AIによる類似図面検索システム|メリット・製造業での活用例・導入ポイントを解説

1. はじめに

製造業では、長年にわたって設計・製造を続けるなかで、膨大な量の図面データが蓄積されていきます。しかし、多数のファイルから必要な類似図面を探し出すのは簡単ではありません。日立ソリューションズ西日本も、製造業では「類似図面の検索に時間がかかる」「必要な図面を見つけられず、同じような図面を再設計してしまう」といった課題があると説明しています(参照*1)。

こうした図面検索に手間がかかると、蓄積された設計資産を十分に活用できず、既存の類似部品を参照しないまま、新たに一から設計してしまう可能性があります。その結果、開発スピードの低下や余分なコストの発生につながることもあります。

このような課題への対策として、近年注目されているのが「AIによる類似図面検索システム」です。画像認識や形状解析などの技術を活用し、探したい図面の特徴をAIで解析して、似た図面を効率的に探し出す仕組みが利用されています。

本記事では、AIによる類似図面検索システムの概要やメリットをはじめ、製造業での活用例や代表的なシステム、導入時に押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。図面検索を効率化し、蓄積された設計資産を有効活用したい方は、ぜひ参考にしてください。

2. AIによる類似図面検索システムとは?

AIによる類似図面検索システムとは、過去に蓄積された膨大な図面データから、探したい図面と形状や構造が似ているものをAIで抽出する仕組みです。これにより、従来のキーワード検索では見つけにくかった図面も、そのものの「見た目」や「形状」をもとに探せるようになります。

このシステムには、2D図面だけでなく、PDFや画像ファイルなど幅広い形式に対応する製品があります。さらに、AI-OCR(文字認識技術)を組み合わせ、文字情報や部品名などを検索に活用できるものもあります。以下では、仕組みを理解しやすくするため、まず類似図面検索の基本的な考え方から見ていきます。

次に、従来の図面検索との違いを整理し、AI検索の特徴を説明します。最後に、AIが図面のどのような特徴をもとに類似性を判断しているのかを確認し、類似図面検索システムの基本を理解していきましょう。

2.1. 類似図面検索の基本概念

類似図面検索とは、過去に蓄積された数多くの図面データから、指定した検索対象と構造や形状が似ている図面を抽出する技術のことです。高志インテックの「AI Drawing Search」では、AIが学習した図面や形状の特徴を利用し、キーワードではなく図面に含まれる形状から類似するデータを検索できます(参照*2)。

製造業の現場では、設計部門が保有する膨大な図面を十分に活用できず、課題となるケースがあります。類似図面検索を導入すれば、似ている図面を見つけやすくなり、過去の設計データを再利用するきっかけとなるでしょう。

一方、一般的な「図面管理」システムは、図面をフォルダ階層やデータベースなどで整理・管理するための仕組みです。これに対して「類似図面検索」は、形状の比較や属性情報などを利用して類似する図面を探す機能を指します。それぞれの役割を正しく理解して併用することで、業務全体の効率化が期待できます。

2.2. 従来の図面検索とAI検索の違い

従来の図面検索とAI類似図面検索の主な違いは、次のとおりです。

項目従来の図面検索AI類似図面検索
主な検索条件ファイル名、図番、部品名など形状、画像の特徴、文字情報など
図番が不明な場合探しにくいことがある形状から探せる場合がある
検索方法キーワード検索が中心形状検索やキーワード検索など
主な用途情報がわかっている図面の検索類似図面や過去設計の探索

AI類似図面検索では、名称や図番がわからない場合でも、図面そのものの形状や画像の特徴をもとに検索できます。高志インテックでは形状検索と属性情報を組み合わせた検索に対応しており、テクノアでは形状検索とAI-OCRによる文字検索を組み合わせたハイブリッド検索を提供しています(参照*2)(参照*4)。このように、システムによっては形状だけでなく、文字情報や属性情報を組み合わせて目的の図面を探せます。 

2.3. AIが図面検索で注目するポイント

AIが図面の類似性を判断する方法は、製品によって異なります。例えば、創屋のAI類似図面検索システムでは、ディープラーニングを用いて図面の特徴を抽出し、ベクトルとして表現したうえで、登録済みの図面との類似度を算出しています(参照*5)。

また、AI-OCR技術を組み合わせたシステムでは、図面上の文字情報を読み取り、検索や絞り込みに活用できます。日立ソリューションズ西日本の「Hi-PerBT 図面検索AI」では、形状検索向けのAIとAI-OCRを利用し、形状と文字情報を活用した類似図面検索を行っています(参照*1)。

