ファスト」が重要とされます。「リーン・スタートアップ」は安く始めるという意味で、ハードなどに資金をかけすぎず「安く・素早くサービスをローンチさせる」ことを意味します。「フェイル・ファスト」はせっかく始めたビジネス(サービス)でも、見込みが違ったら「早めに撤退するのが良い」という意味です。望みの薄い事業を続けるより、早めに見切りをつけて余力のあるうちに再起にかけるということです。

このことからも、いくつものチャレンジをして、そのうちの一つが花開けばビジネスとしては成功ということであり、Googleは「見込みのなくなったサービスをあっさり終了させる」ことにかけては有名です。だからこそゲーム開発者にとっては、Stadiaが本当にこの先もずっと続くのかについて不安に感じられるとしても不思議はないでしょう。Stadia専用ゲームを開発するための投資が回収できないうちにプラットフォームがなくなってしまったのではたまったものではありません。

もちろん、他のプラットフォームからの移植にしても、新規に開発するほどでないにしてもそれなりのコストとパワーはかかります。どのくらいのユーザーが期待できるのかわからない新しいプラットフォームであることに加えて、うまくいかないサービスを終了させることに「定評のある」Googleだということを考えると、二の足を踏むメーカーもいることでしょう。言うまでもなくプラットフォームが普及するかどうかは、良質なソフトが存在することが重要なポイントです。ゲームメーカーにとってGoogleが提供するサービスであること自体が不安の根源というのは皮肉な感じがしますね。

もちろん私たちユーザーにとっても、いつ停止されるかわからないという懸念がある状態では安心して参加することができません。同じゲームでも専用端末とパッケージソフトであれば、提供会社が倒産してもローカルで使う分には継続してプレイすることができます。ところが、クラウドサービスではそうはいきません。
そもそもStadiaの場合、それぞれのソフトを「所有」するのではなく、クラウド上での「利用する権利」に対して個別に料金を支払うシステムです。そのため、もしサービスが停止してしまったら手元には本当に何も残りません。*注6

簡単にまとめると、
・多くの場合満足な画質と画面描画が得られない
・現時点ではタイトル数も少なく、今後リリースされるタイトルも不明
・シューティング系、バトル系ゲームには向かない
・いつ終了となるか不安が残り、終了された場合購入した資産が残らない

そんなサービスを有料で利用しますか?ということになりそうです。

Google Stadiaは発展途上のサービス

こうして見てみると、Google Stadiaに望みが全くないように感じられますが、決してそうではありません。Stadiaに限らずクラウドゲームサービス自体が、5Gの普及が前提としたものであると捉えた方が良いでしょう。4Gと比べて5Gの方が回線速度が速いというのはもちろんですが、それ以外にも各種のクラウドサービスにとって重要な性質が5Gにはあります。

低レイテンシーと複数同時接続が実現する新しい世界

5Gには「低レイテンシー(低遅延)」という重要な性質があります。ユーザーの操作に対してサーバーからの応答が瞬時に返されるため、リアルタイム性が実現しゲーム以外にも自動運転など即応性が求められる新たなサービスにも有効と考えられています。また、基地局ごとの最大接続数も大幅に向上しますので、回線ビジーになったことでの不具合も発生しにくくなるはずです。*注7

5Gが普及した未来においては、多くの人が同時に接続する大規模ゲームや美しいビジュアルで緻密に描画されたゲーム、瞬時の反応が求められるバトル系ゲームなどもストレスなくオンラインで楽しめるようになるでしょう。4G環境では多くの不具合がレポートされているStadiaですが、まだ始まったばかりのサービスであり5G環境でこそ、その実力が発揮されるはずであるとも考えられます。その間に魅力的なタイトルが増え、アプリやメニューなどもブラッシュアップされ、Googleがサービスを終了しさえしなければ、、ですが。

クラウドゲームサービスは今後主流となるか

2018年のデータですが、国内ゲーム市場は過去最高の1兆6704億円になりました。世界全体を見ても、着実に年々成長を続ける勢いのあるマーケットです。中でも、ここ10年で大きく成長し、現在主流となっているのがオンラインプラットフォーム市場です。手軽に持ち歩くことができるスマートフォンや、本格的でハイエンドユーザーが利用するPC向けのゲームが伸びています。*注8

同じ調査では、国内のクラウドゲームサービスについて、2022年には100億円を突破すると推定しています。全体に占める割合はまだまだ少ないものの、将来確実に拡大する有望なプラットフォームであることは間違いないようです。Google Stadiaの日本展開の時期や5G回線の普及など、いくつかの条件が揃えば将来的にもっと大きな伸びを見せる可能性は決して否定できません。

