CDE(共通データ環境)でBIM情報を管理する方法|仕組み・運用ルールを解説
1. はじめに
建設プロジェクトでは、設計者や施工者、発注者、協力会社など多くの関係者が、BIMモデルや2D図面、仕様書などの情報を扱います。そのため、どれが最新データなのか分からなくなったり、承認状況を追跡しにくくなったりすることがあります。
こうした情報を関係者間で共有・管理するために活用されるのが、CDE(共通データ環境)です。CDEでは、変更履歴や承認プロセスを整理しながら、BIMワークフローに沿って情報を管理できます。
本記事では、CDEによるBIM情報管理の仕組みをはじめ、4つのステータス、運用ルール、活用事例を解説します。
2. CDEでBIM情報を管理する仕組み

CDEは“Common Data Environment(共通データ環境)”の略で、BIMモデルや2D図面、関連資料などの情報を関係者間で共有・管理するための環境です。単にファイルを保管するだけでなく、バージョンや変更履歴、承認プロセスなどのルールを組み合わせ、プロジェクト情報を適切に管理するために活用されます。CDEは特定の単一システムを指すものではなく、複数のシステムを連携して構成することもできます。
ここでは、CDEの基本的な概念や機能の概要、一般的な共有フォルダとの違いについて説明します。建設プロジェクトの参加者が、CDE上でどのように役割を分担し、どのステータスで情報を共有するのかを理解することで、プロジェクトを円滑に進めやすくなります。
CDEを導入する際は、運用ルールや承認プロセス、アクセス設定など、事前に整理すべき事項があります。これらを適切に設定しておけば、誰がどの資料を参照し、どのステータスで承認を行うのかが明確になり、BIMプロジェクトにおけるミスや手戻りを抑えやすくなります。
CDEの仕組みを理解したうえで、共有フォルダとは異なる情報管理の仕組みを活用し、BIMワークフローを支える基盤として運用することが重要です。
2.1. CDEの基本概念と機能
CDEは、BIMモデルだけでなく、2D図面や仕様書、関連資料、承認情報などを関係者間で共有・管理するための環境や仕組みです。国土交通省のガイドラインでは、CDEを用いたデータ共有によって、BIMデータや関連情報を共有できるほか、データの更新履歴やチェック、承認などのフローや状況を管理・記録できるとしています。(参照*1)
大きな利点の一つは、個別のフォルダやローカルPCに分散したデータを集約できる点です。プロジェクト参加者が同じデータを参照できるため、バージョンの取り違えや承認漏れを防ぎやすくなります。また、BIMモデルの更新時に変更内容を関係者へ通知できれば、情報の整合性も保ちやすくなります。
さらに、CDE環境では、バージョンやステータスを管理できます。どの段階で変更が行われたのかを確認し、必要に応じて過去の状態をアーカイブとして保持することも可能です。この仕組みにより、情報管理にかかる作業を効率化しやすくなります。
CDEは、プロジェクトにおける情報共有を支える基盤です。関係者が共通の環境を利用し、情報整理や品質チェックを行うことで、建設プロジェクトをより円滑に進めやすくなります。
2.2. CDEと一般的な共有フォルダの違い
一般的な共有フォルダは、主にファイルの保存や共有に利用されます。一方、CDEでは、プロジェクトで定めた情報管理ルールに基づき、承認プロセスや変更履歴、情報のステータスなどを管理します。主な違いを整理すると、以下のとおりです。
| 項目 | 一般的な共有フォルダ・クラウドストレージ | CDE |
| 主な用途 | ファイルの保存・共有 | プロジェクト情報の共有・管理 |
| バージョン管理 | サービスによって異なる | 情報管理ルールに沿って管理 |
| 承認プロセス | サービスによって異なる | ワークフローに組み込んで管理 |
| ステータス管理 | 必須ではない | 作業中・共有・公開・アーカイブなどで管理 |
| 運用の考え方 | ファイル共有が中心 | ワークフローと情報管理を含めて運用 |
UK BIM Frameworkでは、CDEについて、まず情報管理のワークフローを構築し、そのワークフローを支えるための技術的なソリューションを選定することが重要とされています。また、プロジェクトのCDEが複数のCDEソリューションから構成される場合もあります。(参照*2)そのため、単にファイルの保存場所を用意するだけでなく、プロジェクト全体の情報共有や管理の流れを支える仕組みとして捉えることが重要です。
このようにCDEを活用することで、建設プロジェクトに必要な情報管理のルールを反映しながら、多くの参加者が適切なデータを適切なタイミングで共有・活用しやすくなります。
3. CDEで管理するBIM情報
CDEでは、プロジェクトに関連するさまざまな情報を管理できます。主な例は以下のとおりです。
- BIMモデル
- 2D図面・PDF図面
- IFCデータ
- 仕様書
- 会議議事録
- スケジュール
