BIMマネジメントを外部委託する方法|委託できる業務・メリット・注意点を解説

1. はじめに

建築DXや建築GXの取り組みが進むなか、BIM(建築情報モデリング)は、建設プロジェクトにおける情報管理を支える技術として注目されています。

BIMを導入すると、BIMソフトウェアを使ってモデルを作成する「BIMモデリング」だけでなく、複数のBIMモデルの統合や干渉チェック、関係者間で情報を共有するためのルール整備など、さまざまな管理業務が必要になります。こうした一連の取り組みは「BIMマネジメント」と呼ばれますが、すべてを社内だけで担うのは容易ではありません。

その背景には、BIMを活用できる人材の不足や、BIMの導入・運用に伴う担当者の負担が課題となるケースがあります。国土交通省が2025年1月に建築BIM推進会議の設計・施工等13団体を対象に実施した調査では、BIM導入済みの回答254件のうち、BIMを活用する人材が「やや不足している」「不足している」と回答した割合は合計80.7%でした。(参照*1)こうした人材面の課題も、BIMマネジメントの体制を検討するうえで重要なポイントです。 

こうした背景を踏まえると、BIMマネジメントを外部へ委託し、BIM外注サービスを活用することも選択肢の一つです。本記事では、BIMマネジメントを外部委託する方法や委託できる業務、メリット、注意点についてわかりやすく解説します。

2. BIMマネジメントとは

BIMマネジメントとは、BIMを活用するプロジェクト全体を円滑に進めるため、モデルや情報、関係者間の調整などを管理する業務です。複数の関係者が作成したBIMモデルの統合や干渉チェック、BIM関連会議への参加、情報共有や運用ルールの整備などが含まれます。

国土交通省「令和8年度 建築GX・DX推進事業 募集要領」では、BIMマネジャーについて、各事業者が作成したBIMモデルの管理など、BIM全体の運営を担う役割として整理しています。(参照*2)具体的な業務には、BIMモデルの統合・干渉チェック・調整・修正、BIMに関する定例会議への出席、モデル調整のための打ち合わせ、発注者との合意形成に用いる資料作成などがあります。  

BIMマネジメントには、BIMの技術だけでなく、設計や施工工程への理解も求められます。プロジェクト全体を見渡しながら、関係者が共通の情報を活用できるよう調整することが重要です。

2.1. BIMモデリングとの違い

BIMモデリングとは、BIMソフトウェアを使って建物の3次元モデルや関連情報を作成する作業を指します。具体的には、部材の形状や材質、設備の配置など、建築に必要な情報をモデル上に反映する業務です。

一方、BIMマネジメントは、作成されたモデルを統括・管理し、複数の事業者や部署が作成したBIMモデルを統合する役割を担います。つまり、BIMモデリングが個々のモデル作成を中心とするのに対し、BIMマネジメントはプロジェクト全体のBIM運用を俯瞰して管理します。

項目BIMモデリングBIMマネジメント
主な役割BIMモデルや関連情報を作成するBIM活用全体を管理・調整する
主な業務3Dモデル作成、部材・設備情報の入力などモデル統合、干渉チェック、会議・調整、運用ルール整備など
対象範囲個別のモデル作成が中心プロジェクト全体のBIM運用
関係者との連携モデル作成に必要な範囲で連携する複数の事業者や部署との調整を行う

BIMモデリングとBIMマネジメントの役割を分けて考えることで、外部委託する業務の範囲も整理しやすくなります。 

3. BIMマネジメントを外部委託する理由

BIM導入のメリットを十分に活かすためには、プロジェクト全体を俯瞰しながら調整するBIMマネジメントが重要です。しかし、BIM技術に詳しい人材が不足していたり、特定の担当者に業務が集中して負担が大きくなったりするケースもあります。

こうした状況では、外部のBIM専門会社やBIMコーディネーターに協力を依頼することも、有効な選択肢の一つです。国土交通省でもBIMに関する施策が進められており、社内だけでは対応しにくい業務を補う方法として、BIM関連業務の外部委託を活用することが考えられます。

また、外部委託によって業務効率化やコスト面での効果だけでなく、プロジェクトの品質向上やスケジュール管理につながる場合もあります。建築DXの取り組みが進むなか、BIMマネジメントを外部委託することで、必要な技術を取り入れながら、品質確保やリスク管理を進めやすくなります。

ここでは、BIMマネジメントを外部委託する方法や、プロジェクトへの取り入れ方を解説します。また、すべての業務を外部に任せるのではなく、必要な範囲だけを委託する方法についても見ていきましょう。

