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SolidWorks Premiumの処理速度を最大化する方法

1. はじめに

SolidWorks Premiumは、多機能で高性能な3D CADソフトですが、その反面「動作が重い」「再計算に時間がかかる」といった処理速度の悩みを抱えるユーザーも少なくありません。特に、大規模なアセンブリや複雑なフィーチャーを扱う場面では、動作の遅さが作業効率を大きく下げ、納期に影響を及ぼすこともあります。

リアルタイム3D表示やシミュレーション処理など、負荷の高い作業が多いSolidWorks Premiumでは、スムーズな操作環境を整えることが、設計の質やスピードを左右する重要なポイントになります。

本記事では、初心者の方でもすぐに取り組める設定の見直しから、現場でよく使われている機能の活用法、さらにはパソコンのスペックやOS設定の最適化まで、処理速度を向上させるための具体的な方法をわかりやすく紹介します。単に操作手順を示すだけでなく、「なぜこの対策が効果的なのか」という理由や仕組みも解説することで、納得しながら改善を進められる内容にしています。

記事内では「大規模アセンブリモード」や「SpeedPak」といった便利な機能をはじめ、履歴ツリーの整理やテンプレートの最適化といった作業効率を高める工夫も取り上げています。また、ハードウェア選びやトラブル時のチェックリストなど、実務に役立つ情報も豊富に掲載しています。

SolidWorks Premiumの性能を最大限に活かすために、ぜひ本記事を参考に、快適でスピーディな作業環境を整えてみてください。

2. SolidWorks Premiumの基本と処理速度の重要性

引用:https://www.solidworks.com/ja/product/solidworks-3d-cad

SolidWorks Premiumは、3D CADの作業全般を高いレベルで支援してくれる多機能なソフトウェアです。基本的なパーツモデリングはもちろん、複雑なサーフェス設計や大規模なアセンブリの管理、リアルタイム3D表示、シミュレーション処理まで、さまざまな作業に対応しています。

こうした高機能な特長を持つ一方で、それぞれの処理には大きな計算リソースが必要になるため、ハードウェアの性能やソフトウェアの設定によっては「動作が重い」と感じる場面も出てきます。CPUやGPU、RAMなどのスペックが不足していたり、設定が適切でなかったりすると、描画や再計算の処理に時間がかかり、操作の流れが滞ってしまうことがあります。

特に、扱うデータが大きく複雑になるほど処理の負担も大きくなるため、SolidWorks Premiumの力をしっかり発揮させるには、処理速度の最適化が欠かせません。これは単なる快適さの問題にとどまらず、業務の生産性や設計品質、さらには納期の厳守にも深く関わってくる重要なテーマです。

ここでは、処理速度が設計プロジェクトの進行にどれほど大きな影響を与えるのかを明らかにしながら、遅くなる原因や背景にある課題についてもわかりやすく解説していきます。特に、多数の部品を含む大規模アセンブリや、履歴ツリーが複雑なモデルを扱うケースでは、パフォーマンスの最適化が設計成果そのものに直結する重要な作業となります。


2.1. SolidWorks Premiumの概要

SolidWorks Premiumは、単なる3Dモデリングソフトではなく、設計業務全体をサポートする幅広い機能を備えた統合型のCADソリューションです。パーツやアセンブリの作成に加え、構造解析やモーション解析といったシミュレーション機能、さらに配管や配線ルーティングのような専門的な設計作業にも対応できる構成になっています。

これらの高度な機能を安定して使いこなすためには、適切なハードウェア構成と、用途に応じたソフトウェア設定が必要です。とくにSolidWorks Premiumは、大規模なアセンブリを効率よく扱えるよう設計されていますが、その反面、設計の自由度が高いぶん、履歴ツリーが肥大化したり、再計算の負荷が大きくなったりしがちです。

