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AutoCAD初心者必見!A3サイズで図面を正しく印刷する方法と注意点

1. はじめに

AutoCADで機械設計などの図面をA3サイズで正しく印刷するのは、初心者にとって少しハードルが高く感じられるかもしれません。しかし、基本的な操作手順と印刷設定のポイントを理解しておけば、図面を正確に、効率よく出力できるようになります。

まず押さえておきたいのは、AutoCADには「モデル空間」と「レイアウト空間」という2つの作業領域があることです。図面の作成は実寸(1:1)で行うモデル空間で進め、印刷の設定はレイアウト空間で行うのが基本的な流れです。この2つの空間をうまく使い分けることで、思い通りのサイズで図面を印刷できるようになります。

本記事では、A3サイズでの印刷をスムーズに行うために、具体的な手順はもちろん、スケール設定やプロッタ出力の考え方、印刷時によくあるトラブルとその対処法まで詳しく解説します。

記事を読み終えるころには、AutoCAD初心者の方でも、レイアウト設定や印刷スケールの選択に迷わず、図面をきれいに印刷できるようになるでしょう。余白の調整やCTBファイルの使い方といった、実務で役立つ知識もご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

2. AutoCADの基本と印刷の概念

AutoCADでは、「モデル空間」と「レイアウト空間」という2つの作業エリアを目的に応じて使い分けることが非常に重要です。図面の作成は、実寸(1:1)で描くモデル空間で行い、印刷はレイアウト空間でスケールや配置を調整して行います。この役割分担をしっかり理解しておくと、スムーズに印刷設定へと進めます。

この章では、印刷に関する基本的な考え方に焦点を当てて、「図面の単位」と「実寸」の関係性、さらに印刷スタイルテーブル(CTB)やプロッタ(プリンタ)の役割が図面の完成度にどう影響するかを解説します。

A3サイズに限らず、図面をきれいに印刷するためには、「用紙サイズ」と「作図したモデルの実寸」との整合性を取ることが最も大切です。印刷オフセットの調整や印刷範囲の指定といった操作も、考え方は他の用紙サイズでも共通です。

この章をしっかり理解することで、以降の印刷手順やスケール設定の作業がスムーズになり、印刷トラブルも未然に防げるようになります。


2.1. モデル空間とレイアウト空間の理解

AutoCADの「モデル空間」は、図面を実際のサイズで作図する領域です。たとえば部品図であれば、現実の寸法そのままで作図するのが基本です。これにより、図面上の寸法が直感的に把握できるようになり、後の印刷スケールの設定でも迷うことが少なくなります。

一方、「レイアウト空間」は、図面を印刷用に整えるための領域です。ここでは「ビューポート」と呼ばれる枠を使って、モデル空間で描いた図面の一部を必要な縮尺で表示します。言い換えれば、「紙の上にどのように図面をレイアウトするか」を設定する場所です。

レイアウト空間では、用紙の向き(縦・横)や印刷位置のオフセット、さらに印刷プレビューを活用して最終確認することができます。こうした設定を丁寧に行うことで、A3サイズにぴったり合った図面出力が可能になります。

初心者のうちは、ついモデル空間で印刷設定まで完結させたくなることがありますが、レイアウト空間を活用した印刷設定を習慣にしておくと、スケールのズレを防ぎやすく、修正作業も簡単になります。


2.2. 印刷=プロッタ出力の基本

AutoCADで図面を紙に出力する作業は、「プロッタ出力」とも呼ばれることがあります。プロッタとは、かつて大判印刷に使われていた専用機器ですが、現在では一般のプリンタやPDF出力でも同じ概念が引き継がれています。

印刷を行う際は、まず「ページ設定管理」から使用するプリンタドライバを選びます。たとえばPDFとして保存したい場合は、「DWG to PDF」という仮想プリンタを選択すれば、印刷のタイミングでPDFファイルを出力することが可能です。

このような仮想プリンタを使用する場合でも、用紙サイズや印刷スケールの設定方法は、通常のプリンタを使うときと変わりません。また、線の太さや色なども、印刷スタイルテーブル(CTBファイル)を適切に設定すれば、PDF上にも正しく反映されます。

図面を効率よく印刷できるかどうかは、会議やプレゼンテーションでのスムーズな進行にも関わってきます。したがって、プロッタ出力の基本設定をしっかり押さえておくことが、エンジニアにとっては大切なスキルとなります。


