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自動運転車のテストを公道でやるのは危険?じゃあ、Unityでやってみては

 車の「自動運転技術」って、聞くだけでなんだかワクワクしてしまいます。
車に乗って目的地を指示、音声入力でナビを設定したら後は本でも読みながらなんてまるでSFの世界でしたが、かなり現実めいてきました。
 現在は公道での実証実験段階ですが、まだ完全ではない「自動運転」システムによる事故は気になるところです。海外では死亡事故なども発生しているようです。
 今回は、車の自動運転のテスト走行は「ゲームエンジン使ってシミュレーションすれば安全・安心では?」という話題についてご紹介していきましょう。

この記事でわかること
 ・Unityを使った自動運転シミュレーションの状況について
 ・自動運転技術について
 ・「Unity」とは

Unityを使った自動運転シミュレーションの状況

 2020年4月、道路交通法などの改正をきっかけにして、日本では高速道路を使った自動運転の実証事件が開始されています。高速道路であれば、信号機もなく歩行者もいないため、比較的事故の心配が少ないということもあるのでしょう。
 海外では一般道での走行実験もすでに行われているようですから、やや遅れてはいるもののようやく実用化へ向けて動き出したといえるのではないでしょうか。*注1

 しかし世界的にみても、まだ完全な自動運転までには至ってないのが現状であり、アメリカでは何回か深刻な事故も発生しています。

■アメリカの自動運転中の事故 
 ・2016年5月7日:テスラ車で部分自動運転モード中に死亡事故
 ・2018年3月18日:ウーバー車が自動運転中に歩行者と死亡事故
 ・2018年3月23日:テスラEVが2件目の自動運転モード中の死亡事故

 2018年3月には連続して自動運転車による死亡事故が発生したこともあり、大きなニュースになったのは記憶に新しいところです。
 テスラの事故は両方とも、自動運転車に搭乗していたドライバーの死亡ですが、ウーバーは世界初の「自動運転車による歩行者の死亡事故」となってしまいました。*注2

 ウーバー車による事故の原因は、「人為的なもの」である可能性が高いとされています。自動運転モードに設定した際に、車両が本来持っていた自動ブレーキ機能をOFFにしていたことから、衝突が回避できなかったというのがその理由です。
 この機能がもしONになっていたなら、深刻な死亡事故は避けられたかもしれません。
とは言うものの、公道を実験車が走る以上、いつどこで想定できないトラブルが発生するかわかりません。

 もともと公道でのテスト走行自体が、「机上では想定できないようなシチュエーションやケースのデータ取集」を目的の一つとしています。多少のトラブルは、今後も発生する可能性は否定できません。
 上記の例のように人為的な問題も含め、まだまだ不完全な状態の自動運転車である以上、公道での実験は危険が伴うという認識で間違い無いでしょう。レーシングゲームとは異なり、クラッシュしたらスタートからやり直しという訳にはいきません。

 「あれ、それならいっそのことゲーム内で自動運転のシミュレーションをすればいいのでは?」というのが今回のテーマです。
 現在、3Dゲームの制作現場で広く利用されているゲームエンジン「Unity」は、重力や摩擦などの物理法則を再現し、リアルタイムにデータを処理することができます。
「Unity」を使って実際に存在する街並みを3Dで構築することで、リアルと同レベルでのシミュレーションが可能であり、さらに事故の心配もありません。

 通常なら運転が難しいような台風や大雪の中での走行や、急に人が飛び出すといった不測の事態など、公道テストでは実際に試すことが難しい場面は多くあります。
 しかし、Unityを活用したシミュレーションであれば、実際の走行では難しい場面であっても、何千回・何万回でもテスト走行を繰り返すことができ、必要なデータを取得することが可能です。仮想的な空間ですから、何度だって事故を起こしても構いません。
 さらにUnityを使った走行テストによって得られた情報をもとに、プログラムの最適化をはかることができます。
 
 AIニュース専門メディアの「Unite.AI」は、VolvoがUnityを利用した走行テストのシミュレーション環境を開発したと伝えました。
これによると、ドライブシミュレーターのような人間が搭乗して操作できる装置とセットで、ドライブアシスタントとしてAIをトレーニングすることを目的として開発されたようです。
 完全自動運転ではないようですが、ゲームエンジンがこのような開発に利用されているということで注目されています。
 同じ記事では、BMWもUnityのライバルであるゲームエンジンを提供している「Epic Games」と共同して、自動車シミュレーターの開発に取り組んでいることが報じられています。*注3

 他のメディアでも、マイクロソフトが開発したドローン・自動車の自動運転シミュレーター「AirSim」が、Unityに対応したことや注4、中国の大手インターネット企業「Baidu」が、レベル3~5の自動運転システムの開発のため、Unityと協力することなどが伝えられています。注5

