AutoCADで3Dモデリングを始めよう! 2Dユーザーのための使い方ガイド
1. はじめに:なぜ今、AutoCADで3Dなのか?
AutoCADは長年にわたり2DのCADソフトウェアとして多くの設計者を支えてきましたが、最近では3D CADへの移行が注目されています。特に、2D図面だけでは把握しにくい複雑な形状を可視化できる点や、立体的な干渉チェックを行える点で優位性が高まっているためです。また、製造や建築の現場において、3Dモデル作成の需要が増えていることも大きな理由といえます。
一方、これまでに2DでのCAD設計を習得してきた方にとっては、3Dへの移行に戸惑う場面もあるでしょう。Z軸の考え方や3Dビューの操作方法など、まったく新しいワークフローを取り入れる必要があるからです。しかし、すでに2D図面での設計経験がある方こそ、座標系や正確な寸法設定といった基本概念をすでに理解しているので、3Dへとステップアップする際のハードルは想像よりも低いかもしれません。
さらに、AutoCADには「AutoCAD 3Dワークスペース」や「AutoCAD 3Dインターフェース」として、3Dモデリングを行いやすいビューキューブやナビゲーションツールが備わっています。こちらを活用すれば、複雑に見える3Dモデル操作も意外とスムーズにこなせるようになります。加えて、3Dプリントや他の3D CADソフトウェア(Fusion 360やInventorなど)と連携できる点も、大きな魅力です。
この記事では、2Dから3Dへの変換に際して必要となる前提知識、AutoCAD 3Dモデリングの基本操作、実際のCAD設計で役立つ具体的な手順やコツなどを詳しく解説します。今回のガイドを通じて、AutoCAD初心者ガイドとしても使えるような流れを抑えつつ、3D CADの要点をしっかり押さえていただきたいと考えています。視覚的な説得力のあるプレゼンテーションや、部品干渉の事前確認など、3D設計ならではのメリットをぜひ体感してみてください。
2. STEP1:3Dモデリングの前提知識をおさえよう
引用:AutoCADヘルプ:https://help.autodesk.com/view/ACD/2025/JPN/?guid=GUID-9DACE807-BC9D-4357-B47E-C6199F6AF1A2
AutoCADで3Dモデリングを始めるなら、まずは前提知識を把握することが大切です。2Dから3Dへの移行では、新たにZ軸の概念を取り入れたり、3Dビューを多角的に確認したりと、これまで慣れ親しんだ2D設計にはなかったワークフローが増えます。ただし、CADソフトウェアとしての基本操作は共通点が多く、線分や図形を正確に扱ってきた経験が必ず活きてくるでしょう。
最初に注目したいのが「作図空間」に関する理解です。AutoCADにはモデル空間とレイアウト空間があり、特に3D設計ではモデル空間において立体を構築し、ビューを切り替えながら形状を確認していきます。さらに、AutoCAD 3Dワークスペースを使うことで、押し出し操作や回転操作などの3Dモデリングツールがリボンメニューに集約され、コマンドも発見しやすくなるはずです。
また、2Dと3Dでは視点の考え方が大きく異なります。2D CADでは、基本的にXY平面のみを意識して作図してきた方が多いでしょう。しかし3Dでは、立体を回転させたり上下左右から覗き込んだりする「3Dビュー」の操作が必要です。この点は最初こそ慣れが必要ですが、視点の移動に馴染んでくると、むしろ2Dよりもモデルを直感的に把握できることに気づくはずです。
そして、AutoCAD 3Dモデリングでは、UCS(ユーザー座標系)設定を上手に制御することが重要です。UCS設定を変更すると、作図平面が任意の面に切り替わり、複雑な形状でも部品単位や面単位で作図を行いやすくなります。2Dの知識を活かしながら、新しい空間把握能力を身につけることが、短期的にスキルアップするための鍵となります。
ここで大切なのは、AutoCAD 3Dインターフェースの使い方を一通り理解しておくことです。ビューキューブやナビゲーションバーによる視点変更、ワイヤーフレーム表示とシェーディング表示の切り替えなどは、3D設計において非常に便利な機能です。続く各節で、3Dモデリングを始めるうえで必要となる概念や操作性を詳しく解説していきます。
2.1. 3D作業に必要な作図空間の理解
