部品図を自動生成するシステムの開発方法|3Dモデル・Inventor API・APSの活用を解説

1. はじめに

部品図の作成には、図面生成や寸法・注記の配置など、多くの定型作業が含まれます。特に、類似形状の部品を扱う場合は同じ手順を繰り返すことが多く、設計変更時には関連図面の修正も必要です。人手で対応すると、作業工数が増えるだけでなく、転記ミスが発生する可能性もあります。

こうした課題への対応方法として、部品図の自動生成システムがあります。Autodeskは、設計の自動化によって設計意図やルールを再利用し、反復的な作業を効率化できると説明しています (参照*1)。部品図の自動生成には、Autodesk InventorのiLogicやInventor API、APS(Autodesk Platform Services)のAutomation APIなどを活用でき、3Dモデルの更新から図面生成、PDF出力までを自動化できます。また、アセンブリを対象とする場合は、BOMの出力も自動化できます (参照*3参照*4)。

本記事では、部品図を自動生成するシステムの仕組みと、iLogic、Inventor API、APSを用いた開発方法、導入までのプロセスを解説します。

2. 部品図の自動生成とその重要性

部品図の自動生成は、設計の自動化の中でも特に注目されているテーマです。部品図は、製造現場や品質管理、購買など多くの部門で利用される重要なドキュメントであり、図面の更新が遅れたり書式が統一されていなかったりすると、部門間の連携不足やミスにつながる可能性があります。ここでは、自動生成システムの基本的な考え方と、自動化できる主な作業について解説します。

自動生成に必要なルールや処理をあらかじめ実装しておけば、パラメータの変更に合わせて図面を更新し、寸法や注記の配置、PDF出力、DWGファイルの作成までを一括で実行できます。その結果、工数の削減や現場での情報共有の効率化が期待できます。さらに、アセンブリを対象とする場合は、PDMやERPとの連携やBOM出力も自動化することで、企業全体の業務フローの効率化につなげられます。  

こうしたメリットを得るためには、「どのような作業が自動化しやすいか」「人の手作業をどこまで減らせるか」を見極めることが重要です。次の小見出しでは、自動生成システムの基本概念と、自動生成できる作業内容の具体例を紹介します。

特に定型作業が多い部品ほど効果が高いため、その点を意識すると導入を進めやすくなります。

2.1. 自動生成システムの基本概念

部品図の自動生成とは、設定した設計ルールに基づいてCADソフトが3Dモデルのパラメータを更新し、その結果をもとに図面を生成する仕組みです。Autodeskは、設計の自動化について、設計意図やエンジニアリングの知識をルールとして取り込み、反復的な作業に利用する考え方を紹介しています(参照*1)。ただし、すべてを「ボタン一つ」で処理するのではなく、設計ルールやパラメータ管理を整理し、自動化する作業を明確にすることが必要です。

具体的には、ソフトウェア上であらかじめ式や条件分岐などのルールを設定し、寸法や部品番号、材質情報を入力すると、CADが3Dモデルを更新して、そのモデルをもとに部品図を生成します。その後、PDF出力やDWGファイルの作成までを一連の処理として実行できます。

この仕組みによって、転記ミスの削減や品質の標準化が期待できます。設定したルールに従ってプログラムが処理を実行するため、人手によるミスが発生しにくくなります。

2.2. 自動生成可能な作業内容

自動生成システムでは、3Dモデルの更新から図面作成、ファイル出力、他システムへの登録まで、さまざまな作業を対象にできます。Inventorの図面作成では、テンプレートを使用した書式設定、図面ビューの作成、注記の追加などが基本的な工程として示されています(参照*2)。これらの工程に設計ルールやAPIを組み合わせることで、部品図作成に伴う定型作業を自動化できます。 

分類自動化できる主な作業
3Dモデル設計ルールに基づく寸法や形状の更新
図面作成ビュー、寸法、注記、表題欄の配置
部品情報アセンブリ情報を利用したBOMの作成・出力 
ファイル出力PDFやDWGファイルの生成
システム連携PDMやERPへのファイル・設計情報の登録

共通して言えるのは、「定型ルールとパラメータを定義できれば、自動化できる範囲は幅広い」という点です。

3. 部品図を自動生成するシステムの構造

ここでは、部品図を自動生成するシステムが、どのような流れで処理を進め、どのような要素で構成されているのかを解説します。例えば、入力された設計条件をもとに3Dモデルを更新し、その後に図面を自動生成し、最後にPDFやDWGファイルとして出力する流れです。これらの一連の処理を実現するのが、CAD自動化を支えるさまざまなコンポーネントです。

