データ連携が進まない原因とは?BIM・CDEで変わる情報共有の実務

1. はじめに

建設現場では、設計、施工、維持管理など多くの段階で、さまざまな情報が扱われています。しかし、各段階で使われるソフトウェアや作業環境は異なることが多く、必要なデータの互換性が十分に確保されないまま業務が進んでしまうケースも少なくありません。

たとえば、設計で作成した3Dモデルや図面データをBIMソフトで管理していても、施工現場では別のCADソフトで情報を参照していたり、現場写真や工程管理のデータベースが共有されず、個人のフォルダに散在していることがあります。さらに、安全面を重視するあまり、厳格なセキュリティ対策によってデータのやり取りが煩雑になり、こうした問題が重なってデータ連携が滞るケースもあります。

こうした状況を改善する方法として注目されているのが、BIM(Building Information Modeling)やCDE(共通データ環境)を中核としたデータ活用の仕組みです。情報を集約し、部門や工程をまたいで円滑にやり取りできれば、プロジェクト全体の効率が高まり、手戻りの削減や原価管理の精度向上にもつながります。

本記事では、データ連携が進まない理由を5つの原因に分けて整理し、CDEとBIMが果たす役割を解説します。あわせて、具体的な実務例を交えながら、建設業における情報管理と運用設計のポイントを紹介し、DX実現に向けた手がかりを探ります。

この記事でわかることは、次の4点です。

  • データ連携が進まない主な原因
  • CDEとBIMの役割
  • 実務で進む活用例
  • 導入時に重要な運用ポイント

2. 建設業におけるデータ連携の基本概念

建設業界では、多様な職種や企業が関わりながら一つのプロジェクトを進めます。その中で重要となるのが、部門や組織をまたいだ情報の円滑な共有です。設計・施工・維持管理の各段階で同じ情報が繰り返し使われるため、データ連携の仕組みが不可欠となります。

ここでは、設計から施工、維持管理までの流れと、扱われる情報の種類を整理します。建設業のデータは、図面や3Dモデル、現場写真、工程管理、コスト情報など多岐にわたるため、全体像を把握することが重要です。

2.1. データ連携の流れ:設計から維持管理まで

建設プロジェクトでは、設計者が作成した3Dモデルや図面をもとに施工計画が立てられます。施工段階では、進捗情報や写真、工程データが蓄積され、施工後は竣工図やBIMモデルとして維持管理に引き継がれます。

こうした情報が継続的に共有されることで、手戻りの削減や更新管理の精度向上が期待されます。円滑な運用のためには、関係者が必要な情報にアクセスできる環境を整えることが重要です。

2.2. 重要データの種類:図面、モデル、写真、工程、原価

建設業で扱う主なデータは、次のように整理できます。

  • 図面
  • 3Dモデル
  • 現場写真
  • 工程データ
  • コスト・原価情報
  • 設備情報
  • 履歴データ

設計段階では、CADやBIMで作成した図面や3Dモデルが基礎データとなり、DWGやIFCなどの形式で受け渡されます。BIMでは形状に加え、仕様や数量などの属性情報も扱われます。

施工段階では、現場写真や工程、コスト情報が追加され、維持管理段階では竣工図や設備情報、履歴データが継続的に活用されます。

3. データ連携が進まない5つの主要原因

建設業においてデータ連携の重要性は広く認識されていますが、実際の現場では十分に機能していないケースも少なくありません。ここでは、現実的に考えられる代表的な5つの原因を取り上げ、それぞれがもたらす影響と対策のヒントを解説します。

原因を整理することで、ツール導入やクラウド化だけでなく、運用設計や情報管理ルールの整備といった多面的な取り組みの重要性が見えてきます。プロジェクトマネージャーは、データ連携におけるボトルネックを把握することで、円滑な情報共有とDX推進を同時に進めることが可能になります。

以下では、各原因と具体的な課題を示しながら、業務改善につなげるポイントを整理していきます。

原因主な問題主な影響
データ形式とソフトウェアの不一致IFC・DWGの互換性差、設定差属性欠落、手戻り、工程遅延
情報管理ルールの不統一と属人化命名規則・フォルダ構成のばらつき最新版判断が難しい、情報探索に時間がかかる
部門間のサイロ化と情報の分断設計・施工・現場・本社の分断認識ずれ、追加コスト、修正遅れ
クラウド導入の誤解ツール導入だけで運用未整備フォルダ乱立、共有不全
属性情報の未活用LOD/LOI未整理、業務フロー未接続BIM活用効果が限定的になる

