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AutoCADのビューポートクリップ機能を徹底解説!作業効率を劇的改善

1. はじめに

AutoCADで図面を仕上げるうえで、モデル空間とレイアウト空間の使い分けはとても重要です。特に、レイアウト空間で図面の一部だけを強調して見せたいときに役立つのが、「ビューポート」と「ビューポートクリップ機能(VPCLIP コマンド)」です。

ビューポートとは、モデル空間で作成した図面の特定部分を、レイアウト空間に切り出して表示するための「窓」のようなものです。このビューポートにクリップ機能を使うことで、表示したい部分だけを自由な形で切り抜き、不要な箇所をすっきり隠すことができます。

例えば、図面の中で強調したい場所だけを丸く切り抜いたり、複雑な形でくり抜くことも可能です。その結果、見やすく伝わりやすい図面になり、クライアントや上司へのプレゼンテーションの質も高まります。さらに、作業効率のアップや印刷ミスの防止にもつながります。

この記事では、AutoCAD初心者にもわかりやすいように、専門用語をできるだけかみくだいて説明します。VPCLIPコマンドの基本的な使い方から、応用テクニック、よくあるミスの対処法まで、実務で役立つ知識を順を追って解説していきます。

これからAutoCADをもっと使いこなしたい方にとって、ビューポートクリップはきっと強力な武器になります。ぜひ最後まで読み進めて、図面作成やプレゼン作業のスピードアップに役立ててください。

2. ビューポートとは?AutoCADでの役割と基本操作

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https://www.autodesk.com/jp/solutions/autocad-tutorials

ビューポートは、AutoCADで図面を見やすく整理し、効率よくレイアウトするために欠かせない機能です。AutoCADでは、作図のための「モデル空間」と、印刷やプレゼンのための「レイアウト空間」という2つの空間があり、それぞれに異なる役割があります。

モデル空間は、無限に広がる作業エリアのようなもので、実際の寸法通りに図面を描く場所です。一方、レイアウト空間は、A3やA4などの印刷用紙をイメージした画面で、図面の印刷やプレゼン用の整形を行う場所です。ここで活躍するのがビューポートです。

ビューポートは、モデル空間の一部をレイアウト空間に「窓」のように表示する仕組みです。通常は四角形で表示されますが、VPCLIPコマンドを使えば、円や多角形など、任意の形に変更することも可能です。

さらに、複数のビューポートを使い分けることで、同じ図面の異なる部分を異なる縮尺で表示することができ、プレゼン資料や詳細図の作成にも役立ちます。

この章では、まずモデル空間とレイアウト空間の違いを整理し、次にビューポートの定義や基本的な操作方法、そして複数ビューポートの使い方について順を追って解説します。これらを理解しておくことで、後述するビューポートクリップ機能もより効果的に活用できるようになります。結果として、作図の効率が上がり、図面の表現力も飛躍的に高まるでしょう。

2.1. モデル空間とレイアウト空間の違い

AutoCADの「モデル空間」は、図面の作成そのものを行うための場所で、実際の寸法で作図するのが基本です。建物、機械、配管など、スケールの異なるさまざまな対象物を正確に描くために、広大で制限のない空間として設計されています。

一方、「レイアウト空間」は、描いた図面を印刷したり、プレゼンテーション資料として整えるための場所です。実際の用紙サイズ(たとえばA3やA4)に合わせてレイアウトを調整できるので、図面をどのように見せるかを視覚的に確認しながら配置することができます。

この2つの空間を適切に使い分けることで、作業効率が大きく向上します。モデル空間では自由に描き込み、レイアウト空間では印刷・出力の見た目を整える、という役割分担を理解しておくことが大切です。

なお、VPCLIPをはじめとするビューポートクリップの操作は、レイアウト空間上で行うのが基本です。そのため、レイアウト空間の概念と使い方をきちんと押さえておくことが、正確な操作とトラブル防止の第一歩になります。

モデル空間とレイアウト空間が混在しないように意識しながら作業することで、CADスキルの向上にもつながりますし、業務全体の時間短縮にも効果を発揮します。

2.2. ビューポートの定義と基本機能

ビューポートとは、レイアウト空間に設置する「窓」のようなもので、モデル空間の特定の範囲を切り取って表示するための要素です。通常は四角形で作成されますが、必要に応じてVPCLIPコマンドを使えば、丸い形や不規則な形状にも変更できます。

