CAD業務をBPO・外注する方法|メリット・注意点・導入事例を解説
1. はじめに
企業の設計部門では、図面の作成や修正といった定型業務に加え、データ整理や技術ドキュメントの作成など、さまざまなCAD業務が発生します。
しかし、案件の増加やCAD人材の確保が難しい状況では、社内のリソースだけですべての業務に対応できないケースもあります。特にプロジェクトマネージャーにとって、設計者が本来取り組むべきアイデアの検討や設計業務に十分な時間を確保できないことは、大きな課題の一つです。
こうした課題への対応策として挙げられるのが、CAD業務の外注やBPO(Business Process Outsourcing)です。業務プロセスの一部を外部へ委託することで、必要なリソースを確保し、人手不足への対応や作業の標準化につなげることが期待できます。
本記事では、CAD業務のBPO・外注の仕組みから、メリットや注意点、実際の導入事例まで順を追って解説します。図面作成やCADデータ化などの定型業務を外注する方法を知り、設計者がコア業務に集中できる体制づくりの参考にしてください。
2. CAD業務のBPO・外注とは

CAD業務では、図面作成など特定の作業を外注する方法に加え、一定の業務プロセスをBPOとして外部へ委託する方法があります。BPOの導入にあわせて業務フローを整理し、標準化や効率化を進めるケースもあります。
ここでは、CAD業務におけるBPOの考え方と、一般的な外注との違いを整理します。
2.1. BPOの基本とCAD業務への適用
BPO(Business Process Outsourcing)とは、自社の業務プロセスを外部企業へ委託することです。たとえば、トランスコスモスの「設計プロセスDXサービス」では、設計データ作成や出図前チェックの自動化、技術ドキュメント作成など、幅広い工程を対象としています(参照*1)。
CAD・設計業務をBPOする場合は、業務フローを整理したうえで、一定の業務プロセスを外部へ委託します。これにより、社内業務の可視化や標準化、効率化につなげることができます。
一方、委託する範囲が広いほど、外部と連携しながら品質やスケジュールを管理することも重要です。
2.2. 外注とBPOの違い
外注とBPOは、いずれも業務を外部へ委託する方法です。本来、両者に明確な意味の違いはありませんが、一般的には次のように使い分けられることがあります。
| 項目 | 一般的な外注 | BPO |
| 主な委託対象 | 特定の作業や業務の一部 | 一定の業務プロセス |
| CAD業務の例 | 図面修正、CADデータ作成など | 設計データ作成からチェック、関連ドキュメント作成までの一連の業務など |
| 委託範囲 | 部分的な業務を依頼する場合が多い | 複数の関連業務をまとめて委託する場合がある |
実際には両者を明確に線引きできないケースもあるため、自社の課題や委託したい業務範囲に応じて選ぶことが重要です。
3. BPO・外注できる主なCAD業務
CAD業務を外注する際は、まずどの業務をアウトソーシングできるか整理する必要があります。代表的な委託対象は、次の三つです。
| 業務 | 主な内容 |
| CAD図面の作成・修正 | 2D図面の作成、トレース、修正 |
| CADデータの作成・データ化 | 紙・手書き図面のCAD化、点検資料からのデータ作成 |
| 設計関連の定型業務 | 関連ドキュメント作成、出図前チェックの自動化、データ整理 |
いずれも比較的定型化しやすく、ルールを明確にすることで外部へ委託しやすい業務です。一方、ノウハウが必要な業務は社内で担当するなど、柔軟に切り分けることもできます。
以下では、それぞれの業務について詳しく見ていきましょう。
3.1. CAD図面の作成・修正
まず依頼しやすいのが、AutoCADなどを使った2D図面の作成やトレース、修正です。手書きの設計案や紙で保管されている古い資料をCADデータ化する作業も、比較的定型化しやすい業務です。
たとえば、製造業や建築では、設計図面の精度を保ちながら短時間で大量のデータを処理する必要がある場合があります。このようなときに外部パートナーを活用すれば、社内の設計者は、より高度な企画開発業務に時間を充てやすくなります。