製品によっては、図面の傾きや位置、縮尺のズレを自動で補正して比較する仕組みも備えています。そのため、操作性や検索精度を確認する際には、実際に自社の図面データを使って検証することが重要です。 

3. AIによる類似図面検索システムのメリット

AI類似図面検索システムを導入するメリットは、図面検索にかかる時間を短縮できることだけではありません。設計や見積もり、品質管理など、さまざまな業務の効率化につながる可能性があります。

具体的には、図面探しに費やす時間を大幅に削減することで、設計者がより創造的な業務に集中しやすくなります。また、過去の図面資産を活用して流用設計を行うことで、コスト削減につなげることも可能です。本節では、こうしたメリットを4つのポイントに分けて詳しく見ていきましょう。

適切に導入・運用できれば、チーム全体の生産性向上やプロジェクトの納期短縮にもつながります。さらに、品質情報を蓄積・参照する基盤を整えることで、エラーや不良の早期発見に役立ち、組織的なノウハウの継承を促す仕組みとしても期待できます。

3.1. 時間の節約と効率化

第一に挙げられるメリットは、図面検索にかかる時間を大幅に削減できる点です。膨大な数のフォルダを一つずつ確認しなくても、形状や画像の特徴を使って効率的に検索できます。

たとえば、図番があいまいな状態でも、形状が似ている図面をAIで検索できるため、ファイル名を使ったキーワード検索では見つけられなかった図面を素早く発見できます。これにより、設計者や見積担当者が本来取り組むべき作業、たとえば新しいアイデアの検討や社内調整などに使える時間を増やせます。

全社や部署単位で導入し、運用に慣れていけば、人為的な検索漏れを減らせるだけでなく、プロジェクト全体のスピードアップも期待できます。

3.2. 設計資産の再利用の促進

AI類似図面検索は、過去の設計資産を活用しやすくする手段です。新しい設計案件が発生した際、システム上で検索対象となる図面から類似図面を探せば、既存図面の一部を修正するだけで対応できるケースがあります。

たとえば、以前生産した部品と寸法がわずかに異なるだけであれば、その図面をもとに修正することで、設計時間や製造コストを抑えられる可能性があります。流用設計を活用することで、まったく一から設計する場合と比べて、作業時間の短縮につなげられます。

こうした活用を進めることで、新製品開発のスケジュールを短縮したり、社内外で発生するコストを削減したりと、企業の競争力向上にもつながる可能性があります。

3.3. 見積もりプロセスの高速化

第三のメリットとして、見積業務の効率化が挙げられます。新しい見積依頼が発生した際、対象図面と類似する過去案件を検索できれば、過去の見積を探す手掛かりになります。創屋では、AI類似図面検索を販売管理システムや生産管理システムと連携させ、過去の見積や生産情報を流用することで、見積作成の時間短縮につなげられるとしています(参照*5)。

こうしたデータを参考にすることで、担当者は新規案件の見積額をより迅速に算出しやすくなります。過去の実績を確認しながら見積もりを作成できる点は、AI類似図面検索を業務に活用するメリットのひとつです。

製造業における見積業務を効率化する手段として、AI類似図面検索システムは複数部門の情報を連携させる役割も担えます。

3.4. 品質管理とノウハウの活用

最後に、品質情報との関連付けも重要なメリットです。不良が発生した部品や過去のトラブル履歴を確認したくても、正確な図面番号がわからなければ、必要な情報を探すのに時間がかかる場合があります。

AI類似図面検索を活用すれば、不具合が発生した部品と形状が似た図面を見つけ、その部品に関連する品質データやトラブル対応の情報と結び付けやすくなります。高志インテックでは、約10万件のDWG図面を対象に類似形状を検索し、検索結果を製造履歴管理システムと連携して過去の類似品の品質履歴を確認する事例を紹介しています(参照*2)。 

その結果、組織内でエラーの防止策を共有しやすくなり、品質の一貫性を維持するための仕組みも構築しやすくなるでしょう。

4. AIを活用した類似図面検索システム

ここでは、各社が提供するAI類似図面検索システムをいくつか紹介します。「おすすめランキング」ではなく、それぞれの製品がどのような特徴を持ち、どのような技術を活用しているのかを見ていきます。

システムを選ぶ際は、自社が抱える顕在的・潜在的なニーズに加え、既存の管理システムと連携できるかなど、具体的なポイントをもとに検討することが重要です。実際の導入事例を見ると、類似図面の検索だけでなく、設計支援や業務DX、品質管理など、幅広い場面で活用されています。

