SolidWorks Routingとは?初めてでもわかる配管・電気配線設計の基礎ガイド
1. はじめに
配管設計や電気配線設計を取り込んだ3D CADシステムとして、多くの企業担当者が注目しているのがSolidWorksの拡張機能である「SolidWorks Routing」です。近年、機械装置やプラントの設計において、作業効率化と設計ミス削減が重要視されるようになりました。その背景には、製品の市場投入スピードを上げたいという企業のニーズがあり、従来の2Dベースでは対応が難しかった問題を解決するため、3Dルーティング機能を活用する流れが広がっています。
SolidWorks Routingを使うことにより、配管特有の複雑なルート設定や電気ワイヤ配置などを自動化設計し、高い精度で部品表や干渉チェックを実現できます。設計部門の新入社員でも比較的理解しやすく、短期間で実際のモデルに適用できる点が大きな魅力です。一度操作に慣れてしまえば、設計プロセスの標準化にも寄与し、長期的なコスト削減と競争力強化へとつながっていきます。
このような効果は、単にソフトウェアの性能だけでなく、社内の運用ルールや利用者の習熟度と複合的に関係しています。しかしSolidWorks Routingが備える3Dルーティング機能は、効率化や品質向上という観点で非常に優れた手段であり、なるべく早いうちから導入を検討する価値があります。
本記事では、配管・電気配線設計に焦点を当て、SolidWorks Routingのメリットや注意点を解説しています。特に、配管(パイプやチューブ)や電気設計(ハーネスやケーブル)を担当している技術者の方々に向けて、多角的にRoutingを活用するポイントをお伝えします。
本記事を最後まで読んでいただくと、Routingの概要や導入の実務的な手順が整理され、設計現場での具体的な応用イメージがつかめるはずです。ぜひ、SolidWorks Routingが提供する3Dルーティングサービスのメリットを活用し、配管や電気設計のプロセス効率化と品質向上を実現してください。
2. SolidWorks Routingの基本とは?
<画像引用>
・SOLIDWORKS ヘルプ「SOLIDWORKS Routing の概要 (SOLIDWORKS Routing Overview) – 2025 – 」
https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/sldpiping/c_routing_overview.htm?verRedirect=1
SolidWorks Routingは、SolidWorks Premiumまたは特定のアドインを有効にすることで使用できる拡張機能です。この機能を使うと、パイプやチューブ、電気ワイヤなどを3D空間上で直感的に配置し、自動的に干渉チェックや部品表の生成が行えます。標準のSolidWorksにもアッセンブリやパーツを作成する機構は搭載されていますが、Routingではそれらの操作がより配管・配線寄りに最適化されていることが特長です。
3D CADを初めて導入する企業担当者や、新入社員の方にとっては、そもそも3Dモデリングの操作に慣れるところから始める必要があります。ですが、Routingを一度使いこなせるようになると、複雑な曲げやフィッティングの追加を自動化でき、変更が生じてもルートを再計算するだけで修正が完了するため、設計プロセスを飛躍的に効率化できる可能性があります。
Routingは、配管設計や電気配線設計など、多彩な配線レイアウトを必要とする業務で多用されています。たとえば、重量物を扱う機械装置内部の空間制約や、プラント内の多層配管設計など、2D CADでは把握しきれない干渉要素の確認にも強みを発揮します。
ここでは、Routing機能が具体的にどのような役割を果たし、どこが標準パッケージと異なるのかを解説します。まずは、もっとも重要なポイントである「Routing機能の概要」と「標準パッケージとの違い」から見ていきましょう。
Routingが企業にもたらす最大のメリットは、実設計におけるエラー減少と人為的なミスの防止です。作業が自動化されることで設計時間が短縮され、結果としてコスト面でも大きな効果が期待できます。
2.1. Routing機能の概要
Routing機能の中核的な要素は、3D空間上でのルート作成と、そのルートに対して部品を自動配置できる点です。たとえば配管(Piping)の場合、エルボやフランジなどの継手を配置し、パイプ径や厚みなどの物理的パラメータを設定すると、自動的に3Dスケッチが生成されます。