つまり、機能の豊富さはそのまま処理の重さにもつながるため、環境の最適化が行われていないと、せっかくの機能が活かせず、逆に作業効率を下げてしまう可能性があります。たとえば、リアルタイムでの3D表示やシミュレーションを多用する現場では、動作のもたつきが大きなストレスとなり、作業ミスや集中力の低下につながることもあります。

このように、SolidWorks Premiumの力をフルに発揮するためには、単にソフトを使うだけでなく、環境全体を整えるという視点が欠かせません。


2.2. なぜ処理速度が重要なのか

SolidWorks Premiumを使って日々設計を行うエンジニアや設計者にとって、処理速度は単なる快適さの問題ではなく、作業効率や設計品質に直結する重要な要素です。たとえば、大規模なアセンブリの一部を修正するだけで、再ビルドに数分~十数分かかってしまうようでは、ちょっとした試行錯誤さえ躊躇してしまい、結果的に提案力や対応力が落ちてしまいます。

さらに、操作のたびに待ち時間が発生する環境では、設計中の集中力が削がれ、長時間作業時の疲労感も増します。これは精神的なストレスにもつながり、最終的には納期への焦りや、設計精度の低下といったリスクも引き起こしかねません。

また、開発スピードが競争力の鍵となる現代においては、設計工程をいかに効率化できるかが企業の強みにも直結します。処理速度の向上によって業務時間を短縮できれば、コスト削減やクライアントへの迅速な提案にもつながり、社内外からの信頼を得ることができます。

つまり、SolidWorks Premiumの処理速度を改善することは、単なる操作性の向上ではなく、設計の質、納期対応力、ビジネス成果全体を底上げするための重要な鍵となるのです。


2.3. 処理速度が低下する一般的な課題

SolidWorks Premiumの処理速度が遅くなる主な原因は、大きく3つの観点に分類できます。「ハードウェアの性能不足」「ソフトウェア設定の問題」「データ管理やOS環境の整合性不足」です。

まず、ハードウェア面では、CPUやGPUの処理能力が不十分であったり、RAMの容量が足りていない、あるいはHDDのような低速ストレージを使っていたりすることが、パフォーマンス低下の原因になります。とくに、再計算や表示処理には高い演算性能が求められるため、スペックが適していないとストレスの多い作業環境になります。

次に、ソフトウェア面では、Windowsの設定が最適化されていなかったり、SolidWorksのグラフィックス設定が過剰になっていたりすることで、動作が重くなることがあります。リアルビューや高品質表示の常時オン、不要なアドインの有効化、古いドライバのまま放置されている状態なども、代表的なボトルネックです。

最後に、データ管理の観点では、フィーチャー履歴ツリーが過剰に複雑であったり、大量の部品を含むアセンブリが一括読み込みされていたりするケースが挙げられます。こうした状況では、たった一つの編集操作でも全体を再計算する必要があり、処理時間が著しく延びてしまいます。

これらの課題はそれぞれが独立しているように見えて、実は密接に関係しています。たとえば、高性能なPCを用意していても、SolidWorksの設定が最適でなければ十分なパフォーマンスは得られません。本記事では、こうした要因を明確にしながら、実際にどう対処していくかを次章以降で詳しく紹介していきます。

3. 処理速度に影響を与える主な要因

SolidWorks Premiumの処理速度は、さまざまな要因の影響を受けて決まります。中でも特に重要なのが、「ハードウェア性能」「ソフトウェアの設定」「作業データの構造とOS環境の整合性」の3つです。これらはそれぞれ独立したもののように見えますが、実際には密接に関係しており、どれか一つでも最適化されていないと、全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。

たとえば、最新の高性能PCを用意していても、SolidWorks側の設定が適切でなければ本来の性能を発揮できません。逆に、ソフトウェア設定を工夫しても、古いHDDを使っていれば読み込みや保存時に時間がかかり、快適さは大きく損なわれます。

こうした処理速度に関わる複数の要因を理解した上で、それぞれに対して適切な対策を講じることが、SolidWorks Premiumを快適に使いこなすための鍵になります。この章では、それぞれの要因がどのように処理速度に影響を与えるのかを、具体的に見ていきましょう。