以下で紹介するシステムは、それぞれ強みや対応ファイル形式、画像認識技術の活用方法などが異なります。自社の環境に合っているかを判断する際の参考にしてください。

システム主な特徴主な活用・対応
Hi-PerBT 図面検索AI形状検索AI、AI-OCR、図面比較類似図面検索、改訂前後の差異確認
AI Drawing Search形状検索、手書き検索、属性検索PDF、JPEG、PNG、TIFF、DXF、DWGなど
AI類似図面検索 パッケージ版自動取り込み、CSV属性登録スモールスタート、ブラウザ利用
テクノア AI類似図面検索類似度表示、検索範囲の自動検出設計・見積業務
創屋 AI類似図面検索システム部分検索、2D・3D対応見積、品質改善、生産情報との連携

4.1. Hi-PerBT 図面検索AI|日立ソリューションズ西日本

引用:https://www.hitachi-solutions-west.co.jp/news/2026/20260626.html

「Hi-PerBT 図面検索AI」は、日立ソリューションズ西日本が提供する製造業向けのAI類似図面検索システムです。最新版では、形状特徴の識別に適したAIエンジンとAI-OCRを活用し、類似図面の検索精度を高めています(参照*1)。

また、図面比較機能ではAI画像認識技術により、図面の傾きや位置、縮尺のズレを自動で検出・補正し、改訂前後の差異を抽出できます。同社は2020年から「Hi-PerBT 図面検索AI」を提供しており、最新版では検索機能と比較機能が強化されています(参照*1)。

4.2. AI Drawing Search|高志インテック

引用:https://www.koushi-intec.co.jp/service/industry/ai-drawing-search.html

高志インテックが提供する「AI Drawing Search」は、AIが学習した図面や形状の特徴をもとに、類似する図面を検索するシステムです。PDF、JPEG、PNG、TIFFの画像形式に加え、DXF、DWGなどのCADファイルにも対応しています(参照*2)。

また、手書きした形状による検索や、属性情報と類似図面・形状を組み合わせた検索にも対応しています。公式サイトでは、約10万件のDWG図面を対象とした品質履歴検索や、約5万枚のPDF図面を対象とした流用設計の事例も紹介されています(参照*2)。

4.3. AI類似図面検索 パッケージ版|高志インテック

高志インテックの「AI類似図面検索システム パッケージ版」は、AI類似図面検索システムの主な機能を汎用化した製品です。指定フォルダに図面ファイルを配置すると自動で取り込まれ、CSVファイルによる属性情報の登録にも対応しています(参照*3)。

また、PoCを行わずに早期導入できることや、初期投資を抑えてスモールスタートしやすい点も特徴です。PCやタブレットのブラウザから利用でき、端末へのインストールも不要です(参照*3)。

4.4. AI類似図面検索|テクノア

引用:https://www.techs-s.com/product/ai-ruiji

テクノアが提供する「AI類似図面検索」は、設計や見積業務のDXを支援するシステムです。検索したい図面をアップロードすると、過去図面から類似するものを検索し、類似度の高い順に表示します(参照*4)。

また、検索対象となる部分をAIが自動で検出・選択する機能を備えています。さらに、AI-OCRで図面上の文字をテキストデータ化し、形状検索と文字検索を組み合わせたハイブリッド検索にも対応しています(参照*4)。

4.5. AI類似図面検索システム|創屋

引用:https://www.souya.biz/drawing-soln/drawing-search/

創屋のAI類似図面検索システムは、設計だけでなく、見積もりや品質改善などへの活用を想定したシステムです。図面全体だけでなく、特徴のある部分を指定した検索にも対応しており、2D画像に加えて3D CADデータも検索対象にできます(参照*5)。

また、販売管理システムや生産管理システムと連携し、類似図面に関連する見積・生産情報を活用することも可能です。公式サイトでは、過去の見積もりを流用して見積作業を効率化した事例や、自社図面を使ったPoCを経て独自のAIモデルを構築した事例も紹介されています(参照*5)。

5. AI類似図面検索システムを導入するときのポイント

導入を成功させるためには、製品の性能だけでなく、自社の運用方法や既存の図面データの整理状況を踏まえて検討する必要があります。AI類似図面検索のメリットを十分に生かすには、事前の準備や検証が欠かせません。

導入前に確認したい主なポイント

  • 自社の図面形式に対応しているか
  • 何を基準に「類似」と判断したいか
  • 既存の図面管理システムと連携できるか
  • 自社の図面を使って検索精度を検証できるか

