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Appleの新しいチップ「Appleシリコン」とは

先ごろオンラインで開催されたWWDCにおいて、MacのCPUを独自設計のAppleシリコンに変更することが発表されました。
2004年にIntel製が採用されてから、実に16年ぶりの大規模な変化になります。
iPhoneやiPadなど、快進撃を続けるAppleの製品群の中でも、取り残されていた感のあったMacシリーズですが、ついに活躍する時が来たのかも知れません。
現在のMacユーザーはもちろん、オールドMacファンも大変気になるこの話題について、今回まとめてみました。

この記事でわかること
・Appleシリコンの特徴について
・移行期間の対応について
・Appleシリコンの採用でMacはどのように変わるのか

Appleシリコンの特徴

WWDC(Appleの開発者会議)で発表された「Appleシリコン」の特徴は、次の通りです。

【Appleシリコンの特徴】
・業界をリードするパフォーマンスとパワフルなテクノロジーをもたらす
・世界トップクラスの自社製シリコン
・Apple製品全てに共通するアーキテクチャーを確立
・Appleのエコシステム全体を対象にした、ソフトウエアを開発し最適化することが、はるかに簡単にできる

上記の特徴は、Appleのプレスリリースにある表現です。
しかし、今ひとつ具体的なことがわかりません。
なんだか凄そうだという感じは伝わりますが、もう少し詳しく見ていく必要がありそうです。*注1

IntelからArmへ メーカーが変更になる

Appleシリコンは、Appleが設計し「Arm社」が製造することになります。
2004年にIntel製を採用して以来の大きな変更点となります。
ここで、「Appleが設計」とか「Arm社が製造」と書きましたが、それほど単純ではなく、詳しく説明しようと思うと結構大変です。
まず、「Arm社」は正確には「Arm Ltd」というイギリスの企業です。
Arm Ltdが事業会社であり、Arm Holdingsという持株会社が上場しています。

Arm Ltdは、RISC型のCPUの設計をしますが、製造は外部に委託する形を取っているファブレス企業です。
CISC型のCPUを製造するIntel社は、PCで大きなシェアを持っていますが、家電などの組み込み型や、Android・iPhoneなどのモバイル端末では、現在Arm製のチップが圧倒的なシェアを占めています。
実は私たちはあまり意識せずに、Arm製チップを日常的に利用しています。*注2

Arm Ltdは、RISC型のアーキテクチャを策定し、実際の製造は外部の企業がそのライセンスを受けておこなっています。
そのため、今回のAppleシリコンについて正確に記述するなら
「Arm社のRISC型アーキテクチャを採用し、Appleが自社のMacに合わせた仕様を設計、実際には別のメーカーが製造する」
ということになります。

コアとなる部分をArm社がライセンスし、Appleが自社製品の仕様に合わせたチップを設計、実際の製造は製造ラインを持つメーカーに委託する、という流れとなります。

アーキテクチャーの変更が最大の特徴

今回のAppleシリコンは、CISC型のIntel製CPUから、RISC型のArm製CPUへ変更されるというのが最大の特徴です。
CISCは複雑な命令セットを処理するのに対し、RISCは決まった長さの単純な命令セットで構成されています。
そのため、RISCは開発期間が短く、小型化・省電力化がしやすいという特徴があります。
性能については、それぞれの仕組みにあった対策がなされており、一概にどちらが高性能か、判断することはできません。
しかし、このような特徴の違いから、PCではIntel製を代表としたCISC型、家電やモバイル端末にはArm社製のRISC型が広く普及しています。*注3

Appleの思惑として今回の変更の理由は、Intel社の開発スケジュールに影響されず、自社製品の開発・設計を行いたいというのが一番大きいのではないでしょうか。
モバイル端末では、iPhone4からArm社製のチップを採用し、iPad・Apple Watchなど10年間に20億個を超えるチップを導入している実績もあります。
これらの製品群は、Appleの成長を支える中核となったものであり、その性能はすでに実証済みと言えます。
これをMacシリーズに利用することで、すべてのプロダクトで共通したアーキテクチャーを実現することが可能となります。*注4

予測される特徴

Appleシリコンは、まだ製品として存在していません。
そのため、その性能については、Appleの発表などから予測するしかありません。
しかし、Arm社製のRISCチップであることや、Appleの他のプロダクトとの連携などを考慮すると、次のような特徴が予測されます。

【Appleシリコンの予測される特徴】
・省電力・小型化が可能
・iOS・iPadOSなどで動くアプリが動作する

非常に単純化すると、上記の2点がメインであることは、ほぼ間違いありません。
AppleのNewsroomにも、「Macに業界をリードする『ワットあたりの』パフォーマンス」と表現されていることから、『単位電力あたりの性能』に注力していることがわかります。
また、iPhoneなどと同じアーキテクチャーが採用されることに対応して、新たにMacOS ver11.0(コードネーム Big Sur)が登場する予定です。
長年メジャーバージョンを更新せず、OSXで通してきたMacOSが、ついに一歩進むことになります。

新しいMacOSでは、iOSやiPadOS用に作られたアプリがそのままMacで動作すると言われています。
今や、Adobe社のDTP関連製品など、ハイパフォーマンスを要求するソフトも、iPad用アプリが登場するなど、モバイル端末で本格的な作業ができる環境が整いつつあります。
これらのプロダクトとシームレスに連携ができることは、Macユーザーにとって大きなメリットになるでしょう。*注5