3.1. ハードウェア性能の影響

SolidWorks Premiumの快適な動作には、使用するPCのハードウェア性能が大きく関係しています。特に重要なのが、CPU・GPU・RAM・ストレージの4つです。

まず、CPUについては、クロック数の高いプロセッサが推奨されます。SolidWorksでは、再計算やフィーチャーの編集といった処理が基本的に1コアずつ順番に行われるため、マルチコア性能よりもシングルコア性能の高さが求められます。Intel Core i7やi9、またはAMD Ryzen 7や9といった、設計用途に適したCPUが理想的です。

次に、GPU(グラフィックボード)は、リアルタイムの3D表示や回転、ズームなどの操作時に処理を担うため、こちらも性能が重要です。NVIDIA QuadroやAMD Radeon Proといった、CAD向けに最適化されたグラフィックボードを使用することで、描画の滑らかさと安定性が向上します。ゲーミング用GPUも一部利用可能ですが、業務用ドライバの有無や動作検証の有無に注意が必要です。

また、RAMは複数の部品を同時に処理する際の重要なリソースであり、最低でも16GB、できれば32GB以上を搭載するのが理想です。作業ファイルが大きくなるにつれてメモリ消費も増加するため、容量に余裕があるほど処理遅延を回避しやすくなります。

ストレージについては、従来のHDDではなく、SSD、特にNVMe接続のSSDを使用することで、大容量データの読み書きが格段に速くなります。これにより、SolidWorksの起動やファイルの保存・読み込み速度が大幅に改善され、全体の作業効率が向上します。

このように、CPU・GPU・RAM・ストレージの4要素をバランスよく最適化することで、SolidWorks Premiumをストレスなく使用できる作業環境を整えることができます。


3.2. SolidWorksの設定とその最適化

どれほど優れたハードウェアを揃えていても、SolidWorks本体の設定が適切でなければ、その性能を最大限に活かすことはできません。特に、描画や計算に関わる設定を見直すことが、処理速度の向上に直結します。

たとえば、リアルビューグラフィックスや影、反射などの高負荷な描画オプションを常時オンにしていると、GPUに大きな負担がかかり、動作が重くなる原因になります。設計作業中は描画の品質を必要最小限に抑え、最終的なプレゼンテーション時などに高品質表示に切り替えるのが効率的です。

また、「大規模アセンブリモード」や「軽量モード」などのシステムオプションを活用することで、大量の部品データを簡略化して読み込み、ハードウェア負荷を軽減することができます。これにより、アセンブリの読み込み時間や操作時の反応速度が改善されます。

さらに、「SpeedPak」を活用すれば、必要な情報だけを抽出した簡略モデルを作成できるため、不要なデータの読み込みを避けつつ、作業に必要な部分だけを効率的に扱うことができます。

加えて、SolidWorks Rxというツールを使用すると、現在のシステム環境やドライバの状態、使用状況などを自動診断できるため、ボトルネックとなる要因の特定が容易になります。このツールを定期的に使って状態を把握し、必要な対策を講じておくことで、処理速度の低下を未然に防ぐことができます。

このように、SolidWorksの設定を作業内容や目的に合わせて柔軟に調整することが、快適な操作環境を維持するための基本となります。


3.3. 作業データとOSの整合性

SolidWorks Premiumの処理速度に影響を与えるもう一つの重要な要因が、作業データの構造とOS環境の設定です。たとえば、フィーチャー履歴ツリーが複雑になりすぎている場合、わずかな編集でもすべての再計算が必要となり、処理時間が大幅に増えてしまいます。

こうした問題を防ぐためには、定期的に履歴ツリーを整理し、使っていないフィーチャーや重複している要素を削除することが効果的です。整理された履歴は再計算の手間を減らし、作業中の動作をよりスムーズにします。また、必要以上に細かく履歴を分けすぎないようにし、操作性とのバランスを取ることも大切です。

