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意匠設計×AIで効率化を図る

今日のデジタル時代において、技術とデザインは密接に連携して、新たなビジネスの可能性を探求しています。その中でも、意匠設計と人工知能(AI)の融合は、新たなアイデアや革新的な解決策を生み出す有望な領域として注目を集めています。この記事では、AIと意匠設計の概要についてとその2つを組み合わせたときにどのような効果があるかについて、実例を含めて紹介していきます。

この記事でわかること
・AIとは
・意匠設計とは
・意匠設計とAIを組み合わせたときの効果

AIとは何か

人工知能(AI: Artificial Intelligence)とは、文字通り「人工的に作られた知能」を指します。簡単に言えば、人間の脳が持つような学習や判断、推理などの機能を、機械やソフトウェアに実装しようとする技術や学問領域のことを指します。近年のデジタル変革の中心として注目されているAIですが、総務省の28年版情報通信白書(*1)によると『第一次人工知能(AI)ブームは、1950年代後半~1960年代である。』とされており、この領域の研究は数十年前から行われてきました。

AIの種類

 463文字

AIは、大きく「強いAI」と「弱いAI」の2つに分類されます。
1つ目の「強いAI」とはIBMによると、汎用人工知能(AGI)または汎用AIと呼ばれている人間と同等の知能を持ったAIです。現在の技術では完璧な汎用人工知能は実現されていません。
2つ目の「弱いAI」は、『狭義のAIとしても知られ、ユーザーの入力に基づいて質問に答えたり、チェスをするなど、特定のタスクを実行することに焦点を当てています』しています。また、自動運転やSiriは「弱いAI」であるとされています。(*2)

現在、話題となっているChatGPT(3)はどちらに分類されるのか議論が行われており、今年の3月22日にはMicrosoftの研究チームが論文(4)を発表しました。
その論文(*4)では、ChatGPT-4は言語処理だけでなく、数学、コーディング、医学、法律、心理学にまたがる難しいタスクを処理するパフォーマンスは人間のレベルと驚くほど近いとし、ChatGPT-4は未完成ではあるが、汎用人工知能(AGI)の初期バージョンと考えるのが妥当であると考えています。

また、AIは知能やできることに応じてレベル分けされています。
『表1は「建築設計のアルゴリズム化を考慮した小規模意匠設計事務所における設計業務実態の分析」(*5)においてAIの発展段階、段階の呼称、発展内容についてまとめたものです。』

表1 AI発展段階 (*4より引用)

意匠設計とは

意匠設計とは、施主からの要望を聞き取り、実用性とデザイン性の両方を意識し建物の形状を設計する業務です。首都圏を中心に、全国各地の様々な建物の設計を手掛けている株式会社アトラス設計(*5)によれば『その範囲は大きく、敷地条件や周辺環境の中での建物配置、個々の空間・部屋の構成、内部の造作や装飾までに至ります。』とされています。

意匠設計の仕事は大きく分けて基本設計と詳細設計の2つです。基本設計とは、施主から要望を聞き取り、それを反映し大まかな形状や間取りを表現する仕事です。詳細設計とはコンセントやスイッチの高さ、位置などの細かな部分を決定し、図面にする仕事になります。

意匠設計に携わるためには建築士の資格が必要であり、規模や用途によって木造建築士、二級建築士、一級建築士と分かれています。木造建築士は名前の通り木造建築物の設計をすることができます。二級建築士は木造に限らず設計をすることができますが、小規模の建築物に限られます。一級建築士はほとんどの建築物を設計することができます。

意匠設計とAI

意匠設計は、製品やサービスの見た目や使いやすさを設計するプロセスです。AIはこのプロセスを強化し、改善する能力を持っていると考えられます。たとえば、AIは大量のデータからパターンを見つけ出し、最適なデザインソリューションを提案することができます。

実際にStable Diffusion Online(*7)を使用して「white apartment building」と入力すると、図1のような画像が生成されます。