さらに、Routingでは曲げ半径やチューブの可動範囲など、実際の製造条件を考慮したシミュレーションが可能です。これは機械装置内のスペースに合わせて配管を折り曲げるときや、プラント設計で長距離配管をまとめるときに非常に便利です。
また、Routing Library Managerを使用すれば、会社がよく使用する部品や継手データをまとめて管理できます。たとえば、特定のパイプ径や材質などを登録しておけば、後から再利用する際に呼び出すだけで設計が進めやすくなります。
電気配線では、ハーネス設計やコネクタ類が登場しますが、その際もRoutingの考え方は同じです。スケッチを利用したルート作成により、端子やケーブルが配置され、干渉状況を目視確認できます。
これらの機能により、作図時の漏れや単位変換ミスなどのヒューマンエラーを大幅に削減できるのが、Routingの大きな特徴と言えます。
2.2. SolidWorks標準パッケージとの違い
SolidWorksには元々、部品モデリングやアセンブリ機能が搭載されていますが、Routingを活用すると配管や電気配線設計に特化した操作が可能になります。標準パッケージの場合、配管をモデル化するときはスケッチやエクストルード、スウィープなどを何度も手作業で行う必要があり、そのたびに寸法調整や部品同士の位置関係を再確認しなければなりません。
しかし、Routingを使用する場合は、あらかじめ設定されたライブラリのパーツ(継手、フランジ、チューブなど)をドラッグ&ドロップすることで、必要な形状とルートを自動生成できます。また、SolidWorks Premium以上でないとRouting機能が含まれないケースがあるため、自社が保有するライセンス形態を必ず確認することが大切です。
さらに、配管・電気配線設計時には部品表(BOM)の自動生成や干渉チェックの機能が重要となります。Routingでは、これらが標準で備わっており、ルート完了後はすぐに部品の総数や材質などがまとめられるメリットがあります。
複数のエンジニアが同時に作業を進める大規模プロジェクトでも、Routingで設計情報を一元管理しやすい点は大きいです。例えば、3DEXPERIENCEプラットフォームと連携すれば、クラウドを介して最新のルーティング構成部品やアセンブリを共有できるため、グローバルなチームでもスムーズな共同作業を実現できます。
このように、標準パッケージと比べて、Routingは専用アドインならではの自動化設計と高速な検証プロセスを備えており、配管・電気配線領域の効率化を強力にサポートしてくれます。
3. SolidWorks Routingの実用例
Routingは配管設計だけでなく、チューブ設計や電気配線の最適化にも広く応用されています。特に製造業やプラント設計などで活躍が大きく、近年では部品表の自動生成や図面自動化を活用することで、従来の手作業で行っていたドキュメント作成の手間が大幅に減っています。
また、電気配線設計の分野においても、SolidWorks Electricalと組み合わせることで、配電盤内のワイヤレイアウトやケーブルリストを3Dモデル上で可視化し、誤配線を減らす仕組みが用意されています。以下では、具体的に代表的な業界别の事例を紹介しながら、2D設計と3Dルーティングを比較しつつその大きな差を解説していきます。
実用例を理解することで、自社の設計プロセスにどのようにRoutingを取り込むべきか、大まかなイメージをつかめるでしょう。可能であれば小規模なプロジェクトで試験導入し、メリットを確認したうえで段階的に導入範囲を広げるやり方がお勧めです。
Routingに最初から全面移行するのではなく、最も効率化が期待できる部分から部分的に導入するのも得策です。たとえば、単純な配管ユニットやバルブまわりの設計だけを3D化し、そのメリットを評価する手法もよくとられています。
次の各小見出しでは、実際の製造業・プラント設計・電気設計の現場で取り組まれている代表的な活用方法や、従来の2D設計との違いをまとめます。
3.1. 製造業での使用事例
製造業においては、機械装置内部に設置されるパイプ類やチューブ類のルートを3D上で正確に描くことで、余分なスペースや干渉がないかをチェックしやすくなります。
たとえば、産業ロボットの付帯装置などでは、限られたスペースに多様な配管とワイヤが集中します。Routingを活用すれば、配管の取り回しを最適化しつつ、必要な長さや継手数を自動算出でき、結果的に部品の取り付け精度を高めることが可能です。
コスト面でも、3Dモデル段階で干渉やレイアウトの問題を発見できるため、後戻り工数が減り、部品調整にかかる時間や費用を抑えられます。こうした利点から、新入社員への教育もしやすくなっています。
