設計職に必要な生成AIスキルとは?設計業務で求められる能力・身につけ方を解説
1. はじめに
建築や機械、ITなど、さまざまな設計分野で生成AIの活用が広がっています。文章生成だけでなく、設計検討や情報整理、コード作成、シミュレーション支援など、その活用範囲は多岐にわたります。
一方で、「設計職には具体的にどのようなAIスキルが必要なのか」「どのように身につければよいのか」と疑問を持つ方も少なくありません。CADやBIMなどの操作に加え、プログラミングやデジタルスキルとの組み合わせ方など、押さえるべきポイントが多いため、学習の方向性に迷うこともあるでしょう。
本記事では、設計職に必要な生成AIスキルやAIリテラシーについて、わかりやすく解説します。生成AIへの適切な指示の出し方や、AIが出力した内容を評価・検証する方法、具体的な活用例やスキルを身につける方法を紹介します。
2. 生成AIの普及と設計職の変化
生成AIはテキストや画像の生成だけでなく、設計や研究などの分野にも活用が広がっています。設計分野でもさまざまなツールやサービスの開発が進み、設計職に求められるスキルにも変化が生まれています。
Autodeskが公表した「AIジョブズレポート(2026 AI Jobs Report)」によると、Design and Make業界におけるAI関連求人は、過去2年間で147%増加しています。また、直近1年間でも33%増加しており、AIを活用できる人材への需要が高まっていることが示されています(参照*1)。
一方、設計業務で生成AIを活用するには、AIを操作できるだけでなく、設計の専門知識を踏まえて適切な指示を与え、出力を評価・検証する能力も重要です。CADやBIMなどの設計ツールとの連携も含め、自分の専門分野に合わせてAIを活用するスキルが求められます。
3. 設計職に必要な5つの生成AIスキル

ここからは、設計職として身につけたいAIスキルを5つに分けて解説します。単にAIに仕事を任せるのではなく、設計の専門知識と組み合わせながら、AIのメリットを最大限に引き出すことが重要です。まずは、5つのスキルと主な内容を確認してみましょう。
| 設計職に必要な生成AIスキル | 主な内容 |
| 専門知識とAIの組み合わせ | 設計条件や専門知識を踏まえてAIの出力を評価する |
| 生成AIに適切な指示を出すスキル | 目的や条件、出力形式などを整理してAIに伝える |
| AI出力の評価と検証 | 設計条件や要求仕様と照らしてAIの出力を確認する |
| デジタルツールとの連携スキル | CAD/BIM、AutoLISP、Python、APIなどを活用する |
| セキュリティと法的知識 | 情報管理や著作権、社内規定などに配慮する |
3.1. 専門知識とAIの組み合わせ
第一に挙げられるのが、既存の設計専門知識と生成AIを組み合わせるスキルです。AIの出力や提案は、建築設計であれば建築基準法、機械設計であれば必要な強度や安全性、ITシステム設計であればネットワーク構成など、分野ごとに異なる要件を踏まえて評価する必要があります。
AIが提案するアイデアは一見合理的に思えても、実際の設計条件や運用条件に適合しているとは限りません。そのため、専門知識に基づいて評価することが重要です。Autodeskの「2026 AI Jobs Report」でも、Design and Make業界のAI関連職で需要の高いスキルとして「Design skills」が1位、「Technical skills」が3位に挙げられています(参照*1)。生成AIを活用する場合でも、設計や技術に関する専門性が重要であることがうかがえます。
したがって、設計職は「どこまでAIに任せるか」「どの部分を人間が検証するか」を明確に分け、必要に応じて軌道修正することが大切です。これが、設計職ならではの発想や独自性を生かすうえでの軸となるでしょう。
3.2. 生成AIに適切な指示を出す方法
次に重要となるのが、生成AIに適切な指示を出すスキルです。生成AIへ指示する際は、主に以下の要素を明確にすることがポイントです。
- 目的や設計目標
- 入力する情報
- 設計条件や制約
- 想定する出力形式
たとえば建物のコンセプトを検討する際には、敷地の特徴や周辺環境、耐震基準などを明記し、さらに期待する見た目や使用材料の制限を明確に設定します。こうしたアプローチによって、生成AIとの対話を重ねながら、適切なプランやアイデアの候補を生み出すことができます。
これは単に「プロンプトを書く」だけではなく、課題を整理し、仮説を立てて検証する一連の思考プロセスにもつながります。経済産業省とIPAが公表する「デジタルスキル標準 ver.2.0」でも、生成AIを「問いを立てる」「仮説を立てる・検証する」といったスキルと掛け合わせて利用することが示されています(参照*4)。
3.3. AI出力の評価と検証
三つ目は、AIが提示した結果を評価・検証するスキルです。生成AIはときに誤った推論を行ったり、学習データの偏りによって望ましくない回答を生成したりする可能性があります。そのため、設計条件や要求仕様と照らし合わせて、内容の正確性を確認する作業が欠かせません。
