CAD図面の検索性を向上する5つの方法|属性・全文・類似検索まで解説
1. はじめに
CAD図面は、蓄積されるほど必要な図面を探すのに時間がかかりやすくなります。特にプロジェクトマネージャーにとって、過去の図面をすぐに見つけられない状況は、スケジュールや予算の管理を難しくし、チーム全体の業務効率にも影響します。
図面を探す際にはファイル名や保存場所が手がかりになりますが、担当者ごとに管理方法が異なっていたり、複数のサーバーやPCに図面が分散していたりするケースもあります。このような状態では、蓄積した図面データを十分に活用できず、似たような設計を何度も作り直す可能性もあります。
この記事では、CAD図面の検索を効率化するための具体的な5つの方法を、わかりやすく紹介します。ファイルの命名ルールをはじめ、属性検索や全文検索、PDM、AI図面検索を活用し、必要な図面を見つけやすくする方法を解説します。
さらに、実際に検索時間を短縮した企業事例を取り上げ、図面の一元管理やデジタル化が業務効率の向上やセキュリティ強化にどのようにつながるのかを紹介します。自社の図面管理に適した方法を検討する際の参考にしてください。
2. CAD図面の検索性が低下する主な原因

CAD図面の検索性が低下する原因として、命名ルールの不統一や保存場所の分散、検索に利用できる情報が限られていることなどが挙げられます。
例えば、担当者ごとにファイル名の付け方が異なっていたり、図番や案件名が含まれていなかったりすると、必要な図面を探す際の手がかりが少なくなります。また、個人のPCや共有フォルダ、NASなど複数の場所に図面が分散していると、保存場所を確認するだけでも手間がかかります。
さらに、ファイル名だけに頼った検索では、図番や名称が分からない類似図面を探しにくい場合があります。日立ソリューションズ西日本も、図面検索の課題として、膨大な過去図面から類似図面を探すのに時間がかかることや、担当者が変わるたびに図面を探し直す手間を挙げています(参照*6)。
そのため、CAD図面の検索性を高めるには、命名や保存のルールだけでなく、属性情報や検索機能、図面の管理方法も含めて見直すことが重要です。
3. CAD図面の検索性を向上する5つの方法

CAD図面の検索性を向上させるには、命名ルールの整備から属性検索、全文検索、AIによる類似図面検索まで、さまざまな方法があります。ここでは、代表的な5つの方法を順に解説します。
| 方法 | 主な目的 |
| 命名と保存ルールの統一 | ファイル名や保存場所から図面を探しやすくする |
| 属性情報の設定と活用 | 図番や担当者など複数の情報から探せるようにする |
| 図面の一元管理 | 分散した図面をまとめて管理する |
| 属性検索・全文検索・インデックスの利用 | より細かな条件から図面を探しやすくする |
| AIによる類似図面検索 | 形状が似た過去図面を探す |
3.1. 命名と保存ルールの統一
最初のステップは、ファイル名や図番などの命名規則を社内で明確に統一することです。例えば、図面のファイル名には図番、案件名、担当者のイニシャルなど、検索の手がかりとなる情報を含めるように決めておきます。
フォルダ階層も、必要以上に深くしないことがポイントです。フォルダ構造が複雑になると、どこに保存すればよいのか迷い、結果として各自の判断でさまざまな場所に保存してしまう可能性があります。そのため、案件ごとのトップフォルダにまとめるか、後述する図面の一元管理システムへ移行することも選択肢です。
命名ルールを徹底するには、社内ルールを文書化し、周知することが大切です。朝礼や定期ミーティングなどで共有し、すでにあるファイル名も整理していくことで、属人的ではない検索体制を整える土台になります。
こうした取り組みは、大規模なシステム導入をしなくても始めやすく、コストを抑えたい企業にも有効です。将来的にPDMなどを導入する場合でも、ファイル名や図番が整理されていれば、スムーズに移行しやすくなります。
3.2. 属性情報の設定と活用
ファイル名やフォルダだけに頼った管理では、検索できる情報に限界があります。それを補う方法として、CAD図面を区別するための属性情報を設定することが効果的です。例えば、図面属性情報として図番・部品名・リビジョン・担当者・作成日・案件名などを登録し、複数のキーワードで検索できる仕組みを整えます。
AutoCADのDesignCenterでは、ファイル名だけでなく、図面プロパティに登録した情報などを検索条件として利用できます(参照*1)。また、SOLIDWORKS PDMでは、Drawing No.やDescriptionなどの変数を検索条件として利用でき、複数の条件を組み合わせて図面を絞り込むことも可能です(参照*4)。
属性情報を整備すると、図面管理システムでの集計や管理がしやすくなり、ベテランスタッフの記憶に頼らず必要な図面を探しやすくなります。情報共有もしやすくなり、プロジェクト全体の進捗管理にも活用しやすくなるため、プロジェクトマネージャーにとってもメリットがあります。
入力内容のばらつきを防ぐには、属性フィールドを選択式にしたり、用語の使い方を統一したりするなど、あらかじめ運用ルールを決めておくことが大切です。
3.3. 図面の一元管理
続いて、ファイルサーバーや各PCに分散している図面を一元管理する方法です。図面管理システムやPDMを導入して図面を集約することで、「そもそもどこに保存されているのか分からない」という問題を減らすことができます。
