CAD×生成AI入門|設計業務で役立つプロンプト実例と使い方をわかりやすく解説

1. はじめに

CADは、図面作成をはじめ、さまざまな設計作業を支える重要なツールです。一方、初心者にとってはコマンドや設定が複雑で、操作を覚えるまでに時間がかかることも少なくありません。

近年注目されている生成AIは、自然言語で質問して操作手順を確認したり、コード作成を支援してもらったりと、CAD業務を効率化する手段として活用できます。例えば、AutoCADなどのCADソフトで繰り返し行う定型作業を自動化したい場合、AIにAutoLISPやAPIのコードを提案してもらうことも可能です。

しかし、「どのようなプロンプトを入力すれば、目的に合った回答を得られるのか」「CADの自動化はどこまで実現できるのか」と疑問に感じる方もいるでしょう。本記事では、CAD初心者にもわかりやすく、生成AIを活用してCAD業務を効率化する方法を解説します。

生成AIは便利な技術ですが、すべてのCADモデルを完全に自動で作成できるわけではありません。そこで、CAD操作や情報整理など、具体的にどのような場面で役立つのかを、AutoLISPやAPIの活用例も交えながら紹介します。生成AIを上手に活用して作業時間を短縮し、より創造的な設計に時間を充てていきましょう。

2. CAD業務と生成AIの基本概念

CAD業務には、図面の作成・編集だけでなく、操作方法の調査やトラブルシューティング、情報整理、コードを使った自動化など、さまざまな作業があります。生成AIは、こうした業務において文章やコードを生成し、操作手順の確認や原因調査などを支援できます。

例えば、AutoCADの操作方法を自然言語で質問したり、AutoLISPやAPIのサンプルコードを作成してもらったりする使い方があります。ただし、AIの回答が常に正しいとは限らないため、バージョンや利用環境を確認し、必要に応じて公式ドキュメントと照合することが大切です。

2.1. CADソフトとAIの統合事例

Autodeskが提供する「Autodesk Assistant」は、AutoCADなどの同社製品に組み込まれたAI機能です。AutoCADでは、製品の機能に関する質問やトラブルシューティングに加え、AutoCAD 2027では自然言語によるオブジェクト選択や図面情報の問い合わせ、図面標準のチェックなどにも対応しています。なお、これらAutoCAD 2027の新しい機能はTech Previewとして提供されています (参照*1参照*2)。 

また、SOLIDWORKSではAPIを利用した処理の自動化が可能です(参照*6)。一般的な生成AIサービスでサンプルコードを作成し、CADソフトのAPIドキュメントと照合しながら実際の環境で動作させる方法もあります。 

このように、生成AIやCADソフトに組み込まれたAI機能を活用することで、操作支援や自動化の幅が広がっています。ただし、利用する際は動作確認やバージョンへの適合を確認することが重要です。

3. CAD業務で生成AIを活用する具体的な場面

生成AIが実際のCAD作業をどのようにサポートできるのか、具体的に見ていきましょう。ここでは、主に次の3つの活用場面を取り上げます。

  • 操作方法の調査
  • 設計前の情報整理
  • 定型作業の自動化

前提として重要なのは、一般的な生成AIサービスに指示するだけで、CAD作業のすべてが自動的に実行されるわけではない点です。例えばAutoCAD 2027で画層設定を行う場合、生成AIに「操作手順を教えて」と尋ねる場合と、「AutoLISPコードを書いて」と指示する場合では、得られる回答が異なります。

使用したい機能の目的や、扱っている図面の規模などを具体的に伝えるほど、より的確な回答を得やすくなります。逆に、「CADでレイアウトをきれいに配置してほしい」といったあいまいな指示では、実用的な回答が得られない場合があります。

また、エラーやトラブルが発生したときにAIを活用すれば、考えられる原因をリストアップしてもらうだけでなく、対応策や修正のヒントを得られる可能性があります。それでは、具体的な活用方法を順に見ていきましょう。

3.1. 操作方法の調査とトラブルシューティング

CADソフトには数多くの機能があり、そのすべてを覚えるのは容易ではありません。そこで、操作手順を生成AIに尋ねることで、必要なポイントを手早く確認できます。

例えば「AutoCAD 2027で寸法スタイルを統一する方法を、初心者向けに手順形式で教えてください」といったプロンプトを入力すると、操作手順が箇条書きで提示されることが多いです。

