SOLIDWORKS用パソコン、購入前にチェックすべき10のポイント|【推奨スペックガイド】
1. はじめに:
企業の設計部門やIT担当者が、SOLIDWORKSと呼ばれるCADソフトウェアを活用して製品開発を行う機会は年々増えています。特に新任のITマネージャーにとって、どのようなパソコン(CADワークステーション)を選定するかは作業効率や社内評価に直結する重要なテーマです。
しかし、ハイスペックを追求すればコストが高騰し、逆に予算重視で低性能のマシンを導入すると、SOLIDWORKS モデリングPCとしての力不足が露呈してしまいます。そこで必要なのが、PC スペック CADにおけるバランス感覚です。処理性能や拡張性を理解することで、将来的なシステムアップデートにも対応しやすい高性能CAD PCを選ぶことが理想といえます。
本記事では、SOLIDWORKS推奨スペックをもとに、Windows 11 SOLIDWORKS対応をはじめ、CPU性能 SOLIDWORKSにおける重要性、プロ向けGPUの選択方法、そしてメモリやストレージなどを総合的に解説します。そして、具体的なスペック例やSOLIDWORKS 認定ワークステーションのメリットにも触れながら、納得のいくPC選びをサポートしていきます。
はじめての方でも理解しやすいようまとめているので、どうぞ最後までお付き合いください。専門性と決断力を高め、確実にコスト効率と性能を両立するためのSOLIDWORKS PC購入ガイドとしてご活用いただければ幸いです。

2. SOLIDWORKSとPCスペックの基本理解
パソコンの性能を決める要素には、CPU、GPU、メモリ、ストレージなどが挙げられます。SOLIDWORKS 2025などのバージョンアップによるスペック変更も発生するため、常に最新の要件をチェックすることが大切です。
SOLIDWORKSは3次元形状を扱う関係上、GPU(グラフィックス処理装置)の性能が重視されがちです。しかし、CPU性能 SOLIDWORKSの評価点も無視できません。シングルスレッド性能が特に重視されるシーンや、解析・シミュレーションでマルチコア性能が必要になる場合など、多彩な要件があります。
一方、大規模なアセンブリを扱う際にはメインメモリ(RAM)の不足がボトルネックになるケースもあり、プロジェクト規模に合った選定が必要です。そしてOSやドライバの適切な組み合わせによって、SOLIDWORKSの安定動作が担保されます。ここからは、モデリングとアセンブリに与える生産性の影響や、GPUとCPUのバランス、バージョンアップ時の注意点などを詳しく見ていきましょう。
SOLIDWORKS 推奨スペックに合わないPCを使うと、動作不良や作業効率の低下を招きやすくなります。最適な組み合わせを考慮することが、社内全体のパフォーマンスをアップさせるカギとなるのです。
2.1. モデリングとアセンブリの生産性への影響
3Dモデリングやアセンブリの操作感は、システム全体の性能によって左右されます。大量のパーツを組み合わせるアセンブリ作業では、CPUとメモリに負荷が集中しがちです。一方、形状を画面にスムーズに描画するにはプロ向けGPUが求められます。
具体的には、アセンブリを細かなパーツ単位で頻繁に編集する場合、高性能CPUがあると処理の待ち時間を短縮できます。さらに、作業画面内の拡大・回転といった操作をスムーズに行うためには、安定感のあるグラフィックス性能が欠かせません。結果として、設計者向けPCとしての見合った性能を確保しておくと、デザインレビューや検討会などの場面でもスピーディーに作業を進められます。
大規模データを扱うほどハードウェアには大きな負荷がかかります。スケジュールや人件費を考慮すると、少しでも演算時間を削減できるよう、最初から求めるスペックを明確に設定しておくことが肝要です。
2.2. CADソフトにおけるGPUとCPUのバランスの重要性
CAD用高性能PCは、高い3D描画能力を持つGPUと素早い処理を実現するCPUの両輪が揃ってこそ真価を発揮します。例えば、NVIDIA Quadroなどの認定GPUを搭載することで、ドライバレベルでハードウェア互換性が調整され、描画不具合が起こりにくくなります。