AutoCADで3Dモデル作成を行う場合、知っておきたいのが「モデル空間」と「レイアウト空間」の役割です。モデル空間は、実寸で作図を行うメインの領域で、3D CADの立体形状はここで組み上げていきます。一方、紙に出力する際はレイアウト空間を使うのが基本で、複数のビューポートを設置し、それぞれ異なる角度からの表示や尺度を設定して図面をまとめられます。
3Dの作図空間を活用するには、まずAutoCAD 3Dワークスペースに切り替えておくと便利です。画面右上や下部の切り替えメニューから3D Modelingを選択すると、3Dオブジェクト操作コマンドやUCS設定へのアクセスが容易になります。こうした3Dインターフェースを整えたうえで、実際にソリッド形状を作る操作へと移る流れです。
また、モデル空間ではZ座標の扱い方が非常に大切になります。2D図面ではXY平面だけを考慮すれば十分でしたが、3Dでは高さ方向の値を正しく入力しないと、意図した場所に立体オブジェクトが生成されないケースがよくあります。例えばボックスを作成する場合も、どの平面を基準にボックスを立ち上げるかを意識しながらコマンドを使うとよいでしょう。
さらに、3D図面作成ではオブジェクトの複写や移動、回転といった基本操作もZ座標を念頭に置いて行います。2Dの感覚で操作を進めても、思い通りの位置に配置できないこともあるため、ビューキューブで視点を動かしながら、位置が正しいかを常に確認すると確実です。こうしたモデル空間特有の注意点は、慣れるまで多少の試行錯誤が必要ですが、一度身につけると3D設計の幅が広がっていくはずです。
実際には、3Dプリント用データやシミュレーション用のモデルを作成する際、モデル空間上でフェーズごとに形状をチェックし、最終的にレイアウト空間で図面化や注記配置を行う流れが多いでしょう。まずはモデル空間をベースに、3D CADの特色を存分に活かした形状作成を体験するところから始めてみてください。
2.2. AutoCADの3Dインターフェース
3D設計を行う際、AutoCADの3Dインターフェースが有するさまざまな機能を理解することは不可欠です。まず、議論に挙がりやすいのが“ビューキューブ”と呼ばれる機能です。画面右上に表示される立方体状のUIをマウスでドラッグすることによって、モデルを自在に回転させることができます。これにより、作成途中の3Dモデルを上面や正面だけでなく、アイソメ図的な視点からも即座にチェックすることが可能になります。
また、画面右側に配置されているナビゲーションバーには、3Dモデルを回転・ズーム・パンで操作するための各種ツールが集約されているため、直感的な操作がしやすいでしょう。2Dではあまり頻繁に使わなかったかもしれませんが、3Dビューモードでは「3DORBIT」コマンドが特に重要です。このコマンドを使うと、マウスのドラッグ操作だけでモデルをくるくる動かせるため、部品の裏側や内部構造をすぐに確認できます。
加えて、「ビュースタイル(表示スタイル)」の切り替えも覚えておきたい操作の一つです。ワイヤーフレーム表示ではエッジのみが可視化されるため、複雑な内部構造を把握したり、重なり合った輪郭を見極めるときに便利です。逆に、シェーディング表示を使えば立体的な陰影を確認でき、完成イメージのアウトラインを素早く把握することができます。場合によっては、半透明表示やリアリスティック表示に切り替えるなど、シーンに応じて使い分けると効率的です。
これらのインターフェースは、はじめは戸惑う部分もあるかもしれません。しかし、AutoCADが標準で備える3Dインターフェースは非常に分かりやすく作り込まれているので、ショートカットやマウス操作を中心に、まずはじっくり触って慣れてみることが大切かと思います。その過程で「2Dとは違うけれど、モデルを全方向から確認できるのが面白い」と感じるはずです。慣れるほどに、3D設計特有の利便性と生産性アップのメリットが実感できるでしょう。
2.3. 2Dと3Dで異なる視点の考え方
2D設計では、まさに正面図や平面図といった“投影図”の概念が根本にあり、部品サイズや寸法をXY平面上で管理してきた方も多いでしょう。しかし、3D CADの場合は、その設計対象がまるごと立体であるため、視点の扱い方も大きく変わります。例えば、左上から斜めに見下ろすアイソメ図を作りたければ、そのまま3Dビューを回すだけで確認できるわけです。
つまり、2Dだと数値入力した寸法を平面内で見ていたところを、3Dでは360度あらゆる角度から形状を検討できます。3Dモデリングで最初に覚えるべきは、こうした「モデルを回し、必要に応じて断面や隠れた部分を確認する」という行為です。3Dオブジェクト操作ができるようになると、立体の干渉チェックやクリアランスの把握も容易になり、実用性が一気に高まります。