3.1. データ形式とソフトウェアの不一致

BIMモデルのIFC形式やCADのDWG形式は業界標準として広く使われていますが、完全な互換性が保証されているわけではありません。ソフトウェアごとに独自の拡張が行われている場合もあり、他のツールで読み込むと一部の属性情報や3Dモデルが欠落することがあります。

その結果、形状だけが伝わり、LODやLOIなどの詳細情報が十分に活用されないまま工事が進む場合があります。これにより手戻りが増え、工程管理の遅延や原価のずれを招きやすくなります。

対策としては、設計段階で業界標準に沿った仕様を意識し、IFCやDWGの出力ルールを統一することが重要です。加えて、ソフトウェアの設定差を把握し、データ交換時にはテストを行うなど、プロジェクト側でルールを整備する必要があります。

こうした実務上の工夫とあわせて、利用するソフトの仕様や対応状況を確認しながら、適切な連携設定を整えることが求められます。

3.2. 情報管理ルールの不統一と属人化

企業や部門ごとにフォルダ構成やファイルの命名規則が異なると、情報共有の際に整理がつかないことがあります。また、特定の担当者しか構成を把握していない場合、その人が不在になると混乱が生じます。

こうした属人化は、途中から参加したメンバーがデータを見つけにくくなる原因にもなります。どのファイルが最新版か、どの工程表が正式かの判断が難しくなるためです。

解決策の一つとして、ISO 19650を参考にした情報管理ルールの標準化と、運用手順の明確化が挙げられます。フォルダ構成や命名規則、バージョン管理を整理し、部門をまたいで共通認識を持てる仕組みを整えることが重要です。

あわせて、定期的にルールを見直し、技術の変化に応じて更新していくことも必要です。

3.3. 部門間のサイロ化と情報の分断

設計と施工、現場と本社、協力会社などの間でデータが十分に共有されていないと、プロジェクトの進行に支障が出ます。各部門が独自に情報を管理していると、たとえば工程変更が設計側に伝わらず、施工図の修正タイミングを逃すリスクがあります。

このようなサイロ化は、情報共有の不足や認識のずれを引き起こし、手戻りや追加コストにつながりやすくなります。特に大規模プロジェクトでは、小さな連携ミスが大きな遅延に発展することもあります。

これを防ぐには、早い段階から関係者が参加する定期的なミーティングや情報共有の場を設けるとともに、CDE上で最新データを確認できる体制を整えることが重要です。

さらに、BIMモデルをベースとした運用設計を行い、必要な情報を整理・分類することで、DX推進にもつながります。

3.4. クラウド導入の誤解

近年、クラウドサービスを活用した情報共有への関心は高まっていますが、「クラウドを使えば自動的にデータ連携が進む」という誤解が残っている場合もあります。

実際には、クラウドを導入しても運用ルールが整備されていないと、部署ごとにフォルダが乱立し、どれが正式なデータか分からなくなることがあります。また、セキュリティポリシーが厳しすぎることで、外部との共有が制限されるケースもあります。

こうした課題を解消するには、運用設計の視点が欠かせません。バージョン管理やアクセス権限、履歴管理などを含めた情報管理の仕組みを整える必要があります。

単にツールを導入するだけでなく、関係者が共通ルールを守りながらデータを扱う体制を整えることが重要です。

3.5. 属性情報の未活用

BIMでは3Dモデルに多くの属性情報を付与でき、部材名や材料強度、メンテナンス履歴などをまとめて管理できます。しかし、現場では形状データのみが使われ、属性情報が十分に活用されていないケースも見られます。

これは、LODやLOIの整理が曖昧なままモデルが作成されていることや、既存の業務フローに属性情報を取り込む仕組みがないことが要因です。その結果、情報モデルを十分に活用できず、施工の効率化や手戻り削減の効果が限定的になります。

対策としては、国土交通省のBIM標準ワークフローやISO 19650を参考に、必要な属性情報の範囲を明確にし、運用時にも確認するプロセスを設けることが重要です。

こうして属性情報の更新や履歴管理を一元化することで、将来の変化にも対応しやすくなり、継続的なデータ活用の基盤を整えることができます。

4. CDE(共通データ環境)の役割と機能

CDE(Common Data Environment)は、建設プロジェクトに関する情報を関係者間で共有・管理するための共通の情報環境です。必要な情報を必要な人が参照しやすくするための考え方であり、単なる保存場所だけを指すものではありません。