システムは主に、入力情報と設計ルールをCADへ渡す部分、CADでモデル更新や図面生成を行う部分、そして成果物を出力する部分の3つで構成されます。PDMやERPを併用する場合は、部品番号や材質などの属性情報を正しく連携し、BOM出力の精度を高めることも重要です。

部品図を自動生成するシステムを効果的に活用するには、どの情報をどのように入力し、工程間でどのようなデータをやり取りするのかという全体像を理解することが欠かせません。ここでは、その処理の流れと主要なコンポーネントを見ていきます。

手作業の削減や設計変更への迅速な対応といったメリットは、これから紹介するシステム構造によって支えられています。

3.1. システムの全体的な流れ

部品図を自動生成するシステムでは、主に次の順番で処理を進めます。

  1. 設計条件を入力する
    部品の寸法や材質、形状パラメータなどを、Excel連携や専用UIから入力します。
  2. 3Dモデルを更新する
    入力された情報をCADソフト(Inventorなど)へ渡し、設計ルールに基づいて3Dモデルを更新します。
  3. 部品図を生成する
    更新した3Dモデルをもとに、ビューや寸法などを自動で配置して図面を生成します。
  4. 必要な成果物を出力する
    PDFやDWGファイルを作成します。アセンブリを扱う場合は、必要に応じてBOMも出力します。 
  5. PDMやERPへ登録する
    PDMやERPとの連携処理を実装している場合は、生成した図面や部品情報を登録し、設計情報と製造情報を一元管理します。

このように、必要な処理をあらかじめ実装しておけば、一度の入力から3Dモデル、図面、PDFなど複数の成果物を生成できます。アセンブリを扱う場合は、BOMも成果物に含められます。 

3.2. システムの主要コンポーネント

システムは、主に次のような要素で構成されます。

構成要素役割主な内容
入力自動生成に必要な情報を受け取る部品寸法、材質、部品番号、Excel・Webシステム連携
設計ルールCADへ反映する条件を定義するパラメータ、計算式、iLogicによるルール
CAD処理3Dモデルや図面を生成するInventor API、iLogic、C#・Pythonによる処理
出力設計成果物を作成するPDF、DWG、アセンブリを対象としたBOM 
システム連携設計情報を他システムへ登録するPDM、ERPとの連携

これらを組み合わせることで、複雑な部品でも効率よく自動化でき、設計変更にも柔軟に対応できるシステムを構築できます。

4. 部品図を自動生成する主な開発方法

ここからは、自動生成システムを開発する具体的な方法について解説します。主な方法として、iLogicを利用する方法、Inventor APIを活用する方法、APS Automation APIによるクラウド処理の3つが挙げられます。どの方法を選ぶかは、社内での利用範囲やWebシステムとの連携の有無などによって異なります。

いずれも「CAD自動化」を目的としていますが、導入や開発の難易度、拡張性には違いがあります。特にAPSによるクラウド処理を組み合わせると、大量の設計データを一括処理したり、外部システムとの連携を強化したりできる利点があります。

このセクションでは、それぞれの方法の特徴と向いている用途を比較して紹介します。自社のプロジェクト状況に合わせて、適切な方法を検討してください。

シンプルな自動化はiLogicから始め、将来的にInventor APIやAPSへ拡張するケースもあります。

4.1. iLogicを活用した自動化

iLogicは、Autodesk Inventorに標準搭載されているルールベースの機能です。専用画面で設計ルールを記述することで、パラメータ変更やモデル更新、図面生成などを自動で実行できます。C#などのプログラミング言語に詳しくなくても、比較的始めやすい点が特長です。

iLogicで行える主な作業には、部品寸法を変数化してモデルを再生成し、必要に応じてPDF出力まで実行する処理があります。アセンブリを対象とする場合は、BOM出力も自動化できます。設計者自身がルールを設定できるため、社内で運用する場合にも柔軟に活用できます。 

ただし、大規模な開発やWebシステムとの連携が必要な場合は、iLogicだけでは対応範囲が限られることがあります。その場合は、Inventor APIやAPSとの組み合わせを検討する必要があります。