2.3. 印刷単位と図面サイズの関係

印刷時に正しい寸法比率を得るためには、「図面の単位」と「実際のサイズ」が一致していることが欠かせません。たとえば、A3サイズを選んでも、作図時の単位が適切でなければ、印刷時にスケールが狂ってしまいます。

多くの初心者向けAutoCADガイドでも紹介されているように、モデル空間での作図は、ミリメートルやメートルといった実際の単位で行うのが基本です。たとえば、100mmの部品なら、モデル空間でも100mmで描きます。

こうすることで、印刷スケールの設定が容易になり、ビューポートでの表示も直感的に調整しやすくなります。逆に、単位設定がずれていると、印刷範囲の指定やスケール設定が複雑になり、余白が不自然になるなどのトラブルが起こりがちです。

特にA3サイズで印刷する場合は、用紙サイズ420×297mmに図面全体が収まる必要があります。モデル空間では実寸で描き、レイアウト空間でスケーリングすることで、実際の寸法と印刷結果の整合性が確保されます。

3. A3サイズでの印刷設定手順

ここでは、AutoCADでA3サイズの図面を正確に印刷するための具体的な手順について解説します。初めて印刷設定を行う方でも、以下のステップを順に進めることで、意図したサイズ通りに図面を出力できるようになります。

特に重要なのは、「レイアウト空間を活用したページ設定」と「ビューポートによる図面の配置」です。この2つを正しく組み合わせることで、A3用紙に収まりの良い印刷が実現できます。

また、「用紙の向き」や「印刷位置(オフセット)」の設定を誤ると、図面が紙の端に寄ってしまったり、余白が不自然になったりすることがあります。そうしたトラブルを防ぐためにも、設定の都度、印刷プレビューで確認しながら進めることが大切です。

以下では、ステップごとに作業の流れを分かりやすく説明しています。必要に応じて各項目を見直しながら、設定内容が正しいかどうかを確認してみてください。


3.1. レイアウトタブの作成と選択

<画像引用>・AutoCAD 2025Help

https://help.autodesk.com/view/ACD/2025/JPN/?guid=GUID-DE4888EE-F07D-40D7-94AB-0AD9A1741153

まずは、モデル空間からレイアウト空間へと作業領域を切り替えるところから始めましょう。AutoCADを起動した直後は通常、モデル空間(Modelタブ)が表示されている状態です。

画面下部にある「レイアウト1」「レイアウト2」などのタブをクリックすることで、レイアウト空間に移動できます。必要であれば、タブを右クリックして「新規作成」を選択することで、新しいレイアウトを追加することも可能です。

初心者の方には、初めから存在する「レイアウト1」を活用しながら、設定を少しずつ調整していく方法がおすすめです。後から不要になったレイアウトは簡単に削除できますので、安心して操作できます。

また、レイアウトタブには、あらかじめ図面枠や標準テンプレートが配置されている場合もあります。もし社内で統一されたAutoCAD用のA3テンプレートが用意されている場合は、それを再利用することで、作業をより効率的に進めることができます。


3.2. ページ設定とプロッタの選択

次に行うのは、レイアウト空間上でのページ設定です。レイアウトタブを右クリックし、「ページ設定管理」を選択して設定画面を開いてください。

このダイアログでは、まずプリンタまたは仮想プロッタを選びます。たとえば、実機のプリンタがA3サイズに対応していない場合は、「DWG to PDF」を選択して、PDFファイルとして出力する方法が便利です。AutoCAD LTを使用している場合も、同様の手順で設定できます。

続いて、用紙サイズを「A3」に設定し、印刷スタイルテーブル(CTBファイル)を選びます。CTBファイルは、線の太さや色の出力方法に関わる重要な設定です。モノクロ印刷にしたい場合は「monochrome.ctb」を選択し、カラーで出力する場合は用途に合ったスタイルテーブルを指定してください。

さらに、用紙の向き(縦または横)もここで指定できます。図面の内容やレイアウトに応じて、A3用紙を縦向きにするか横向きにするかを決めましょう。機械設計図面などでは横向きを採用するケースが多いため、図面全体の見え方を意識して選択することがポイントです。


3.3. 印刷領域と用紙方向の設定

<画像引用>・AutoCAD 2023 Help

https://help.autodesk.com/view/ACD/2023/JPN/?guid=GUID-D8BE8598-D9F8-49C2-81BC-19786A390379

