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国土交通省が描くBIMのロードマップを紹介 現状と今後の方向性を確認しよう

建設業界はいま、官民一体となってデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいます。その道しるべとなっているのが、国土交通省(以下、国交省)が示すBIMのロードマップ案です。

世界ではイギリスのISO19650をベースとしてBIMの導入が進められています。国交省が示すBIMロードマップ案は、ISO19650を取り入れながらも日本の特徴に合わせたものであるといえるでしょう。

この記事では、国交省のBIMロードマップ案の内容を解説し、それを実現するためにどのような取り組みが求められているのかを紹介します。イギリスと同様に日本でもBIMの原則適用が進められていくことになるので、ぜひ参考にしてみてください*1。

国交省が描くロードマップ案とは*2_P.2-3

国交省のBIM/CIM推進委員会は、建築・土木の学識者、土木学会、建設業・建設関連業・ソフトウェアベンダー団体・国土交通省で構成されています。
BIM/CIM推進委員会では、BIM/CIMに関する課題について議論を重ねており、そのなかで示されているのがBIMロードマップ案です。
建築・土木の有識者が日本のBIMの方向性を決めたロードマップなので、内容を把握することで今後の進め方がわかりやすくなることでしょう。

国交省のBIM/CIMロードマップ案*2_P.5


国交省は、建設業のリーディングカンパニーである組織設計事務所やゼネコンと検討を重ね、BIMの有効性を確認してきました。令和5年度には80億円の予算を投じた「建築BIM加速化事業」とプロジェクトにおける「BIMの原則適用」を実施し、中小企業を含めたBIM普及の加速化を図っています。
その目的は、「建設生産・管理システムの効率化の向上」および「デジタル技術をベースとした効率的な制度の導入」です。「3次元モデルを使った干渉確認」「デジタル技術による維持管理の高度化」「CDEの構築」などの取り組みを広め、デジタルトランスフォーメーションを実現することが今後の目標といえるでしょう。

今後のBIMの適用数とデータ活用度合の拡大イメージ

*2

引用)国土交通省「BIM/CIMの進め方について P.5」

https://www.mlit.go.jp/tec/content/001624301.pdf

国交省のBIMロードマップ案は、「事業実施関連」「積算業務関連」「働き方関連」の3種類が示されています。それぞれの内容をみていきましょう。

事業実施関連のBIM/CIMロードマップ案*2_P.6

はじめに紹介するのが、事業実施関連のBIMロードマップ案です。

事業実施関連のBIM/CIMロードマップ案

*2

引用)国土交通省「BIM/CIMの進め方について P.6」

https://www.mlit.go.jp/tec/content/001624301.pdf

事業実施関連のBIMロードマップ案では、「発注者内で事業実施計画が共有され、事業関係者が共有のプラットフォームに保管された事業実施に必要なデータに容易にアクセスできるようにする」(引用:国土交通省*2_P.6)ことを目的としています。

そのため、ロードマップ案ではデータ管理に主眼が置かれていることが特徴です。

令和5年度までの取り組みで、「データ管理手法の標準案の策定」や「データ管理を効率化するための納品方法の改定」が進められてきました。

令和6年度以降は、これらの取り組みを継続するほか、円滑な事業実施のためのBIM/CIMの活用方法の検討が開始されます。事業実施の過程でどのようにBIM/CIMを活用していくべきかが「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」などにまとめられる予定なので、チェックしておきましょう。

積算業務関連のBIM/CIMロードマップ案*2_P.7

次に紹介するのが、積算業務関連のBIM/CIMロードマップ案です。
積算業務関連でBIM/CIMを導入する目的は、単に積算業務の自動化により生産性を向上するだけではありません。「発注図書の精度向上」「設計・施工などのフェーズ間の引継ぎ手法の整理」「3D契約図書の検討」などにより、後工程の手戻りを防止することが真の目的とされています*2_P.7。

積算業務関連のBIM/CIMロードマップ案

*2

引用)国土交通省「BIM/CIMの進め方について P.7」

https://www.mlit.go.jp/tec/content/001624301.pdf

ロードマップ案では、令和5年度までに大枠の取り組みが開始されているため、令和6年度以降はこれらの取り組みを継続して行うことになっています。これからの新規課題として挙げられるのは、「発注図書における特に精度向上が必要な箇所の分析」と「3D契約図書化に関する検討」です。

