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東京電力・NTTデータ・日立が共同で考えるドローン運用のカタチ

無人でも自由に空を飛行できるドローンは、その汎用性の高さから様々な分野での活躍が期待されています。しかし、国内での運用に際しては未だ規制が多いだけでなく、パフォーマンスを最大限発揮できる環境の整備が追いついていません。

そんな中、東京電力とNTTデータ、そして日立は共同プロジェクトとして、新たなドローン運用の可能性を模索し始めました。今回は彼らのプロジェクトである「グリッドスカイウェイ」についてご紹介します。

目次:
①東京電力・NTTデータ・日立が設立する「グリッドスカイウェイ」とは
②現在のドローン運用における課題
③「グリッドスカイウェイ」で実現すること

東京電力・NTTデータ・日立が設立する「グリッドスカイウェイ」とは

東京電力パワーグリッド(PG)、NTTデータ、そして日立製作所は2020年3月に「グリッドスカイウェイ有限責任事業組合」を発表しました。これはドローンによるインフラ設備点検の実現とともに、ドローンを活用した事業の検討を目指すための組合です*1。

インフラ設備点検の強化

電力インフラがこれまで抱えてきた問題として、インフラ設備の継続的な点検に大きなコストが発生していた点が挙げられます。山間部の送電線など、有人で行うには大きな負担が伴い、都会でも高所の作業には危険が常に存在します。こういった点検業務をドローンによって自動化しようというのが、グリッドスカイウェイの目的の一つです。

無人で設備点検を進められるだけでなく、高度な点検能力で人間以上の精度を確立し、今後のさらなるドローン活用の促進に結びつけていきます。実現に向けて、東電PGは電力設備を活用した実証環境の構築を、NTTデータと日立はドローンの運航管理システムの実証環境の構築を担当するという役割が与えられています*2。

今回のプロジェクトにおいては電力インフラに軸を置いた運用体制の策定が目標となっていますが、今後は交通インフラなど、他のインフラ設備点検への応用にも期待が持たれています。

ドローン運用に向けた航路プラットフォームの構築

グリッドスカイウェイのもう一つの目的が、ドローン運用に向けた新たな航路プラットフォームの構築です。道路には道路のルールがあり、航空機には航空機のルールがあるように、ドローンにもドローンに特化したルールの策定を進めようというのが今回のプロジェクトです。

全国で統一された航路プラットフォームを確立することで、インフラにとどまらない新たなドローン事業の創出も促すことができます。プロジェクト内における新規事業の創出だけでなく、あらゆる企業がドローン運用に携われるようフレームワークを創り出すところに、グリッドスカイウェイの魅力があります。

現在のドローン運用における課題

今になってこのような運用体制の整備が進んだのは、現状の日本ではドローン運用に多くの規制と懸念が残り続けているためです。

空の安全確保が不十分

現在、ドローン運用における最大の課題が、空の安全確保です。今でこそドローンの実用的な運用は普及していないため、これが問題視されることはありませんが、今よりも広くドローンが使われるようになった場合はどうでしょうか。

ドローンは小型な分、様々な業種で運用が可能なため、航空機などよりも小さい一方、はるかに多くのドローンを飛行させることができます。各業界でドローン運用が進めば、常に町中をドローンが徘徊していることになりますが、ドローンの数が増えればそれだけ空は混雑し、衝突事故や落下による被害のリスクが急増します。

また、飛行区域や高度の制限をしなければ、航空機との接触事故や、バードストライクならなぬドローンストライクのリスクも高まります。こういった事故のリスクが低下しない限り、効果的なドローンの運用は見込めないでしょう。

厳格な法整備も足かせに

事故のリスクへの意識はもちろん重要なのですが、それを必要以上に危険視するあまり、イノベーションに遅れが生まれていることも問題です。日本は人口密度の高い島国ということもあり、アメリカなどの他の先進国に比べ、特にドローンの運用には厳格なルールが設けられています。

日本の航空法はドローン飛行において、「日中」「目視の範囲内」「人や物件から30メートル以上の距離」などのルールを定めています*3。また、規定外の飛行には国土交通相の許可が必要で、申請から認可までは10日間以上かかります。スムーズな実験を行うための環境からは、程遠いのが現状です。

こういった規制緩和を少しでも推進するため、グリッドスカイウェイの取り組みには大きな効果が期待されています。電力インフラという社会基盤の維持に関わるドローン運用の仕組みを整えることで、今後のドローン規制緩和の足がかりにもなるためです。

「グリッドスカイウェイ」で実現すること

グリッドスカイウェイのプロジェクトが円滑に進めば、様々なドローン運用の可能性が開かれるでしょう。

物流におけるドローン運用

例えば、物流をドローンによって自動化する使い方です。物流業界では配送物をどのように届け先へ配達するかという、ラストワンマイルの問題が議論されていますが、ドローンによる解決が図れます。

大量の小型ドローンを各世帯へ配達に飛ばすことができれば、配達員の作業効率化、および省人化を進められます。ドローンは中央で一括コントロールもできるため、配送ミスの減少や柔軟で正確な配送スケジュールの設定も実現するでしょう。

農業の省人化

巨大な農地における薬剤の散布など、農業経営にはスケールの大きな業務も発生します。現在、第一次産業に従事する若者の数は減少しており、地方の高齢化も進む中、ドローンをはじめとするテクノロジーの導入は不可欠となっています。

ドローンの規制緩和と運用体制の構築が進むことで、農業の自動化も進められるでしょう。

グローバルスタンダードなドローン運用

日本国内におけるドローン運用のフレームワークが構築されれば、国内での運用はもちろん、国際的なドローン運用も進められます。

近い将来、ドローンは長距離飛行も実現し、航空機と同様の飛行が可能になる未来も控えています。日本国内で統一された運用ルールが策定されていれば、海外企業も一つのルールに従ってドローンを飛ばせるため、日本各地に海外からの発着も進むでしょう。

おわりに

適切なドローンの運用体制は、現在日本が最も必要としているフレームワークの一つです。グリッドスカイウェイのような大規模なプロジェクトが進むことで、また一歩ドローン活用の未来に近づけるかもしれません。

 

 

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参考:
*1 電気新聞「ドローンを使った空のインフラ構築へ――東電PG、NTTデータ、日立が有限組合」
https://www.denkishimbun.com/sp/51596
*2 IoTニュース「東電PG・NTTデータ・日立、ドローンによる設備点検高度化のため「グリッドスカイウェイ有限責任事業組合」を共同設立 」
https://iotnews.jp/archives/150592
*3 日本経済新聞「空の産業革命は10年遅れ ドローン開発、低空飛行」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56996300Z10C20A3SHA000/

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