さらに、Windows側の設定も見直しポイントの一つです。電源プランを「高パフォーマンス」に設定することで、CPUの動作が抑制されるのを防ぎ、常に最大限の処理能力を引き出せるようになります。また、不要なバックグラウンドアプリや常駐ソフトを停止することで、システム全体のリソースが確保され、SolidWorksの動作にも余裕が生まれます。

加えて、グラフィックスドライバやシステムドライバが最新の状態になっていないと、描画や処理に関するトラブルが起きやすくなります。特に、GPUとの相性が悪い場合はクラッシュや動作不良の原因にもなるため、定期的なアップデートは欠かせません。

また、作業データの保存場所がネットワークドライブなどの遅延が発生しやすい環境にあると、ファイルの読み込みや保存に時間がかかり、全体的なパフォーマンスが落ちる原因になります。可能であれば、ローカルストレージでの作業を基本とし、保存や共有のタイミングでネットワークに移すようにするのが理想的です。

このように、作業データの整理とOS環境の整備は、SolidWorks Premiumを長期間安定して使用するために欠かせない重要なステップです。細かな見直しの積み重ねが、快適な作業環境づくりに直結します。

4. 実践的な処理速度向上テクニック

ここからは、SolidWorks Premiumの処理速度を向上させるために、実際の作業で役立つ具体的なテクニックを紹介していきます。どれも高度な知識や専門的な操作は必要なく、設定の見直しや表示モードの切り替えなど、すぐに実践できる方法ばかりです。

特に、大規模なアセンブリや複雑なパーツを扱う場面では、設定ひとつで体感速度が大きく変わることも珍しくありません。CPUやGPUの負荷を抑えながら効率よく作業を進めるためにも、これらのテクニックを積極的に取り入れてみましょう。

各テクニックでは、使い方だけでなく「なぜ効果があるのか」といった背景や原理もあわせて解説しています。読者の皆さんが操作の意図を理解し、納得して活用できるように構成していますので、ぜひ一つひとつを実際の作業に取り入れてみてください。最初は小さな変化に見えても、積み重ねることで大きなパフォーマンス向上につながるはずです。


4.1. 大規模アセンブリモードの活用

「大規模アセンブリモード」は、数百〜数千もの部品を含む大型アセンブリを扱う際に、表示や動作を軽くするために用意されたSolidWorksの便利な機能です。このモードでは、必要最低限の情報だけを読み込むように設定されるため、開くまでの時間や操作中の反応速度が大幅に向上します。

通常、アセンブリを開くと、すべての部品の詳細データが一度に読み込まれ、CPUやGPUに大きな負荷がかかります。しかし、大規模アセンブリモードを使用することで、必要な部品だけを軽量モードで表示し、細部のロードを後回しにできるため、初期の動作が格段に速くなります。

このモードは、部品点数やファイルサイズが一定のしきい値を超えると自動で適用するように設定することも可能です。これにより、毎回手動で切り替える必要がなくなり、作業の流れを中断せずにパフォーマンス改善を図れます。

大規模な設計を扱うことが多いエンジニアにとっては、最も効果的かつ基本的な処理速度改善策のひとつです。設定の難易度も低く、すぐに取り入れられるので、SolidWorks Premiumを使う際はまずこのモードを試してみることをおすすめします。

なお、すべての部品を精密表示したままアセンブリを開くと、いかに高性能なPCであっても動作が重くなる可能性があります。初回は軽量モードで開き、必要な部品だけ詳細表示に切り替えるという運用が、快適な作業環境づくりには有効です。


4.2. SpeedPakの導入とその効果

SpeedPak(スピードパック)は、アセンブリ全体の処理負荷を軽減するために、必要な情報だけを抜き出した簡略モデルを作成する機能です。特に複雑な形状や大量のフィーチャーを含む部品が多いアセンブリでは、パフォーマンス向上に大きな効果を発揮します。