図1. Stable Diffusion Onlineで生成した画像1

図1で使用したテキストに「illustration-style」と追加すると図2のようなイラスト風の画像が生成されます。

図2. Stable Diffusion Onlineで生成した画像2

この例ではかなり簡単な単語を並べただけなので、高度な画像は生成されませんでしたが、入力する単語を変えて何度か試し調整していくことで高度なデザインの画像を生成することができると考えられます。
また、一度の入力で4枚の画像を生成することができるので施主の要望を瞬時に画像として作成して見せるといった使い方ができそうです。

2019年6月に発表された論文(5)では、建築設計業務をAIに置き換えるためには、最低でも表1のLEVEL4-4以上(複合的な概念を処理できる段階)の技術達成がなされない限り劇的な変革はもたらされないとされていました。 ChatGPTはある程度の言語理解を実現していると言えます。また、Midjourney(8)などの画像生成AIはディープラーニングを用いた画像認識がベースにあります。これらを私たち一般人が使える2023年現在は、すでにその劇的な変革がもたらされていると言えるのではないでしょうか。

AIによる設計初期段階のデザイン検討支援システム「AiCorb®」

ここでは大林組技術研究所が開発したデザイン検討支援システム「AiCorb®」(*9)について紹介します。
このシステムは、デザイン案作成時のアイディア検討や3Dモデル作成などの手間と時間がかかる作業の効率化を目的としています。

AiCorbは、スケッチなどの無数のファサードデザイン画像(建物を正面から見た外観のデザイン画像)を生成するAIと、入力されたファサード画像を模した3Dモデルを生成するAIの2つで構成されています。
ファサードデザイン画像を生成するAIを使用すると図3左の入力画像から図3右の生成結果のような画像を生成することができます。

図3. ファサード生成AIによる生成例(*9より引用)

3Dモデルを生成するAIを使用すると、図4のような3Dモデルを作成することができます。

図4. 3D変換AIにより入力画像を反映した3Dモデル(*9より引用)

両方とも少し違和感はありますが、上下左右が反転していたりするような大きな違和感はありません。
また、大林組技術研究所はAiCorbの改善を今後も継続して行うとしているため、実際の業務にAiCorbが導入される未来も遠くはないのかもしれません。

まとめ

この記事では意匠設計とAIはどのように組み合わせることができるのかについて解説しました。
意匠設計とAIを組み合わせることで、デザイナーが創造性を最大限に発揮し、ユーザーエクスペリエンスを向上させるような新しい方法の発見に繋がると考えられます。未来のデザインはAIの活用によってよりパーソナライズされ、効率的で、革新的になる可能性を秘めています。その一方で、技術の進歩とともに、その倫理的側面や社会への影響も考慮していく必要があります。AIの未来は、私たち人間がどのようにそれを導入・利用していくかにかかっています。

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■参考サイト

*1 総務省 政策白書 平成28年版 第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~ 第2節 人工知能(AI)の現状と未来

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc142120.html

*2 強いAIとは

https://www.ibm.com/jp-ja/topics/strong-ai

*3 ChatGPT

https://openai.com/chatgpt

*4 Sparks of Artificial General Intelligence: Early experiments with GPT-4

https://arxiv.org/abs/2303.12712

*5 建築設計のアルゴリズム化を考慮した小規模意匠設計事務所における設計業務実態の分析

https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijt/25/60/25_863/_pdf

*6 意匠設計とは

http://atlas-group.co.jp/意匠設計/意匠設計とは/

*7 Stable Diffusion Online

https://stablediffusionweb.com/

*8 Midjourney

https://www.midjourney.com/home/?callbackUrl=%2Fapp%2F

*9 AIによる設計初期段階のデザイン検討支援システム「AiCorb®」

https://www.obayashi.co.jp/technology/shoho/086/2022_086_02.pdf

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