また、トラブルが発生した場合も、「図面が真っ白になる」「外部参照が表示されない」といった症状を具体的に伝え、確認手順や対処方法を尋ねると、原因の候補が段階的にリストアップされる場合があります。確認すべき項目を整理できるため、復旧対応の迅速化につながります。

3.2. 設計前の情報整理

機械部品の3D CADモデルを設計する際は、寸法や材料、公差などを事前に整理しておくことで、失敗を減らせます。生成AIに「この部品を作るために必要な設計条件をリストアップして」と依頼すれば、見落としがちな観点を提案してもらえる場合があります。

例えば「加工方法」「強度要件」「組み立て手順」などについて、考慮すべきポイントをまとめてもらい、それをもとに自社の基準やエンジニアリング要件を確認することで、作図前の段階からリスクを抑えられます。

もちろん、設計に関する最終的な判断は専門家が行う必要があります。生成AIは、あくまで検討の出発点や確認リストを作成するための手段として活用しましょう。

3.3. 定型作業の自動化

CAD業務では、同じ種類の図面を何度も編集・作成するといった定型作業がよくあります。例えば、部品ごとにほぼ同じ形状を再利用するケースや、同じような注釈を繰り返し入力する必要がある場面などです。

こうした作業では、AutoLISPやSOLIDWORKS APIを使った自動化を検討できます。AutoCADには、AutoLISPを利用して作業を自動化・カスタマイズするための環境が用意されています(参照*5)。生成AIに「AutoLISPのサンプルコードを示してください」と指示すれば、スクリプト作成を支援してもらえる可能性があります。 

得られたコードをもとに必要な調整を加えれば、CADの自動化によって繰り返し作業を効率化できるでしょう。なお、実際にエラーなく動作するかどうかは、必ずテストデータを使って検証することをおすすめします。

4. CAD業務で使える生成AIのプロンプト実例

ここでは、日常のCAD作業を想定したプロンプトの作成方法と、具体的な実例を紹介します。初心者でもすぐに応用できるよう、実際に使いやすい形式でポイントを整理しました。

生成AIへのプロンプトでは、目的や条件、希望する出力形式などを具体的に伝えることがポイントです。OpenAIのプロンプトエンジニアリングに関するガイドでも、コンテキストや結果、形式などをできるだけ具体的に指定する方法が紹介されています(参照*7)。  

プロンプトで伝える内容
CADソフトとバージョンAutoCAD 2027
具体的な要件複数の画層をまとめて非表示にしたい
出力形式手順形式、コード+解説
背景・エラー症状外部参照したDWGが表示されない

これらを具体的に伝えることで、生成AIから目的に合った回答を得やすくなります。 

なお、ここで紹介するプロンプトはあくまで例であり、実際の作業環境に合わせて修正して使うことをおすすめします。特にAutoLISPやAPIのコードは、バージョンやライブラリの違いによって動作が変わるため、テストやドキュメントの確認を欠かさないようにしてください。

また、生成AIから出力された情報をすべて鵜呑みにするのではなく、ポイントごとに内容を確認・検証することも大切です。それでは、具体的なプロンプト例を順に見ていきましょう。

4.1. CAD操作のプロンプト例

■実例

「AutoCAD 2027で複数の画層をまとめて非表示にする方法を、初心者向けに手順形式で説明してください。要所で注意点も教えてください。」

ポイント

  • CADソフト名とバージョンを明示する
  • やりたい操作を具体的に伝える
  • 「手順形式」など希望する回答形式を指定する

4.2. トラブルシューティングのプロンプト例

■実例

「AutoCADで外部参照したDWGが表示されません。考えられる原因を優先度の高い順に挙げ、それぞれの確認方法と対処方法を説明してください。」

ポイント

  • 発生している症状を具体的に伝える
  • 原因だけでなく確認方法・対処方法も求める
  • 必要に応じて確認するファイルや設定画面も指定する

4.3. 設計条件整理のプロンプト例

■実例

「機械部品の3D CADモデルを作成する前に、寸法・材料・加工方法・組立・公差の観点から必要な設計条件をリストアップしてください。表形式で出力してください。」

ポイント

  • 寸法・材料・加工方法・組立・公差など観点を指定する
  • 必要な条件を網羅的に整理してもらう
  • 表形式を指定して確認しやすくする

4.4. AutoLISPとAPIのコード作成支援

AutoLISPのプロンプト例

「AutoCAD 2027で使用するAutoLISPを作成してください。ユーザーが複数の円を選択すると、それぞれの直径を取得してコマンドラインに表示する処理にしてください。初心者にもわかるよう、コード内部に解説コメントを入れてください。」