またGPU比較をする際、プロ向けとゲーミング向けの違いを認識するのは非常に重要です。GeForceでも動かせるケースがあるものの、安定性や長期的なサポート面、そして公式認定ドライバの存在を考慮すると、プロ向けGPUが優位となるでしょう。
そのうえで、CPU側ではシングルスレッドの高さが基準になりがちですが、複雑な解析やレンダリングではマルチコアCPUの恩恵を受けます。社内の使用頻度や工程を把握しておくと、最適なバランスを見極めやすくなります。
2.3. バージョンアップごとのスペック要件の変更
SOLIDWORKSは毎年新バージョンをリリースしており、機能強化や最適化に伴い、システム要件が改定されることも少なくありません。例えば、SOLIDWORKS 2025ではWindows 11 SOLIDWORKSのサポートがメインとなる見通しです。Windows 10では動作保証外になる可能性も出てくるため、ハードウェア面でも余裕を持たせる必要があります。
バージョンアップのたびにスペック不足で買い替えとなると予算が圧迫されます。そこで、先を見据えたスペックを選び、長期的な運用コストを抑えるのが賢明です。一度購入したPCをできるだけ長く活用するには、将来の拡張性を考慮しつつ、最初から必要な範囲を十分にカバーできる性能を確保しておきましょう。
また、SOLIDWORKS パフォーマンスチェックなどのツールや公式が公開しているSOLIDWORKS ハードウェアリストを随時確認し、アップデート情報にアンテナを張ることがITマネージャーとしての重要な役割となります。
3. OSの選定:Windows 10からWindows 11へ
OS選びが適切でないと、せっかくの高性能パソコンでもソフトが動かない、あるいはトラブルが頻発するリスクがあります。SOLIDWORKSのアップグレード計画を見据えながら、OSを選定することが重要です。
Windows 10は安定した実績がありますが、今後リリースされるSOLIDWORKS 2025ではWindows 11 SOLIDWORKSのみに正式対応する動きが加速するかもしれません。このような変化に備えるためにも、最新OSへの移行を前向きに検討する必要があります。
ただし、旧バージョンのWindowsを使用している現場も少なくなく、ソフトウェアの互換性状況を正しく把握しておかないと、導入後の環境で問題が発生する懸念も拭えません。ここでは、Windows 11へ移行する理由や、旧バージョンとの互換性、そしてProエディションを推奨する根拠について解説します。
3.1. Windows 11の必要性とSOLIDWORKS 2025の対応
SOLIDWORKS 2025では、Windows 11が正式サポートされる見通しです。旧OSとの互換性を保つには追加のドライバ設定やセキュリティパッチが必要となり、手間やリソースを取られる可能性があります。
特に、最新のサービスパックがリリースされる際には、OSレベルでの不具合修正も含まれるため、企業ではタイムリーに対応していくことが望ましいです。もしWindows 10のまま使い続けると、次第にサポート漏れや機能制限が生じるリスクが高まります。
そのため、導入するハードウェアがWindows 11に対応しているかを事前にチェックし、互換性テストを行うとよいでしょう。確実に安定した動作を得るためにも、早めのOS移行プランを練っておくことが得策です。
3.2. 旧バージョンのWindowsとの互換性
企業によっては、業務システムや独自ツールの都合で、Windows 10やそれ以前のOSを長期にわたって利用している場合もあります。SOLIDWORKS ハードウェア互換性という面では、古いOSを使うほど最新のパフォーマンスを発揮できないケースが増えていくので注意が必要です。
一方で、旧バージョンOSであっても現時点で安定して動作しているならば、OSアップグレードの費用対効果を慎重に評価する必要があります。社内で動くすべてのアプリケーションや周辺機器の互換性確認も欠かせません。
ただし、今後のSOLIDWORKS 2025やそれ以降の対応を考えると、早かれ遅かれ次世代OSへの移行が避けられない場面が来る可能性が高いです。将来的なIT戦略に沿って計画的なバージョン移行を進めましょう。
3.3. Proエディションの推奨理由