ビューポートを作成するには、レイアウトタブを開き、表示したい領域にウィンドウを配置します。ビューポート内をダブルクリックすれば、モデル空間をその場で拡大・縮小しながら見渡すことができ、目的の箇所を自在に表示できます。

また、ビューポートには「縮尺の固定」や「画層の表示制御」といった便利な機能が備わっています。たとえば、同じ図面を複数のビューポートでそれぞれ異なる縮尺に設定し、一方は全体図、もう一方は詳細図として使うことが可能です。特定の画層だけをビューポートごとに非表示にすることもでき、図面の見せ方に柔軟性が生まれます。

こうした基本機能を理解しておくことで、AutoCADでの図面作成が格段に効率的になります。また、後述するビューポートクリップ機能と組み合わせることで、より高精度かつ魅力的な図面の表現が可能になります。

2.3. 複数ビューポートの活用方法

1つのレイアウト空間に複数のビューポートを配置すると、同じ図面の別の箇所や異なる縮尺を同時に表示することができます。たとえば、左側のビューポートには図面全体を縮小表示し、右側のビューポートでは重要な部分を拡大して詳細に表示するといった使い方です。

この方法は、プロジェクト中に頻繁に図面を確認・修正する場面で非常に効果を発揮します。複数のビューポートを並べておくことで、必要な情報を瞬時に確認でき、効率よく作業を進められます。

また、印刷時にも複数のビューポートが役立ちます。レイアウト空間でそれぞれのビューポートの表示範囲や縮尺を調整しておけば、印刷プレビューの段階で全体の構成を確認でき、印刷ミスや見切れを未然に防ぐことができます。

さらに、プレゼンテーション用途では、注目させたい部分を拡大して表示したり、異なる視点を同時に提示することで、クライアントに対して説得力のある図面を提示することができます。色分けや注釈の工夫とあわせて使えば、図面の「伝わりやすさ」が一段と高まります。

このように、複数ビューポートを上手に使いこなすことで、設計・修正・プレゼンの各フェーズにおいて、効率と完成度の両方を高めることができます。

3. ビューポートクリップ機能の紹介

ビューポートクリップ機能とは、レイアウト空間に配置されたビューポートの形を変えることで、図面の必要な部分だけを表示し、不要な部分を非表示にできる機能です。これにより、限られた紙面の中でも重要な情報を強調して見せることができ、視認性や図面の印象が大きく向上します。

特にAutoCADでは、「VPCLIP」コマンドを使って、このクリップ機能を簡単に操作できます。ビューポートに対して任意の形状で切り抜きを行えるため、円形や多角形、不定形な枠での強調表示も自由自在です。これによって、プレゼンテーション用の図面や納品資料など、視覚的に訴求力のあるレイアウトを手軽に作成できます。

この章では、ビューポートクリップの基本的な使い方から、使用可能な図形の種類、そしてクリップを解除する方法まで、段階的に詳しく解説していきます。これらを習得することで、レイアウト作業の自由度が広がり、図面作成のスピードアップにもつながります。AutoCADをより便利に使いこなしたい方にとって、VPCLIPは必ず覚えておきたい重要な機能です。

3.1. ビューポートクリップの基本手順

まず、ビューポートクリップを行うには、レイアウト空間上で既に配置されたビューポートを準備しておきます。その上で、VPCLIPコマンドを入力して実行します。画面の指示に従って、対象となるビューポートを選択し、「新しい境界」を作成する流れに入ります。

このとき、あらかじめ用意しておいたポリラインや多角形などの図形を使って境界を指定する方法と、その場で直接新しい図形を作成する方法の2通りがあります。どちらの場合も、使用する図形は“閉じた”状態でなければなりません。開いた図形は使用できないため注意が必要です。

境界オブジェクトを指定すると、選択した図形に合わせてビューポートが自動的に再描画され、図面の表示範囲がその形に切り抜かれます。通常は図形の内側が表示されますが、一部のAutoCADバージョンやカスタム環境では、外側を表示する設定が可能な場合もあります。使用している環境によって表示結果が異なる場合があるため、必要に応じてコマンドラインのオプションやヘルプを確認しましょう。