いつでも、どこでもゲームができる環境の実現

テレビに接続する専用端末しかない時代は、ゲームを楽しむ場所が限定されていました。現在では携帯できるゲーム機や、スマートフォン、タブレットなど、場所を選ばずゲームができるようになりました。インターネットの普及に伴い、オンラインで繋がることで別々の場所から同じ画面にアクセスし、同時にゲームを楽しめるようになりました。時間と場所の制約を受けず「いつでも、どこでも」はまさしく「クラウドサービス」の大きな特徴です。

「ユビキタス」=「いつでもどこでも(遍在する)」という概念があります。ネットワークに接続できる環境と、手軽に持ち歩けるデバイス、各種のサービスを提供するクラウド上のサーバーにより実現されるユビキタス・コンピューティングの一つとして、クラウドゲームは大きな可能性を秘めているのは間違いありません。現時点ではまだ発展途上であることは否めないようですが、近い将来にはクラウド型のゲームが主力となっていたとしてもおかしくはないでしょう。

【まとめ】
Google Stadiaについてまとめてきましたが、あくまでリリースされたばかりの全く新しいプラットフォームであり、現時点で評価を確定することは無意味であると思われます。今後、通信環境の向上とサービス内容のブラッシュアップがなされてから改めて評価をした方が妥当でしょう。国内でサービスた提供された場合、特に有料プランで参加を考えている方は、アーリーアダプターとしての不具合・不満を享受する覚悟は必要かもしれません。他の競合サービスも気になるところですし、ゲーム好きな方にとっては悩ましい日々がしばらく続くかもしれません。

■参考文献
注1 TECH::NOTE 「GPU性能比較!GeForceとRadeonの違い、おすすめグラボも紹介」
https://tech-camp.in/note/technology/43109/

注2 ファミ通.COM 「各社のクラウドゲーミングサービスを比較! それぞれに異なるスタンスとは?」
https://www.famitsu.com/matome/geforce-now/news04.html

注3 gamesindustry 「Google Stadia:海外レビューのまとめ」
https://jp.gamesindustry.biz/article/1911/19112201/
Gigazine 「Googleの「Stadia」はいつ突然死するかとゲームの開発者は戦々恐々」
https://gigazine.net/news/20191115-google-stadia-game-maker-worried/
Gigazine 「月額1100円でゲーム遊び放題なGoogleのクラウドゲームサービス「Stadia」は11月スタート、ローンチタイトル30作も」
https://gigazine.net/news/20190607-google-stadia-arrives-november/
Gigazine 「Googleのクラウドゲームサービス「Stadia」を実際にプレイして見えてきた強みと弱み」
https://gigazine.net/news/20190616-google-stadia-hands-on/
HEAD Bank 「ほぼ間違いなくGoogleのStadiaは失敗するね」
https://head-bank.com/google-stadia/
GIZMODE 「Google Stadiaレビュー:未来の片鱗を見た瞬間、現実に打ちのめされる」
https://www.gizmodo.jp/2019/11/google-stadia-review-us.html
本日もアプリ開発中 「GoogleのStadiaは失敗しそう」
https://app.k-server.info/game/google_stadia/
WIRED 「グーグルのクラウドゲーム「Stadia」には、やはりストリーミングならではの“弱点”がある」
https://wired.jp/2019/11/20/google-stadia-review/
海外反応! I LOVE JAPAN 「グーグルのStadiaはこのまま終わる!? 海外の反応。」
http://blog.livedoor.jp/zzcj/archives/52001410.html

注4 AUTOMATON MEDIA 「Google Stadiaの動きの遅さに不満が寄せられる。「ゲームについてはパブリッシャー次第」とGoogleはたじたじ」
https://automaton-media.com/articles/newsjp/20200201-112142/

注5 THE GOOGLE CEMETERY
https://gcemetery.co/

注6 CARRY ME 「MBAでは学べない“リーン・スタートアップ”の基本の「き」前編 ?仮説検証?」
https://carryme.jp/pro-saiyo4.0/lean-startup/

注7 ビジネス+IT 「5G(第5世代通信)を基礎から解説、通信の速度や用途は今後どう変わるのか」
https://www.sbbit.jp/article/cont1/33874
総務省 「5Gの特徴」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd133420.html

注8 ファミ通.com 「2018年の世界ゲームコンテンツ市場は前年比約2割増、国内クラウドゲーム市場は2022年に100億円突破。『ファミ通ゲーム白書2019』が6月27日に発刊」
https://www.famitsu.com/news/201906/07177561.html


▼キャパの公式Twitter・FacebookではITに関する情報を随時更新しています!

    ホワイトペーパーフォームバナー

    【DL可能な資料タイトル】

    • ・プログラムによる建築/土木設計のQCD(品質/コスト/期間)向上
    • ・BIM/CIMの導入から活用までの手引書
    • ・大手ゼネコンBIM活用事例と建設業界のDXについて
    • ・デジタルツイン白書
    • ・建設業/製造業におけるデジタルツインの実現性と施設管理への応用

    詳細はこちら>>>

    PAGE TOP