WindowsのHomeエディションと比べると、Proエディションはセキュリティやネットワーク管理機能が充実しており、企業規模での利用に適しています。SOLIDWORKS IT担当者向けの設定を行ううえでも、グループポリシーやBitLockerなどの企業向け機能は重要です。
特に、CAD用デュアルディスプレイなどの接続環境やリモート制御、ドメイン管理などを行う場合、Proエディションのほうが運用管理の自由度が高まります。Homeエディションだと制限が多いため、将来拡張を視野に入れるなら初めからProを選んだ方が良いでしょう。
社内のセキュリティポリシーやアカウント管理と整合性を取る上でも、ビジネスユースであればProに統一しておくのが一般的です。コスト面において多少の差額があっても、管理効率とセキュリティ強化によるメリットの方が大きいと考えられます。
4. CPUの選び方:性能の見極め
SOLIDWORKSは基本的にシングルスレッド性能を重視しますが、解析系やSimulation機能を多用する環境ではマルチコアCPUの処理能力も大きな武器になります。CPUの選定にあたっては、どんな作業工程が多いかを分析しておくと良いでしょう。
近年のIntel CoreやAMD Ryzenは世代を重ねるごとに性能向上が著しく、単純なクロック数だけではなく、IPC(命令処理効率)も向上しています。エンジニアリング系ソフトウェアはこのIPCも重視するため、第13世代Core i7以上やRyzen 7以上など、比較的新しいモデルを選ぶのが無難です。
一方、TDP(消費電力設計値)が高いCPUほど負荷時の発熱量が大きいため、冷却性能も考慮しなければなりません。特にワークステーションを長時間フル稼働させる場合、CPUクーラーやケース内のエアフローを充実させておくことが望ましいです。
ここでは、シングルスレッド性能とマルチコア数のバランス、そして具体的な推奨モデルや世代についてチェックしましょう。
4.1. シングルスレッドとマルチコアのバランス
モバイルワークステーションであれデスクトップ機であれ、一般的なモデリング作業はシングルスレッド性能がメインとなります。例えば、パーツのスケッチ編集や寸法変更などは単一スレッドで動作することが多いため、その速度が作業感を左右します。
一方で、複雑なアセンブリ解析やレンダリング、さらにはFlow Simulationなどのモジュールを使用する場合には、マルチコアCPUが効率的に力を発揮します。コア数が多いほど、同時並行で複数の処理を進められるからです。
よって、実際にはシングルスレッド性能の高いCPUをベースに、適度なコア数を備えたモデルを選ぶと良いでしょう。Core i7やRyzen 7クラスであれば、両方のニーズを一定レベルでバランスよく満たす傾向があります。
4.2. 推奨されるCPUモデルと世代
IntelのCoreシリーズであれば、第12世代以降のCore i7以上が、推奨スペックとして取り上げられるケースが多いです。さらに2023年以降リリースの第13世代Core i9はシングルスレッドもマルチスレッドも強化され、ハイエンドユーザー向けの選択肢となります。
AMDではRyzen 7以上が安定した高性能を誇り、同時にRyzen 9であればより多くのコア数を備えているため、解析やレンダリング処理も快適にこなせます。ただし、企業内の使用実績やサポート体制の観点から、Intelプラットフォームを好むユーザーも多いので、互換性やドライバ類も考慮して選定してください。
CPUはハードウェアアップグレードの主軸となるパーツです。なるべく新しい世代を選んでおくことで、数年先のアップデートまで視野に入れた性能を担保できるでしょう。
5. GPUの選定:QuadroとGeForceの比較
SOLIDWORKSを含むプロ向けCAD・CGソフトでは、NVIDIA QuadroやAMD Radeon Proなどのプロ向けGPUが定番とされています。これらのモデルは公式に認定されているドライバを用意しており、描画エラーやクラッシュを防ぎやすいといった特長があります。
対して一般向けのGeForceやRadeonはコストパフォーマンスに優れますが、SOLIDWORKS GPU比較を行うとハイレベルな安定性や保証が足りない部分も否めません。場合によっては、ソフト側の要件を満たさない映像出力不具合が起きる可能性があり、導入前にリスクを理解しておきましょう。