重要なのは、これらの情報を単に保存するのではなく、バージョンや承認状況、更新履歴とあわせて管理することです。関係者が適切な情報を参照できるようにすることで、古いモデルや図面を誤って使用するリスクを抑えやすくなります。
Autodesk Universityでは、CDEをBIMワークフローの一部として情報を統合管理する「デジタルハブ」と説明しており、ドキュメントやモデルだけでなく、スケジュールや変更管理などのプロジェクト情報も管理対象として紹介しています。(参照*3)Autodesk Construction Cloudなどのソリューションを利用することで、BIMモデルや関連資料を共有・管理する環境を構築できます。
4. CDEでBIM情報を管理する4つのステータス
BIMプロジェクトでCDEを運用する際は、情報の「状態」を明確にしておくことが重要です。国土交通省のガイドラインでは、プロジェクト関係者間で効果的にデータ共有や協働作業を行うため、ISO 19650で定義される「作業中(Work in Progress)」「共有(Shared)」「公開(Published)」「アーカイブ(Archive)」の4つの情報ステータスによる管理が必要とされています。(参照*1)
これらを区分することで、データがどの段階にあるのかを関係者が把握しやすくなり、承認プロセスも管理しやすくなります。以下では、4つのステータスを順に解説します。
| ステータス | 情報の状態 | 主な目的 |
| 作業中(Work in Progress ) | 各担当者・チームが作業している状態 | 情報の作成・検討 |
| 共有(Shared) | 関係者間で情報を共有している状態 | 確認・調整 |
| 公開(Published) | 必要なレビューや承認を経た状態 | 定められた目的での利用 |
| アーカイブ(Archive) | 発注者が確定したBIMデータを保管する状態 | 将来の参照・維持管理などでの活用 |
ステータス管理は、BIMワークフローを適切に進めるうえで重要です。データが定められた段階を経て更新されるかどうかは、プロジェクト全体の品質にも関わります。ステータスを誤ると、たとえば施工に使用する前の未完成な情報がそのまま利用される可能性もあるため、ルールに沿って確実に運用することが大切です。
4.1. 作業中(Work in Progress )
作業中(Work in Progress )は、設計者や各チームが内部で検討や作業を進めている段階を指します。たとえば、初期設計でさまざまなパターンを試しながら検討している時期には、このステータスが該当します。
作業中の情報は正式な承認を得たものではなく、各作業者が他の主体からアクセスできない個別環境で作業している状態です。作業中にもデータは更新されるため、必要に応じて内部で変更履歴を管理しておくことが重要です。
作業が完了した情報は、必要なチェックやレビュー、承認などを経たうえで、関係者と情報を共有する「共有(Shared)」のステータスへ移行します。
4.2. 共有(Shared)
共有(Shared)は、個別作業を終えた情報を他のチームや関係者と共有し、確認や調整を行うためのステータスです。作業中の情報を必要なチェックやレビュー、承認などを経て共有することで、関係者が共通の情報をもとに調整を進められます。
たとえば、建物の構造を設計するチームと設備担当が、モデルの衝突や干渉をチェックする際に、この「共有」ステータスの情報を使って相互に確認します。確認の結果、修正が必要な場合は作業内容を見直し、必要な調整を行います。
このように、共有段階で関係者同士が確認や調整を行うことで、次のステータスへ移行する前に情報の整合性を確認できます。
4.3. 公開(Published)
公開(Published)は、必要なレビューや承認を経て、定められた目的で使用することが認められた情報の状態です。国土交通省のガイドラインでは、受注者側で取りまとめた情報を発注者へ共有し、発注者の承認を得て「公開」の状態になる流れが示されています。
公開された情報は、より詳細な設計や施工、維持管理など、プロジェクトで定められた目的に応じて利用されます。そのため、どの情報をどの用途で使用できるのかを明確にし、変更履歴についても適切に管理しておくことが重要です。
共有段階で確認や調整が必要となった情報は、必要な修正を行ったうえで、定められた承認プロセスに沿って公開へ移行します。
4.4. アーカイブ(Archive)
アーカイブ(Archive)は、確定したBIMデータを保管する状態です。国土交通省のガイドラインでは、「公開(Published)」状態のBIMデータは、プロジェクト完了後、将来の参照や維持管理・運用などのために「アーカイブ(Archive)」へ移行するとしています。
アーカイブされた情報は、必要に応じて発注者が活用します。また、ISO 19650におけるCDEの概念では、情報コンテナの開発履歴を確認できる監査証跡としての役割も示されています。
