AutoCADのPlant 3Dとは?概要と機能の使い方、活用のメリットを解説
AutoCADのPlant 3DとはAutodesk社が提供しているプラント設計に適したツールセットです。P&ID図面の作成やデータ検証など多様な機能を活用し、生産性の向上を図れます。しかし、プラント設計に関する事業プロジェクトでPlant 3Dを活用したいものの、どのような機能を利用できるのかが分からないと疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
本記事ではAutoCADのPlant 3Dの概要や主な機能の使い方、活用するメリットを解説します。
この記事を読むと、以下のことが分かります。
1.AutoCADのPlant 3Dの概要
2.AutoCADのPlant 3Dの主な機能
3.AutoCADのPlant 3Dを活用するメリット
AutoCADのPlant 3Dの概要
Plant 3DとはAutoCAD Plusに搭載されているプラント設計に適したツールセットです。(*1)AutoCADのバージョンの2019以降であれば使用できます。Plant 3Dでは以下の作業が可能になります。
・クラウド上での安全なデータ共有が可能
・3DモデルやP&ID図面の作成および編集
・配管アイソメ図面の自動生成
P&ID(Piping&Instrumentation Diagram)とは配管計装図を意味する言葉です。専門的な記号を用いて、プラント上の配管や計装機器などの接続を示します。
AutoCADのPlant 3Dの主な機能(*2)
Plant 3Dには多様な機能が搭載されています。主な機能は次のとおりです。
・コラボレーション
・P&ID図面の作成
・シンボルライブラリ
・データ検証
ここでは、主な機能と使い方を詳しくみていきましょう。
コラボレーション(*3)
BIM Collaborate Proのサブスクリプションに契約することで、Plantコラボレーションサービスへのアクセスが可能です。Plantコラボレーション サービスでは設定したチームメンバーがクラウド上で同じプロジェクトの作業に取り組めます。加えて、他のチームの作業状態をチェックする方法を設定しつつ、コラボレーションすることも可能です。
2024年5月時点、BIM Collaborate Proのサブスクリプションの料金は次のとおりです。(*4)
契約期間 | 料金 |
1ヵ月 | 19,800円 |
1年 | 158,400円 |
3年 | 475,200円 |
P&ID図面の作成(*5)
コマンド使用により、簡単にP&ID図面の作成および編集が可能です。また、図面内にコンポーネントやラインを配置する場合、それぞれのコンポーネントにはデータマネージャにつながるデータが挿入されます。データマネージャではCSVファイルやスプレッドシートにインポートするために、データの書き出しレポートの表示が可能です。
ここでは、P&ID図面へのコンポーネントおよびラインの追加方法を解説します。
1.ツール「パレット」で目的項目のタブを選択
2.図面上の配置場所をクリック(インライン項目の場合、ラインをクリック)
3.タンクなどの場合、尺度係数の指定を求められる※
4.ダイアログボックス「タグを割り当て」が画面上に現れるため、操作を進める※
手順3の尺度係数の指定は次のいずれかの操作を行いましょう。
・既定の尺度を受け入れる場合、「Enter」を押す
・カーソルを垂直もしくは水平方向に動かし、コンポーネントの高さや幅を調整する
手順4のダイアログボックス「タグを割り当て」では次のいずれかの操作を行います。
・データとして挿入したいタグ情報を追加し、「割り合て」をクリック
・タグ情報が定まっていない場合、「キャンセル」をクリック
タグ情報はホームタブにあるパネル「P&ID」から追加できます。
シンボルライブラリ(*6)
Plant 3Dには次のP&ID規格に基づくコンポーネントおよびラインのシンボルが搭載されています。
・PIP(Process Industry Practices)
・ISA(Instrument Society of America)
・ISO(International Organization for Standardization)
・DIN(Deutsches Institut Fur Normung e.V.)