特に、3D契約図書に関しては建築確認申請のBIM化とあわせてチェックしておくとよいでしょう*3。

働き方関連のBIM/CIMロードマップ案*2_P.8

働き方関連のBIM/CIMロードマップ案では、働き方を改善するために必要な「環境整備項目」と「プロセス効率化項目」が示されています。

働き方関連のBIM/CIMロードマップ案

*2

引用)国土交通省「BIM/CIMの進め方について P.8」

https://www.mlit.go.jp/tec/content/001624301.pdf

まず、環境整備項目として挙げられているのが、「データ形式の標準化」と「教育・能力開発」です。データ形式の標準化では、「IFC検定」や「OCF検定」が具体的な項目となっており、BIMに関する基本的なリテラシーの浸透を図っていることがわかります。また、教育・能力開発では「発注者向け研修コンテンツの拡充」が掲げられていることが特徴です。建築に精通した受注者だけでなく、建築に詳しくない発注者にもBIMの理解を求めていることが明確になっています。

プロセス効率化の観点では、「監督検査」「維持管理」「設計照査」が挙げられています。例えば、監督業務における確認や検査といった単純作業の削減や、データを利活用した維持管理の自動化が想定されます。BIM/CIMやICTといったデジタル技術により人の手間を削減する取り組みが今後も進められることでしょう。

ロードマップ案を実現するためのBIMの原則適用とは

国交省は、ロードマップ案を実現するために令和5年度からBIM/CIMの原則適用を定めています。ここでは、プロジェクトにおいてどのような取り組みが原則適用とされているのかを確認しましょう。

原則適用されるBIMの取り組み内容*2_P.11

原則適用される取り組み内容は、大きく分けて「活用内容に応じた3次元モデルの作成・活用」と「DS(Data-Sharing)の実施(発注者によるデータ共有)」の2つです。

原則適用の全体像

*2

引用)国土交通省「BIM/CIMの進め方について P.11」

https://www.mlit.go.jp/tec/content/001624301.pdf

3次元モデルの作成・活用は、さらに「義務項目」と「推奨項目」に分けられています。これらの内容は次節で紹介します。

DS(Data-Sharing)の実施では、受注者への設計図書の内容説明を“発注者”に義務づけているのが特徴です。この取り組みは将来的なデータ管理に向けた第一歩として位置づけられており、データ共有のやり方はこれから洗練されていくだろうと推測されます。

BIM/CIM原則適用の義務項目*2_P.12-13

BIM/CIM原則適用の義務項目は、原則すべての詳細設計及び工事において適用されます。発注者の方針に基づいて、受注者が3次元モデルを作成・活用するのが基本的な流れです。発注者の活用目的を達成できる程度の範囲・精度のモデル作成が求められているため、事前の目線合わせが欠かせません。

義務項目には、「視覚化による効果」を主目的とした未経験者でも取り組み可能な内容が指定されています。具体的には、「出来あがり全体イメージの確認」や「複雑な箇所などの確認」などが挙げられます。

BIM原則適用の推奨項目*2_P.12,14

BIM/CIM原則適用の推奨項目は、高度な内容を含む活用目的が指定されています。一定規模・難易度の事業が対象で、発注者の活用目的に基づき受注者が1個以上の取り組みを行うことが原則適用の目標です*2_P.12。

取り組みの例としては、「3次元モデルの重ね合わせによる干渉チェック」「3次元モデルによる施工時の現場条件の確認」「3次元モデルを活用した施工管理における省人化」などが挙げられています*2_P.14。

BIM原則適用強化の方向性*2_P.23-31

今後の原則適用強化に向けた具体的な取り組みとしては、「情報の引継ぎ」と「積算(数量算出)」が挙げられています。

情報の引継ぎでは、ISO19650を参考にした国交省の現行システムをベースにCDEを整備して情報の引継ぎを強化していく方針です。そのなかには、発注者内部の情報共有環境やプロジェクト管理ツールの整備も含まれています。

積算(数量算出)で目指すゴールは、「BIM/CIMの活用により施工上の不具合・手戻りを低減した納品・積算・発注」「積算の大部分の自動化」「施工予定者が設計段階から参画する発注方式の拡大」などの実現です。ゼネコンの設計施工一貫方式のような「施工を見据えた効率的かつ高精度な設計・積算」のメリットを取り入れ、省人・高品質化を目指す方針が読み取れます。

おわりに

国交省は、BIM/CIMの普及や高度な利活用を進めるため、ロードマップ案の作成や支援事業を実施しています。令和5年度に開始した「建築BIM加速化事業」は令和6年度も継続して実施されるため、ロードマップ案で先を見通しながらBIM/CIMを導入してみてはいかがでしょうか。

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*1

出所)Autodesk「変革をもたらす英国の BIM 義務化と、そこから学べる 4 つの教訓」

https://www.autodesk.com/jp/design-make/articles/bim-mandate-jp

*2

出所)国土交通省「BIM/CIMの進め方について」

https://www.mlit.go.jp/tec/content/001624301.pdf

*3

出所)国土交通省「建築BIMの社会実装に向けた今後の取組と将来像 P.2」

https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001613218.pdf

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