また、設計情報を基に自動生成される部品表を活用すれば、調達部門との連携もスムーズです。変更が入ってもモデルを更新するだけで最新の部品情報が取得できるので、従来のように設計者が都度表を修正する手間を省けます。
3.2. プラント設計での応用
大規模プラントや化学工場などの配管ネットワークは、数多くのバルブや継手が絡み合うため、設計ミスや干渉が生じやすい分野です。ここでRoutingを使用すると、3Dルーティング上で複雑な経路をわかりやすくモデル化できるため、管理が格段に容易になります。
特に、長い配管ルートがいくつも重なり合うような現場では、干渉チェック機能が不可欠です。Routingを用いれば、部品が設計段階で重複していないかを検出し、エラーとなる箇所を赤く表示するといった機能が働きます。
また、プラント全体をSolidWorks以外のシステムと連携したい場合も、3DEXPERIENCEプラットフォーム経由で複数ソフトウェアを跨いだデータ共有が可能です。Routingモデルを社内外の設計チームと同時にレビューするときに、クラウド上のプロジェクトへアクセスして簡単に共有できます。
こうした仕組みのおかげで、重大な配管トラブルを事前に回避し、工期の短縮や安全性の向上を実現しやすくなる点が、プラント設計におけるRoutingの強みです。
3.3. 電気設計の効果的な活用
機械装置の心臓部とも言える電気設計では、配管とは異なり電気ワイヤやハーネスのルート設定が重要になります。SolidWorks Routingを活用することで、ハーネスの折り返しやコネクタ配置が分かりやすくビジュアル化され、誤配線や断線リスクを抑えることができます。
電気図面の記号類と連動させたい場合は、「SolidWorks Electrical」という専用ソフトウェアとの連携が効果的です。回路図から繋がった配線情報がRouting上に反映されるため、電気システム全体を俯瞰でき、後々の改訂作業を容易にします。
また、部品表自動生成機能でコネクタの型番や使用ケーブル長を集計できるため、予備ケーブルの確保や在庫管理を効率化できます。こうしたプロセスが整備されると、設計プロセスの標準化が進み、各チーム間の情報共有もスムーズになります。
電気設計と機械設計が連携する場面では、それぞれの配管理由が干渉しないようにルートを最適化する必要があり、Routingの3D干渉チェック機能が大いに役立つでしょう。
3.4. 2D設計と3Dルーティングの比較
2D設計では、配管や電気配線を平面的な図面で検討するため、奥行き情報や重なりの把握が難しく、干渉ミスが後から判明するケースが多々あります。一方、3D CADを用いるRoutingでは、実際の空間をモデル化できるため、継手の向きや配線の曲げを含めた物理的な問題を目視で確認しやすくなります。
また、2D設計に比べて3Dルーティングは設計変更に強く、部品、アセンブリ、部品表などがリンクしているのが特徴です。何かしら形状を編集しても関連要素が自動的に更新されるので、ミスが大幅に減り、二重入力も不要です。
利用者からは「導入当初はセットアップや教育コストがかかったが、それ以上の効率化効果が出て驚いた」という声がよく聞かれます。2Dでは膨大な時間を費やした修正作業が、3Dルーティングなら一瞬で済むことも多いからです。
特に、SolidWorks Routingは設計経験が浅いSolidWorks初心者でも扱いやすい設計であるため、4~5年の機械設計経験者が新しい分野へ取り組む場合にも優れたツールとして認知されています。
4. Routingでできること
<画像引用>
・SOLIDWORKS ヘルプ「SOLIDWORKS Routing の概要 (SOLIDWORKS Routing Overview) – 2025 – 」
https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/sldpiping/c_routing_overview.htm?verRedirect=1
Routingは、パイプやチューブ、電気配線のようにルートを持つ部品群を効率よくモデリングするための仕組みを提供します。従来、マニュアルでルートを描いていた部分を自動化できるため、大幅に設計時間が短縮されるほか、ルートの可変に即応できる点が特徴です。
ここからは、配管設計の自動化、チューブ設計の柔軟性、電気配線の最適化という三つの観点から、Routingが具体的にどのような利点をもたらすか紹介します。これらの項目を把握することで、実際の運用イメージがいっそう掴みやすくなるでしょう。
導入段階では「配管だけ使う」「チューブだけ使う」など一部機能に限定しても十分なメリットがあります。ゆくゆくは電気配線や他の機能にも拡張し、最終的には統合的に設計を進めることで、一層の効率化が見込めます。