また、図面の修正や追記を繰り返す場合は、委託先との綿密なコミュニケーションが重要です。修正内容を明確にし、納期や品質基準を事前に合意しておくことで、作業をスムーズに進めやすくなります。
こうした工程を外部へ委託することで、人手不足への対応にもつなげられるでしょう。
3.2. CADデータの作成・データ化
紙図面や手書きで記入された図面をCADデータ化する作業や、点検資料をもとに指定フォーマットのCADデータを作成する業務なども外注できます。
たとえば、アンドファンの「建設業界向けCADデータ作成」では、手書きで記入された図面のCAD化や、橋梁インフラの点検調書のCAD化に対応しています。 また、野帳や写真データなどから指定フォーマットのデータを作成することも可能です(参照*4)。
このような定型的なデータ作成を外部へ委託することで、社内の設計者は確認や設計判断などの業務に時間を使いやすくなります。ただし、CADデータ化では、作成後の図面が指定した仕様やフォーマットを満たしているか確認することが重要です。あらかじめ作成ルールやチェック項目を委託先と共有しておきましょう。
3.3. 設計関連の定型業務
設計プロセスDXの観点では、図面作成だけでなく、設計データの作成や出図前チェックの自動化、技術ドキュメントの作成などもBPO・外注の対象となります。トランスコスモスの「設計プロセスDXサービス」でも、こうした設計関連業務を対象としたアウトソーシング・BPOを提供しています(参照*1)。
たとえば、点検調書や検査報告書などをまとめて作成・管理する業務は、ルールが明確であるほど外部へ依頼しやすくなります。その結果、社内では高度な設計判断や問題解決に集中できる体制を整えやすくなります。
また、CAD業務に付随するデータ整理や命名ルールの設定、ファイル構成の最適化なども、外注によるメリットが期待できる部分です。定型作業を外注することで、設計担当者の時間を企画立案へ振り向けやすくなります。
このように、定型化できる業務を適切に外部へ切り出すことで、より重要なコア業務へシフトしやすくなるでしょう。
4. CAD業務をBPO・外注するメリット

CAD業務の外注やBPOには、設計者の負担軽減や人手不足への対応、業務の標準化などのメリットがあります。以下では、三つの観点から見ていきます。
4.1. コア業務への集中と効率化
図面のトレースやデータ作成など、定型的なCAD業務を外部へ委託することで、設計者は企画や設計判断などのコア業務に時間を使いやすくなります。
また、社内リソースをほかの重要な業務へ振り分けることで、業務全体の効率化にもつながります。
4.2. 人手不足と繁忙期の対応
外部パートナーを活用することで、CAD人材が不足している場合や、繁忙期の急な業務増加にも対応しやすくなります。
案件が増えた時期に外注を増やし、閑散期には依頼を減らすなど、業務量に応じて調整することも可能です。定型作業を外注すれば、社内メンバーが優先度の高い業務に集中しやすくなります。
4.3. 業務の標準化とプロセス改善
外部へ業務を委託する際には、作業手順や品質基準、納品形式などを整理する必要があります。
その過程で、属人的だったCAD業務をマニュアル化し、誰でも再現しやすい仕組みに整えられます。命名ルールやチェックリストを明確にすることで、ミスや認識のずれを減らすことも期待できます。
このように、BPO・外注は、業務の標準化やプロセス改善につながる場合があります。
5. CAD業務をBPO・外注する際の注意点
ここでは、CAD業務の外注やBPOを検討する際に注意したいポイントを整理します。どれだけ外注のメリットが大きくても、品質やセキュリティが十分に確保されていなければ、本来の効果は得にくくなります。
また、CAD業務の内容によっては、一定の業界知識が求められるため、必要なスキルを持つパートナーを選ぶことが重要です。たとえば、建築物検査会社がCAD業務を委託する場合には、対象業務に応じて建築に関する専門知識が必要になることがあります。
CAD業務をBPO・外注する際は、主に次の点を確認することが重要です。