ページ設定ダイアログには、「印刷領域」を指定する項目があります。ここでは、「レイアウト」または「ウィンドウ」などのオプションが選べます。レイアウト全体をそのまま印刷したい場合は「レイアウト」を、図面の一部だけを出力したい場合は「ウィンドウ」を選び、マウスで範囲を指定します。

また、「印刷オフセット」の設定では、図面の配置位置を微調整することが可能です。図面を用紙の中央に合わせたい場合は、「中央に配置」を有効にすると、余白のバランスを取りやすくなります。印刷時に図面が片側に寄ってしまうトラブルは、オフセットや用紙方向の設定ミスが原因であることが多いので注意が必要です。

設定が完了したら、必ず「印刷プレビュー」で仕上がりを確認しましょう。プレビュー画面で図面が用紙に正しく収まっていれば、そのまま印刷しても問題ありません。もし図面の一部が切れていたり、余白が広すぎたりする場合は、再度ページ設定を見直して調整しましょう。

このように、印刷前にプレビューで状態を確認する習慣をつけておくことで、多くのトラブルを未然に防ぐことができます。特に大判図面や細かい部品図を扱う場合は、1つの設定ミスが印刷結果に大きく影響するため、丁寧な確認作業が重要です。

4. モデル空間とレイアウト空間の違いと活用

AutoCADでA3サイズの図面を印刷しようとした際に、すべての作業をモデル空間で完結させようとするケースがあります。しかし、これはAutoCAD本来の設計思想とは異なります。モデル空間は「実寸で作図する場所」、レイアウト空間は「紙面に合わせて配置・出力を調整する場所」と役割を明確に分けることが大切です。

この使い分けを正しく理解し、活用できるようになると、印刷設定に関する混乱が大きく減ります。ビューポートを用いたスケール管理や、図面全体のレイアウト調整がしやすくなるため、設計業務の効率も向上します。

さらに、レイアウト空間を活用することで、注釈やテキストのサイズ設定も正確に行えるようになり、相手に伝わりやすい図面が仕上がります。たとえば、図面をPDFで共有したり、プレゼン用資料として印刷したりする際にも、意図した通りのレイアウトで出力できるのは大きなメリットです。

この章では、レイアウト空間の活用をより深めるために、ビューポートの正しい設定方法や、レイアウトのテンプレート化による業務効率化について解説していきます。ここで紹介する内容を理解しておけば、A3サイズ以外の用紙にも柔軟に対応できるようになり、印刷の応用力が身につくでしょう。


4.1. ビューポートの設定と尺度の選択

レイアウト空間の操作において、最も重要な要素のひとつが「ビューポート」です。これは、モデル空間に作成した図面の一部または全体を、任意の縮尺で紙面に表示するための“窓”のような機能です。

たとえば、1:2、1:10、1:50といった縮尺を選んで表示させることができ、用途に応じてスケールを使い分けられます。建築図面であれば1:100、機械部品図なら1:1や1:5といった具合に、図面の内容に合わせたスケール選択が可能です。モデル空間では常に1:1で作図しておいて、レイアウト空間で見た目を調整することで、実寸と印刷結果との整合が取れます。

操作としては、レイアウトタブの「作成」パネルからビューポートを配置し、任意の大きさや位置に調整します。その後、適切なスケールを選択したら、「ビューポートロック」を使用してズームや移動の誤操作を防ぎましょう。これにより、図面の表示倍率が意図せず変化してしまうことを防げます。

注意すべきポイントは、ビューポートの中で操作を行うとスケールが崩れてしまう可能性があることです。たとえば、マウスホイールでズームしたり、ビューをパンで動かしてしまったりすると、設定した縮尺が変わってしまいます。これを防ぐためにも、ビューポートの配置とスケール設定が完了したら、必ずロックをかけておくことが大切です。

正しいビューポートの設定とロックを行うことで、印刷時に縮尺のズレがなくなり、図面の正確性を保てます。慣れてくれば、複数のビューポートを使って異なる縮尺の図面を1枚のレイアウト上にまとめることもできるようになります。


4.2. テンプレート化のメリット

同じような形式のA3図面を繰り返し印刷する場合、毎回ページ設定や図面枠の配置を行うのは時間がかかります。そうしたときに有効なのが、レイアウト空間を「テンプレート化」しておく方法です。

テンプレート化とは、あらかじめ図面枠やタイトル欄、企業ロゴなどをレイアウトに配置し、印刷設定やCTBファイルの指定も含めた状態で保存しておくことです。このテンプレートファイルを使えば、新しいプロジェクトを始める際に、一から設定をやり直す必要がなくなります。