設計作業を担当する方はもちろん、管理職やプロジェクトリーダーの方もRoutingによる効果を理解すれば、プロジェクト全体のスケジュール管理や品質管理がしやすくなります。とくに複数工程が絡む大規模な現場では、Routingの果たす役割が大きいでしょう。
それでは、Routingで自動化・最適化できるポイントを順に解説していきます。
4.1. 配管設計の自動化
配管設計では、パイプ径や長さ、曲げ半径など多彩な要件を考慮しなければなりません。Routingを導入すれば、部品ライブラリからエルボやフランジといった継手を選んで指示するだけで、自動的にパイプがつながるので、手動で数値を入力する手間が省けます。
また、3Dスケッチを基にルートが生成されるため、変形や拡張を行う際もスケッチを修正すればルート全体が連動して更新されます。従来は配管の寸法をいちいち再確認して再作図していた作業が、Routingでは一度に反映されることで重複作業を減らせます。
配管同士の干渉や重なり合いだけでなく、周囲の機械装置やフレームとの接触もベースとなる3Dモデルで検証できます。そのため、後から部品が干渉して設置不可というトラブルを最小限に抑えられます。
さらに、高圧配管などでは、規格や安全基準を遵守した設計が必須になりますが、あらかじめ適切な規格部品をライブラリに登録しておけば、設計者が規格を間違えて選ぶリスクも減少します。
4.2. チューブ設計の柔軟性
チューブ設計(柔軟ホースなど)は配管と比べて形状が変化しやすく、曲げ半径や取り回しの余裕を考えながら設計する必要があります。Routingを使うと、ソフトホースのような可撓性パーツのルートも、スケッチベースで自在にコントロールできます。
複雑に湾曲するチューブも、設計時に設定したベンド条件に従って自動生成されるため、CADオペレーターが複雑な形状を手動で作る負担が減少します。しかも、どの程度の曲げ角度が可能かをあらかじめ確かめておけば、製造段階で実現できないかもしれない設計案を早期に排除できます。
また、配管設計と同様にチューブ設計でも部品表への情報登録が行われ、自動的に必要なホース長さが集計されます。たとえば、同じ種類のホースを複数ヶ所に使う場合も全体の長さが把握しやすく、調達費の算出が容易になります。
3Dルーティングならではの特徴として、最終製品の見た目を確認しやすいという点も挙げられます。曲がったチューブが装置外観に影響を及ぼす場合でも、画面上で適切な収まりをシミュレーションできます。
4.3. 電気配線の最適化
配線を3D化する最大のメリットは、制御盤内部や装置を横断するケーブルの経路を立体的に理解できることです。電線の通り道を誤れば、配線が熱源に近くなり過ぎたり、余計な長さが必要になったりする恐れがあります。
Routingでは、電気デバイスの接続情報を元に3Dルートを描くため、端子ブロックやコネクタの場所に合わせて配線が最適化されます。加えて、干渉チェック機能により、他のパーツやケーブル束とぶつからないか簡単に確認できる点が強みです。
配線に伴う部品表の作成も、自動的にワイヤの長さやコネクタの種類をまとめられます。多数のケーブルが入り乱れるような装置でも、設計段階で正確なケーブルリストを用意できるので、現場での配線ミスや資材不足を抑えられます。
特に電気設計では、設計データと実際の現場作業のリンクが欠かせませんが、Routingの3Dモデルを活用することで、作業担当者にもビジュアル化した情報を提供でき、トラブルやクレームの発生を低減する一助となります。
5. SolidWorks Routingの主なメリット
Routingは多くの企業で導入が進められていますが、その大きな理由は高い効率化効果とエラー削減による品質向上が見込める点です。設計が自動化されることにより、作業時間を大幅に短縮できるだけでなく、人間の手作業に起因する単純ミスも減らすことができます。
ここからは、Routingにより得られる代表的なメリットを三つに分けて解説します。
それらのメリットを踏まえれば、導入時のライセンス費用や教育コストをかけても十分にリターンが期待できることが分かるはずです。特に、設計部門全体でデータを共有し標準化できれば、後々の改修や機能追加時にも設計データを使い回せるため、生産性の向上が長期的に見込めます。
Routingのメリットをしっかりと理解し、その活用範囲と導入ステップを検討することで、企業としての競争力やエンジニアのモチベーションアップにもつながるでしょう。
では、具体的に作業効率向上、設計ミスと干渉削減、部品表自動生成と図面作成の自動化について詳しく見ていきましょう。
5.1. 作業効率の向上
