ジェネレーティブデザインとは?メリットや活用シーンも紹介!
近年、ものづくりや製品開発の中で注目されているワードである「ジェネレーティブデザイン」。産業界の製造工程に革新をもたらす存在として期待されています。
今回は、そんなジェネレーティブデザインの特徴、メリット、活用事例を解説します。
この記事を読むと、以下のことがわかります。
- ジェネレーティブデザインとは何か
- ジェネレーティブデザイン活用のメリット
- ジェネレーティブデザインの活用シーン
ジェネレーティブデザインとは
ジェネレーティブデザインとは、設計のイメージや条件をソフトに指示して自動生成で設計デザインを作成することです。
条件としてソフトに指示する項目は、材料、強度、コスト、性能などです。
これらを指示することで、ソフト側は何通りものデザイン候補を提案してくれます。
ジェネレーティブデザインと混同されやすいのが、「トポロジー最適化」。こちらは、既存の設計に対して最適化の提案をしてくれるものです。ですので、基本的には1つの解が提示されます。
ジェネレーティブデザインは「設定する条件はある程度決まっているが、その先の解がわからない」場合に使い、トポロジー最適化は「もうすでに解は出ているが、より良くしたい」場合に使うと良いでしょう。
ジェネレーティブデザイン活用のメリット
ジェネレーティブデザインが産業界の製造工程で注目されているのは、さまざまなメリットがあるからです。一つずつ解説していきます。
設計プロセスの効率化・短縮
ジェネレーティブデザインの活用は、設計プロセスの効率化、短縮を実現できます。
通常の設計段階では、設計者は製品の目的や条件を洗い出し、パターンを何案も出して試作し、検証するプロセスを何回も行うやり方が一般的です。
しかし、ジェネレーティブデザインを使えば案はいくつもあるので、その中から数個選び、検証すればいいだけです。
一からパターンを何個も作る必要がないため、大幅に時間を短縮し、業務の効率化につながります。
比較検討の質の向上
設計プロセスを短縮・効率化することで、検証に時間をかけられるようになります。また、ジェネレーティブデザインには絞り込みや自動検証の機能もあるため、自分で検証しなくてはいけない選択肢も絞られます。
これらが比較検討の質の向上につながるのです。
コスト削減
設計プロセスにかかる時間が短縮できるため、その分人件費がカットできます。
また、ジェネレーティブデザインでは、AIが解析を行う際に、人間では予期しきれない多数のパラメーターを考慮に入れて無駄のない最適な解を出してくれます。製品の強度や機能は保ちつつ、不必要な部分は削減し、必要最低限の量の材料を使用するのです。これにより、コスト削減ができます。
ジェネレーティブデザインを活用したことで、同じ強度を保ちながらも材料費をコストカットできたという事例はたくさんあります。
軽量化
軽量化もコスト削減と同じ理由から実現可能です。必要最低限の量の材料しか使わないため、同じ性能・強度を持ちながらも従来よりも軽い成果品が作れるのです。
近年ではさまざまな製品の軽量化が進められており、ますますジェネレーティブデザイン活用の必要性が出てくるでしょう。
人間では思いつかないデザインの創造
ジェネレーティブデザインの一番の特徴はやはり、人間には思いつかないものを提示してくれる点です。
それは、設計者の知識や経験だけに頼らず日々学習するAIの技術から生み出されるからです。
これにより、画期的なアイディアが生まれ、製品の供給先の人々に新たな価値を提供できるでしょう。
ジェネレーティブデザインの活用事例
ここからは、現在実際にジェネレーティブデザインが活用されている事例を紹介します。
NASAの生命維持バックパックの軽量化
アメリカの国際的な技術専門サービス会社であるJacobsは、NASAにも技術コンサルティングを提供しています。そのJacobsが、生命維持バックパックをジェネレーティブデザインで設計し、部品重量を最大50%削減したのです。生命維持パックの重量は1g変わるだけで打ち上げ費用や宇宙飛行士の機動性が大きく改善されると言われています。
また、同社は設計時間も従来より20%短縮されたと発表し、設計チームの生産性が向上すると見込んでいます。※1
自動車部品の軽量化と性能向上
メリットで部品の軽量化ができることを紹介しましたが、実際にその技術が活用されています。
世界的自動車メーカーであるゼネラルモーターズは、シートブラケットの軽量化と性能向上に成功しました。シートブラケットは、シートベルトの留め具をシートに固定したり、シートを床に固定する部品です。設計段階でジェネレーティブデザインを活用したことにより、従来品よりも重量が40%も軽減され、強度と耐久性は20%向上するという結果を出すことができました。※2
飛行機に使用するパーティションの改良
ドイツの航空機メーカーであるエアバスは、ジェネレーティブデザインと3Dプリンティングをかけ合わせ、飛行機に用いるパーテーションを従来よりも45%軽量化しました。このパーテーションは、機内食などが収納されているギャレーと呼ばれるエリアと乗客がいるエリアを仕切るものです。一見地味な部分に目を付けたと思いがちですが、この重量カットがなんと年間3,180kgの燃料の節約につながります。仮に飛行機1機すべてに開発したパーテーションが採用された場合、年間166tの二酸化炭素(CO2)の排出削減にもつながるのです。※3
企業の環境への配慮が求められる中、この成果は注目されており、今後ジェネレーティブデザインの活用がますます浸透していくでしょう。
まとめ
今回は、近年注目されているジェネレーティブデザインについて紹介しました。
コスト削減、軽量化などさまざまなメリットがあり、その二次成果として環境へ優しい製品作りも実現できることがわかりました。
さまざまな革新的取り組みが企業に求められる今、人間では思いつかないアイディアを、ジェネレーティブデザインを取り入れることで形にしてみてはいかがでしょうか。
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※1:Jacobs 社、ジェネレーティブデザインで航空宇宙業界の製品設計をさらなる高みへ|PTCジャパン株式会社
https://www.ptc.com/ja/case-studies/jacobs-engineering-generative-design-aerospace
※2:自動車部品設計の軽量化、効率化の未来を推進|オートデスク株式会社
https://www.autodesk.com/customer-stories/general-motors-generative-design
※3:飛行機による旅行の未来を再構想|オートデスク株式会社