また、2Dの感覚では一筆書きのように要素を描いていましたが、3Dでは「押し出し操作」や「回転操作(REVOLVE)」などのコマンドで、面を持つソリッド形状を作り出します。このため、頭の中で“線”だけでなく“面・容積”を意識しながら作図するようになると、よりスムーズに移行できるでしょう。そして、実際の作業では視点がコロコロ変わるため、ナビゲーションツールを頻繁に活用してはモデルを確認し、必要であれば寸法や形状を修正するというフローが生まれます。
結論として、2D図面に慣れた方ほど、視点の切り替えや回転操作に慣れるだけで大きく世界が開けるはずです。最初は少し時間がかかるかもしれませんが、3Dビューの自由度を活かせるようになれば、CAD デザインの効率が飛躍的に上がり、複雑な形状でも楽しく扱えるようになります。
3. STEP2:最初に覚えるべき3D基本操作
実際にAutoCADで3Dモデル作成を始めるとなると、最初に押さえておくべき操作がいくつかあります。ここでは代表的なコマンドを通じて「どうやって立体を作り始めるか」を解説します。特に2Dから3Dへの変換において重宝する操作として、EXTRUDE(押し出し)やREVOLVE(回転)などが挙げられます。
最初はシンプルな形状から取り組んでみることがおすすめです。例えば、四角形や円を用意し、EXTRUDEで高さを与えるだけでボックスや円柱といった3Dオブジェクトが完成します。単純に立方体を何個か並べてみるだけでも、視点を変えながら3Dオブジェクト操作に慣れる練習になります。また、ブーリアン演算で立体を切り抜いたり足し合わせたりする操作を早いうちに体験しておくと、複合的な形状を扱うハードルがぐっと下がるでしょう。
また、PRESSPULL機能や回転操作(REVOLVE)を使えば、比較的複雑な形状でもすぐに立体化できます。たとえば円弧を軸に回転させてコップのような形を作る、あるいは押し出し操作にブーリアン演算を組み合わせて箱に穴を空けるなど、アイデア次第で多様な3Dモデル作成が可能です。操作そのものはさほど難しくないので、しばらく練習してみると、直感的に「こうすれば3Dモデルが作れるんだ」という理解が深まるはずです。
それぞれの3Dコマンドは、AutoCAD 3Dインターフェースのリボン上にも配置されていますが、コマンドラインからも呼び出し可能です。日頃からコマンド入力に慣れている方なら、ショートカット感覚で素早く操作に移れるでしょう。ここで大切なのは“Z方向の寸法や回転軸をどのように定義するか”という視点です。2Dの段階で描いた図形をどの方向に押し出し、どんな角度で立体化するかを設計段階でイメージしながら進めると、実際の製作やプレゼンテーションに役立つモデルが完成します。
以下の小見出しで、最初に覚えるべきコマンドの概要を紹介しますので、実際のオブジェクト作成でぜひ試してみてください。
3.1. EXTRUDE(押し出し):平面から立体を作る
引用:AutoCAD での 3D モデル作成方法:https://www.autodesk.com/jp/solutions/autocad-3d#3d-model
EXTRUDEは、文字通り2D図形を押し出して厚みを与えるコマンドです。一般的には、まずポリラインなどで閉じた形状を作っておき、その形状をEXTRUDEすることで高さを持つソリッドオブジェクトを作成します。四角形であれば直方体に、円であれば円柱に変換できるわけです。
押し出しの特徴は、基準となる2D形状がはっきりしていれば、とても簡単に立体を得られる点にあります。特に、2Dユーザーが最初に覚えるのにぴったりの操作で、これだけでも十分な3Dモデリングの基盤ができます。ただし、押し出す方向と長さ、また押し出した後のソリッドの状態(例えば上下両方向への押し出しなど)をきちんと設定することが重要です。
さらにEXTRUDEを応用すると、斜め方向に押し出す“テーパ角”を設定して、先細り形状を作り出せます。容器やファンネルなどのラッパ状の形を作成したい場合に活用できるので、さまざまな設計イメージを試してみるとよいでしょう。なお、EXTRUDEしたあとのオブジェクトは、あとからブーリアン演算を加えるなどして複合形状へと発展させることも多々あります。
3.2. REVOLVE(回転):断面を軸で回して立体化