例えば、日立ソリューションズ西日本の「Hi-PerBT Advanced 図面管理」は、設計資産を一元管理する図面管理パッケージです。図面の属性情報を使った検索や全文検索に対応するほか、ユーザー別に図面の操作権限を設定する機能も備えています(参照*5)。
こうした一元管理によって、複数の保存場所を個別に探す手間を減らせます。図面がどこに保存されているかを意識する必要も少なくなり、属人的な管理からの脱却も期待できます。
また、複数の支店や海外拠点とのやり取りがある企業では、システムを通じて同じ図面データを共有しやすくなるため、設計変更の反映漏れなどを防ぐことにもつながります。
3.4. 属性検索・全文検索・インデックスの利用
より細かな条件で図面を探したい場合は、属性検索・全文検索・インデックスの仕組みを組み合わせて活用する方法があります。属性検索は、図番や担当者、リビジョンなど、設定された情報を条件に図面を探す方法です。
検索方法によって、図面を探す際の手がかりは異なります。
| 検索方法 | 主な手がかり | 向いているケース |
| ファイル名検索 | ファイル名 | 探したい図面のファイル名が分かっている |
| 属性検索 | 図番・担当者・リビジョンなど | 図面に登録された情報から絞り込みたい |
| 全文検索 | 対応ファイル内の文字情報 | ファイル内の文字情報を手がかりに探したい |
| 類似図面検索 | 形状など | 名称や図番が分からない図面を探したい |
全文検索に対応したシステムでは、ファイル名だけでなく、対応するファイル内の文字情報を検索対象にできる場合があります。ただし、検索できる文字情報や対応するファイル形式はシステムや設定によって異なるため、導入前に検索対象を確認することが重要です。
Autodesk Vaultでは、ファイル名やコメントなどのプロパティを条件に検索でき、ファイル内容を検索対象にする機能も用意されています(参照*2)。また、ファイルに関連付けられたプロパティとその値は、検索時にすばやく取得できるようインデックス処理されます(参照*3)。
プロジェクトマネージャーとしては、どの段階でインデックスや全文検索が必要になるのかを検討し、必要に応じてシステムへの投資を進めることがポイントです。
3.5. AIによる類似図面検索の導入
最後に、図面検索を高度化する方法としてAIを活用する方法があります。AI図面検索では、ファイル名や図番が分からなくても、形状が似た部品を抽出するなど、従来のキーワード検索では難しかった検索を支援できます。
日立ソリューションズ西日本の「Hi-PerBT 図面検索AI」では、属性・形状・仕様・記号による検索に対応し、これらの条件を組み合わせて図面を探すことができます。形状が似た過去図面を検索できるため、流用設計などで過去の図面を探す場面にも活用できます(参照*6)。なお、検索対象図面はPDF・TIFF、検索元図面はPDF・TIFF・JPG・PNGに対応しています(参照*6)。
ただし、AI検索の導入コストやシステム要件は企業によって異なるため、「まずは命名ルールと属性検索から始める」「図面数が増えた段階でAI導入を検討する」といった段階的な進め方が有効です。
導入後は、ベテランのノウハウだけに頼らず、形状をもとにした検索や類似図面の再利用がしやすくなり、業務の標準化やDX推進にもつながります。
4. CAD図面の検索性を向上した企業事例

ここでは、実際に図面検索や図面管理の改善に取り組み、効果を得た企業を3社紹介します。各社が抱えていた課題は異なりますが、図面管理システムやAI図面検索を活用することで、検索時間の短縮や業務効率の向上につなげています。
それぞれの事例は、自社に合った改善方法を検討する際の参考になります。検索時間を半分以下に短縮した例や、過去図面を活用しやすくした例などは、プロジェクトマネージャーにとっても有益な情報といえるでしょう。
自社でも同じような課題を抱えている場合は、各社の事例を参考にしながら、自社の業務プロセスやシステム要件に合った導入方法を検討してみてください。
以下では、京セラ・三菱化工機・TOTOの事例を順に紹介します。
4.1. 京セラ: 検索時間の大幅短縮
京セラの機械工具事業本部では、膨大な2次元図面の中から設計のベースとなるマスターモデルを探す際の検索効率に課題がありました。特に、類似形状の図面検索をベテラン設計者の経験やノウハウに頼っていたとされています(参照*7)。
そこで、「Hi-PerBT 図面検索AI」と「Hi-PerBT Advanced 図面管理」を導入しました。日立ソリューションズ西日本の事例では、平均30分程度だった図面の検索時間を5分に短縮したと紹介されています(参照*7)。
さらに、同事例では検索時間の削減が提案件数の増加にもつながったと紹介されており、図面検索の効率化が設計業務に与えた効果を確認できます(参照*7)。
4.2. 三菱化工機: 時間と労力の削減
三菱化工機では、図面探しの手間に加え、紙媒体やマイクロフィルムの劣化が課題となっていました。同社は2021年4月に図面のデジタル化プロジェクトを開始し、2022年1月から「Hi-PerBT Advanced 図面管理」を本格導入しています(参照*8)。
日立ソリューションズ西日本の事例では、導入によって図面探しの所要時間が半分に短縮され、セキュリティ強化も実現したと紹介されています(参照*8)。