たとえば、会社で統一された図面形式がある場合には、その形式をあらかじめテンプレートにしておくことで、誰が作業しても同じ品質・レイアウトの図面が作成できるようになります。印刷スタイルやビューポートの配置、注釈スタイルなどもテンプレートに含めておくと、ミスの少ない図面作成が可能です。

特に、PDF出力を頻繁に行うチームや業務では、テンプレートを活用することで、納品物のレイアウトが毎回一定に保たれ、相手先にとっても見やすく、信頼性の高い資料を提供できるようになります。図面の一貫性はプロジェクト全体の信頼性にも直結します。

このように、テンプレートの活用は、AutoCADを使って実務を行うエンジニアや設計者にとって、大きな作業効率の向上と品質安定につながる重要な手法です。特に同じ規格で複数の図面を扱うような場面では、その効果を強く実感できるはずです。

5. 印刷時のスケール設定と注意点

A3サイズに限らず、AutoCADで図面を印刷する際によく起こるトラブルのひとつが、「印刷スケールが合わない」という問題です。縮尺が正しく設定されていないと、実際の部品寸法と印刷された図面の寸法が一致せず、設計意図が正しく伝わらなくなる恐れがあります。

スケールの不一致は、単に見た目が変わるだけではなく、寸法線や文字のサイズが極端に小さくなったり、大きくなりすぎたりして、図面の視認性や可読性にも大きく影響します。特に細かい部品図や複数スケールを含む図面では、こうしたミスが致命的になることもあります。

この章では、印刷スケールを正しく設定するための基本的な考え方と、トラブルを防ぐための実践的なポイントを紹介します。具体的には、スケールバーの使い方や文字サイズ(注釈)の調整方法、ビューポートのズーム操作に関する注意点などを取り上げます。

AutoCADでは、モデル空間で100mmの線を引いた場合、それはあくまで100mmの「実寸」です。たとえば1:2のスケールで印刷すると、紙面上では50mmの長さとして出力されます。こうしたスケーリングを正しく行うのが、レイアウト空間とビューポートの役割です。

以下の小見出しでは、それぞれの操作ステップや注意点をより具体的に整理しています。スケール設定を正しく理解しておけば、実際の業務でも再現性のある図面作成と印刷ができるようになります。


5.1. 正しいスケールバーと文字サイズの選択

図面にスケールバーを配置することは、印刷された図面の縮尺を読み手に伝えるうえで非常に有効な手段です。AutoCADでは、スケールバー用のブロックをあらかじめ作成しておき、それをレイアウト空間に挿入することで、簡単にスケールを示すことができます。

また、印刷スケールの設定を行う際には、図面内の文字や寸法の大きさも適切に調整する必要があります。AutoCADには「注釈尺度」という機能があり、モデル空間で作図した注釈(文字・寸法線など)のサイズを、印刷時の縮尺に応じて自動的に調整することができます。

たとえば、モデル空間で注釈を1:1で配置し、印刷時には1:10の縮尺で出力する場合でも、注釈尺度を1:10に設定しておけば、文字サイズは適切な大きさで表示されます。この仕組みを使うことで、図面全体のバランスを崩すことなく印刷が可能です。

ただし、注釈尺度を適切に設定していないと、印刷プレビューで文字が極端に大きく表示されたり、小さすぎて読めなかったりすることがあります。そのため、ビューポートを通じて図面を確認し、必要な文字サイズが確保されているかを事前にチェックすることが大切です。

図面のスケール設定に不安がある場合は、一度「DWG to PDF」などの仮想プリンタを使ってPDF出力し、印刷結果を画面上で確認してみるのも有効な方法です。紙を無駄にせず、縮尺や文字サイズのバランスを確認できるため、特に初心者におすすめです。


5.2. ビューポートのロックとズームの管理

ビューポートは、レイアウト空間からモデル空間の図面を覗くための“窓”として機能します。このビューポートに対して印刷縮尺を設定することで、図面を紙面に正しい大きさで表示・印刷することが可能になります。

しかし、ビューポートで縮尺を設定したあとに、うっかりズームやパン操作を行ってしまうと、せっかく設定した縮尺が崩れてしまうことがあります。こうしたトラブルを防ぐために重要なのが「ビューポートのロック」です。

ビューポートのロックは、ビューポートを選択した状態でプロパティパレットや画面上部の表示パネルから「表示を固定」オプションを設定することで行えます。このロックをかけておくと、マウスホイールによるズーム操作などが無効になり、縮尺が意図せず変わることを防げます。