特にAIが提供する設計プランや解析結果については、実際の物理的条件や安全要求などと照らし合わせて確認することが重要です。Autodeskの「Applying AI in engineering workflows」でも、AIが生成した設計結果を構造化されたレビュー基準で評価することや、AIを活用したシミュレーション結果を検証することが学習項目として挙げられています(参照*2)。AIの出力をそのまま採用せず、設計条件や要求仕様に基づいて確認する姿勢が求められます。
また、生成AIによるアイデアが優れていても、企業内の制作ルールや法規に沿っていなければ採用できません。検証の段階で修正点を整理し、それを再びAIにフィードバックするサイクルを繰り返すことが大切です。
3.4. デジタルツールとの連携スキル
四つ目は、CADやBIMなどのツールと生成AIを連携させるスキルです。Autodesk Researchが研究する「Neural CAD」は、AIが2D・3DのCADジオメトリを直接扱い、設計意図や制約などを考慮することを目指したAI基盤モデルです(参照*3)。また、設計ソフトによっては、AutoLISPやPython、APIなどを活用して作業の一部を自動化する方法もあります。
すべての設計者が高度なプログラミング知識を持つ必要はありませんが、CAD環境の仕組みやデータ構造をおおまかに理解しておけば、設計業務の流れをより柔軟に改善できます。たとえばルーチンワークを自動化したり、AIが生成したコードを利用して図面の注釈やパラメータ設定を調整したりする方法です。
このようにデジタルスキルを高めておくことは、生成AIと日常の設計業務を自然に結びつけるための重要な手段といえるでしょう。
3.5. セキュリティと法的知識
最後に挙げるのが、セキュリティや著作権に配慮して生成AIを利用するためのAIリテラシーです。たとえば設計図面や顧客情報などを安易に生成AIへ入力すると、情報流出につながるリスクがあります。また、AIが生成した画像やテキスト、プログラムの著作権上の扱いは、国や地域の法制度、生成の過程などによって異なる場合があります。
設計職には、完成したプロダクトの権利保護や社内規定との整合性を考えながら、AIを利用する姿勢が必要です。こうした点を軽視すると、後からトラブルが発生する恐れがあります。
経済産業省とIPAによる「デジタルスキル標準 ver.2.0」でも、生成AIの利用では、著作権などの権利侵害や情報漏洩、倫理的な問題などに注意する必要があるとされています(参照*4)。設計業務では取り扱う情報も多岐にわたるため、関連する知識を継続的にアップデートしていくことが大切です。
4. 生成AIを活用する設計職の業務例
ここでは、先ほど紹介したスキルを具体的にどのような設計業務に生かせるのか、代表的な活用例を紹介します。自分の業務に当てはめながら、生成AIを導入するイメージを確認していきましょう。
| 設計業務 | 生成AIの主な活用例 |
| 情報収集と整理 | Webサイトや文献の要点整理、情報の要約 |
| 設計検討とアイデア生成 | 検討項目の洗い出し、アイデアや形状案の検討 |
| CAD/BIM操作と自動化 | コード作成支援、情報更新などの反復作業の自動化 |
4.1. 情報収集と整理
設計職では、部材や規格、法的基準など多くの情報を扱います。Web検索やファイル参照などに対応した生成AIを活用すれば、関連するWebサイトや文献の主要なポイントをまとめたり、要約した内容を整理したりできます。
たとえば建築分野では、建築基準や環境要件の概要を抽出して検討材料にする方法があります。ただし、得られた情報は専門知識や参照元と照らし合わせ、正確性を確認することが重要です。
4.2. 設計検討とアイデア生成
プロジェクトの初期段階で複数の設計案を検討する際、生成AIを使って検討項目を洗い出したり、新たなアイデアやアプローチを得たりすることができます。条件を変更しながらAIとの対話を繰り返すことで、より幅広い方向性を検討できます。
CADや3D設計の分野では、AIによる形状案の生成や設計検討を支援する技術もあります。ただし、生成された結果は専門的な観点から評価し、製造プロセスや法的な制限などを満たしているか確認することが重要です。
4.3. CAD/BIM操作と自動化
CADやBIMでは、部材情報の抽出や情報更新などの反復作業に時間がかかることがあります。AutoLISPやPython、設計ソフトのAPIなどと生成AIによるコード作成支援を組み合わせることで、こうした作業の一部を自動化できます。
たとえば、生成AIを使ってAutoLISPのコード作成や修正を支援したり、CSV形式のデータを読み込んで部品のパラメータを更新したりする方法があります。ただし、AIが生成したコードには不正確な部分が含まれる可能性もあるため、内容や動作を確認したうえで利用することが重要です。
5. 生成AIスキルを身につける方法

ここまで、生成AIを設計業務に取り入れるうえで必要なスキルや活用例を紹介してきました。ここからは、実際にスキルを身につけるための学習ステップを3段階に分けて紹介します。
| ステップ | 学習内容 | 活用例 |