引用:AutoCAD での 3D モデル作成方法:https://www.autodesk.com/jp/solutions/autocad-3d#3d-model
REVOLVEは、回転操作を使って立体を作り上げるコマンドです。例えば断面形状を円弧や複雑な輪郭として描き、それを軸に沿って回転させると、一気に回転体の3Dモデルが生成されます。円柱や円錐といった基本形状のみならず、花瓶やボルトのネジ山のような形状も、適切に断面を作って回転させることで表現できます。
操作はシンプルで、まずは回転させたい断面をポリラインやスプラインなどで2D平面上に描き、その後REVOLVEコマンドを実行。回転軸と回転角度を指定するだけであっという間に立体化されます。360度回転が基本ですが、意図的に270度や180度など部分的に回転を制限すると、特殊な形状を作ることも可能です。
REVOLVEを活用すると、2D時代に描いていた断面図がそのまま3Dモデルの元となる場合もあり、2Dユーザーにとっては取り組みやすい方法といえるでしょう。特に、丸物や回転対称の部品を設計する機会が多い方にとっては、頻繁に使う便利な機能になるはずです。EXTRUDEとあわせて活用することで、さまざまな形態の3D CADモデルが作れるようになります。
3.3. PRESSPULL:図形を手軽に変形させる
引用:AutoCAD での 3D モデル作成方法:https://www.autodesk.com/jp/solutions/autocad-3d#3d-model
PRESSPULLは、EXTRUDEと似ていますが、よりダイレクトに“面”を押し出したりへこませたりできる便利なコマンドです。例えば、既に作成したソリッドの一部面を選択して、ドラッグ操作だけで高さを変えたり穴を開けたりすることが簡単にできるため、直感的な3Dオブジェクト操作を楽しめます。
使い方は、PRESSPULLコマンドを実行し、押し出したい面や輪郭を選択するだけ。マウスを引っ張った方向や数値入力で作業量を決定し、プレビューを見ながら調整すると良いでしょう。この手軽さから、ちょっとした修正や形状変更を行う際に頻繁に利用されます。2Dユーザーの感覚で「ここをもう少し伸ばしたい」「この面にざっくり穴を作りたい」という要望を満たすのに最適な操作といえます。
もちろん精密な寸法を指定して作り込むことも可能なので、創造的かつ確実に形状を整える助けになってくれます。ただし複雑な形状ほど押し出し先がどのように変化しているかを3Dビューで確認しながら行わないと、想定外の面が動いてしまうこともあるので、ナビゲーションバーなどを使って視点をじっくり切り替えながら実行するのがポイントです。
3.4. UNION / SUBTRACT / INTERSECT:ブーリアン演算で形状を操作
引用:AutoCAD での 3D モデル作成方法:https://www.autodesk.com/jp/solutions/autocad-3d#3d-model
UNION、SUBTRACT、INTERSECTといったブーリアン演算は、複数のソリッドを合成するうえで非常に重要な機能です。たとえば、UNIONは2つ以上のソリッドを一体化し、SUBTRACTは片方のソリッドをもう片方から削り取る、INTERSECTは重なり合う領域だけを残す、といった働きをします。
実際の設計作業では、まずEXTRUDEやREVOLVEで複数の単純形状を作り、それらをブーリアン演算で組み合わせて複雑な形態を生み出すことが多いです。例えば箱に円柱で開ける穴を作りたいときは、四角いボックスから円柱形状をSUBTRACTするという手順になります。この操作を習得しておくと、3D図面作成の自由度が一気に向上するでしょう。
ブーリアン演算では、オブジェクト同士の位置関係が大切です。正しく位置合わせできていないと、削りたい部分が空中に浮いてしまったり、思わぬ部分がくり抜かれたりします。そのため、UNIONやSUBTRACTを実行する前には、必ず3Dビューで位置を確認し、必要があれば移動か回転操作を行っておくことをおすすめします。こうした一連の流れを身につけると、多数のオブジェクトを組み合わせたCAD設計や、機構部品のモックアップモデルなど、さまざまなシーンで応用可能になります。
4. STEP3:2D図面から3D化してみよう(実践編)