現在の自動運転技術について

 ここでは、「自動運転技術ってそもそもどんなもの?」を簡単に説明していきましょう。
 自動運転技術は、その程度によってレベル0からレベル5までの6段階に分類されています。
 レベル0は全く自動化されてないマニュアル運転。
 レベル1と2は、運転アシスト機能までの段階です。最近CMでも見かけるようになった、自動ブレーキとか追い越しのアシストなどがこの段階になります。
 レベル3以上が、システムが主として運転をする段階になります。レベル3や4では、限定された環境や条件でという制約がつき、レベル5で「完全自動運転」が実現します。

 海外では、レベル4から5の実験なども行われているようですが、まだ実用化には至っていません。日本ではホンダがレベル3の車を、世界で初めて実用化すると発表しています。*注6
 この先、レベル4以上の自動運転車が世界的な競争のターゲットとなりそうです。
ただし単に技術の問題だけでなく、法整備なども合わせて取り組む必要があるため、国家を挙げてのプロジェクトとして推進しなければならないでしょう。

 自動運転技術というのは、現代の最先端技術の塊といってもいいものです。AI・機械学習・高度なセンサー・画像認識・通信技術・制御技術などなど、まるで「最先端IT技術が詰まった宝箱やあー」と叫びたくなるような分野です。
 最近話題の5Gも、自動運転への活用が期待されており、通信各社も自動運転の分野には、大きな関心があるのではないでしょうか。

ところで「Unity」ってなに?

 Unityは、「Unity Technologies(ユニティテクノロジーズ)」が開発しているゲームエンジンです。次は当然「ゲームエンジンって何?」という話になりますが、これには明確な定義は無いようです。
 基本的にはゲーム開発に必要なパーツやプログラムなど、共通で使える機能を揃えた統合開発環境という意味で使われています。

 例えば、ゲーム空間内で物体を投げた時、重力や衝突時の摩擦、反発係数などの物理法則にしたがって動く必要があります。このような物理法則を、ゲームを製作するためにいちいち最初からプログラミングしていては、時間がかかって仕方ありません。
 特殊な空間でない限り物理法則は一定であり、共通して利用できるプログラムのセットを準備しておけば、開発の手間がかなり削減できます。

 物理法則に限らず、ゲームで共通して利用できるような「資産」を、まとめてすぐに利用できる状態にしてあるのがゲームエンジンです。
 さらには、開発が容易になるようなUIを持ったオーサリングツールとしても発展し、「統合開発環境(IDE)」として多くの開発現場で使われるようになってきました。

 以前はゲームメーカーが、自社のハードウェア専用のゲームエンジンを提供していましたが、Unityは複数のプラットフォームに対応していることから、少ない手間でゲーム専用機から携帯ゲームまで幅広い開発をすることができるようになりました。
 AR技術の利用例として話題になった「ポケモンGO」も、Unityで開発されています。*注7

 このようなゲームエンジンの中でも、Unityは初心者からプロまで多くの利用者を持つ代表的なものであり、NintendoやSQUARE ENIXも正式採用しています。
 またゲームだけでなく、今回紹介したような自動車産業や映画・建築関係など、幅広い分野で利用されています。2Dから3Dま簡単かつ柔軟な設計ができることや、マルチプラットフォームへの対応、無料から使えるライセンスなどがその理由となっています。*注8

【まとめ】
 3Dオブジェクトがスムーズ動き回り、操作に対するレスポンスが瞬時に返ってくるゲームの世界。VRやARの進化により、もはや現実世界とバーチャルとの間に境界線を引くことすら、無意味に思えてきます。
 ゲーム開発用のUnityが、現実世界の自動運転技術の向上に使われるというのも、案外自然な流れかもしれません。
 20世紀生まれの旧世代人類としては、自動運転車というとタケコプター並みに「未来の技術」でしたが、もうすぐ実用化されるとなると、なんとも楽しみな時代になりました。

 

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■参考文献
注1
日経XTECH 「日本で自動運転レベル3が解禁、いざ高速道路へ」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01288/00001/
注2
自動運転LABO 「自動運転車の事故まとめ UberやTeslaの死亡事故、日本の事例も解説」
https://jidounten-lab.com/y_1615
注3
Unite.AI “Volvo Designs Driving Simulator Using Video Game Engine To Train Autonomous Vehicles”
https://www.unite.ai/volvo-designs-driving-simulator-using-video-game-engine-to-train-autonomous-vehicles/
注4
Microsoft Research Blog ”Microsoft AirSim now available on Unity”
https://www.microsoft.com/en-us/research/blog/microsoft-airsim-now-available-on-unity/
注5
engadget 「自動運転のテストにUnityゲームエンジン活用。Baiduの自動運転車開発コンソーシアム」
https://japanese.engadget.com/jp-2018-12-18-unity-baidu.html
注6
NHK 「世界初なの?“レベル3”の自動運転」
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/articles/20201112.html
注7
IT Media News 「「ゲームエンジン」はいかに世界を変えつつあるのか」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2010/22/news033.html

注8
発注ラウンジ 「ゲームエンジン「Unity」とは?世界でUnityが選ばれる理由と活用事例」
https://hnavi.co.jp/knowledge/blog/unity/
Unity
https://unity.com/ja
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