ここではQuadroとGeForceを中心に、その違いやメリット・デメリットを解説し、SOLIDWORKS認定GPUの強みと限界を把握します。
また、出先で使用するノートPCなどではRTX Aシリーズなどのモバイル向けプロGPUが注目されています。用途を明確にしながら、最適なモデルを検討しましょう。
5.1. プロ向けQuadroシリーズの利点
NVIDIA Quadroは、プロ用途に特化したCADワークステーション向けのGPUブランドとして知られています。ドライバの安定性が高く、ソフトウェアベンダーによる検証が行われているため、ソフトの不具合を極力減らすメリットがあります。
特に精密な描画が求められるSOLIDWORKSでは、Quadroを搭載することが公式に推奨されており、ハードウェア相性の問題や描画の乱れが起こりにくい点が評価されています。大規模アセンブリを扱うときも、安定動作が期待できるでしょう。
ビジネスの現場で長期にわたり稼働させる場合、サポート体制やドライバ更新の継続性も重要です。Quadroシリーズはそうした要件を満たしやすいため、組織的には安心材料となります。
5.2. GeForceの使用時のリスクと限界
GeForceはゲーム向けとして高い人気を誇り、価格に対する性能比が魅力ではあります。しかし、CADソフトとの相性を考えると、描画の安定性やエラー発生率でQuadroに劣る可能性が否定できません。
たとえば、製図画面の一部がブラックアウトしたり、モデル表示がバグるといった不具合が起こり得ます。こうしたトラブルは作業の中断を余儀なくし、生産性を下げる要因になります。また、公式サポート対象外の場合は不具合時に確実な対処が得られないリスクも残ります。
コスト面を最優先に考えてGeForceを導入するのは一つの選択肢ですが、組織としてSOLIDWORKS認定ワークステーションを望むなら、プロ向けGPUを選ぶ方が安全といえます。中長期的な安心感とサポートを得るためにも、公式リストに掲載されているハードウェアを選定するのが望ましいでしょう。
6. メモリ容量の選び方
メモリ(RAM)は、設計データの読み込みや表示、解析プロセスの一時保管領域として利用されるため、メモリ要件を満たすのは極めて重要です。メモリ不足でハングアップや動作の遅延が起こると、業務効率が著しく下がってしまいます。
一般的には小・中規模のモデリングであれば16GBでも操作できますが、アセンブリが大きくなるにつれて32GB以上が求められるシーンが増えます。周辺アプリケーションを並行して立ち上げる場合、さらなる容量が必要です。
また、メモリスロット数に余裕があるかどうかや、将来的に増設できるかといった拡張性の面も大切です。長く使うマシンほど、最初から余裕を持ったメモリ構成を視野に入れるのが得策といえます。
以下では、プロジェクト規模に応じたメモリ選定や、スロット数を把握しておく理由を詳しく解説しましょう。
6.1. プロジェクト規模に応じたメモリ選定
設計するパーツの数やデータの複雑さにより、必要なメモリ容量は変わります。小規模な部品設計ならば16GBでも十分動作可能です。ただし、部品数が数千を超える大規模アセンブリや、複雑な面構成を多用するプロジェクトでは、32GBや64GBが推奨されることもしばしばあります。
また、解析作業や複数のSOLIDWORKSファイルを同時に開く運用を想定するなら、余裕を持たせたメモリ選定が結果的にコスト削減につながるケースもあります。作業中の待ち時間が減れば、設計担当者のストレスやタイムロスを軽減できるからです。
実際には、設計や解析以外にもOfficeソフトやメールクライアントなどを常に立ち上げることが多いため、業務効率を高めるためにも適正量を確保しておくことが大切です。
6.2. 将来の拡張性を考慮したスロット数の確認
メモリスロットが2つだけのマザーボードと、4つ以上あるマザーボードでは、あとから増設する際の柔軟性がまったく異なります。将来的にハードウェアアップグレードを見込むなら、スロット数が多いほど有利です。
企業のITマネージャーとしては、今は16GBや32GBで足りても、2年後には64GBが欲しくなるシナリオが起きうると想定しておくと良いでしょう。メモリは比較的導入しやすいパーツのひとつですが、マザーボード側の制約により拡張が困難なケースも少なくありません。