SOLIDWORKS APIのプロンプト例

「SOLIDWORKS 2026 APIを利用して、現在開いている部品ドキュメントをSTEP形式で保存する処理の実装方法を説明してください。使用する主要なAPI名と処理手順の流れも解説してください。」

共通するポイント

  • 使用するCADソフトやバージョンを明示する
  • 実現したい処理を具体的に伝える
  • 必要に応じてコメントや解説も指定する
  • 生成されたコードはテストしてから利用する

生成AIが提案したコードをそのまま本番環境で使用するのは避けましょう。テスト環境と小規模なデータで動作を確認し、バージョンや言語仕様に問題がないことを確かめてから、実際の運用に組み込むことが大切です。

5. プロンプト作成のコツとベストプラクティス

CAD業務で生成AIを活用する際は、使用環境や目的、条件、希望する出力形式を具体的に伝えることが重要です。OpenAIでも、望ましい結果や形式などを具体的に指定することがプロンプト作成のポイントとして紹介されています(参照*7)。 

  • 使用するソフトとバージョン
  • 目的
  • 対象や条件
  • 希望する出力形式

例えば、単に「CADでコードを書いて」と依頼するよりも、「AutoCAD 2027で、複数の円の直径を取得して表示するAutoLISPを作成してください。コードにはコメントも付けてください」と指定する方が、目的に合った回答を得やすくなります。

また、一度の回答で完結させる必要はありません。生成された内容を確認し、不足している条件やエラー内容を追加しながら、対話的にプロンプトを改善していくことも大切です。

例えば、生成されたコードでエラーが発生した場合は、エラーメッセージを伝えて修正方法を尋ねることで、より実用的な回答へと調整できます。

6. 未来のCAD設計:AIによるモデル生成の可能性

今後、CADソフトとAIの連携はさらに進むと考えられます。現在でも、コード作成や操作方法の案内に加え、図面情報を活用した支援や設計作業の自動化など、CAD分野でのAI活用は広がっています。

一方、テキストや画像などから実務で利用できる精密なCADモデルを自在に生成する技術については、現在も研究・開発が進められています。ただし、Neural CADに関連する技術は、すでにFusionのAutoConstrainなど一部のAutodesk製品機能にも活用されています。  こうした技術が発展すれば、設計者の業務プロセスが大きく変わる可能性があります。

ここでは、Autodesk Researchが進めるProject Berniniと、CADのジオメトリを扱うAI技術として開発されているNeural CADを取り上げ、今後の可能性を紹介します。研究・開発中の技術については、現在利用できる製品機能と区別し、最新の公式情報を確認することが大切です。

項目Project BerniniNeural CAD
主な方向性テキストや画像などから3D形状を生成CADジオメトリの生成・理解
入力例 テキスト、画像、点群など テキスト、スケッチなど 
生成する形状・表現 3D形状 B-repなどのCADジオメトリ 
現在の位置づけ研究プロジェクト研究開発・一部技術を製品機能に活用

6.1. Project Berniniの紹介

Project Berniniは、Autodesk Researchが取り組む生成AIの研究プロジェクトで、テキストや画像、点群などの入力から3D形状を生成する技術が研究されています(参照*3)。

現在は研究段階の取り組みであり、一般向けの市販製品として提供されているものではありません。こうした研究は、将来的にCADモデル生成のあり方が変わる可能性を示すものといえるでしょう。

Project Berniniの動向を確認する際は、Autodesk Researchが公開する最新の研究情報を確認することが重要です。

6.2. Neural CADの展望

Neural CADは、Autodeskが研究・開発を進める、CADのジオメトリを扱うAI技術です。Autodeskでは、実際のCADオブジェクトを学習に用い、B-rep(境界表現)と呼ばれる、CADで広く使われる精密な形状表現を生成する研究 を進めています(参照*4)。

また、Autodeskはスケッチやテキストプロンプトから精密なB-rep CADモデルを生成するNeural CADの研究についても公開しています(参照*4)。一方、テキストから実用的なCADモデルを自在に生成する技術については、現在も研究・開発が続けられています。