特に大きなアセンブリ図や複数の部品図をまとめた図面では、ズーム操作のミスが致命的になることもあります。正しい縮尺で印刷したはずなのに、図面が想定より大きく、または小さくなってしまうと、打ち合わせや検証作業に支障をきたす恐れがあります。

そのため、ビューポートのスケール設定が完了した段階で、すぐにロックをかける習慣を持つことが非常に重要です。ロックされていない場合は、プレビューのたびに微妙なスケールのズレが発生しやすく、トラブルの原因になります。

特に初心者のうちは、ビューポートのロックを忘れがちですが、この一手間をかけるだけで、印刷精度と作業の安定性が大きく向上します。安定した印刷結果を得るためにも、ビューポートロックは常に意識しておきましょう。

6. よくあるトラブルとその解決法

AutoCADでA3サイズの図面を印刷する際には、設定項目が多いため、初心者を中心にさまざまなトラブルが発生しやすくなります。代表的な問題としては、図面が紙からはみ出す、図面自体が印刷されない、線の太さが不自然になる、印刷スケールが狂ってしまうなどが挙げられます。

こうしたトラブルが起きると、「なぜうまくいかないのか」が分からずに作業が滞ってしまいがちです。しかし、一つひとつの問題には必ず原因があり、ポイントを押さえて確認すれば、初心者でも十分に対処することができます。

まずは、出力結果が期待通りにならなかった場合に、「印刷範囲は正しく設定されているか」「用紙サイズや向きは合っているか」「CTBファイルの線設定に問題はないか」「ビューポートでのスケール操作が正しく行われているか」など、チェックすべき基本項目を順に見直していきましょう。

ここでは、特に発生頻度の高い4つのトラブルと、それぞれの解決策を具体的に解説します。印刷前の確認ステップとして活用すれば、設定ミスを防ぎ、トラブルのない印刷作業を実現できるようになります。


6.1. 枠からはみ出す問題の対処

A3サイズに設定したはずなのに、実際に印刷してみたら図面が用紙から一部はみ出していた――このようなケースでは、まず「印刷範囲」の設定方法を確認しましょう。「ウィンドウ」オプションを使用している場合、図面全体がきちんと範囲内に含まれていなければ、用紙の外にはみ出して印刷されてしまうことがあります。

また、「印刷オフセット」が適切に設定されていないと、図面が用紙の片側に寄って印刷されてしまう原因にもなります。オフセットの項目で「中央に配置」を選択しておけば、用紙の中央にバランスよく図面が配置されるため、ズレを防ぐのに効果的です。

さらに、「用紙方向(縦・横)」の設定ミスもよくある原因の一つです。作成した図面が横長であるにもかかわらず、印刷設定で縦方向が選ばれていると、図面が収まりきらなくなります。プレビューを見ながら、用紙方向が実際のレイアウトと合っているかを必ず確認しましょう。

プレビュー画面でギリギリまで図面が広がっている場合は、必要に応じてビューポートのサイズを少し小さくしたり、一部の要素を省略したりすることも検討できます。とくに部品が多くてスペースが厳しいときには、配置の見直しが有効な手段です。


6.2. 図面が印刷されない原因と対策

印刷を実行したにもかかわらず、用紙やPDFに何も出力されないという場合は、いくつかの原因が考えられます。まず最もよくあるのが、「ビューポートの中に図面が正しく表示されていない」という状態です。ビューポートの中が空白であれば、当然ながら印刷結果も空白になります。

このときは、モデル空間のどの位置がビューポートで参照されているのかを確認し、必要な図面がビューポート内に確実に表示されていることを確認しましょう。また、図面が遠く離れた座標に描かれていると、ビューポートがその位置を捉えきれず、印刷対象から外れてしまうことがあります。

さらに、「レイヤーの状態」にも注意が必要です。印刷したい図面が非表示レイヤーや凍結されたレイヤーに含まれていると、ビューポート上では見えていても印刷には反映されません。レイヤーがロックされていないか、非表示になっていないかをひとつひとつ確認しましょう。

もしPDF出力を選んでいるのにファイルが作成されていない場合は、「保存先の設定」や「ファイル名の指定ミス」も疑ってみてください。特定のフォルダに書き込み権限がない場合なども、出力に失敗する原因となります。

最終的には、「印刷プレビュー」で図面がきちんと表示されているかを確認するのがもっとも確実な方法です。プレビューで図面が表示されない場合は、ビューポートの範囲設定やレイヤー設定を重点的に見直しましょう。