結果として、プロジェクトや組織の規模拡大に合わせてシームレスにアップグレードできる構成を確保しておくことが、長期稼働する高性能CAD PCを作り上げるコツとなります。
7. ストレージの種類と速度の影響
モデリングデータや解析ファイルが増加すると、ストレージへのアクセスが頻繁に発生します。ファイルの読み書きが遅いと、開くのにも保存するのにも長い時間がかかり、SOLIDWORKS PC購入ガイドとしては見過ごせないポイントです。
近年ではSSDとHDDのハイブリッド構成が一般化しており、OSやアプリケーションを高速SSDに、長期保管データを大容量HDDに格納する利用例が増えています。とりわけNVMe SSDの速度は非常に強力で、SOLIDWORKS SSD推奨の理由もここにあります。
また、定期的なバックアップやメンテナンスのしやすさも意識すると、ストレージ選定が単純な容量比較にとどまらないことを実感できるはずです。以下でSSDとHDDの性能面の違いや、ハイブリッド構成のメリットを確認しましょう。
CAD用SSD vs HDDという観点で、特に大規模ファイルを頻繁に開く作業がある場合はSSDの高速性が重要です。適切なストレージ選びは作業全体のテンポに直結します。
7.1. SSDとHDDの性能比較
SSDはフラッシュメモリを用いた記憶装置で、高速読み書きが可能な点が魅力です。OS起動時間やSOLIDWORKSのアプリケーション起動、データ読み込みまでがHDDより大幅に短縮されます。
HDDはコストあたりの容量が大きい点でメリットがありますが、回転ディスクによる物理的な読み書き特性から、ランダムアクセス性能はSSDに劣ります。モデルの呼び出しや保存の多い設計環境では、HDDでは待ち時間が増しがちです。
結果として、ハイエンドなCAD用高性能PCを構築する際には、NVMeタイプのSSDをメインドライブとして採用するケースが圧倒的に増えています。負荷の大きい作業を効率よく進めたいなら、SSDの方が有利です。
7.2. ハイブリッド構成のメリット
SSDの高速性とHDDの大容量・低コストを両立させたいなら、ハイブリッド構成が最適です。具体的には、システムドライブや作業フォルダをSSD上に置き、アーカイブデータや使用頻度の低いファイルをHDDに保存するといった使い分けです。
こうすることでSOLIDWORKSの操作感はSSDの恩恵を受けつつ、コストを抑えながら大容量データを格納できます。特に長期間にわたって大きなCADデータを保管する場合、コスパの高いHDDを活用する方法は依然として有効でしょう。
ただし、HDDへの統合アクセスが多くなると速度低下が起こるため、作業データの整理やバックアップ計画を適宜見直すことも重要です。データ指向の管理方法を明確にしておくと、エンジニアや設計チーム全体がスムーズに運用できます。
8. ディスプレイとポートの選定
ディスプレイは見やすさや作業効率に直結する要素です。SOLIDWORKS ディスプレイ要件として、FHD(1920×1080)以上が推奨されますが、さらにWQHD(2560×1440)や4K解像度(3840×2160)などを使うことで、細部までくっきり表示できるメリットがあります。
特に図面や複雑なモデリングを行うときは解像度が高いほど情報量が増えるため、一度に多くのCADウィンドウやツールパネルを表示しやすくなります。しかし、高解像度の場合はGPUにも負荷がかかるため、自身のGPU性能とのバランスを考慮する必要があります。
また、PC本体のポート構成も重要です。複数画面を使いこなすには、DisplayPortやHDMI、場合によってはUSB-Cなどの接続端子が必要です。ここでは推奨解像度と作業効率の関係、必要なポートの種類について詳しく解説します。
複数ディスプレイ環境をどう構築するかは、生産性にも大きく影響します。CAD用デュアルディスプレイなどをフルに活用できる端子が備わっているかをチェックしておきましょう。
8.1. 推奨解像度と作業効率
一般的なFHDモニターでもSOLIDWORKSの作業は十分可能です。しかし、より精細に表示できるWQHDや4K解像度を選ぶと、アセンブリを細かく検証する際、部品同士の干渉や寸法表記をより見やすくなります
また、広い作業領域によって、ツールパレットや特性タブを別画面に配置したり、SOLIDWORKS以外のソフトと並行して表示するマルチウィンドウが快適になります。生産性向上の観点から、できるだけ高解像度を採用するのが望ましいです。