Routingがもたらす最大の恩恵として、圧倒的な作業効率の向上が挙げられます。通常の3D CADでパイプやチューブを作る際には、手動によるスケッチ・フィーチャー操作が必要ですが、Routingではライブラリ部品を選択してルートを描画するだけで、自動的に適合する継手やパイプがアセンブリに組み込まれます。
また、ルートの変更が発生した場合でも、スケッチの修正を行えばアップデートが速やかに完結するため、従来必要だった再モデリング作業が大幅に削減できます。2D図面をベースに手書きの寸法修正をしていた状況から比べると、時間と工数が格段に下がるのです。
開発周期が短期化する現代において、少しでも設計作業を効率化することは競合他社との差別化にもつながります。Routingを導入すると、他の業務に充てられる時間を生み出し、新しい製品開発や改善にリソースを回せるようになるでしょう。
さらに、社内標準としてRoutingライブラリを整えることで、一貫した部品選定が進み、設計者間のコミュニケーションロスを防げます。これこそ、作業効率向上をもたらす大きなカギとなります。
5.2. 設計ミスと干渉の削減
3Dルーティングでは、リアルタイムに干渉チェックが行えるため、見落とされがちな配管同士の重複や、想定外のスペース不足が事前に分かります。2Dでは想定外の位置に部品が配置されてしまうことがありましたが、3D空間上では実際の寸法関係が可視化され、ミスを発見しやすくなります。
また、部品表から使用されるEveryシングル部品のリストを確認できるので、誤発注や調達ミスが減り、製造段階でもトラブルが回避されます。フォーマルな干渉シミュレーションをしなくても、モデル上の表示で素早く確認できるのも有用です。
さらに、設計者が入れ替わった場合でも、Routingの一貫性あるデータ構造があれば、どこにどんなルートが敷設されているか容易に理解でき、引き継ぎミスも最小限にとどめられます。
5.3. 部品表の自動生成と図面作成の自動化
部品表(BOM)の自動生成は、企業の設計部門にとって大きな負担を軽減する機能です。Routingでは、ルートに配置した部品や長さの情報が自動的に集計されるため、人為的な入力ミスを減らしながら、短時間で正確なBOMが得られます。
また、配管や電気配線の図面化も大きなポイントです。Routingで作成した3Dモデルからアイソメ図や断面図を簡単に起こせるので、複雑な配管ネットワークやワイヤ束の説明が必要な時に、そのまま2D図として整形が可能です。
図面作成にかかる手間が大幅に減れば、設計者の時間を本来のアイデア創出や品質向上の工程に割り当てられます。いわゆる「付帯業務」に取られていた時間が減るのは、企業全体としても大きな裁量の増加につながるでしょう。
このように、自動解析と自動作図によって、設計〜ドキュメント作成に要する手間をクラウドのデータベースとも連動して効率化できる点が、Routingの利点です。
6. SolidWorks Routing導入時の注意点
Routingは非常に便利な機能ですが、スムーズに導入するためにはいくつかの課題や注意点も存在します。特にライブラリの整備や社内標準の確立、そして教育コストへの考慮は欠かせません。
先に述べたように、Routingは自社環境にあわせたカスタマイズを行うことで初めて真価を発揮します。必要な継手やパイプ情報を揃える作業や、電気配線の標準パーツデータを充実させることが肝心です。逆にこれを怠ると、いざ設計で使おうとした時にライブラリ不足で作業が滞る場合があります。
また、社内標準との整合性や運用ルールを定めないまま導入すると、残念ながら混乱を招く恐れがあります。誰がどのデータを追加できるのか、変更管理はどうするのか、こうした運用ルールの確立が安定稼働の鍵となります。
以下では、ライブラリ整備や社内標準の策定、教育コストとルールの重要性について詳しく説明します。
6.1. 専用ライブラリの整備
Routingを導入して成果を出すためには、まず配管・電気配線に関する部品ライブラリをきちんと整備する必要があります。具体的には、パイプ径やフランジ規格、電気コネクタの種類などを自社の仕様に合わせて設定しておくことが重要です。
Routingを使い始めた段階で何もライブラリに登録がないと、アドリブで都度パーツを作成するはめになり、スピードが落ちてしまいます。そこで、過去の設計でよく使った規格品や寸法情報を優先的にライブラリ登録しておくと、導入初期の立ち上がりがスムーズです。
規格品だけでなく、特殊な自作部品やサプライヤーから支給された独自パーツなども登録しておけば、設計プロセス全体で一貫したデータが使えます。これらの整備作業に時間はかかるかもしれませんが、長期的には設計効率を大きく底上げする要因となります。