SpeedPakを使うと、部品の外観や設計上必要な要素だけを保持し、それ以外の内部構造や不要な情報は省略されます。これにより、表示や再計算にかかる処理が大幅に軽減され、画面の反応速度や操作性が格段に向上します。

この機能は、干渉チェックや寸法取得などに不要な情報を削除することで、アセンブリを開く時間の短縮にもつながります。ただし、SpeedPakを適用すると編集が一時的に制限されることもあるため、細部の修正が必要な場合は再度フルロードする必要がある点に注意しましょう。

SpeedPakは、アセンブリの設計段階だけでなく、他部署や外部パートナーとモデルを共有する際にも非常に有効です。ファイルサイズが小さくなり、やりとりもスムーズになるため、プロジェクト全体の効率化にも貢献します。

SolidWorks公式でも、SpeedPakの活用は大規模データ処理における推奨手法として紹介されており、実務においても多くのユーザーに活用されています。処理速度を上げながら作業の自由度を確保したい方には、ぜひ試していただきたいテクニックです。


4.3. グラフィックス設定の最適化

SolidWorksでのリアルタイム3D表示やモデル操作は、グラフィックス設定によって大きく影響を受けます。中でも、リアルビューグラフィックス、影、反射といった視覚効果は、見た目を美しくする一方で、GPUに多大な負荷をかける要素でもあります。

そのため、設計作業中はこうした高負荷設定をオフにし、動作の軽快さを優先することが推奨されます。たとえば、「表示」タブの設定からリアルビューや影を無効化するだけでも、画面の動きがスムーズになり、パーツの回転やズームが軽快に操作できるようになります。

また、アンチエイリアシング(輪郭のギザギザを滑らかに見せる機能)も、画質を向上させる反面、処理に時間がかかる要素です。これを「最適」や「中」程度に抑えることで、パフォーマンスを維持しながら視認性を確保することが可能です。

さらに、Windows側でもグラフィックス関連の視覚効果を最小限に設定しておくと、SolidWorks以外のプロセスによるGPU負荷を減らすことができます。ドライバの更新も重要なポイントで、最新バージョンを使用することで不具合が修正され、描画性能が最適化されます。

これらのグラフィックス設定の見直しは、使用しているPCのスペックが高くない場合でも体感的な改善が得られるため、誰にとっても取り組みやすい方法です。最初の改善策としても非常に効果的で、作業の快適さを一気に高めることができます。


4.4. 不要な履歴・フィーチャーの整理

SolidWorksでは、すべてのモデリング操作が履歴として保存されるため、フィーチャーが積み重なるほどモデルの構造が複雑になり、再計算に時間がかかるようになります。とくに、多くのフィーチャーを含むパーツが複数存在するアセンブリでは、この再計算の負荷が無視できないほど大きくなります。

そこで重要なのが、不要になったフィーチャーやテスト的に追加した操作履歴を定期的に整理することです。これにより、再ビルド時の演算処理を大幅に軽減でき、作業中の待機時間を短縮することができます。とくに設計の後半になってくると、初期の試行錯誤によるフィーチャーが残っていることが多く、それらを削除または統合することでモデルがスリムになります。

また、履歴を細かく分けすぎると、作業の追跡が困難になったり、不要な部分まで再計算されたりと、かえって作業効率が下がることがあります。そのため、履歴を適切な粒度で管理し、必要な変更履歴だけを残すという意識が重要です。

SolidWorksには過去の状態に戻って修正できる機能もあるため、安易にフィーチャーを残してしまいがちですが、不要な履歴が蓄積されるとモデルの挙動に影響が出ます。定期的に履歴を見直し、「整理する習慣」を持つことで、長期的に見て作業環境の安定化につながります。

このように、履歴やフィーチャーの整理は、目に見えにくいながらも大きな処理速度改善をもたらす基本的な作業です。地味な作業に思えるかもしれませんが、快適なモデリングの土台を支える重要なステップといえます。