6.3. 線の太さ調整と印刷スタイルの設定

印刷された図面の線が極端に細くて見えづらい、あるいは太すぎて重なってしまうという問題は、「印刷スタイルテーブル(CTB)」の設定に原因があることが多いです。CTBファイルは、各色に対して線の太さや種類を割り当てる役割を持っています。

たとえば、モノクロ印刷を行う場合には「monochrome.ctb」がよく使われますが、その中で色ごとに設定されている線幅が、自分の図面に適しているかどうかを必ず確認しましょう。もし合っていないと感じた場合は、CTBファイルを編集し、自分専用の印刷スタイルを作成することも可能です。

通常は、図面内の線色をもとにCTBで太さを設定する「色依存スタイル」が用いられますが、プロジェクトによっては「名前付きスタイル(STB)」を使うこともあります。STB方式では、色に依存せずスタイル名ごとに線の属性を管理するため、操作方法や設定方法が異なる点に注意が必要です。

チームや会社で印刷方式が統一されているかどうかも、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。複数人で図面を扱う環境では、誰が印刷しても同じ仕上がりになるように、CTBやSTBのルールを共有しておくことが大切です。

印刷スタイルの調整に不安がある場合は、印刷プレビューを利用して線の太さが適切かどうかを事前にチェックすることをおすすめします。とくに大きな縮尺で出力する場合は、通常よりも線が太く見えることがあるため、状況に応じた微調整が必要です。


6.4. スケール不一致の解決策

スケール不一致の問題は、A3サイズで印刷する際にもよくあるトラブルのひとつです。たとえば、印刷スケールを1:10に設定したつもりなのに、実際の出力では1:5のような倍率で印刷されてしまうといったケースが典型的です。

このようなミスは、多くの場合、ビューポートで縮尺を設定したあとにズームやパン操作をしてしまったことが原因です。設定した倍率が意図せず変わってしまうため、印刷結果も予想外のスケールになってしまいます。

対策としては、まずビューポートのプロパティを確認し、「標準尺度」が正しく選択されているかを確認しましょう。必要に応じて、「1:10」や「1:5」などの標準スケールを選ぶか、「0.1xp」や「2xp」といった分数・倍率指定を使って、正しい拡大率を明示します。

そして、スケールを設定したら、すぐに「ビューポートロック」をかけることが重要です。これにより、ズームやパン操作が無効化され、スケールが固定されます。初心者はこのロックを忘れがちですが、スケールのトラブルを防ぐ最も効果的な方法です。

また、図面の単位設定もあらためて確認しておきましょう。たとえば、図面がミリメートル単位で描かれているつもりでも、実際にはインチやフィート単位で設定されていると、スケールが大きく狂う原因になります。図面のプロパティで単位を確認し、必要があれば修正してください。

スケール設定が誤っていると、部品の寸法や注釈の正確性が失われ、後工程でのトラブルにもつながります。必ず印刷プレビューや試し印刷で結果を確認し、正確なスケーリングがされていることを確かめたうえで、本番印刷を行うようにしましょう。

7.まとめ

AutoCADでA3サイズの図面を正確に印刷するには、モデル空間とレイアウト空間の役割を正しく理解し、印刷設定を適切に行うことが重要です。実寸で作図したデータは、レイアウト空間でビューポートを使って縮尺を設定し、用紙サイズに合わせて配置します。印刷スタイルテーブル(CTB)の活用や、ビューポートのロック機能も精度の高い出力には欠かせません。また、印刷時によく起こる「図面のはみ出し」や「スケールの不一致」などのトラブルにも、原因を把握し適切に対処することで防ぐことができます。テンプレートを活用すれば、作業の効率化と品質の安定も図れます。印刷前には必ずプレビューを確認し、細部まで設定を見直す習慣をつけることが、失敗しない印刷の第一歩です。基本操作を押さえれば、初心者でも安心して正確な図面出力が可能になります。

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<参考文献>

・A2サイズで作成した図面をA3用紙に印刷する方法 ( AutoCAD)

https://www.autodesk.com/jp/support/technical/article/caas/sfdcarticles/sfdcarticles/kA9Kf000000Xozt.html

・任意の用紙サイズ(カスタム用紙サイズ)を作成して印刷を実行したい (AutoCAD)

https://www.autodesk.com/jp/support/technical/article/caas/sfdcarticles/sfdcarticles/kA93g0000000Put.html

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