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Facebookが親密な関係をサポートするApple watch向けアプリ”Kit”をリリース

創業から15年を過ぎ、今や世界最大のSNSプラットフォームとして圧倒的な存在感を示すFacebookですが、元々は大学生向けの個人的な交流を強く意図したサービスでした。
しかし現在、一般公開され多くの企業がCMを提供する代表的なSNSとなっています。そのため、投稿する内容についてもある程度「よそ行き」にならざるを得ず、若いユーザーにとっては多少古臭く、窮屈になっていることも否めません。

事実、よりプライベートな交流を目的とする場合、世界では「Instagram」や「WhatsApp」が主流であり、日本では「LINE」の利用者が多い印象です。

今回は、Facebookが新たにApple watch向けにリリースした「Kit」について見ながら、Facebookが目指すこれからのサービスについて考えてみましょう。

この記事でわかること
・Facebookの開発チームがリリースした新しいアプリ「Kit」とは何?
・NPEチーム
・ザッカーバーグの描くFacebookの未来

Facebookの開発チームがリリースした新しいアプリ「Kit」とは

まずこの「Kit」ですが、基本的に簡易的なMessengerとして使うことができます。FacebookはすでにFacebook Messengerをリリースしていますが、何のために新しく簡易的なMessengerである「Kit」を出したのか?というのがまず気になる点です。

開発したNPEチームのアナウンスによると
「親密な関係にフォーカスした」
とされています。
恋人同士や家族など、通常の友人と比べてより親密な関係をもつ二人の間で利用することを目的としており、現時点では実験的なアプリとして提供されています。

基本機能として紹介されているのは次のような内容です。

・親しい友達と話すことができるように設計
・Facebook Messengerと比べて特に親密な連絡先に焦点
・Facebookアカウントと紐付けされている
・音声(録音)・テキスト・Apple watchで作成した落書き・絵文字や現在地など多様な情報を送信することができる
・ディテーション機能が搭載されていて、音声をテキストに変換できる

現時点ではカナダ地域限定となっていますので、まだ日本国内で利用することはできません。
また、試験的な運用のようですので、一般ユーザーの詳しいレビューなどもそれほど出ていませんので、詳しい使用感などについては不明な点が多いようです。
もちろん、App Storeでのコメントなどは確認することができますが、あくまで限定的なものと考えた方が良いでしょう。

一つ面白い機能として紹介されているのが、音声データをディクテーション機能を使って文字データに変換し、それを送信できるというものです。
ディクテーションというのは、もともと英語学習などで用いられる手法で、英語を聞き取って文字に直す作業のことです。
リスニングの能力を鍛え、英文として自分で再構成することで語学学習に活かすことができます。
iPhoneなどのApple製品では、音声をテキストに変換して入力する機能を標準で搭載していますので、それを利用し手軽にメッセージを作成・送信することができます。
iPhoneではこの音声入力機能をディクテーションと呼んでいます。*注1

実名登録を原則としているFacebookは、世界最大のSNSとして圧倒的な存在感を示しています。
しかしその原則からか、若い層は匿名での利用が可能な他のSNSを、親しい友人とのよりプライベートな交流のために利用する傾向があります。

日本では「LINE」、北米地区では「WhatsUP」や「snapchat」などがそれに当たります。
ネット上とはいえ、Facebookはどちらかというとオフィシャルで、多少よそ行きの情報がやり取りされる傾向にあると言えるでしょう。
このような点に対して改善を図り、これまでより緊密な交流が可能なツールとして「Kit」がリリースされました。
「Kit」によって、若い層の取り込みを狙っていると考えられそうです。

Kitを開発した「NPEチーム」とは

Kitを開発したのは「NPEチーム」と呼ばれる組織です。
App Storeを見ると、LLC(合同会社)となっていますので、単なる社内の一部署ではなく独立した会社として活動しているのでしょう。
このチームは他に
「会えないカップルが繋がれるアプリ」
として「Tuned」などもリリースしています。