| STEP 1 | 日常業務で生成AIに慣れる | メールやドキュメントの下書き、情報整理 |
| STEP 2 | 専門業務へ生成AIを取り入れる | CAD/BIM操作の支援、設計条件や検討項目の整理 |
| STEP 3 | デジタルスキルを広げる | AutoLISP、Python、APIなどを活用した自動化 |
5.1. 日常業務でのAI利用の開始
第一段階は、メールやドキュメントの下書きなど、比較的取り組みやすい業務から生成AIを活用することです。たとえばメールの文面をAIに提案してもらい、必要に応じて修正を加えながら最終的な文章に仕上げる方法がわかりやすいでしょう。
このプロセスを通して生成AIの特徴をつかみ、AIとの対話を自然に業務へ取り入れる感覚を養います。最初から専門的なプログラムコードをAIに生成させるよりも、リスクや作業上の損失を抑えながら取り組みやすい点がメリットです。
その後は情報整理やアイデア出しにも活用範囲を広げられるため、まずは生成AIの使い方に慣れ、AIリテラシーを身につけるステップとして捉えるとよいでしょう。
5.2. 専門業務へのAIの適用
次の段階では、自分の設計専門知識と照らし合わせながら、CADやBIM操作のヒントを得たり、検討項目のリストを作成したりするためにAIを活用します。たとえばBIMの操作やモデル作成に関する疑問をAIに尋ねたり、機械設計の基準や材料選定のポイントを確認したりして、得られた回答を参考に作業を進めます。
このとき重要なのが、AIの回答をそのまま採用せず、必ず内容を検証することです。生成AIが説明する内容は表面的な情報にとどまる場合もあるため、人間の専門的な視点と組み合わせて適切な結論を導く必要があります。
専門業務に活用することで、生成AIを実務の流れにどのように取り入れるかを実感できます。最初は試行錯誤も必要ですが、徐々に「どのような問いを立てれば良い結果を得られるか」が見えてくるでしょう。
5.3. 高度なデジタルスキルへの拡張
最後のステップでは、プログラミングやAPI連携などを利用した自動化へと活用範囲を広げます。AutoLISPやPythonで作成した簡単なスクリプトを生成AIの提案をもとに修正し、設計フローに組み込むことで、日々の反復作業を大幅に短縮できる可能性があります。
もちろん、AIが生成するプログラムには不正確な部分が含まれることもあるため、検証は欠かせません。一方で、コードの作成や修正を支援したり、新しいアイデアを形にしたりする際に活用できます。
こうした活用を繰り返すことで、設計者自身がAIへ適切な指示や修正を与えながら、より質の高い設計成果を生み出す体制を整えられます。デジタルトランスフォーメーションの一環として、設計現場の生産性向上を支える要素となるでしょう。
6. まとめ
本記事では、設計職が生成AIを活用するうえで必要な5つのスキルと、具体的な活用方法を紹介しました。設計の専門知識を土台として、生成AIへの適切な指示や出力内容の評価・検証、CAD/BIMなどのデジタルスキル、さらにセキュリティや著作権への配慮も重要です。
まずは日常的な業務でAIとの対話に慣れ、徐々に専門業務へ活用範囲を広げていくとよいでしょう。さらに、プログラミングやAPIを活用して業務フローを自動化することで、さらなる効率化も期待できます。
生成AIが普及しても、設計職が持つ専門性の重要性は変わりません。生成AIを適切に活用し、自らの専門性や付加価値をさらに引き出すことが、これからの設計職には求められます。知識や技術を継続的にアップデートしながら、より効率的で質の高い設計を実現するために生成AIを活用していきましょう。
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<参考文献>
(*1)Autodesk 2026 AI Jobs Report: AI hiring in Design and Make more than doubles as students face a new skills gap | Autodesk News
https://adsknews.autodesk.com/en/news/2026-ai-jobs-report/
(*2)Applying AI in engineering workflows | Autodesk
https://www.autodesk.com/learn/ondemand/module/applying-ai-in-engineering-workflows
(*3)Neural CAD: How AI Can Reason Directly in Design and Engineering
https://www.research.autodesk.com/blog/neural-cad-how-ai-can-reason-in-design-and-engineering/
(*4)デジタルスキル標準 ver.2.0|経済産業省・IPA
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/skill_standard/img/digitalskillstandardver.2.0.pdf