4.5. 作業用テンプレートの最適化

SolidWorks Premiumでは、パーツやアセンブリ、図面などに対してオリジナルのテンプレートを作成できます。このテンプレートを最適化しておくことで、毎回の新規作成時に無駄な設定を省き、処理速度を保ちやすくなります。

たとえば、使わないマテリアル情報や標準フィーチャーをあらかじめ除外しておいたり、グラフィックスの品質を適度に抑えた状態で保存することで、不要な読み込みを防ぎ、ファイルサイズの肥大化も回避できます。また、図面テンプレートでは、標準ビューやアノテーションの初期設定を必要最小限にしておくと、作成時の負荷を軽減できます。

テンプレートを活用することで、作業ごとに設定を調整する手間が省けるだけでなく、チーム全体で統一された環境を構築できるというメリットもあります。共有フォルダに標準テンプレートを配置すれば、複数人で同じ設定を使いまわすことができ、設計ミスの防止や作業の標準化にもつながります。

さらに、テンプレートを最適化しておくことで、処理速度のばらつきを減らす効果も期待できます。設計業務では数分の差が積み重なることで大きな作業時間の違いになることがあるため、こうした小さな工夫の積み重ねが最終的な生産性を大きく左右します。

このように、作業用テンプレートの見直しと最適化は、導入コストがほとんどかからず、すぐに実践できるパフォーマンス改善策として非常に有効です。継続的な改善にもつながるため、ぜひ取り入れてみてください。

5. SolidWorks Premiumに適したPC構成

ここでは、SolidWorks Premiumを快適に動かすために推奨されるPCのハードウェア構成について詳しく解説します。特に、大規模なアセンブリデータを扱ったり、複雑なフィーチャーが多数含まれる設計を行ったりする場合には、PCの処理性能がそのまま作業効率や快適さに直結します。

SolidWorks Premiumは、一般的なビジネス用途のパソコンでは力不足になることも多く、用途に合ったパーツ選びが重要になります。処理速度を最大化するためには、単に高性能なパーツを集めるだけではなく、各部品のバランスが取れた構成が求められます。

ここでは、CPUやGPU、RAM、ストレージといった主要なハードウェアについて、SolidWorksに適した選び方を紹介します。さらに、各パーツの組み合わせによって生じる相性やボトルネックを回避するためのポイントにも触れていきます。適切なPC環境を整えることで、日々の作業効率が格段にアップし、操作時のストレスも大幅に軽減されます。

以下の項目では、スペックの目安や推奨モデル、注意点などを具体的に解説していきますので、PC選びや買い替えの参考にしてください。


5.1. 推奨されるハードウェアスペック

SolidWorks Premiumで安定したパフォーマンスを得るには、まずCPUの選定が非常に重要です。SolidWorksでは、複数のフィーチャーを順に再計算する処理が多く発生するため、マルチコアよりもシングルコア性能の高いCPUが適しています。たとえば、Intel Core i7やi9、AMD Ryzen 7や9など、クロック数が高く応答性に優れたモデルが推奨されます。

次に、RAM(メモリ)は同時に複数の作業を行う場面でボトルネックになりやすいため、容量の余裕が非常に重要です。最低でも16GBは必要であり、アセンブリ規模が大きかったり、シミュレーション処理を頻繁に行ったりする場合は、32GB以上を視野に入れましょう。RAMが不足すると、Windowsが仮想メモリを使用しはじめ、処理速度が大幅に低下してしまいます。

GPU(グラフィックボード)は、リアルタイム3D表示や図面表示における描画処理を担います。NVIDIA QuadroシリーズやAMD Radeon Proなどのプロフェッショナル向けGPUは、SolidWorksとの互換性が高く、安定した描画性能を発揮します。近年の高性能なゲーミング用GPUも一定の効果はありますが、ドライバや動作検証の観点では、業務用GPUの方が信頼性に優れています。

また、GPUの選定では、VRAM(ビデオメモリ)の容量も確認しましょう。VRAMが不足していると、アセンブリの表示やズーム時にカクつきが生じやすくなります。最低でも4GB以上、できれば8GB以上のVRAMを搭載したGPUが望ましいとされています。