ただし、4K以上の超高解像度を狙う場合には、GPUの描画性能やメモリ量にも注意を払いましょう。用途や予算に合わせた最適なディスプレイ選定がカギとなります。
8.2. 必要な接続端子の確認
ディスプレイ側がどの種類のポートを備えているか、PC本体のGPU出力がどれに対応しているかを事前に確認しておくことが大切です。DisplayPortは高解像度や高リフレッシュレートに強く、HDMIは家電やテレビとの互換性に優れています。
また、USB-C(Thunderbolt含む)を活用すると、映像やデータ、給電を一本のケーブルで行えるため、デスク周りの配線をスッキリできます。モニターアームを利用する場合などは、ケーブル長や規格にも注意が必要です。
複数画面を運用するなら、GPU側に備わる端子の数と種類も把握しておかないと、いざ導入してみたらポート不足で接続できない、といった事態になりかねません。端子数にゆとりがあるかどうかを確認し、必要に応じて変換アダプターを用意しましょう。
9. モバイルPCの選定とその限界
設計者の中には、出先や会議室でもSOLIDWORKSを操作したいというニーズがあり、ノートPCの導入を検討するケースも増えています。モバイル機であっても比較的高性能なパーツを搭載できる時代になりましたが、デスクトップ並みの性能を期待する場合は熱処理やバッテリーの問題が大きく立ちはだかります。
また、重量や画面サイズ、キーボードの使いやすさといった要素も、実際の運用に影響を与えます。モバイルワークステーションを購入する際には、性能だけでなく携帯性や拡張ポートの有無、そして放熱設計に着目すると良いでしょう。
ここでは、モバイルPCがどこまで実務に耐えうるか、その限界とメリットを整理します。出先での打ち合わせや軽微な修正ならば十分賄える一方、重い解析や広範囲なアセンブリ操作には苦戦することもあります。
設計現場の実情やコストに併せて、デスクトップとノート型のどちらをメインにするかを考えることが重要です。
9.1. モバイルワークステーションの選び方
一口にノートPCといっても、一般向けのラップトップから高性能なモバイルワークステーションまで幅広い種類があります。モバイルワークステーションとして機能させるには、認定GPUとしてのQuadroシリーズやRTX Aシリーズ、あるいは同レベルの安定したGPUを搭載したモデルが望ましいです。
また、CPUはHシリーズなどのハイパフォーマンス向けモデルが有力候補となりますが、その分消費電力や熱放散が大きくなるので、筐体設計がしっかりしていないとパフォーマンス低下を招きがちです。実機レビューや各ベンダーのサポート情報を見比べ、長期運用を想定して選定しましょう。
予算にもよりますが、ある程度のスペックを備えたモバイルワークステーションは価格が高く、拡張性もデスクトップほど高くありません。導入目的が明確であれば、費用対効果を納得したうえで投入するのがベストです。
9.2. 出先での使用とその制約
ノートPCを持ち運ぶことで、外出先での急なデザイン変更対応やクライアントへのプレゼンなどが可能になります。一方で、描画や解析負荷が高い作業を頻繁に行うと、発熱や動作クロックの制限、バッテリー消耗の早さといった問題が出るでしょう。
また、ディスプレイサイズの制約により、詳細な作業や複数ウィンドウを開く操作はデスクトップ並みに快適とはいきません。外部モニター環境を併用できるかどうかも検討すると作業効率が変わってきます。
そのため、モバイルPCをメインに据えるのではなく、出張先での軽微な修正や図面確認、打ち合わせ時の説明用と割り切って導入する企業も少なくありません。用途をしっかり切り分けることで、最適な運用スタイルが見えてくるでしょう。
10. 認定ハードウェアと公式サポート
ソフトウェア開発元のDassault Systèmesは、ハードウェアリストとして検証済みのワークステーションを公開しています。これらは「SOLIDWORKS認定ワークステーション」として、各ドライバーとの相性やパフォーマンスが事前にテストされている点が特徴です。
公式認定モデルを選択すると、将来的なアップデートを受けても、メーカーやSOLIDWORKS側のサポートを受けやすく、トラブル時の原因特定や対処がスムーズに進む可能性が高まります。企業運用として、万が一の障害対応が迅速に行えるのは大きなメリットです。