ここまで基本の3Dコマンドを把握したところで、実際に2D図面をもとに3Dモデルを立ち上げる手順を体験してみましょう。多くのエンジニアや設計者は、既存の2D図面から3Dに移行するケースが多いので、その応用例として役に立てていただければと思います。
中央に配置するのは、たとえば正面図と側面図など、2D設計で一般的に描く投影図を用意しておくことです。これらをもとにEXTRUDEを行うばかりでなく、UCS設定を使って図面の向きを合わせながら各面ごとに3Dオブジェクト操作を行うと、効率よく立体化できます。実際、図面から寸法を読み取りながら押し出し量を決定し、複数のソリッドを組み合わせていく工程は、まさにAutoCAD初心者ガイドとしてもわかりやすい流れです。
そのうえで、ブーリアン演算を用いつつ形状を仕上げていけば、金属パーツや架台、筐体など、実務に近いモデルが作れるでしょう。必要に応じて空いたスペースを作ったり、複雑な曲線部分を回転操作で成形するなど、2Dデータの活用が柔軟な3D設計へと発展していきます。単純に押し出すだけでなく、必要な箇所でパーツを繋いだり削ったりする手順を踏むことで、完成度の高い立体モデルが得られます。
また、作成途中では、3Dビューを変えながら都度、寸法をチェックするのが大切です。2D図面だけ見ているとつい“高さ”や“奥行き”の理解があいまいになりがちですが、3D化することで実寸大の立体イメージが湧き、必要な部分に変更を加えやすくなります。これが3D設計の大きな利点であり、2Dにはないメリットを実感できるステップともいえるでしょう。
4.1. 例題:正面図+側面図から部品を3Dで立ち上げる手順
まずは、シンプルな機械部品を想定した正面図と側面図を用意します。たとえば、長方形の輪郭があり、一部に円孔があるような部品をイメージしてみましょう。その2DデータをAutoCADのモデル空間に配置し、XY平面上に正面図、YZ平面上に側面図という具合に作図しておきます。
次に、UCSを調整します。正面図を使う場合はXY平面に合わせ、側面図を使う場合はXZやYZ平面に合わせるとよいでしょう。それぞれの平面でEXTRUDEを行い、部品の基本となる厚みや形状を立体化していきます。大きな塊ができたら、次にブーリアン演算で穴を開けたり、斜め面をSUBTRACTして面取りしたりといった操作を繰り返します。
この時、進め方のコツとしては、最初からすべての要素を一度に立体化しようとしないことです。部分的な形状を段階的に作り、重ね合わせていくことで、後から寸法を修正したい場合にも対応しやすくなります。つまり、正面図と側面図を使い分けながら、単独の形状を作り込みつつ合わせていくやり方が、3D CADでの設計ミスを減らす秘訣といえるでしょう。
最終的には、モデルをいろいろな角度から眺めて寸法が合っているか、幾何公差的に問題ないかをチェックします。こうして2D図面をもとにパーツが3D化されると、設計の理解度が一気に高まり、図面だけではわかりづらかった干渉や余白についてもすぐに把握できるのがポイントです。
4.2. 2D図面をEXTRUDEで立体化
実践上、最も使われるのが「押し出し」で2D図面上の形状を厚み付けする方法です。2D図面を用意したら、まずはその2D形状がしっかりと閉じたポリラインになっているかを確認しましょう。隙間があるとソリッドとしてうまく認識されず、押し出しがエラーになる場合があります。もしポリラインがバラバラなら、PEDITコマンドなどで結合しておくのがコツです。
具体的な流れとしては、押し出す線を選択し、EXTRUDEコマンドを実行して指定量だけZ方向に引っ張るだけ。多くの場合、単なる板状の形状ができあがるはずです。それを土台に、ブーリアン演算や追加の押し出しを組み合わせれば、2D時代では思いつかなかった立体的なデザインを作り込むことができます。
最初にEXTRUDEする際には、テーパ角の設定も活用するといいでしょう。たとえば5度や10度のテーパー角を与えておけば、わずかに傾斜のある形状を簡単に作れます。金型や容器設計において非常に有用なテクニックです。側面図からの抜き勾配を補正する際なども、こうした3D CADならではの操作性が威力を発揮します。
4.3. UCSの活用で面を揃える方法
2D図面を3D化する過程で欠かせないのがUCS(ユーザー座標系)の設定です。XY平面以外に正面図や側面図を作図するときは、通常の世界座標系(WCS)とは異なる向きに座標系を合わせないと、正確に押し出しや回転を行えません。