- 外注する業務範囲を明確にする
- 業界知識やCADスキルを確認する
- 品質管理のルールを決める
- セキュリティ対策を確認する
以下では、それぞれの注意点を詳しく見ていきます。
5.1. 外注業務の範囲の明確化
まず重要なのは、どの業務を社内に残し、どの業務を外部へ任せるのかを明確にすることです。業務範囲が曖昧なままだと、後から「これは外注範囲外」といったトラブルが起こる可能性があります。
たとえば、設計判断が必要な部分は社内で対応し、図面の訂正やCADデータ化など、定型化しやすい部分を外注するといった線引きが考えられます。
外注先と役割分担を共有し、納品物の内容や修正回数、納期などを事前に話し合っておくことで、作業をスムーズに進めやすくなります。
特に、業務プロセスをまとめて委託する場合は、作業フロー図を作成し、「ここまでは社内」「ここからは外部」と分かりやすく示しておくとよいでしょう。
5.2. 業界知識とCADスキルの確認
CAD業務の内容によっては、ソフトの操作スキルだけでなく、業界固有の仕様や専門用語への理解が求められます。たとえば、建築関連の図面を扱う場合には、対象業務に応じて建築仕様や構造物、専門用語などに関する知識が必要になることがあります。
実際、アンドファンが紹介する建築物検査会社の事例では、それまで利用していた委託先について、日本の建築仕様や用語への理解が進まず、手直しが多かったことが課題として挙げられています。また、構造物や専門用語への理解が重要なポイントとされています(参照*5)。
そのため、外注先を選ぶ際は、CADソフトの操作スキルだけでなく、自社の業界や対象業務に関する経験も確認するとよいでしょう。また、使用しているCADソフトやバージョン、データ形式に対応できるかも事前に確認することが重要です。
必要に応じてサンプル作業を依頼し、求める品質に対応できるか確認する方法もあります。
5.3. 品質管理の方法の設定
BPOや外注を円滑に進めるには、品質管理のルールを明確にする必要があります。事前にチェックリストやファイルの命名ルール、納品フォーマットなどを決め、修正対応の回数や期間についても合意しておきましょう。
また、定期的なミーティングやレビューの場を設け、疑問点や変更内容を早めに共有することで、エラーや認識のずれを減らしやすくなります。たとえば、担当者同士が直接やり取りできる環境を整えることで、連絡の行き違いによる作業ミスを抑えられます。
さらに、品質管理の指標として「エラー率」や「納品遅れの回数」などを設定すると、委託範囲内で改善を進めやすくなります。
納品後にそのまま利用できる状態まで確認しておくことで、社内での再確認にかかる時間も抑えやすくなります。
5.4. セキュリティ対策の確認
CAD業務では、製品や建築物などに関する重要な設計情報を外部へ提供する場合があります。そのため、委託先のセキュリティ対策を事前に確認することが重要です。
IPAは、ビジネスパートナーや委託先を含めたサイバーセキュリティ対策の状況を把握することを示しています。また、ビジネスパートナーなどとの契約では、サイバーセキュリティリスクへの対応について、役割と責任範囲を明確にすることも求めています(参照*3)。
CAD業務を外注する場合も、委託先のセキュリティ対策を確認するとともに、データの取り扱い方法や利用範囲、問題が発生した際の責任範囲などを事前に整理しておくことが大切です。
秘密保持契約(NDA)などについても、自社の情報管理ルールに沿って必要性を検討しましょう。
6. CAD業務のBPO・外注事例

ここでは、実際にCAD業務や設計業務をBPO・外注した企業の事例を紹介します。どのような課題を抱え、どのような方法で解決したのかを知ることで、自社で導入する際のイメージをつかみやすくなるでしょう。
事例を見ることで、BPO・外注によるメリットや、導入時の注意点への対応方法も具体的に理解できます。組織体制や業界が異なる場合でも、自社へ応用できるヒントが見つかるはずです。
以下では、大手企業と建築関連会社の二つの事例を取り上げます。それぞれの取り組みから、CAD・設計業務を外注する際のポイントを確認していきましょう。