このように、4つのステータスを順序立てて運用することで、関係者がどの情報を使うべきか判断しやすくなります。作業中の情報が誤って現場で使用されるといった事態を防ぐためにも、ステータスのルールを社内外の関係者で共有しておくことが重要です。
5. CDEでBIM情報を管理するための運用ルール

CDEは、ツールを導入するだけでは十分な効果を発揮できません。国土交通省のガイドラインでは、CDEを構築して関係者間でデータを共有する際に検討する情報管理ルールとして、承認プロセス、アクセス権限、バージョン・変更履歴管理、ファイル命名規則などを挙げています。(参照*1)
運用ルールが明確でないと、「最新版」「最終版」「承認済み改」など複数の名称が混在し、混乱の原因になります。そのため、プロジェクトの規模や参加企業の特性に合わせてルールを整え、関係者間で共有しておくことが重要です。
以下では、代表的な運用ルールを5つ挙げ、それぞれの重要性と具体的な運用方法を紹介します。
| 運用ルール | 主なポイント |
| ファイル名とフォルダ構成 | 命名方法や保存場所を統一する |
| アクセス権限 | 閲覧・編集・承認などの権限を役割ごとに設定する |
| バージョンと変更履歴 | 最新版と過去版を区別し、変更内容を記録する |
| 承認フロー | 誰が確認・承認するのかを明確にする |
| 情報共有のタイミング | どの段階で情報を共有するのかを決める |
5.1. ファイル名とフォルダ構成の統一
まず、ファイル名とフォルダ構成のルールを明確にしましょう。たとえば「プロジェクト名_建物番号_図面種別_バージョン番号」のような形式で命名すると、どの建物のどの段階のデータなのかを把握しやすくなります。
フォルダ構成をあらかじめ決めておけば、関連資料を探す手間が減り、検索性も高まります。BIMモデル用フォルダや参考資料用フォルダなどに分類し、共同作業を行う関係者が迷わず利用できるようにしておくことで、作業効率の向上につながります。
このルールを徹底するためには、プロジェクト開始時に関係者が内容を理解しているか確認し、定期的に運用状況を見直すことが重要です。
5.2. アクセス権限の設定
CDE上のすべてのデータを自由に閲覧・変更できる状態にすると、意図しない編集や機密情報の漏洩リスクが高まります。そのため、閲覧権限、編集権限、承認権限などを役割ごとに設定することが重要です。
たとえば、設計担当はモデルを編集できる一方、施工チームは閲覧のみ可能にするなど、役割に応じて細かく権限を設定します。これにより、誰がどこまで操作できるのかが明確になり、権限の管理もしやすくなります。
権限設定は一度決めれば終わりではなく、プロジェクトのフェーズやメンバー構成の変化に合わせて、適宜見直すことが大切です。
5.3. バージョンと変更履歴の管理
バージョン管理を徹底することで、どれが最新のファイルなのか迷いにくくなります。CDEには、バージョン番号の更新や変更内容の記録を行える機能を備えたものも多くあります。
バージョンやリビジョンの表記方法をあらかじめ統一し、変更履歴には「依頼主からの追記要望対応」「干渉チェック結果反映」など、具体的な内容を記録します。こうすることで、後から以前の状態を確認したい場合にも、履歴をたどりやすくなります。
特に大規模なBIMプロジェクトではデータの更新が頻繁に発生するため、バージョン履歴を関係者間で共通して管理することが重要です。
5.4. 承認フローの確立
プロジェクトで作成したBIMモデルや図面を、どの順番で誰が承認するのか、あらかじめ流れを決めておくことが重要です。承認プロセスが曖昧だと、誰が責任を持って公開ステータスへ移すのか分からず、作業が遅れる可能性があります。
承認フローはプロジェクトによって異なり、専門分野ごとに複数段階のチェックが必要となるケースもあります。 CDEには承認フローを可視化できるものもあるため、こうした機能を活用しながら、ステータス移行時の流れを整理しておきましょう。
承認フローが明文化されていれば、担当者が不在の場合にも、誰が代わりに承認するのかを決めやすくなり、業務の停滞を防ぎやすくなります。
5.5. 情報共有のタイミングの決定
最後に、情報を共有するタイミングも明確にしておく必要があります。作業が完了し、必要なチェックやレビュー、承認を経た情報を、どのタイミングで共有するのかを決めておかないと、関係者間の情報共有に遅れや混乱が生じる可能性があります。
一方で、共有が遅すぎるとプロジェクトの進行が滞る要因にもなるため、適切なタイミングを検討することが重要です。たとえば、週に一度の定例ミーティングの前後で共有する情報をまとめることで、効率的に確認や判断を進められます。
このように、CDEを十分に活用するためには、運用ルールを策定し、継続して守ることが欠かせません。プロジェクト全体で認識をそろえるためにも、早い段階でこれらのルールを整備しておきましょう。
6. ISO 19650とCDEの関係