これらの要件を満たしたPCを選ぶことで、SolidWorks Premiumの処理速度を最大限に引き出し、複雑なモデルでも快適に操作できる作業環境が整います。ハードウェアは投資要素でもあるため、用途に応じて最適な構成を選び、長期的な作業効率向上を見据えた選択を行いましょう。


5.2. ストレージとグラフィックボードの選定

処理速度を高めるうえで見落とされがちですが、ストレージの種類もSolidWorksのパフォーマンスに大きく影響します。特に、大容量のアセンブリや図面データを読み書きする頻度が高い場合、HDD(ハードディスクドライブ)では読み込みや保存に時間がかかり、作業のテンポが悪くなりがちです。

そのため、ストレージにはSSD(ソリッドステートドライブ)、中でもNVMe接続のSSDを選ぶことが推奨されます。NVMe SSDは読み書き速度が非常に高速で、OSの起動、ソフトの立ち上げ、大容量ファイルの保存や読み込みがスムーズになります。結果として、SolidWorksの作業全体のレスポンスが大きく向上します。

加えて、グラフィックボードの性能も表示の滑らかさや安定性に直結する重要な要素です。リアルタイム3D操作を頻繁に行う場合は、ビデオメモリ(VRAM)の容量が大きく、信頼性の高いドライバが提供されているGPUを選ぶことが重要です。特にSolidWorksでは、認定ドライバの有無が動作安定性に大きく関わります。

ゲーミング向けのGPUでも使用可能なケースはありますが、ドライバの最適化が不十分な場合には、描画不具合や動作の不安定さが発生することもあるため注意が必要です。できる限り、SolidWorks公式で推奨・検証されているGPUモデルを選定するのが無難です。

さらに、Windowsの設定と組み合わせることでグラフィック性能の最大化が可能になります。たとえば、電源オプションを「高パフォーマンス」に設定したり、GPU制御ソフトでSolidWorksに最適なパフォーマンスプロファイルを設定したりすることで、より滑らかな操作感を実現できます。

このように、ストレージとグラフィックボードの選定は、SolidWorks Premiumの性能を左右する重要なポイントです。これらを適切に選ぶことで、設計作業の快適さと処理速度の安定性が大きく向上します。PCを構成する各要素の見直しは、設計環境全体の品質を底上げするうえで欠かせない工程と言えるでしょう。

6. SolidWorksが重くなったときのチェックリスト

SolidWorks Premiumを長く使用していると、突然動作が遅くなったり、フリーズしやすくなったりすることがあります。こうした問題に直面したときに大切なのは、原因を冷静に見極め、適切な順序で確認・対処することです。

以下では、「ソフトウェアとOSの設定」と「ハードウェアの状態」の2つの観点から、実用的なチェックリスト形式で見直すべきポイントを整理しました。各項目を一つひとつ確認していくことで、SolidWorksのパフォーマンス低下の原因を特定しやすくなります。


6.1. ソフトウェアとOSの設定確認|設定まわりを見直すチェックリスト

  • リアルビュー・影・反射などの視覚効果がオンになっていないか?
     → 描画負荷が高くなる設定は、不要なときはオフにしましょう。
  • 「大規模アセンブリモード」や「SpeedPak」が有効になっているか?
     → 無効になっていると、全データをフルロードし、表示が重くなります。
  • SolidWorksのバージョンとグラフィックドライバの互換性が取れているか?
     → 公式サイトの「認定ドライバ情報」をもとにアップデートを検討しましょう。
  •  Windowsの電源プランが「高パフォーマンス」になっているか?
     → 「省電力」や「バランス」ではCPUの性能が制限されます。
  • 不要なアドインやバックグラウンドサービスが起動していないか?
     → 常駐プロセスが多いと、SolidWorksに割けるリソースが減少します。
  • SolidWorks Rxでトラブル診断を実施したか?
     → パフォーマンス問題の原因をレポート形式で特定できます。