MacはPC全体に占めるシェアが小さく、ソフト開発者にとってMac用ソフトは、見返りの少ない「あまり美味しくない」分野でした。
同じ労力を使うなら、Windowsソフトを作った方が、はるかに大きな利益を期待することができるからです。
以前は、DTPやDTM分野、医療関係や数理科学分野など、Macの方が優れている分野もありましたが、現在ではそれらの分野でも有っても、WindowsPCで問題なく活用することができます。
もはや、Macを使う明確なメリットと言えるものは少なくなっていました。

しかし、iPhoneやiPad用アプリの開発となると話が違います。
Android搭載端末とは異なり、製品ラインナップが少なく、個別端末あたりの出荷台数が多いことから、少ない労力でより大きなリターンが期待できます。
世界中に多数存在するiOSやiPadOSの開発者が、Appleシリコン向けのアプリに目を向けるようになれば、Macの存在感が増してくる可能性があります。

移行期間の対応について

Appleは、現在のIntel MacからAppleシリコン搭載Macへの移行期間を「2年間」としています。
最初のAppleシリコン搭載Macの発売は、2020年の年末とアナウンスされています。
なお、今後もIntel Macは新製品がリリースされる予定であり、それに合わせたMacOS Xのバージョンアップもなされるようです。
しばらくの間は、アーキテクチャーが異なる2種類の製品ラインナップが、並行して進んでいくことになります。

これまでのMacで使用していたソフトは、そのままではAppleシリコン搭載Macでは動かすことができません。
Intel用ソフトの命令を、Appleシリコン用に翻訳する必要があります。
その役割を果たすため「Rosetta2」という「翻訳ソフト」が登場します。
これは、PowerPCからIntelへ移行した際に使われた「Rosetta」の後継ソフトです。

他にも、開発サイドがIntel用とAppleシリコン用を意識せずに開発できる「Universal2」という機能も提供されます。
開発者、ユーザーの両方に対して、無理なく自然に移行できる配慮がされる予定です。

しかし、これだけの準備をしているとはいえ、多少の混乱は生じるかもしれません。
私は、Appleが過去に実施した2回のCPU変更(68系からPowerPCへ、PowerPCからIntelへ)をリアルタイムで経験して来ました。
その経験上、ソフトウエアのパフォーマンスが低下したり、周辺機器で不具合が生じたりと、思わぬトラブルが発生することも少なくありませんでした。
もちろん、時間とともにこのようなトラブルは修正されるものではありますが、今回の変更に際しても、ある程度は覚悟しておいた方が良いかもしれません。

Appleシリコンの採用でMacはどのように変わるか

Arm社製RISCチップの特徴として、省電力・小型化が可能とあります。
また、放熱についても優秀な性能を持つため、ファンや放熱用のスリットなど、ハードウエアでの放熱機構が不要となるかもしれません。
となると、MacBook・MacBook Pro・MacBook Airといったカテゴリーの分類は不要となり、Airと同じような形状の軽量タイプで、高性能なプロダクトに統一することができるかもしれません。

また、Appleがチップセットの設計を行うことによって、本来の意味でソフトウエアとハードウエアが一体化した、バランスの良い製品にブラッシュアップされることが期待されます。
これまでは、どうしてもIntel社の設計やスケジュールに影響を受けることが多かったのですが、自社でコントロールできる部分が多くなるため、自由度がはるかにアップするはずです。
iPhoneやiPadで蓄積してきた経験を活かして、しばらくプロダクトとしては停滞していた感のあるMacシリーズが、再び輝く日がくるのかもしれません。

【まとめ】
私が初めてMacを購入したのは、ちょうど68系からPowerPCへと移行するタイミングでした。
安定したパフォーマンスが期待できる68系にするか、全く新しくまだ評価の定まっていないPowerPCにするか。。。。
迷った挙句、PowerMac6100を選択しました。
初めて購入するMacでしたので、過去の資産を気にしなくて良かったこともありますが、やはり「未来」を感じさせるプロダクトに、圧倒的な魅力を感じたというのが一番の理由です。
今回のIntelからの脱却とRISC型CPUの採用には、これから先の輝く「未来」を期待させてくれます。

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■参考文献
注1
Apple Newsroom 「Apple、MacのAppleシリコンへの移行を発表」
https://www.apple.com/jp/newsroom/2020/06/apple-announces-mac-transition-to-apple-silicon/
注2
ARMの歴史 https://www.cqpub.co.jp/hanbai/books/33/33291/33291_pro.pdf
オルタナティブ・ブログ 「コレ1枚でわかるIntelとARM」
https://blogs.itmedia.co.jp/itsolutionjuku/2019/01/intelarm_1.html
EIPC 「組み込み開発におけるARM入門」
https://www.eipc.jp/embedded/arm/
注3
END Japan 「CISCとRISC、何が違う?」
https://ednjapan.com/edn/articles/1404/07/news001_3.html
注4
Cnet Japan 「Mac向け独自チップ「Appleシリコン」と最新OS「Big Sur」登場–CPU変更は14年ぶり」
https://japan.cnet.com/article/35155683/
注5
Apple newsroom 「Apple、MacのAppleシリコンへの移行を発表」
https://www.apple.com/jp/newsroom/2020/06/apple-announces-mac-transition-to-apple-silicon/

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