具体的には、UCSコマンドを使い、ある面を選択してその平面をXYとみなすように設定します。面をクリックするだけで自動的にUCSが切り替わるモード(DUCS:動的UCS)が便利なので、これをオンにしておくのもおすすめです。
UCSを正しく活用できるようになると、2D図面でいう“別ビュー”を扱う感覚で、異なる面に対して押し出しや穴あけを行ったり、部品を回転させたりできるようになります。結果として、より複雑な形状のモデリングや、多面体の作図もスムーズに行えるでしょう。
4.4. 作成したモデルを回転・表示して確認
2D図面をもとに立体を起こしたら、最後に必ず3Dビューで全方位から形状をチェックする習慣をつけることが大切です。押し出しや回転、ブーリアン演算などを行った際に、思わぬ段差や穴の位置のズレが生じていないかを目視検証しましょう。AutoCADのナビゲーションバーとビューキューブを活用すれば、モデルを自在に回して細部まで観察できます。
特に、部品が他のパーツと干渉していないかや、設計上定めた寸法どおりにできているかは、3Dモデリングの段階で確かめておきたい重要ポイントです。寸法記入コマンドや測定ツールを使って、大きさを数値的にチェックしておくのも効果的でしょう。また、視覚スタイルをワイヤーフレームに切り替えれば、内部構造や重なっているエッジも把握しやすくなります。
こうした確認作業を行うことで、2Dから3Dへの変換が正しくできているかを見極めることができます。慣れないうちは、多少時間がかかるかもしれませんが、この最終チェックを丁寧に行うことで、完成後の問題点を大幅に減らし、3D設計の精度を高められます。結果として、現場での修正コストや手戻りを抑え、スムーズにプロジェクトを進めることにもつながるでしょう。
5. STEP4:3Dモデルを図面化する方法(出力編)
3Dモデルが完成したら、最終的にどのような形で出力したり共有したりするかを考える必要があります。設計部署内で3Dデータをやり取りするだけならそのままDWG形式で渡す場合が多いですが、図面として提出したり3Dプリント用にモデルを送ったりするには、異なるフォーマットが求められることもあるからです。
AutoCADには、モデル空間とレイアウト空間を使い分ける機能があります。3Dビューの設計自体はモデル空間で行い、図面として印刷するときにはレイアウト空間を活用します。レイアウト空間には複数のビューポートを配置でき、正面、トップ、アイソメなど様々な角度のビューを1枚のシートにまとめられるのが特徴です。これにより、2D図面のように図枠や表題欄を設定できるほか、注記や寸法の追記も行いやすいでしょう。
また、3Dモデルの寸法をCAD設計の段階で入れておくことも重要です。寸法記入では、2D図面に比べると少し勝手が違いますが、AutoCADの寸法コマンドを利用し、ビューポートごとに注記を丁寧に配置することで、読みやすい製造図面を作成できるようになります。現場やクライアントへ説明するときにも、この図面化作業が仕上げとして役に立ちます。
さらに、最終的な出力形式としてはPDFやSTL、さらには他のCADソフトウェアと互換性のあるSTEPやIGESなどを選ぶ機会もあるでしょう。特に3Dプリントを視野に入れるなら、STLファイルとして書き出すのが一般的です。以下では、これらの詳細手順を順を追って解説します。
5.1. モデル空間とレイアウト空間の使い分け
AutoCADにおける3D設計の流れでは、まずモデル空間で立体を作成・編集し、その後、レイアウト空間へ切り替えて図面として整えるのが一般的です。モデル空間は実寸ベースで作業しやすく、3Dモデリングや検討を行うのに適しています。
一方のレイアウト空間は、紙に印刷する際のレイアウトを考慮する場所です。1枚の図面シート内に複数のビューポートを配置でき、例えばトップビュー、フロントビュー、アイソメビューなどを並べて配置することで、2D図面のような形で情報をまとめられます。このとき、縮尺をそれぞれのビューポートで設定できるため、大きい全体図と拡大した部分詳細図を同時に表示するなど、効率よいプレゼンテーションが可能です。
この使い分けによって、3Dモデルがそのまま設計データとして活かされるうえに、最終的な書類提出や共有に適した2Dレイアウト図面も手軽に得られるのが、AutoCADならではの強みです。プロジェクトごとにレイアウト空間のテンプレートを用意しておくと、作業の効率が一段と上がるでしょう。
5.2. ビュー配置(フロント・トップ・アイソメ)