ISO 19650シリーズは、BIMを活用した情報管理に関する国際規格です。ISO 19650-1では、情報の交換・記録・バージョン管理・整理などを含む情報管理の概念や原則が示されています。(参照*4)CDEは、こうした考え方に沿って情報を管理するための環境として活用できます。
ISO 19650は特定のCDE製品やソフトウェアを指定するものではありません。そのため、実際に使用する技術やシステムは、プロジェクトの要件に応じて選定する必要があります。
7. CDEを活用したBIM情報管理の事例
国土交通省の「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」では、木造住宅プロジェクトを対象に、CDEを活用した情報共有の検証が行われました。この事業では、クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」がCDE環境として利用されています。(参照*5)
作業中のデータは各担当者のPC内に保存し、関係者へ受け渡す際には、ANDPAD内の資料フォルダへアップロードする運用が行われました。また、打合せ資料や議事録も資料フォルダに保存し、関連する連絡にはチャット機能が利用されています。(参照*5)
検証では、CDEを活用した情報共有について、次のような結果が報告されています。(参照*5)
- 企画・設計段階の資料のやり取り:241件
- CDE下で行われたやり取り:201件
- CDE環境を通じたデータ共有の評価:5段階中平均4
また報告書では、チャット機能を含めたCDEの活用によって情報の集約と共有がスムーズに進み、通常の住宅プロジェクトと比べて生産性向上に大きく寄与したと考察されています。(参照*5)
一方で、プレビュー機能や必要な情報を仕分けする機能などについては課題も報告されています。この事例からも、CDEを活用する際には、プロジェクトに必要な機能や情報共有の方法を事前に整理しておくことが重要だと分かります。
8. まとめ
本記事では、CDE(共通データ環境)の役割と、BIM情報管理における具体的な運用方法を解説しました。CDEは、BIMモデルを単に保管する場所ではなく、承認プロセスやステータス管理、変更履歴の追跡などを行うための情報管理基盤です。
特に「作業中→共有→公開→アーカイブ」の4つのステータスを活用することで、各データがどの段階にあるのかを明確にできます。未承認の情報を誤って使用するリスクを抑え、プロジェクト全体の品質を保ちやすくなります。
また、実際の運用では、ファイル名の統一、アクセス権の設定、バージョンや承認フローの確立、適切なタイミングでの情報共有が重要です。CDEを適切に運用することで、プロジェクトマネージャーや関係企業間の情報共有が円滑になり、BIM情報の整合性や管理性の向上が期待できます。
CDEを導入・活用する際は、システムだけに注目するのではなく、運用ルールや組織内での合意、ISO 19650の考え方も踏まえて取り組むことが重要です。プロジェクトに適した運用方法を整え、円滑なBIM情報管理につなげていきましょう。
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<参考文献>
(*1)BIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第3版)|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/002012930.pdf
(*2)Guidance Part C – Facilitating the common data environment (workflow and technical solutions)|UK BIM Framework
https://ukbimframework.org/wp-content/uploads/2020/09/Guidance-Part-C_Facilitating-the-common-data-environment-workflow-and-technical-solutions_Edition-1.pdf
(*3)ISO 19650, 共通データ環境, CDE, Autodesk Construction Cloud | Autodesk University
https://www.autodesk.com/autodesk-university/ja/article/ISO-19650-Common-Data-Environment-and-Autodesk-Construction-Cloud-2021
(*4)ISO 19650-1:2018|ISO
https://www.iso.org/standard/68078.html
(*5)木造住宅における、BIMとクラウドサービスを用いたCDEとECIの効果検証・課題分析|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001473080.pdf