3.1. 外部委託の方法と選択肢

BIMマネジメントの外部委託では、BIMマネジャーが担う業務を外部の事業者へ依頼するほか、BIMモデルの統合や干渉チェックなど、必要な業務だけを切り分けて委託する方法もあります。委託範囲は、プロジェクトの体制や契約内容によって異なります。

国土交通省の「令和8年度 建築GX・DX推進事業」では、BIMマネジャーの業務を他の事業者へ委託するケースが想定されています。(参照*2)また、同事業の体制イメージでは、BIMマネジャーについて社内配置または外部委託とする体制が示されています。(参照*3) 

委託方法内容向いているケース
BIMマネジメント業務をまとめて委託モデル管理や調整、会議支援などを外部へ依頼する社内にBIM管理を担える人材が少ない場合
一部業務を委託モデル統合や干渉チェックなど特定業務だけを依頼する社内でBIM運用の方針や判断を担える場合
社内と外部の共同体制社内が方針・判断を担い、専門業務を外部が支援するノウハウを社内に残しながら外部支援を活用したい場合

どの方法を選ぶ場合でも、自社のBIM体制や社内に残したい業務を踏まえて、委託範囲を決めることが重要です。 

4. 外部委託できる主なBIMマネジメント業務

BIMマネジメントでは、業務内容に応じて必要な部分だけを外部へ委託できます。主な対象として、次の3つが挙げられます。

  1. BIMモデルの統合・干渉チェックなどの確認業務
  2. BIM関連会議や関係者間のプロジェクト調整
  3. BIM環境や運用ルールの整備

実際に委託する際は、委託先の専門分野や契約範囲を確認し、期待する成果やスケジュールを事前にすり合わせておくことが重要です。

4.1. BIMモデルの統合と確認

複数の設計者や施工者が作成したBIMモデルをまとめ、整合性を確認する作業は、BIMマネジメントの重要な業務です。モデルを組み合わせた際に、空調や配管が建物の構造体と干渉していないかを確認する「BIM干渉チェック」は、施工時の不具合を防ぎ、プロジェクト全体の品質向上につながります。

この統合プロセスでは、BIMモデルを統合するための専門ソフトウェアや、クラウド上のCDE(共通データ環境)を使ってデータをやり取りします。外部委託先がこうしたツールの扱いに慣れていれば、整合性の確認作業を効率よく進められます。

また、BIMモデルを更新する過程でずれが生じる可能性もあるため、定期的に確認することが重要です。こうした業務を外部へ委託することで、社内チームは設計判断やスケジュール管理などのコア業務に集中しやすくなります。

干渉チェックの結果をレポートにまとめる場合は、誰が修正するのか、いつまでに対応するのかを明確にする必要があります。こうした調整を外部の専門家に任せることで、関係者間のやり取りを整理し、プロジェクトを円滑に進めやすくなります。

4.2. プロジェクト調整業務

BIMマネジメントでは、プロジェクト全体の進行やBIM関連会議の支援など、関係者間の調整も重要な業務です。たとえば、定期的な打ち合わせで、BIMモデルから見つかった問題点を整理し、関係者間の合意形成を支援する役割が求められます。

こうした業務に外部委託を活用すれば、設計・施工双方の視点を踏まえながら、打ち合わせや調整を進めやすくなります。BIMコーディネーターやBIMマネジャーの専門知識を活用することで、論点を整理し、業務を効率的に進めることにもつながります。

国土交通省「令和8年度 建築GX・DX推進事業 募集要領」では、BIMマネジャーの業務として、BIM関連の定例会議への出席、BIMモデル調整のための打ち合わせ、打ち合わせ資料の準備、発注者との合意形成に用いる資料作成などが挙げられています。(参照*2)BIMマネジャー業務を外部委託する場合は、契約範囲に応じて、こうしたプロジェクト調整に関する支援を依頼することも考えられます。 

ただし、どこまで外部へ委託できるかは、委託先や契約内容によって異なります。そのため、事前に業務範囲や責任分担を明確にしておくことが重要です。

4.3. BIM環境と運用ルールの整備

BIM運用ルールやモデル作成ルールの策定は、社内外の関係者が共通の基準でBIMを活用するための基盤となります。ファイルの命名規則やデータ連携の手順、セキュリティポリシーなどを整備しておくことで、情報の混在を防ぎ、トラブルを避けやすくなります。