6.2. ハードウェアの性能チェック|パソコン側のボトルネック確認項目

  • CPU使用率が常に高くなっていないか?
     → タスクマネージャーで確認し、90〜100%に張り付きがちな場合は買い替えを検討。
  • RAM(メモリ)が不足していないか?
     → 使用量が常時80%以上なら、16GB → 32GB以上への増設がおすすめです。
  • GPUがSolidWorksに正しく割り当てられているか?
     → GPUの使用率が極端に低い場合は、設定やドライバの見直しを。
  • GPUのVRAMは4GB以上か?ドライバは最新か?
     → 低容量のVRAMや古いドライバでは、描画の遅延が起こりやすくなります。
  • ストレージがHDDになっていないか?
     → NVMe SSDに変更するだけで、ファイルの読み書き速度が劇的に改善します。
  • 熱暴走やハードウェア劣化の兆候がないか?
     → ファンの異音や急なシャットダウンがある場合は、冷却や寿命を確認しましょう。

7. まとめ:環境と設定の見直しで処理速度を向上させる

SolidWorks Premiumは、非常に多機能で高性能な3D CADソフトですが、その性能を最大限に活かすためには、快適な作業環境を整えることが不可欠です。本記事では、処理速度の低下を引き起こす原因とその改善策について、ハードウェア・ソフトウェア・データ管理・OS設定といった多角的な視点から解説してきました。

まず、基本となるのはPCのハードウェア構成です。CPU・GPU・RAM・SSDなど、それぞれのパーツが設計作業にどのような影響を与えるかを理解し、自分の用途に合ったバランスの良い構成を選ぶことが、快適なCAD環境づくりの第一歩となります。

また、SolidWorks自体の設定も重要です。グラフィックス表示を最適化したり、「大規模アセンブリモード」や「SpeedPak」を活用したりすることで、描画や再計算の負荷を大きく軽減できます。さらに、履歴ツリーの整理やテンプレートの最適化といった細やかな工夫が、日々の操作をより効率的にし、ストレスの少ない設計作業を実現します。

OSやドライバの設定を見直し、電源プランや不要なバックグラウンドプロセスの管理も行えば、システム全体としてのパフォーマンスも安定してきます。これらの取り組みは、一つひとつは小さな調整かもしれませんが、積み重なることで作業全体のスピードアップと品質向上に直結します。

SolidWorksが「重い」と感じたときは、本記事で紹介したチェックリストを活用し、原因を一つずつ丁寧に洗い出してみてください。環境の最適化に取り組むことで、設計に集中できる理想的な作業空間が手に入るはずです。

最適な処理速度でSolidWorks Premiumを活用できれば、設計効率の向上だけでなく、納期短縮やコスト削減といったビジネス上の成果にもつながります。日々の業務を少しでも快適に、そして生産的にするために、本記事の内容をぜひ実践に役立ててください。

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<参考文献>

SOLIDWORKS 3D CAD | SOLIDWORKS

https://www.solidworks.com/ja/product/solidworks-3d-cad

SOLIDWORKSのプランと価格設定 | SOLIDWORKS

https://www.solidworks.com/ja/how-to-buy/solidworks-plans-pricing

システム要件 | SOLIDWORKS

https://www.solidworks.com/ja/support/system-requirements

大規模アセンブリ パフォーマンスの向上(Improving Large Assembly Performance) – 2025 – SOLIDWORKS ヘルプ

https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/sldworks/c_Improving_Large_Assembly_Performance_SWassy.htm

SpeedPak – 2025 – SOLIDWORKS ヘルプ

https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/sldworks/c_SpeedPak_OH.htm

SOLIDWORKS Rx – 2025 – SOLIDWORKS ヘルプ

https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/sldworks/c_SOLIDWORKS_Rx.htm

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https://www.nvidia.com/ja-jp/design-visualization/rtx-a6000/

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