JACICが紹介するISO 19650とCDEの考え方でも、CDEは建設事業における情報共有・管理の標準的なプロセスと密接に結びついています。そこでは、情報の状態管理や共有手順など、運用面を含めた管理の重要性が示されています。

4.1. CDEの本質と情報管理

CDEでは、プロジェクト内で生じる各種データを時系列や作業ステータスごとに整理できます。たとえば「WIP(作業中)」「Shared(共有中)」「Published(正式版)」など、進捗や成熟度に応じた段階区分を設定し、誰がどの段階のファイルを使用しているかを明確に管理する仕組みを提供します。

また、フォルダ構成やファイルの命名規則、文書の承認プロセスなどもCDE上で標準化できます。これにより、属人化やルールの不統一を防ぎ、ISO 19650が示す統合的な情報管理の実現につながります。

クラウド基盤上のCDEでは、必要に応じて権限を設定し、内部および外部の関係者が安全に情報を閲覧・編集できる仕組みも整えられます。重要なデータの誤上書きを防ぐため、バージョン管理やアクセス履歴の記録も欠かせません。

4.2. CDEによる情報の一元化と更新管理

CDE環境が整備されると、関係者が同じプラットフォーム上で最新の図面や3Dモデル、工程情報を参照しやすくなります。これにより、部門間のサイロ化を防ぎ、更新ミスや二重入力のリスクを抑えることができます。

さらに、バージョンや履歴管理が明確になることで、「どの時点のファイルが正しいのか」「いつ誰が修正したのか」といった情報も把握しやすくなります。これは、後から変更履歴を確認したり、手戻り対応を行う際にも有効です。

結果として、工程管理や原価管理においても整合性のある情報を活用しやすくなり、プロジェクトマネージャーは早い段階でリスクを把握しやすくなります。DXの流れを踏まえ、建設業の情報管理を高度化するうえで、CDEの活用と適切な運用は重要な要素といえます。

ここまでの内容を踏まえると、CDEとBIMの役割は次のように整理できます。

項目CDEBIM
主な役割情報共有・管理の基盤3Dモデルと属性情報の活用
主な対象図面、文書、工程、履歴などモデル、部材、仕様、数量など
強み最新情報の一元管理可視化、干渉確認、属性活用
記事内での位置づけ情報管理の土台データ活用の中核

5. BIMによるデータ連携の革新

BIM(Building Information Modeling)は、設計から施工、維持管理までの各フェーズで3Dモデルと属性情報を活用し、建設プロジェクトをデジタル空間上で検討する技術です。

国土交通省もBIM活用の標準ワークフローを示しており、干渉チェックや配置の不整合を早期に把握することで、手戻り削減が期待できます。

5.1. 3Dモデルと属性情報の統合

BIMの特長は、3D形状に加えて部材情報や仕様、工程に関わる属性を統合して管理できる点にあります。これにより、建物やインフラを情報モデルとして捉え、設計から施工までの一貫した活用が可能になります。

また、モデルが適切に構築されていれば、数量の把握や原価管理にも活用しやすくなります。こうした効果を引き出すには、IFC対応やLOD/LOIの適切な設定が重要です。

5.2. 設計から施工までのデータ活用

BIMを活用することで、設計と施工の情報の行き違いを減らしやすくなります。3Dモデルをもとに施工手順や工程を検討し、その結果を現場で共有できるためです。

施工中は、タブレットなどでモデルを参照しながら情報を確認できるため、干渉や施工ミスの早期発見につながります。さらに、写真や検査記録をモデルに紐づけて管理することで、維持管理にも活用しやすくなります。

6. 実務でのデータ連携例とその効果

実際のプロジェクトでは、どのようにデータ連携が行われ、どのような場面で活用されているのでしょうか。ここでは、IFCデータを活用した建築確認申請や、CDEを利用した情報共有の動きを通じて、実務における活用の方向性を見ていきます。

国土交通省では2026年4月1日からBIM図面審査が開始されており、BIMデータから出力した図書やIFCデータを活用する運用が始まっています。BIM審査ポータルでも、BIMデータと図書を組み合わせて申請・審査を効率的に行う考え方が示されています。

6.1. IFCデータの活用とその現状

IFC(Industry Foundation Classes)は、建築分野において3Dモデルや属性情報をやり取りするための国際的な標準形式の一つです。ICBAの確認申請用CDEやBIM審査ポータルでは、BIMデータから出力された図書に加え、IFCデータを活用する運用が案内されています。