3DEXPERIENCE Marketplace | PartSupplyを活用すれば、インターネット経由で多種多様な3D部品データをダウンロードできるので、足りない部品を素早く補完できる利点もあります。
6.2. 社内標準との整合性
Routingでの設計情報を全社的に活用するためには、部品命名規則や属性管理などの「社内標準」と整合性を取ることが不可欠です。たとえば、同じ呼び径のパイプがチームによって別々の名称で管理されていると、後から集計やメンテナンスの段階で混乱が起こりやすくなります。
そこで、導入時にプロジェクトリーダーや品質管理担当、設計部門メンバーを交えてルールを策定するのが望ましいでしょう。具体的には、フォルダ構成、ファイル命名規則、ライブラリの更新フローなどを文書化して周知させます。
さらに、他部門が扱うシミュレーションソフトや、BOMシステムともデータ連携を行う場合、属性記入の形式や単位などをそろえておく必要があります。そうすることで、Routing想定外のシステム連携でもスムーズに情報が活用できるようになります。
このように、Routingを活用した効率化はソフトの導入だけで完結するものではなく、社内標準化や運用ルールの整備がセットとなります。
6.3. 教育コストと運用ルールの確立
Routingを使いこなすには、最低限のSolidWorks操作スキルとは別に、配管や電気配線の設計知識を理解できるエンジニアが必要です。しかし、典型的には設計者のスキルセットに大きな差があるため、新しいCAD手法を導入する際は教育コストが発生します。
そのため、導入時にはトライアルや社内研修を段階的に行い、最初は小規模の業務からRoutingを利用していくのが定石です。ある程度ノウハウが蓄積されれば、次のステップとして大規模案件やプラント設計に展開していくことが賢明でしょう。
また、運用ルールの確立も欠かせない要素です。Routingで作成したモデルが複数のエンジニアへ共有される場合、いつどの時点でレビューを行うか、誰が承認するかなどを明確にしなければなりません。そうした仕組みがないと、各人が勝手にモデルを変更して混乱を招く恐れがあります。
とはいえ、最初にしっかりとルールを定めて教育計画を実行すれば、Routingの効果は非常に大きく、設計ミス削減やスピードアップなど多面的なメリットが期待できます。
7. まとめ:Routingで設計の効率と品質を両立
本記事では、配管設計や電気配線設計を効率化する「SolidWorks Routing」について、基礎的な仕組みから実際の活用事例、操作手順、導入時の注意点まで幅広く説明してきました。Routingを導入する最大のメリットは、自動化による作業時間の短縮と、ミスや干渉の発生リスクを低減できる点です。
特に、機械装置内の配管や大型プラントの設計など、複雑なルートを必要とする業種では、3Dモデルを活用した干渉チェックと部品表の自動生成が効果を発揮します。電気設計でもハーネスの取り回しやコネクタ仕様を3Dで確認可能となり、SolidWorks Electricalと連携することで一貫性のある配線情報を管理できるようになります。
ルート作成と3Dスケッチの連動や、標準ライブラリを整備することで、設計部門の作業効率は大幅に上がり、最終的には製品の品質向上へとつながります。ただし、導入にあたってはライブラリ整備、社内標準策定、教育コストの確保などを十分検討し、運用ルールを定めてからスタートすることが望ましいでしょう。
いずれにせよ、SolidWorks Routingは初心者からベテランまで幅広い層にとって、配管・電気配線の自動化設計と効率化を実現する強力なツールと言えます。自社の設計ニーズを踏まえながらぜひ導入を検討し、生産性向上と設計品質の両立という大きな成果を手に入れてください。
ここで紹介したポイントを踏まえ、SolidWorks Routingの活用を通じて、より高い競争力と安定した設計品質を目指していただければ幸いです。
大手ゼネコンBIM活用事例と 建設業界のDXについてまとめた ホワイトペーパー配布中!
❶大手ゼネコンのBIM活用事例
❷BIMを活かすためのツール紹介
❸DXレポートについて
❹建設業界におけるDX

<参考文献>
・SOLIDWORKS ヘルプ「SOLIDWORKS Routing の概要 (SOLIDWORKS Routing Overview) – 2025 – 」
https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/sldpiping/c_routing_overview.htm?verRedirect=1