4.3. TOTO: 効率化と一元管理
TOTOでは、社内に分散していた図面を統合管理し、業務プロセスを効率化するために「作図依頼・標準図庫システム」を構築しています。このシステムには、日立ソリューションズ西日本の「Hi-PerBT Advanced 図面管理」が採用されています(参照*9)。
さらに、2023年4月には「作図依頼・標準図庫」の機能を拡張する形でBIMにも対応しました。日立ソリューションズ西日本の事例では、データの一元管理によって業務の円滑化と生産性向上を実現したと紹介されています(参照*9)。
この事例は、分散していた図面を一元管理し、業務プロセスを効率化した事例の一つといえるでしょう。
3社の取り組みを整理すると、次のようになります。
| 企業 | 主な課題 | 主な取り組み・成果 |
| 京セラ | 類似図面検索をベテラン設計者の経験やノウハウに依存 | 図面検索時間を平均30分程度から5分に短縮 |
| 三菱化工機 | 紙やマイクロフィルムを含む多数の図面を管理 | 図面探しの時間をほぼ半分に短縮し、セキュリティも強化 |
| TOTO | 社内に図面が分散 | 図面を一元管理し、業務の円滑化と生産性向上を実現 |
5. まとめ
CAD図面の検索性を向上させるには、単にファイルを整理するだけでなく、命名ルール、属性情報、全文検索、PDM、AI図面検索など、複数の方法を組み合わせることが重要です。特にプロジェクトマネージャーにとっては、スケジュール管理やリスク低減の観点から、必要な図面を短時間で見つけられる仕組みを早めに整えておくことが大切です。
まずは社内ルールを統一し、図面の命名や保存先を分かりやすくすることから始めましょう。そのうえで属性情報を整備し、一元管理システムを導入すれば、複数の拠点や部門でも共通の環境で図面を扱いやすくなります。
さらに、全文検索やインデックスを活用し、より高度な形状検索が必要になった段階でAI図面検索を検討するとよいでしょう。京セラや三菱化工機、TOTOの事例からも、図面検索や管理の仕組みを整えることで、検索時間の短縮や業務効率の向上につながることが分かります。
自社の規模や課題に合わせて段階的に改善を進めることで、蓄積した図面データを有効に活用し、DX推進やスマートファクトリー化につなげていきましょう。
<参考文献>
(*1)AutoCAD ヘルプ | [検索]ダイアログ ボックス (DesignCenter) | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/ACD/2027/JPN/?guid=GUID-95EE2918-9C4A-4FE7-A333-7A35A58AC90D
(*2)Vault ヘルプ | 検索を実行する | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/VAULT/2027/JPN/?guid=GUID-0C7AA7BF-9158-4F8D-B312-CE0B2ED174A2
(*3)Vault ヘルプ | プロパティをインデックス処理する | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/VAULT/2027/JPN/?guid=GUID-18ECEB1E-C617-4469-A631-D397F827E0BA
(*4)変数タブ(Variables Tab) - 2025 - SOLIDWORKS Design ヘルプ
https://help.solidworks.com/2025/Japanese/EnterprisePDM/fileexplorer/r_Variables_Tab.htm
(*5)図面・資料統合管理パッケージ Hi-PerBT Advanced 図面管理の機能:日立ソリューションズ西日本
https://www.hitachi-solutions-west.co.jp/products/industry/ad/function/
(*6)AIによる図面検索システム|日立ソリューションズ西日本
https://www.hitachi-solutions-west.co.jp/products/industry/ad/aisearch/
(*7)検索時間の削減で提案件数増加に成功!DX推進によるスマートファクトリー化でさらなる事業拡大へ(京セラ株式会社様事例)
https://ma.hitachi-solutions-west.co.jp/products/industry/ad/documentrequest/ad03/
(*8)モノづくりの核となる図面をデジタルで一元管理 製造現場のDXで図面探しの時間短縮・セキュリティ向上を実現(三菱化工機株式会社様事例)
https://ma.hitachi-solutions-west.co.jp/products/industry/ad/documentrequest/ad04/
(*9)BIM原則適用のガイドライン対応に向け盤石な体制を構築!図面の一元管理で属人化を解消し業務プロセスを効率化(TOTO株式会社様導入事例)
https://ma.hitachi-solutions-west.co.jp/products/industry/ad/documentrequest/ad_wp04/