まずは、ブリヂストンの導入事例から紹介します。
6.1. ブリヂストンの設計業務BPO事例
ブリヂストンでは、設計者がドキュメント作成や大量のデータ転記などに追われ、慢性的な工数不足が発生していました。また、設計ノウハウが個々の設計者に蓄積され、業務の可視化や標準化が進みにくいことも課題となっていました(参照*2)。
トランスコスモスは、既存のドキュメントを整理し、設計業務を作業レベルまで分解したうえで、マニュアルや作業手順書として整備しました。標準化した設計業務にはBPOセンターを活用しています(参照*2)。
その結果、不備や手戻りの減少などにより、設計開発業務を約15%効率化し、設計者の年間38,000時間を企画開発領域へシフトしたとされています。なお、年間38,000時間は2019年3月末時点の実績値です(参照*2)。
この事例からは、設計関連業務を外部へ委託する際には、業務を可視化・標準化し、社内と委託先の役割を整理することが重要だとわかります。
6.2. 建築物検査会社のCAD外注事例
アンドファンが紹介する建築物検査会社の事例では、損傷データのCAD化や、国仕様の検査帳票の作成を外部へ委託しています(参照*5)。
導入前は、それまで利用していた委託先で日本の建築仕様や専門用語への理解が進まず、手直しが多いことが課題となっていました。アンドファンへの委託後は、作業を重ねることで用語への理解が進み、メンバーの定着によって満足できる品質を確保できたとしています。また、指定フォーマットにも対応しています(参照*5)。
この事例から、CAD業務を外注する際には、ソフトの操作能力だけでなく、対象業務で使われる仕様や専門用語への理解も重要であることがわかります。
7. まとめ
本記事では、CAD業務をBPO・外注する方法やメリット、注意点、導入事例について解説しました。CADオペレータ不足や業務負荷の分散に対応するだけでなく、設計プロセス全体の効率化や標準化を進める手段としても活用できます。
一方、BPOや外注の効果を十分に引き出すには、委託する業務範囲や品質管理のルール、セキュリティ対策をあらかじめ整えておくことが重要です。こうした条件が曖昧なままでは、期待した効果を得にくくなる可能性があります。
プロジェクトマネージャーは、まず自社の業務から定型化しやすい部分を見極め、外注先の業界知識やCADスキルを確認したうえで、役割分担を明確にすることが大切です。適切に業務を切り分けることで、設計者がコア業務に集中しやすくなり、人手不足への対応や業務の標準化にもつながります。
自社の課題や業務内容に合わせて適切なアウトソーシングを検討し、設計者が企画開発領域により多くの時間を使える体制づくりにつなげていきましょう。
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<参考文献>
(*1)設計プロセスDXサービス | BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) | トランスコスモス
https://www.trans-cosmos.co.jp/bpo/design.html
(*2)株式会社ブリヂストン 導入事例 トランスコスモス
https://www.trans-cosmos.co.jp/customercase/customer/bridgestone.html
(*3)指示9 ビジネスパートナーや委託先等を含めたサプライチェーン全体の状況把握及び対策 | 情報セキュリティ | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
https://www.ipa.go.jp/security/economics/practices_navi/practice236.html
(*4)建設業界向けCADデータ作成 | アンドファン株式会社
https://www.and-fun.com/bpo/cad/
(*5)実績紹介 | アンドファン株式会社
https://www.and-fun.com/case/