以下では、それぞれのポイントを詳しく見ていきます。 

5.1. 対応図面形式の確認

まず、自社が保有する図面がどのような形式で保存されているかを確認することが重要です。2D図面だけでなく、PDFや画像ファイル、さらにDXFやDWGなどのCADデータが混在しているケースも少なくありません。

システムによっては、3Dデータや特殊なファイル形式に対応していない場合もあります。そのため、導入前に対応しているファイル形式をきちんと確認することが重要です。

この確認は、図面の取り扱い方法を見直す良い機会にもなるでしょう。適切なフォルダ構成やファイル名のルールを整備しておくことで、その後の運用もスムーズに進めやすくなります。

5.2. 検索基準の明確化

次に、何を基準に「類似」と判断したいのかを明確にしておく必要があります。製品全体の外形なのか、特定部分の形状なのか、あるいは文字情報まで含めたいのかなど、目的によって基準は異なります。

たとえば、外形が似ていればよいのか、内部構造まで確認したいのかを事前に決めておかなければ、導入後に検索結果が期待と異なり、戸惑う可能性があります。

AIによる形状検索やAI-OCRを使った図面検索などの機能をどのように活用するか、導入担当チームで検討して基準を決めておくことで、社内にもスムーズに展開しやすくなります。

5.3. 既存の図面管理システムとの連携

すでに図面管理システムを利用している場合は、AI類似図面検索システムとスムーズに連携できるかどうかも重要なポイントです。せっかく導入しても、別々のシステムに分散したデータを行き来する必要があれば、かえって作業負荷が増える可能性があります。

現在のフォルダ構造やデータベースの設計を一部変更する必要があるのか、あるいはCSVなどを使って属性情報をやり取りできるのかといった点を事前に確認しておきましょう。

また、製品によってデータの取り込み方法や既存システムとの連携方法が異なるため、ベンダーの説明を確認しながら、自社に適した導入方法を見極めることが大切です。 

5.4. PoCでの検索精度と使い勝手の検証

最後に、PoC(概念実証)やトライアル運用を行い、実際の自社データを使って検索精度や操作性を確認することが重要です。高志インテックでは、AI類似図面検索システムの導入前に、検索精度や利用方法を確認するためのPoCによる事前検証を推奨しています(参照*2)。

検索精度は、自社で扱う図面の特徴や検索目的、システムの方式によって異なります。そのため、本格導入前に自社の図面を使い、期待する類似図面が検索結果に表示されるかを確認しておくと、導入後のミスマッチを抑えやすくなります。

導入規模や段階的な展開方法を検討しながら、PoCの結果を社内で共有し、本格導入の判断材料として活用するとよいでしょう。

6. まとめ

AIによる類似図面検索システムは、膨大に蓄積された図面から必要なものを効率よく探し出し、設計や見積もり、品質管理など幅広い業務を支援する有効な手段です。

形状を中心に検索するシステムだけでなく、文字情報や属性情報を組み合わせて検索できるものもあり、自社が重視する要素によって適した選択肢は異なります。また、製品によって対応する図面形式や既存システムとの連携方法も異なるため、導入の初期段階から必要な要件を整理しておくことが重要です。

AIによる図面検索は、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるうえでも、蓄積された図面資産を有効活用する手段となります。PoCなどで実際の検索精度や業務フローとの適合性を確認しながら、自社の目的や環境に合ったシステムの導入を検討しましょう。

建築・土木業向け BIM/CIMの導入方法から活用までがトータルで理解できる ホワイトペーパー配布中!

❶BIM/CIMの概要と重要性
❷BIM/CIM導入までの流れ
❸BIM/CIM導入でよくある失敗と課題
❹BIM活用を進めるためのポイント
についてまとめたホワイトペーパーを配布中

<参考文献>
(*1)製造業向けAI類似図面検索システム「Hi-PerBT 図面検索AI」の最新版を提供開始|日立ソリューションズ西日本 
https://www.hitachi-solutions-west.co.jp/news/2026/20260626.html

(*2)AI類似図面検索システム AI Drawing Search | 製造業 | 高志インテック
https://www.koushi-intec.co.jp/service/industry/ai-drawing-search.html

(*3)AI類似図面検索システム パッケージ版 | 製造業 | 高志インテック
https://www.koushi-intec.co.jp/service/industry/p-ai-drawing-search.html

(*4)図面検索|設計・見積業務のDX「AI類似図面検索」|中小製造業様向け DXソリューション・生産管理システムのテクノア
https://www.techs-s.com/product/ai-ruiji/search

(*5)AIで 類似図面の検索 / 見積作業・品質改善 | 創屋株式会社
https://www.souya.biz/drawing-soln/drawing-search