また、BIM環境の整備では、CDEプラットフォームの導入やBIMソフトウェアのライセンス管理なども重要です。誰がどのタイミングでデータを更新できるのか、バックアップの頻度をどうするのかといった点を明確にすることで、BIMデータを管理しやすくなります。

こうしたルールづくりを外部委託先に相談することで、これまでの実績を踏まえた運用方法を取り入れやすくなります。BIM専門会社が多くの事例を経験していれば、実務に適したルールづくりを支援してもらえる可能性があります。

ただし、外部委託先が対応できる範囲は契約内容によって異なります。自社が必要とする運用サポートに対応できるかどうかを、事前に確認しておくことが大切です。

5. BIMマネジメント外部委託のメリット

BIMマネジメントを外部委託する主なメリットは、社内担当者の負担を軽減できることと、外部の専門知識を活用できることです。

5.1. 担当者の負担軽減とコア業務への集中

BIMマネジメントでは、モデルの整合性確認や関係者間の調整、資料作成など、時間を要する業務が発生します。こうした業務の一部を外部へ委託すれば、社内担当者の負担を軽減し、設計や施工に関する判断、品質管理などのコア業務に時間を充てやすくなります。

限られた人材を有効に活用できるため、特にBIM担当者へ業務が集中している場合には、外部委託を活用するメリットがあります。実際の負担軽減の事例については、第7章で大林組の取り組みを紹介します。

5.2. 専門知識の活用

外部のBIM専門会社やBIMコーディネーターを活用することで、社内だけでは不足している専門知識やノウハウを補うことができます。

BIMソフトウェアや干渉チェックツールにはさまざまな種類があるため、それぞれの特徴を理解した専門家の支援を受けることで、適切なツール選定やワークフローの構築を進めやすくなります。また、実務経験のある委託先から、BIM活用上の課題やリスクへの対応について支援を受けられる場合もあります。

6. 外部委託時の注意点

BIMマネジメントを外部委託する際は、業務範囲や責任分担、データ共有方法などを事前に整理しておくことが重要です。特に、次の点を確認しておきましょう。

  • 委託する業務と社内に残す業務を分けているか
  • 最終判断や承認を誰が行うか決めているか
  • BIMデータの共有・更新ルールを決めているか
  • 委託先との連絡方法や会議体を決めているか
  • 社内にBIMノウハウを残す方法を検討しているか

以下では、特に注意したいポイントを3つに分けて解説します。

6.1. 委託業務の範囲の明確化

BIMマネジメントを外部委託する際は、まず委託する業務の範囲を明確にすることが重要です。たとえば、BIMモデルの作成そのものを外注するのか、モデルの統合や干渉チェックだけを依頼するのかによって、必要な体制や費用は変わります。

その際は、次のような項目を具体的に決めておくとよいでしょう。

  • どの時点でモデルを外部委託先へ提供するか
  • 干渉チェック結果のレポートを誰が作成し、誰が修正するか
  • 最終判断や承認を社内と外部のどちらが行うか

こうした内容を契約書や覚書などで明文化しておけば、後から役割分担をめぐる認識の違いが生じるリスクを抑えられます。

6.2. 社内でのノウハウ蓄積

BIM人材不足への対応として外部委託を活用する場合でも、社内にBIMノウハウを残すことが重要です。成果物を受け取るだけではなく、社内担当者も委託先との打ち合わせやプロジェクト調整に関わり、BIMの進め方や課題への対応方法を共有できる体制を整えましょう。

こうした取り組みにより、委託終了後も社内に知識や経験を残し、次のプロジェクトへ活かしやすくなります。将来的な内製化を考える場合にも、外部支援を活用しながらノウハウを蓄積していくことが大切です。

東亜建設工業における人材育成の事例は、第7章で詳しく紹介します。

6.3. 役割分担とデータ共有のルール設定

BIMでは多くの関係者が同じモデルや関連データを扱うため、早い段階で役割分担とデータ共有のルールを決めておく必要があります。たとえば、誰がどのファイルを編集し、どの段階で承認を受けるのかなど、プロジェクトの流れを整理しておくことが大切です。

国土交通省の「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第3版)」では、BIMを活用する各段階のワークフローや、関係者の役割・責任分担、BIMデータの受け渡しなどが整理されています。(参照*4)

外部委託を活用する場合も、社内と委託先の役割や責任範囲、BIMデータの受け渡し方法などを事前に整理しておくことが重要です。また、CDEなどを利用する場合は、プロジェクトの運用方針に合わせてアクセス権限やデータの更新・共有方法を決めておくとよいでしょう。