4.2. Inventor APIを用いた開発

Inventor APIは、Autodesk Inventorの機能をプログラムから操作するためのインターフェイスです。Autodeskの公式ページでは、Inventor APIを利用して反復的な設計作業を自動化し、独自のアドインやアプリケーションを開発できることが紹介されています(参照*3)。COM APIを通じてC#やPythonなどからCAD操作を制御できるため、Excelとのデータ連携や、外部アプリケーションからInventorを操作する処理も実装できます。 

具体的な開発例としては、複数のモデルファイルを読み込み、それぞれの寸法や注記配置を自動設定して図面を生成するプログラムを、C#で作成する方法があります。続けてPDF出力やDWGファイルの作成を行い、指定したフォルダやクラウドストレージへ保存することも可能です。

システム連携を重視する場合は、Inventor APIとPDMやERP側の連携機能を組み合わせ、設計情報を受け渡す仕組みを構築できます。双方向に情報を反映する場合は、各システムのAPIやデータ形式に合わせた開発が必要です。ただし、開発には専門的なスキルが求められるため、一定のプログラミング知識が必要です。 

4.3. APS Automation APIによるクラウド自動化

APS(Autodesk Platform Services)のAutomation APIは、Autodesk製品の自動化機能をクラウドサービスとして利用するためのAPIです。Inventor Automation APIでは、クラウド上で動作するInventor Serverにカスタムアドインを読み込ませたり、iLogicルールを実行したりできます。Autodeskは活用例として、Inventor Serverを利用した図面生成、設計チェック、BOMを含む成果物の生成、大量ファイルの処理などを紹介しています (参照*4)。 

処理には、実行するプログラムをまとめたAppBundle、処理内容や入出力を定義するActivity、実際の処理を依頼するWorkItemを使用します(参照*5参照*6)。これらを組み合わせることで、クラウド上でCAD処理を実行できます。 

例えば、Webフォームからパラメータを入力すると、クラウド上のInventor Serverがその内容を反映した3Dモデルと図面を生成し、結果をPDFやDWGファイルとしてダウンロードできる仕組みを構築できます。顧客向けポータルサイトと連携すれば、ユーザーがオンライン上で部品仕様を入力し、生成処理の完了後に図面を取得するサービスも提供できます。 

3つの開発方法を整理すると、次のようになります。

開発方法向いている用途主な特徴
iLogic社内での簡易的な自動化Inventor上で設計ルールを設定して処理を自動化する
Inventor API専用アプリケーションや細かなCAD制御外部アプリケーションやExcelなどと連携できる
APS Automation APIクラウド処理、Web連携、大量データの一括処理Inventor Serverの機能をクラウド上で実行する

それぞれの特徴を踏まえ、導入方針や予算、担当者のスキルに応じて選択することが重要です。

5. 部品図を自動生成するシステムの開発プロセス

ここでは、部品図を自動生成するシステムを開発する場合の具体的なプロセスを解説します。システムを導入する際は、要件定義と計画から、テンプレートの準備、CAD処理の実装、テストに至るまで、各段階での確認が欠かせません。特に、部品図の書式や設計ルールが正しく反映されているかは重要なポイントです。

一般的に、プロジェクトマネージャーには、開発チーム内外の調整や進捗管理だけでなく、要件を整理し、システムを利用するエンドユーザーの意見を反映する役割もあります。以下では、開発プロセスを3つの段階に分けて説明します。各ステップを区切り、設計ルールや利用場面を明確にすることで、後工程での手戻りを防ぎやすくなります。

CAD自動化による設計の迅速化と品質向上の効果を十分に引き出すためにも、まずは開発全体のおおまかな流れを把握しておきましょう。

特にAPSを利用する場合は、APIを呼び出すアプリケーションの実行環境、認証や権限管理、入出力ファイルの保存方法、利用量やコスト、セキュリティ要件を事前に確認する必要があります。

5.1. 要件定義と計画

まず、どの部品を自動化の対象とし、どのような入力項目や設計ルールを設定するのかを整理します。主な確認項目は次のとおりです。

  • 自動化する対象部品
  • 部品番号、寸法、材質などの入力情報
  • 適用する設計ルール
  • 3Dモデルの数や複雑さ
  • 設計変更の頻度
  • ExcelやPDMとの連携の有無
  • プロジェクトのスケジュールと予算
  • 必要な開発スキル