このように、VPCLIPは少ない操作で自由なクリップ形状を適用できるため、図面を分かりやすく、かつ印象的に見せるための強力なツールです。

3.2. クリップに使用可能な図形の種類

ビューポートクリップで使用できる図形にはいくつか制限があります。基本的には、閉じた状態の図形であることが前提で、具体的には以下のような図形が使用できます。

  • ポリライン(閉じた状態のもの)
  • 円や楕円
  • スプライン(閉じたもの)
  • ブロック(内部に閉じた図形を含むもの)

たとえば、図面の一部を円形に切り抜いて表示したい場合は、あらかじめ円オブジェクトを描いておき、それをクリップ境界として指定します。また、不定形な輪郭で図面を表示したい場合には、PEDITコマンドなどを使って自由曲線のポリラインを作成しておき、それを使用することで独自の形にビューポートを切り取ることも可能です。

なお、直線や開いたポリラインはそのままでは使用できません。PEDITでポリラインを編集し、「閉じる」オプションで必ず端点をつないでから使うようにしましょう。

さらに、ブロック図形を境界として使用する場合には、内部にある図形が適切に閉じているかを確認する必要があります。特に複雑なブロックでは、思った通りにクリップされないこともあるため、事前のチェックが重要です。

これらのルールを理解しておくことで、自由な形状でビューポートを編集でき、より表現力豊かな図面作成が可能になります。

3.3. クリップ解除方法とショートカットの活用

ビューポートのクリップを解除したい場合は、再度VPCLIPコマンドを実行して、対象のビューポートを選び、「削除(Delete)」オプションを選択します。これにより、ビューポートは元の四角形の状態に戻り、図面全体が再び表示されるようになります。

VPCLIPを頻繁に使用する方にとっては、コマンドを素早く呼び出すためのショートカット設定がとても便利です。たとえば、リボンやツールバーにボタンを登録したり、キーボードショートカットを割り当てることで、操作の手間を減らせます。日常的に同じ作業を繰り返す方には特におすすめです。

さらに、クリップに使う図形をテンプレートとして保存しておけば、同じ形状のクリップを複数のビューポートで繰り返し使うことができます。たとえば、よく使う円形や特定の輪郭をブロック化しておき、必要な場所にコピー&ペーストで配置すれば、ビューポートの調整作業が大幅に効率化されます。

こうした工夫を取り入れることで、作業スピードが上がるだけでなく、図面の統一感も保ちやすくなります。小さな工夫の積み重ねが、大きな時短と品質向上につながるのです。

4. ビューポートクリップの応用例と作業効率化ヒント

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https://www.autodesk.com/jp/solutions/autocad-tutorials

ビューポートクリップは、単に図面の一部を切り抜くだけでなく、工夫次第で作業効率や図面の見栄えを大きく向上させることができる便利な機能です。特に、曲線や多角形など、自由な形で図面の一部だけを強調したい場面では、その効果を存分に発揮します。

たとえば、プレゼンテーション用の図面で、注目させたい箇所だけを丸く切り取って目立たせたり、複雑な形状のクリップで視覚的な演出を加えることで、図面全体にインパクトを与えることができます。同じ図面でも、見せ方を変えるだけで、見る人の理解度や印象が大きく変わるのです。

この章では、ポリラインやブロックを使ったクリップ形状の応用方法、そしてグラフィカルで魅力的なプレゼン図面を作るための具体的なアイデアをご紹介します。これらのテクニックを取り入れることで、提出物のクオリティを高め、社内外のコミュニケーションをよりスムーズにすることができます。

また、効率面から見ても、クリップ形状の使い回しやビューポート設定のテンプレート化といった工夫は非常に有効です。最初に少しだけ手間をかけておけば、その後の作業時間を大幅に削減することが可能になります。

4.1. ポリラインやブロックを使ったクリップの応用

図面の中から特定の形状や範囲だけを表示したいときには、ポリラインやブロックを使ったクリップが非常に有効です。たとえば、建築図面で複雑に入り組んだ壁や室内空間の輪郭に合わせてポリラインを描いておけば、その形に沿って図面をくり抜いたように表示できます。これにより、見せたい部分だけを際立たせ、図面全体の構成がよりわかりやすくなります。

