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BIMとFM領域の連携がもたらす施設管理の未来

企業のファシリティマネジメント(FM)への意識は徐々に高まっており、いかに効果的な施設運用・管理を進めていくかが話題となっています。
多くの課題が山積する中、注目されているのがBIMとFM領域の連携です。
FM領域が抱える課題は何なのか、BIMはどのようにファシリティマネジメントに良い影響を与えるのかについて、確認していきましょう。

目次: ① FMが抱えている課題 ② BIMがFMに与えるメリット ③ BIMとFMの連携事例

ファシリティマネジメントが抱えてきた課題

企業経営に欠かせない施設の戦略的な活用、通称ファシリティマネジメントにおいては、いくつかの課題との対峙が求められます。

ライフサイクルコストの削減

一つ目の課題は、ライフサイクルコスト(LCC)の削減です。
建設物は一度建てて終わりというものではなく、長く価値を創出し続けることが重要です。
ライフサイクルコストは、建物の設計から施工、運用、そして解体に至るまで、建設物に発生するすべてのコストを合算したものです。
ライフサイクルコストを正しく計算することで、建物をどのように運用していくかの戦略を見いだすことが可能になります。
ファシリティマネジメントの計画を立てる上では欠かせない要素の一つで、これをどれだけ抑えられるかがこれからの施設運用において重要視されています。

施設管理コストの見直し

ライフサイクルコストにおいて、大きなウェイトを占めているのが施設管理コストです。
ライフサイクルコストはイニシャルコストとランニングコストの二つが含まれています。
イニシャルコストは建設にかかる費用、ランニングコストは施設運営にかかる費用です。
施設管理に伴う費用は増大する傾向にあり、保全や修繕、保険にエネルギー費用など、要素も多岐に渡るため、把握が困難な部分でもあります。
ファシリティマネジメントの改善の余地としてもこの点が注目されており、BIM連携によって大きな改善効果が見込まれています。

資産価値の維持・向上

建設物を少しでも長く使用し、それでいて価値を維持し続けることは難しいものです。
ファシリティマネジメントにおいては、建物の資産価値の維持と向上に努めることも重要です。
利用者の満足度を高め、生産性にも良い影響を与えられる建物として重宝されれば、その価値は必然的に向上します。
どれだけ長い期間、建物の価値を維持し続けられるかが、重要な要素となっています。

BIMがFM領域にもたらすメリット

このようなファシリティマネジメントの領域で活躍を期待されているのが、BIMの存在です。
BIMとFMの連携によって、費用負担の経験や価値の向上につなげていくことが可能です。

修繕コストの削減

BIMとFMの連携による一つ目のメリットが、修繕コストの削減です。
建物は時代とともに劣化していき、建設当初はどれだけ堅牢であったとしても、時間が経てばメンテナンスの必要が出てきます。
また、機能性には問題がなくとも、塗装の剥げなどは建物の価値に大きく響いてくるため、定期的な塗り替えは必要です。
こういった修繕作業に活躍するのがBIMデータです。
BIMを使って建設された建物は、建設後も内部構造を知るためにBIMデータを活用することができます。
そのため、電線や水道管の位置もはっきりと把握しながら作業を進めていくことができるので、修繕にかかる費用は安くなることが期待できます。
従来の作業では改めて図面を書き直し、水道管などに当てないよう、あるいは当てた時の保険として、費用が発生していたケースもありました。
BIMデータがあればそれを見るだけで部材の種類や色なども把握することができるため、作業負担は軽減され、コスト削減につながります。

施設運用費の削減

BIMは施設運用においても活躍が期待されます。BIMデータを活用し、電気使用量や水道使用量をあらかじめシミュレートすることで、性能をコントロールできます。
エネルギーの無駄遣いは、施設運用において大きな負担となるだけでなく、環境への配慮が足りないという、CSRの側面でも問題があります。
そこでBIMを使ってエネルギー使用量を管理することで、必要最低限の資源で最大限のパフォーマンスを実現できる環境を実現することができます。

点検業務の自動化

BIMデータを活用するのは、何も人間だけではありません。データをロボットやセンサーなどに読み込ませることで、建設物の点検業務を自動化することができます。
すでに建設現場などでは導入されていますが、ロボットにBIMデータを読み込ませることで、全自動の点検業務が可能になってきています。
これまでは警備員に建物の巡回を依頼し、エンジニアに設備点検を依頼する必要がありましたが、ロボットの登場でこれらの費用は大きく削減されます。
また、点検精度についても機械学習などの効果によって、人間以上のパフォーマンスを発揮することがわかっています。
点検業務の自動化により、運用コストの削減は大幅に進むでしょう。

資産価値の向上

BIMを用いて建設され、運用もBIMで行われる建設物は、将来的に高い資産価値を持つことも期待されています。
BIMデータは建物の維持管理において高いパフォーマンスを発揮するため、末長く運用することができると見込まれるためです。
また、BIMで管理されている建物はIoTやAIなどのテクノロジーとも相性が良く、建物内で働く社員やスタッフのマネジメントにも応用することができます。
BIMとFMの連携は、建物本体はもちろん、建物で暮らす人々にも良い影響を与えます。
そのため、資産価値の維持・向上にも結果的に繋がってくるというわけです。

BIMとFMの連携事例

最後に、BIMとFMの実際の連携事例についても見ていきましょう。

日本設計のFM連携機能強化

日本設計ではAutodeskのRevitをBIMソフトとして活用していますが、BIMデータとFM領域のシステムをつなぐプラットフォームを構築しました*1。
プラットフォーム構築にはAutodeskのForgeというサービスを活用し、Autodeskが提供するサービスやツールをFMシステムでも使えるよう実現しています。
BIMとFMの連携が進められてこなかったのは、これまでプラットフォームが存在しなかったことも理由として大きいのですが、日本設計ではそれを実現しました。
既存のFMシステムを壊すことなく、スムーズなBIM運用ができるということで、修繕計画の見直しなど、施設管理に大きな効果をもたらすことが期待できます。

オハイオ州立大学

こちらは海外の事例ですが、アメリカのオハイオ州立大学に設置されているファシリティマネジメント学部では、BIMとFMを連携した施設が特徴です。
この学部では500棟を超える建物とメインキャンパスを有していますが、全てBIMによる管理体制が整っており、運用コスト削減に成功しました*2。
細かな3Dモデルを作成し、詳細なエネルギー分析を実現したことが結果につながっているというわけです。

おわりに

BIMの連携は、ファシリティマネジメントにおいては大きな役割を果たすことが証明されるようになってきました。
ランニングコストへの影響も大きく、施設運営のコストパフォーマンス向上に貢献することが期待されています。
BIM運用による資産価値の高まりも予想されるため、今後もFMとBIMの連携は進んでいくことになるでしょう。

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*1 BUILT「日本設計が構築するBIMの“実践的”なFM活用の姿とは (1/2)」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/1704/13/news053.html
*2 Autodesk「BIM でファシリティ マネジメント: ライフサイクル性能の向上とコスト削減の 4 つのヒント」
https://redshift.autodesk.co.jp/bim-for-facilities-management/

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