このような運用では、紙やPDFの図書だけでは把握しにくい立体的な配置やモデル情報を補足的に確認しやすくなります。BIM審査ポータルでも、BIMデータと図書を活用して申請・審査を効率化する考え方が示されています。

一方で、ソフトウェア間の互換性や属性情報の整備状況には差があるため、IFCを使えば常に完全な受け渡しができるわけではありません。実務で活用するには、プロジェクトごとに必要な情報範囲や運用ルールを整理することが重要です。JACICも、ISO 19650とCDEの考え方の中で、情報共有にはルールに基づく管理が欠かせないことを示しています。

6.2. CDEを通じた情報の共有と提出

BIM審査ポータルやICBAの案内にあるように、CDEを活用して建設プロジェクト関連のデータを整理し、必要に応じて申請や共有に活用する考え方が広がっています。CDEは単なる保存場所ではなく、関係者が同じ情報を参照しやすくするための共通基盤として位置づけられます。

このような環境が整うと、設計事務所や施工会社、発注者などが、最新の図面やモデルを確認しながら情報共有しやすくなります。JACICは、ISO 19650に基づくCDEの考え方として、情報の状態や共有手順を明確にする重要性を示しています。

また、Autodeskの施工管理ソフトウェア関連ページでも、一元的な情報ソースやリアルタイムデータの活用が示されており、建設現場における情報共有基盤の重要性がうかがえます。

このように、CDEは審査だけでなく、施工やその後の維持管理も見据えた情報管理の基盤として位置づけることができます。

7. BIM/CIMにおけるデータ連携の標準化

国土交通省や国総研が推進するBIM/CIMでは、基準や要領が整備され、設計・施工・維持管理までを見据えた情報活用の環境づくりが進められています。国総研のBIM/CIMポータルでも、基準や要領が公開されています。

共通の基準があることで、参加者は一定のルールのもとでデータを作成・共有しやすくなり、情報管理のばらつきを抑える効果が期待されます。一方で、実際のプロジェクトでは対象業務や利用ソフト、必要な成果物が異なるため、標準をそのまま適用するだけでなく、現場に応じた運用設計も重要です。

このような標準化の取り組みは、統合的な情報管理や建設DXを進める基盤として意味がありますが、その効果はプロジェクト条件や運用方法によって異なります。

8. データ連携を支えるツールと技術

建設業界では、BIMや施工管理、クラウド共有に対応したツールが提供されています。これらは、図面やモデルを共有し、関係者が同じ情報を確認しやすい環境を整える基盤となります。

ただし、ツールの導入だけで連携が実現するわけではなく、アクセス権限や更新ルール、履歴管理を含めた運用設計が不可欠です。

9. データ連携成功の3つの鍵

データ連携を成功させるには、ツールだけでなく運用設計が重要です。ポイントは次の3つです。

  • ルール設計を優先する
    バージョン管理や命名規則が曖昧では、データは整理されません。
  • 小さく始める(PoC)
    小規模で検証し、段階的に展開することでリスクを抑えられます。
  • 人と運用を整備する
    教育やレビューを通じて運用を継続的に見直す仕組みが重要です。

10. まとめ:データ連携は運用で決まる

本記事では、データ連携が進まない原因と、CDEやBIMの役割について解説しました。重要なのは、データ連携はツール導入だけでなく、運用ルールのもとで実践されるという点です。

BIMとCDEを組み合わせることで、複数形式のデータを整理しながら、関係者が最新情報を共有しやすくなります。ただし、情報が適切に更新・管理される仕組みがなければ、その効果は十分に発揮されません。

データ連携を進めるには、原因を把握し、導入方針や運用ルールを見直すことが重要です。こうした継続的な改善が、建設DXの推進につながります。

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<参考文献>
ISO 19650とCDE|JACIC 研究開発部
https://www.cals.jacic.or.jp/CIM/cde/index.html

建築:建築BIM推進会議 - 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/kenchikuBIMsuishinkaigi.html

BIM図面審査 確認申請用CDE | 一般財団法人建築行政情報センター ICBA
https://www.icba.or.jp/denshishinsei/kakuninshinsei_cde.html

BIM審査ポータルサイト - ICBA
https://bimpermit.jp/

基準・要領等 | BIM/CIM ポータルサイト
https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/standard.html

BIM ソフト | 業界別 BIM 活用方法と事例 | Autodesk
https://www.autodesk.com/jp/solutions/bim