ブロックを活用する方法も便利です。あらかじめ閉じたポリラインを含んだブロックを作っておき、それを必要な箇所に複数配置してクリップ形状として使い回すことができます。この方法は、同じ形状を繰り返し使いたい場合や、レイアウト全体に統一感を持たせたいときにとても有効です。

※ただし、使用するブロックがダイナミックブロックでない場合、クリップ形状が正しく反映されないことがあります。うまく表示されないときは、ポリラインをブロック化せずに直接クリップに使うか、一度ブロックを分解(EXPLODE)してから再指定することで解決できることがあります。

こうした少しの工夫で、作業効率を大きく改善できます。また、図面に多様な形状や表現を取り入れることで、単なる設計資料を超えた「伝わる図面」を作ることができるようになります。これは、クライアントとの打ち合わせやプレゼンテーションの場でも強力なアピールとなり、プロジェクトの進行を円滑にする助けとなるでしょう。

4.2. グラフィカルなプレゼン図の作成

ビューポートクリップを活用すれば、図面の情報を「見せたい形」で伝えることができるため、プレゼンテーション用の図面作成にも非常に効果的です。単に正確な情報を伝えるだけでなく、図面の中で強調すべきポイントを視覚的に目立たせることで、見る人にとってわかりやすく、印象に残る資料に仕上がります。

たとえば、建築の提案資料では、玄関やエントランスといった重要な箇所を円形にクリップして大きく見せることで、第一印象を強調できます。あるいは、曲線的なポリラインでユニークな輪郭を作り、周囲と差別化された部分として提示するのも効果的です。こうした演出は、図面の理解を助けるだけでなく、提案全体の説得力を高める役割を果たします。

また、レイヤ設定や色分けを工夫することで、クリップ枠そのものの視認性をコントロールすることも可能です。強調したい部分にはあえて太線で枠を目立たせたり、逆に背景に溶け込ませて自然な形で図面に馴染ませるといった使い分けも有効です。

このように、ビューポートクリップを活用して視覚的な魅力を加えた図面を作成することで、クライアントや上司、関係者とのコミュニケーションがよりスムーズになり、提案内容の理解も深まりやすくなります。

5. 印刷範囲の最適化とトラブル対策

ビューポートクリップを使いこなせるようになると、図面の仕上がりやプレゼン資料の質が大きく向上します。しかし、印刷作業に移ると「注釈が切れてしまう」「サイズがずれる」といった細かなトラブルが起こることもあります。せっかく整えたレイアウトが、印刷時に思い通りに出力されないと、作業効率もクオリティも大きく損なわれてしまいます。

こうした問題を未然に防ぐには、ビューポートごとの縮尺設定をしっかり行い、印刷プレビューでの見え方をきちんと確認しておくことが重要です。また、トラブルが起きやすいパターンを事前に知っておくことで、いざというときも落ち着いて対応できます。

この章では、印刷トラブルを防ぎ、効率よく高品質な図面を出力するためのポイントとして、縮尺の確認方法、印刷プレビュー時のチェック項目、そして実際によくあるトラブルの事例とその対処法を紹介します。日常の業務で発生しがちな印刷まわりの悩みを解消し、CAD作業をより安心して進められるようになるでしょう。

5.1. ビューポートごとの縮尺設定と確認

ビューポートをクリップして見た目を整えても、縮尺が適切でないと、印刷時の仕上がりにズレが生じてしまいます。図面の正確性を保つためにも、各ビューポートの縮尺は明示的に設定しておくことが大切です。

ビューポートを選択した状態で、プロパティパレット(PROPERTIES)を使うと、現在の縮尺やロック状態を確認・変更することができます。たとえば、1/50や1/100といった決まった縮尺に合わせて数値を指定しておくことで、図面の整合性が保たれます。

また、縮尺がずれないようにするには、「ビューポートの表示倍率をロック」しておくのがおすすめです。ロックしておけば、誤ってズームやパンをしてしまっても表示が変わることがないため、印刷時のトラブルを回避できます。