多数のバリエーションを展開する部品は自動化の効果が大きい一方で、設計ルールを幅広く整理する必要があります。

この段階で、C#の開発者を確保するのか、まずはiLogicのみで始めるのかなどを検討し、システム開発全体の方針を決定します。

5.2. 図面テンプレートの作成

必要な要件がまとまったら、CADソフトで図面テンプレートを用意します。Inventorでは、図面テンプレートに図面枠や表題欄などを設定でき、製図規格や注記スタイルも編集できます(参照*2)。部品図を自動生成するシステムを開発する場合は、表題欄の位置や形式、注記の書式、寸法配置の基準、ビュー配置のレイアウトなどをあらかじめ定義します。

企業独自の図面ルールがある場合は、その内容をユーザーテンプレートに組み込み、設計ルールと関連付けることが重要です。

適切なテンプレートを使用すると、図枠や表題欄、スタイル、ビュー配置などの図面表現を統一しやすくなり、自動生成後の手作業も減らせます。ただし、テンプレートを変更しても、作成済みの図面へ自動的に反映されるわけではありません。既存図面も更新する場合は、スタイルや図面リソースの管理、APIなどを利用した一括更新の仕組みを別途検討する必要があります。

5.3. CAD処理の実装とテスト

最後に、CAD側へ自動化ロジックを実装します。使用する方法によって、実装内容は次のように異なります。

  • iLogic
    ルールウィザードでパラメータ操作や図面生成のスクリプトを組み込む
  • Inventor API
    C#やPythonからCOM APIを呼び出すプログラムを作成する
  • APS
    AppBundle、Activity、WorkItemを設定し、クラウド上で処理を実行する手順を設計する(参照*6

実装後は、主に次の項目を確認します。

  • 3Dモデルが正しく更新されるか
  • ビューや寸法が想定どおりに配置されるか
  • PDF、DWG、BOMを正常に出力できるか
  • アセンブリを扱う場合は、BOMを正常に出力できるか
  • 連携処理を実装している場合は、PDMやERPへ正しくデータを登録できるか
  • 問題発生時にログを確認できるか

問題が見つかった場合はログを確認し、設計ルールやプログラムを修正します。こうした検証と修正を繰り返し、安定して運用できる部品図を自動生成するシステムを完成させます。

6. まとめ

本記事では、部品図自動生成を中心とした設計の自動化について、基本的な仕組みや開発方法の違い、開発プロセス、導入によるメリットを解説しました。定型作業や繰り返しの多い業務ほど自動化の効果が大きく、設計変更に柔軟に対応できる仕組みを整えることは、業務効率や品質の向上につながります。

自動化の方法には、iLogic、Inventor API、APS Automation APIなどがあり、それぞれ適した用途が異なります。社内での簡易的な自動化から、専用アプリケーションの開発、クラウドを活用した大規模な処理まで、自社の要件や運用体制に合わせて選択することが重要です。

システム開発を進める際は、要件定義を十分に行い、パラメータ管理や図面テンプレートを整理したうえで、段階的に自動化の範囲を広げていくことが成功のポイントになります。

部品図の自動生成は、設計業務の効率化だけでなく、品質の標準化や設計変更への迅速な対応にも役立ちます。自社の課題や運用に適した方法を選び、無理のない範囲から自動化に取り組んでみてはいかがでしょうか。

建築・土木業向け BIM/CIMの導入方法から活用までがトータルで理解できる ホワイトペーパー配布中!

❶BIM/CIMの概要と重要性
❷BIM/CIM導入までの流れ
❸BIM/CIM導入でよくある失敗と課題
❹BIM活用を進めるためのポイント
についてまとめたホワイトペーパーを配布中

<参考文献>
(*1)設計の自動化 | 設計の自動化とは?| Autodesk
https://www.autodesk.com/jp/solutions/design-automation

(*2)Inventor 2027 ヘルプ | 図面のワークフローの概要 | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/INVNTOR/2027/JPN/?guid=GUID-847794DF-DE8C-411E-9BF7-F773FBE6D1F5

(*3)Inventor | Autodesk Platform Services
https://aps.autodesk.com/ja/developer/overview/inventor-api

(*4)Automation APIs | Autodesk Platform Services
https://aps.autodesk.com/automation-apis

(*5)Overview | Automation API | Autodesk Platform Services
https://aps.autodesk.com/en/docs/design-automation/v3/developers_guide/overview/

(*6)Automation | Autodesk Platform Services Tutorials
https://get-started.aps.autodesk.com/tutorials/design-automation/

(*7)Inventor Automation API | Autodesk Platform Services
https://aps.autodesk.com/apis-and-services/inventor-automation-api