一方、認定外のハードウェアであっても動作するケースはありますが、描画バグや機能制限リスクを抱えたままの運用となるかもしれません。ここでは、認定リストをチェックする意義や、認定モデルを選ぶことで得られる利点を解説します。
購入前にハードウェア互換性をチェックし、最終的に公式サポートを活用できる体制を整えることが、ITマネージャーとしての重要な仕事の一つとなるでしょう。
10.1. SOLIDWORKS公式の認定リスト
SOLIDWORKS公式サイトでは、OSバージョンやGPU、CPUの組み合わせごとに動作検証を行った情報が公開されています。これにより、どのモデルが安心して使えるかを迅速にリサーチできるのです。
このリストを参考にすれば、ハードウェアを比較検討する際に一つの安心材料となります。特にプロ向けGPUであるNVIDIA Quadroに関しては、ほぼ確実に認定情報が掲載されているので、導入時に心強い指針となるでしょう。
企業規模でPCを導入するときは、複数の候補をピックアップしたうえで、認定リストとの照合をおこなうと、トラブルリスクを大きく下げられます。結果として、IT部門がトラブル対応に追われる手間とコストを削減できるのです。
10.2. 認定モデル選定のメリット
公式認定ワークステーションを選ぶメリットは、何といってもSOLIDWORKS側で動作保証が得られる点です。万一の不具合時にメーカーとSOLIDWORKSが連携して原因を突き止め、問題解決へのサポートをしてくれる可能性が高まります。
カスタマイズ性が多少制限される場合もありますが、購入後に問題が起こってから部品を交換するよりは、最初から認定パーツを使う方が安心です。特に初めての導入や社内での稟議を通すうえでも、公式認定というお墨付きは説得材料として強力に働きます。
その一方で、非認定でもスペック的に十分動作すると判断する企業もあります。コスト削減のためにあえて独自仕様のマシンを導入する方法もなくはありませんが、トラブルシューティングの時間と手間は見落とせない要素です。
11. スペック別おすすめ構成3選(2025年対応)
タイプ | 用途 | CPU | メモリ | GPU | ストレージ |
エントリー | 学習・軽度な設計 | Core i5-13400 | 16GB | Quadro P2200 | 500GB SSD |
スタンダード | 中規模設計 | Core i7-13700 | 32GB | RTX A2000 | 1TB SSD |
ハイエンド | 大規模アセンブリや解析 | Core i9-13900K | 64GB | RTX A4000 | 2TB SSD |
※すべてWindows 11 Pro、認定GPU対応を前提に構成
12. 終わりに:性能と将来性のバランスを考慮
ここまで、OS選定からCPU、GPU、メモリ、ストレージ、ディスプレイに至るまで、PC スペック CADを総合的に検討するためのポイントを解説しました。SOLIDWORKSの推奨スペックを踏まえると、多少予算が高くなっても、将来性と安定性を重視した選定が重要だと分かります。
特にSOLIDWORKS 2025への対応や、NVIDIA Quadroなどのプロ向けGPUによる運用実績は、長期的なコストパフォーマンスを左右します。最新OSへの移行を見据えることで、企業としての業務継続性も高まり、ハードウェアアップグレード計画をスムーズに遂行できるでしょう。
また、ハードウェア認定リストや公式サポートを上手に活用することで、トラブル対応のリスクを最小化できます。必要に応じてモバイルワークステーションを導入し、社内と出先の両方で快適なCAD環境を整えることも視野に入れてください。
最後に、導入後のセットアップや動作確認も含め、IT担当者としては準備段階からハードウェア選定、運用開始後のメンテナンスまでを一貫して管理する責任があります。本記事を「SOLIDWORKSのPC購入ガイド」として活用し、確実な判断と導入計画を築いていただければ幸いです。
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<参考文献>
・システム要件 | SOLIDWORKS