特に複数のビューポートを使って異なる縮尺を表示している場合は、どのビューポートがどの縮尺になっているかをきちんと管理することが大切です。設定ミスを防ぐだけでなく、図面全体の構成を一貫性のあるものに保つためにも、縮尺の管理は必ず行っておきましょう。

5.2. クリップ後の印刷プレビューのチェックポイント

ビューポートをクリップしたあとは、必ず印刷プレビューで最終的な見え方を確認するようにしましょう。プレビュー画面を使えば、実際に印刷したときにどのように表示されるのか、細部まで確認できます。

ここで特に注意したいのが、注釈や寸法がビューポートのクリップ枠にかかっていないか、文字が切れていないかという点です。枠のギリギリに配置された注釈は、クリップ境界に引っかかって途中で途切れてしまうことがあります。また、縮尺の不一致により、文字や寸法が小さくなりすぎて見えづらくなることもあります。

こうしたトラブルを防ぐためには、プレビュー画面でズームして確認し、必要があれば注釈スケールを調整したり、クリップ枠の形状や位置を微調整することで対応します。これはVPCLIPを使っているからこそできる柔軟な対応であり、印刷前に仕上がりをしっかりシミュレーションできるのが大きな利点です。

丁寧にプレビューを確認しておくことで、クライアントや関係者に提出する図面の品質が確実に高まり、信頼性のある成果物として仕上げることができるでしょう。

5.3. トラブル事例と対応策

ビューポートクリップを活用しても、印刷時にはさまざまなトラブルが発生することがあります。代表的なのが「図面の一部が印刷されない」「注釈が途中で切れてしまう」「縮尺が想定と異なる」といった問題です。こうしたトラブルの多くは、ビューポートの設定や印刷範囲の確認不足が原因です。

たとえば、クリップ枠が小さすぎて注釈が枠外にはみ出している場合、注釈が途中で欠けてしまいます。このようなときは、ビューポート内の注釈位置を調整するか、スケール設定を見直すことで対応できます。また、レイヤの表示・非表示設定によって図形が見えなくなっているケースもあるため、レイヤ状態も合わせて確認しておくと安心です。

さらに、ビューポートを他のレイアウトにコピーすると、クリップ情報自体は引き継がれるものの、配置位置が微妙にずれることがあります。こうした場合は、新しいレイアウトで改めて位置調整を行い、印刷プレビューで確認することが大切です。

まれに、VPCLIPの設定が残ったままビューポート自体がずれてしまい、図面が見えなくなるといった複雑なトラブルも発生します。こうしたケースでは、ビューポートの表示順(DRAWORDER)を調整したり、いったんクリップを解除して再設定することで解決できる場合があります。

このように、よくあるトラブルの原因と対策をあらかじめ把握しておくことで、トラブル時にも落ち着いて対処でき、作業全体の安定性とスピードを向上させることができます。

6. よくあるミスとその解決策

ビューポートクリップは非常に便利な機能ですが、慣れないうちは設定や操作の細かい部分でつまずいてしまうことがあります。たとえば「クリップを設定したはずなのに範囲が変わらない」「解除したのに図面が正しく表示されない」といったトラブルは、初心者にとって特にありがちな悩みです。

こうした問題の多くは、クリップに使用した図形が条件を満たしていなかったり、VPCLIPコマンドのオプション選択を誤っていたりと、ちょっとした操作ミスや設定ミスが原因です。また、モデル空間とレイアウト空間の違いがしっかり理解できていないことも、混乱の一因となります。

この章では、VPCLIPを使う中で起こりやすいミスと、その具体的な対処法について解説していきます。つまずきやすいポイントをあらかじめ把握しておくことで、操作に自信がつき、作業効率を損なうことなくCAD作業を進められるようになります。

しっかりと基礎を固めておけば、今後より高度な図面表現にも対応しやすくなり、CADスキル全体の底上げにもつながるでしょう。

6.1. クリップがうまく適用されない場合の対処法

VPCLIPコマンドを使ったにもかかわらず、思った通りにビューポートが切り抜かれないことがあります。こうしたケースでは、使用している図形が「閉じた状態」になっていないことが原因であることがよくあります。