・JIS(Japanese Industrial Standards)
ツールパレットにはコンポーネントやラインのビジュアルライブラリが搭載されており、P&ID図面のドキュメント化が可能です。ポンプやタンクなどのコンポーネントと配管などのラインの多様な組み合わせを活用することで、ダイナミックなP&ID図面を作成できます。コンポーネントとラインの具体例は次のとおりです。
【コンポーネント】
・ポンプやタンクなどの機器
・フランジ付きやフローなどのノズル
・コントロールバルブや流量計などの計装
・バルブやレデューサなどのインラインコンポーネント
・コネクタや流向矢印など非エンジニアリング項目
【ライン】
・プライマリラインセグメンやジャケット付き配管セグメントなどの配管
・空気圧や電気、油圧などの信号ライン
コンポーネントとラインにはそれぞれ色や画層名、尺度係数、タグ付け動作など様々な情報が付与されているため、図面配置の都度プロパティとして割り当てる必要はありません。
また、シンボルライブラリにはないコンポーネントやラインは独自で作成できます。しかし、作成者は管理者のみに限定しましょう。設計者が独自で作成したものを使用してしまった場合、「会社の標準スペックに準拠しているのか」「レポートなどで利用できるか」を判断できません。そのため、コンポーネントやラインは管理者の提供したもの、もしくは既定のシンボルを使用するようにしましょう。
データ検証(*7)
P&ID図面およびPlant 3Dモデルで行われた作業を定期的に検証し、一時的なエラーを検出できる点も特徴の1つです。データ検証機能では、検証の対象となるエラーの種類を指定できます。エラーの種類の具体例は次のとおりです。
・サイズの不一致
・スペックの不一致
・終端のないライン
・未接続のオフページコネクタ
P&IDと関連付けられている3Dモデルを検証し、サイズなどが同期できているかをチェックできます。
AutoCADのPlant 3Dを活用するメリット
活用するメリットは生産性を向上し、作図の作業時間を削減できる点です。Autodesk社が公表している生産性比較調査レポートでは標準のAutoCADとPlant 3Dツールセットを使用し、P&ID作業にかかった作業時間をそれぞれ比較しています。ユーザーのスキルレベルによって異なるものの、標準のAutoCADよりもPlant 3Dでは全体的な作業の生産性が74%向上しました。(*8)
具体例を挙げると、以下のような調査結果が公表されています。
・ラインリストの生成時間が50%以上短縮し、ミスが低減した
・モデル変更と新しい配管オルソ図の生成に係る時間が10~50%短縮した
・3Dモデルからほぼ瞬時に配管アイソメ図を作成できるため、編集に時間がかからない
モデル変更やモデルから新しい図の作成にかかる時間が大幅に削減できるため、業務の効率性を向上できます。
まとめ
Plant 3Dの概要や主な機能の使い方、活用するメリットを解説しました。Plant 3Dはプラント設計に適しているツールセットであり、P&ID図面の作成および編集、配管オルソ図・アイソメ図の抽出などを簡単に操作できます。標準のAutoCADと比較した場合、Plant 3Dでは煩雑な図面作成や編集にかかる時間を大幅に削減できるため、全体的な生産性が74%向上したという調査結果が公表されています。
プラント設計にかかる時間や手間が負担となっている場合、Plant 3Dの活用により業務の効率性の向上を図りましょう。
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*1 *2
「Autodesk AutoCAD Plus|Plant 3D ツールセットの機能」
https://www.autodesk.co.jp/products/autocad-plus/included-toolsets/autocad-plant-3d
*3
「Autodesk AutoCAD Plant 3D 2023 Help|Collaboration」
https://help.autodesk.com/view/PLNT3D/2025/JPN/?guid=GUID-E83B95A6-B4AD-4A05-A115-AF4A73A39045
*4
「Autodesk|BIM Collaborate Proを購入」
https://www.autodesk.co.jp/products/bim-collaborate/overview?term=1-YEAR&tab=subscription&plc=COLLRP
*5
「Autodesk AutoCAD Plant 3D 2025|ワークフロー:P&ID図面をデザインする」
https://help.autodesk.com/view/PLNT3D/2025/JPN/?guid=GUID-B893C006-637E-44EB-8C19-737AB2847AE7
*6
「Autodesk AutoCAD Plant 3D 2025|概要-P&IDのコンポーネントとライン」
https://help.autodesk.com/view/PLNT3D/2025/JPN/?guid=GUID-C7FAA5D1-7776-4E86-B19C-6EFBE71ED555
*7
「Autodesk AutoCAD Plant 3D 2025|P&ID図面とPlant 3Dモデルを検証する」
https://help.autodesk.com/view/PLNT3D/2025/JPN/?guid=GUID-E3FE36AC-BEA3-4C0C-93CE-EC1A93104D23
*8
「AutoCADのPlant 3Dツールセットを使用するメリット」