こうした役割分担とデータ共有のルールを明確にすることで、社内と外部委託先が連携しやすいBIM運用体制を整えることができます。

7. 事例:企業におけるBIM外部支援の活用 

BIMに関する外部支援は、実際の建設会社でも活用されています。ここでは、大林組と東亜建設工業の事例から、担当者の負担軽減や社内へのBIMノウハウ蓄積について紹介します。

7.1. 大林組の事例

大林組では、現場でBIMを活用したいというニーズがある一方、日々の業務が忙しく、BIMの導入や運用に十分な時間を確保しにくいという課題がありました。また、現場でのBIM活用を支援するBIMマネジメント課にも、1現場ごとに多くの支援業務が発生していました。

大林組では、BIMマネジメント課が担当していた仮設BIMのモデリングなどの施工活用支援業務に「ANDPAD BIMサービス」を活用しました。実際の運用では、あらかじめ外部委託する範囲をすり合わせたうえで、現場とANDPADのスタッフが直接やり取りする体制を構築しています。(参照*5)

ANDPADの導入事例によると、大林組の担当者は、1現場におけるBIM運用のサポート業務が「体感で8割は減った」としています。また、削減できた時間を、よりコアな業務に充てられるようになったことも紹介されています。(参照*5)

この事例から、BIMに関する業務の一部を外部へ委託することで、社内担当者の負担軽減につながる場合があることがわかります。

7.2. 東亜建設工業の事例

東亜建設工業では、以前は業務の多忙さからBIMデータ作成を外注することがありました。しかし、外注先から納品されたデータを受け取るだけでは、BIMデータを活用できる人材が社内で育ちにくく、BIMに関するノウハウが蓄積されないことが課題となっていました。

東亜建設工業では、2024年から「ANDPAD BIMサービス」を導入し、約1年間の実践的な研修に加えて、実際の案件での支援を受けています。(参照*6)導入事例では、個人のスキル向上だけでなく、モデルの重ね合わせによる干渉チェックなどを通じて他部署の業務への理解が深まり、部署間の連携も向上したと紹介されています。(参照*6)

さらに、2年目には社内のBIM経験者が研修のサポート役として参加するほか、BIMマネージャー講習や業務テンプレートの作成も進めており、組織全体でBIM活用の標準化に取り組んでいます。(参照*6)

東亜建設工業の事例からは、BIMデータ作成を外注するだけでなく、外部支援を人材育成や社内のBIM活用体制づくりにも活用することの重要性がわかります。

2社の事例を整理すると、外部支援の活用方法には次のような違いがあります。 

企業主な課題外部支援の活用紹介されている効果
大林組BIM支援業務による担当者の負担施工活用支援業務に外部BIMサービスを活用サポート業務の負担軽減、コア業務への時間確保
東亜建設工業外注だけでは社内にBIMノウハウが蓄積しにくい研修と実案件での支援を組み合わせて活用スキル向上、部署間連携、BIM活用の標準化

8. まとめ

BIMマネジメントには、単なるモデル作成だけでなく、BIMモデルの統合や干渉チェック、プロジェクト全体の調整、BIM運用ルールの策定など、さまざまな業務が含まれます。

こうした業務をすべて社内で担うと、BIM人材の不足や担当者への負担増加につながる場合があります。そのため、BIM外部委託サービスやBIM専門会社を活用することは、業務効率化と成果物の品質確保を両立するための有効な方法の一つです。

一方で、外部委託を行う際は、業務をすべて任せるのではなく、委託範囲や役割分担を明確にすることが重要です。また、社内にBIMノウハウを蓄積していくためには、委託先との連携体制を整え、知識や経験を共有できる仕組みをつくることも欠かせません。

建設プロジェクトの効率化と品質向上を目指すうえでは、社内のリソースと外部の専門知識を適切に組み合わせることが大切です。自社の課題や体制を整理したうえで、BIMを活用した建築DXを進める選択肢の一つとして、BIMマネジメントの外部委託を検討してみてください。

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<参考文献>
(*1)建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<詳細>(令和7年1月 国土交通省調べ)|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001880512.pdf

(*2)令和8年度 建築GX・DX推進事業 募集要領|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/2_02gxdx_yohryo.pdf

(*3)建築GX・DX推進事業(BIM活用型)体制イメージ(設計)|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001986722.pdf

(*4)建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第3版)|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/002012930.pdf

(*5)ANDPAD導入事例|株式会社大林組
https://andpad.jp/cases/obayashi

(*6)ANDPAD導入事例|東亜建設工業株式会社
https://andpad.jp/cases/toa-corporation