たとえば、ポリラインを使用する場合、端点がつながっていない“開いたポリライン”だと、VPCLIPで正しく認識されません。対処法としては、PEDITコマンドを使ってそのポリラインを編集し、「閉じる」オプションで図形をきちんと閉じてから、再度VPCLIPを実行することで解決します。

また、クリップしようとしているビューポート自体がアクティブになっていなかったり、すでに他のクリップ設定がかかっていて重複してしまっている場合にも、意図した動作が行われないことがあります。VPCLIPを実行する際には、コマンドラインの指示に注意しながら、確実にビューポートとクリップ図形の両方を適切に選択しましょう。

さらに、モデル空間内の図形が極端に大きく、ビューポートの縮尺設定が合っていない場合、図面がクリップされていないように「見えてしまう」こともあります。こういった場合には、縮尺の調整や表示範囲の確認を行うことで、正しくクリップされていることが確認できるようになります。

これらのポイントを把握しておくだけで、VPCLIPの操作がより確実になり、不要な手戻りや混乱を減らすことができるようになります。

6.2. クリップ解除後の図面が元に戻らない問題の修正

VPCLIPで設定したクリップを解除しても、図面が元通りの表示に戻らないことがあります。これは、クリップ中に縮尺や表示範囲が変更されていたり、ビューポートの表示状態(レイヤや注釈など)が意図せず変わってしまっていることが原因である場合が多いです。

このような場合には、まずビューポートを選択してダブルクリックし、モデル空間をアクティブにした状態でズームやパン操作を行い、正しい表示位置に調整します。もし表示が乱れている場合は、手動で表示範囲や倍率を元に戻して調整するのが有効です。

UNDOコマンドで操作を巻き戻す方法もありますが、それでは他の設定も一緒に戻ってしまう可能性があるため、慎重な対応が求められます。より確実な方法としては、ビューポートのプロパティを手動で編集し、正しい縮尺や表示領域を再設定する方法が挙げられます。

また、ビューポートをコピーして別のレイアウトに貼り付けた場合、クリップ設定が残ったまま他の設定と混在してしまうこともあります。そのようなときは、コピー先のビューポートをいったん削除し、新規でビューポートを作成するか、クリップの再設定を行うことで対応できます。

複数のビューポートを扱うプロジェクトでは、このような混乱が起こりやすいため、どのビューポートにどの設定を適用しているのかを明確にしておくことが大切です。設定を整理しながら操作することで、図面の品質を高い状態で維持し、効率よく作業を進めることができるようになります。

7. まとめ

本記事では、AutoCADにおけるビューポートクリップ(VPCLIP)機能について、基本操作から応用テクニック、トラブル対策までを網羅的に解説してきました。レイアウト空間でビューポートの形状を自由に切り抜くことで、必要な情報だけを的確に強調し、見栄えの良い図面を作成できる点がこの機能の大きな魅力です。円形や多角形、不定形な輪郭を使った表現によって、図面の訴求力が高まり、クライアントや上司へのプレゼンテーションにも説得力を持たせることができます。

また、複数のビューポートを使い分けて情報を整理し、作業効率を向上させると同時に、印刷トラブルの予防や縮尺の精度管理にも役立ちます。クリップ形状の使い回しやテンプレート化を工夫することで、作業の手間を削減しながら、プロジェクト全体の進行スピードを加速させることができるのも大きな利点です。こうしたメリットを活かすことで、単なる図面作成にとどまらず、業務効率化やチーム内外の円滑なコミュニケーションの実現にもつながります。ビューポートクリップは、見せたい情報をスマートに際立たせ、CAD作業の表現力と説得力を同時に高めるための強力なツールです。

ぜひ本記事を参考に、AutoCADの中でこの機能を積極的に活用し、日々の設計業務やプレゼン資料づくりにおいて、より高品質で魅力的な成果物の作成を目指してみてください。

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<参考文献>

・AutoCAD LT for Mac 2025 HELP

https://help.autodesk.com/view/ACDLTM/2025/JPN/

・CAD 使い方|AutoCAD 初心者向けのチュートリアル|Autodesk

https://www.autodesk.com/jp/solutions/autocad-tutorials

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