今後、こうした技術が発展すれば、AIがCADモデルの作成を支援し、設計者が結果を確認・修正しながら完成させるワークフローが広がる可能性があります。

7. 生成AI利用時の注意点

生成AIをCAD業務で利用する際は、特に次の3点に注意が必要です。

  • AIの回答をそのまま設計根拠にしない
  • 機密情報の取り扱いルールを確認する
  • CADやAPIのバージョンを確認する

7.1. 設計根拠としてのAI回答の取り扱い

生成AIは誤った情報を出力する可能性があるため、最終的な設計根拠には公式資料や一次情報を用いることが不可欠です。

寸法や公差などの小さな誤りでも、大きなトラブルにつながる恐れがあります。そのため、AIの回答はあくまで「参考意見」と捉え、必ずエンジニア自身が内容を確認しましょう。

設計だけでなく、部品強度や安全基準などについて質問する場合も同様です。AIの提案を参考にしながら、詳細な確認や判断は専門家が行うという使い分けが重要です。

7.2. 機密情報の取り扱いとセキュリティ

企業によっては、「CAD図面を外部クラウドにアップロードしない」といった社内ルールを設けている場合があります。外部の生成AIサービスを利用する際は、設計データや顧客情報などを入力してよいか、あらかじめ自社のセキュリティポリシーを確認することが重要です。

特に未公開の製品仕様や機密性の高い情報を扱う場合は、利用する生成AIサービスのデータ保存やモデル改善への利用方針などを確認しましょう。入力データの取り扱いはサービスや契約プラン、設定によって異なるため、一律に判断することはできません。

必要に応じて、企業向けのセキュリティ機能を備えたサービスを利用したり、機密情報を入力しない範囲に用途を限定したりするなど、自社のルールに合った運用方法を検討することが大切です。

7.3. CADとAPIのバージョン確認

AIが提案するコードが、必ずしも最新のAPI仕様に対応しているとは限りません。過去のバージョンでのみ使用できる関数が含まれている場合もあります。

AutoCADやSOLIDWORKSなどのCADソフトは新しいバージョンが公開されるため、細かな仕様や関数名が変わることがあります。使用しているバージョンの公式ドキュメントと照合し、互換性を確認してください。

エラーが発生した場合は、バージョンの違いも確認したうえで、生成AIに回答の修正を依頼するのも一つの方法です。AIの回答をそのまま採用せず、公式情報との照合や動作確認を行いながら、安全に活用していきましょう。

8. まとめ

生成AIを活用することで、CAD操作の疑問解消や情報整理、トラブルシューティング、コード作成支援など、設計業務のさまざまな場面で効率化を図れます。

より的確な回答を得るためには、使用するソフト名やバージョン、やりたいこと、条件、出力形式などを具体的に伝えることが大切です。さらに、AutoLISPやAPIと組み合わせることで、CAD業務の自動化にも活用できます。

一方、AIが示す情報には誤りが含まれる可能性があるため、公式情報との照合や動作テストを行い、安全性を確認することが重要です。将来的には、Project BerniniやNeural CADなどの技術がさらに発展し、テキストやスケッチからCADモデルを生成するワークフローが広がる可能性があります。Project Berniniは現在も研究段階ですが、Neural CADでは関連技術の一部がすでにAutodesk製品の機能に活用されています。 

まずは生成AIを身近なCAD業務から活用し、作業の負担を減らしながら、より創造的な設計に時間を充てていきましょう。

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<参考文献>

(*1) AutoCAD ヘルプ | Autodesk Assistant | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/ACD/2027/JPN/?guid=GUID-99E2D8F7-D4D9-4B3A-9E57-7B73D6BB12AD

(*2) Autodesk Assistant | エージェント型 AI パートナー
https://www.autodesk.com/jp/solutions/autodesk-ai/autodesk-assistant

(*3) Project Bernini
https://www.research.autodesk.com/projects/project-bernini

(*4) Neural CAD and the next era of design innovation
https://www.autodesk.com/design-make/articles/neural-cad

(*5) AutoCAD 2027 ヘルプ | はじめに(AutoLISP) | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/ACD/2027/JPN/?guid=GUID-A0E9D801-8BE9-4BF1-85E8-3807E15F3B71

(*6) Welcome - 2026 - SOLIDWORKS Design Help
https://help.solidworks.com/2026/English/api/sldworksapiprogguide/Welcome.htm

(*7) OpenAI API によるプロンプトエンジニアリングのベストプラクティス | OpenAI Help Center
https://help.openai.com/ja-jp/articles/6654000-best-practices-for-prompt-engineering-with-the-openai-api