この「Tuned」アプリは、Facebookによると
「あなたと大切な人がありのままの自分でいられるプライベート空間」
を実現することができるとのことです。

「Tuned」は、デジタルスクラップ型のフィードを持ち、閲覧はカップルに限定されます。
カスタム化されたリアクションやステッカーなどが利用でき、個人的な感情を様々な手段で共有することができるようです。
「Tuned」により、2人でいる時と同じように甘えたり、気まぐれに振舞ったり、羽目を外したりできる、というのがNPEチームの説明です。
「Tuned」も北米向け限定で無料で提供されていますが、FacebookオフィシャルやInstagramなどでは特に宣伝されてないことなどから、現時点では実験的なアプリと目されています。

このように、NPEチームはこれからFacebookが目指している、より緊密でプライベートな交流を実現することができるアプリの制作を目的とした組織なのではないでしょうか。
NPEが
「New Product Experimentation(新しい実験的なプロダクト)」
に由来することからもそのイメージを補強しています。

Googleのユニークで先進的な多くのサービスが、かつてLaboと呼ばれる実験的なプロジェクトからスタートしていることを思い出させます。*注2

ザッカーバーグの描くFacebookの未来

まだ本格的な運用段階ではなく実験的なリリースと思われますが、ここまで紹介してきた「Kit」や「Tuned」を見ると、Facebookの目指す近い将来のSNSの姿が予測できそうです。
実はこれらのアプリに先立ち、ザッカーバーグが2018年秋の段階で明言した次の言葉がそれを裏付けています。

「メッセージとストーリーは、シェアの増加における大多数を占めてる。」
これは大多数の他人が閲覧することができるフィードよりも、親しい友人とのみ情報をやり取りできるメッセージが、重要な役割を担っていると認識していることを表しています。

また、短い時間だけ情報を掲載できるストーリーは、ストック型の情報よりもフロー型の情報がプライベートな利用では好まれていると捉えることができるでしょう。

2019年のF8(開発者向けイベント)では、基調講演において
「The Future is Private(未来はプライベートである)」
とも表現しています。
同時期のワシントンポストに対する寄稿でも
「これまでFacebookがやっていたサービスは『オープンな町の広場』を目指していたが、これからはプライベートなリビングルームのようなサービスにシフトする」
と説明しています。

当初PCでの利用が多かったFacebookですが、いち早くモバイルファーストにシフトした結果、モバイル広告の確保で大きな成功を納めています。
それに伴いユーザーの利用も、よりプライベートで緊密な関係を構築したり、維持するためのSNSやメッセージサービスが求められるようになっています。
多くの競合するサービスに対抗するため、すでにFacebookアカウントを持つ人に対しても、これまでと違った新しい魅力を提供できるアプリを模索しているのではないでしょうか。*注3

【まとめ】
創業から15年を過ぎ、当初大学生だったFacebookの最初の利用者もすでに中年に差し掛かりつつあります。
若い世代にとって、親世代が利用しているSNSであることや、実名での登録が原則であることなどもあって、投稿に気を使うFacebookを敬遠する向きもあるようです。
若い層の取り込みと活発な利用を促すことが、Facebookにとっても重要な課題であり、今回紹介した実験的なサービスはそれ目指したものと言えます。
現時点では特定地域のみのリリースですが、フィールドテスト後にアップデートしたものが日本でも利用できるようになるのを期待して待ちたいと思います。

■参考文献
注1
9TO5 Mac “Facebook debuts experimental Apple Watch app ‘Kit’ for robust Messenger communication”
https://9to5mac.com/2020/04/14/facebook-messenger-kit-apple-watch-app/
Mac Rumors “Facebook Launches New ‘Kit’ App for Apple Watch to Keep in Touch With Your Closest Friends”
https://www.macrumors.com/2020/04/14/facebook-kit-app-apple-watch/
Apple “Use Dictation on your iPhone, iPad, or iPod touch”
https://support.apple.com/en-us/HT208343

注2
cnet Japan 「Facebook、会えないカップルがつながれるアプリ「Tuned」をリリース」
https://japan.cnet.com/article/35152029/
App Store “Tuned – a new app for couples”
https://apps.apple.com/us/app/tuned-a-new-app-for-couples/id1488796752

注3
Wired “Facebook Was Late to Mobile. Now, Mobile Is Its Future”
https://www.wired.com/story/facebooks-future-is-mobile/
IT Media NEWS 「Facebookの「未来はプライベート」──ザッカーバーグCEOのF8基調講演」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1905/02/news019.html

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