レイアウト空間では、ビューポートを配置し、3Dモデルの表示角度をコントロールして図面を仕上げるステップが必要になります。実際に紙に印刷する形を想定しながら、左にフロントビュー、右にトップビュー、真ん中上部にアイソメビューを配置するなど、見やすいレイアウトを設計するのが一般的です。
ビューポートを挿入したら、各ビューポートをダブルクリックしてアクティブにし、対応する表示スタイルや視点を選択します。たとえば、フロントビューでは正面からの視点を、トップビューなら真上からの視点を選び、さらにアイソメビューでは3D軌道で適度に回転した角度を設定します。ここで重要なのが縮尺設定で、特に製造現場に渡す図面では正確な寸法の読み取りが求められますから、1/1や1/2など適切な単位と縮尺を指定しましょう。
また、必要に応じてビューポートごとに視覚スタイルを変えるのも有効です。アイソメビューではリアリスティック表示にして見栄えを良くし、フロントビューではワイヤーフレームや隠線処理を適用するなど、内容に合わせた使い分けをすると、相手に正確な情報を伝えやすくなります。
5.3. 寸法記入と注記のポイント
3Dモデルを図面化するうえで、寸法記入や注記の付加は設計情報を明確に伝えるために欠かせません。2D図面と同様、寸法線やリーダー線を引いて部品の要所を定義し、必要とする公差や表面処理情報などを付箋のように示していきます。
ただし3Dビュー上に直接寸法を付ける場合、見る角度によっては寸法線がわかりにくくなることもあります。そこで多くの場合、フロントビューやトップビューなどの正投影図を使って寸法を記入します。一方、アイソメビューには全体のイメージを補足する簡単な寸法や注記を加える程度にとどめるなど、見やすさを考慮したバランスが必要です。
注記に関しては、図面用途によって記入する内容が変わります。加工指示、検査基準、材料指定など、もし2D時代から継続している規格やルールがあるなら、それに準じて配置するとよいでしょう。AutoCADの寸法スタイルを保持しておけば、文字サイズや矢印形状などを一括で管理でき、統一感のある図面を作り上げられます。
5.4. PDFやSTLへの書き出し方法
完成した図面を関係者と共有したり、製造プロセスに回したりする場合、PDFやSTLといったファイル形式への書き出しはよく行われる作業です。PDFであれば、手軽に誰でも閲覧できる形式として広く使われており、2D図面をそのまま印刷して紙ベースで受け渡す感覚で利用できます。
一方、3Dプリントや他の3D CADソフトウェア比較を目的としたモデル交換にはSTLやSTEP形式がしばしば使われます。特にSTLはポリゴンメッシュデータとして3Dプリントに直結する形式なので、3Dモデリングツールをそのまま役立てたいときに便利です。Exportコマンドや「名前を付けて保存」のオプションから、ファイル形式を選択して出力するだけでOKです。
いずれにしても、書き出す際にはモデルの単位や精度(ポリゴン分割度合いなど)を再確認しておきましょう。適切な設定を選ばないと、3Dプリント時に形状が荒くなったり、逆にデータサイズが大きくなりすぎて扱いにくくなったりする可能性があります。最終的な利用目的に応じて形式を選択し、正確に出力するのが大切です。
6. 補足:AutoCAD 3Dと他ソフトとの連携のヒント
AutoCADの3Dモデリングには多くの利点がありますが、他の3D CADソフトウェアやツールと組み合わせることで、さらに大きな効果を期待することができます。例えば、実際の製造現場では、3DモデルをそのままCAMソフトに渡して加工データを生成したり、あるいはレンダリングソフトでフォトリアルな画像を作成してプレゼン資料を強化したりといった応用が一般化しつつあります。
また、開発プロセスによっては、共同作業しているチームメンバーが違うCADソフトウェアを使っている場合も珍しくありません。そんなときも、AutoCAD上で作ったソリッドデータをSTEPやIGESなどの中間ファイル形式で出力すれば、Fusion 360やInventor、他の3D CADチュートリアルで使われているソフトへスムーズに引き継ぐことが可能になります。こうした柔軟性は、チーム全体の作業効率やコミュニケーションを高める大きなメリットとなるでしょう。
さらに、3Dプリントが普及する昨今では、作ったモデルをSTLファイルにしてプリンタに送るだけで、手軽に試作品を確認できる時代です。形状や寸法を実際に手にとって確かめることで、画面上の検証では気づかなかった不具合を洗い出しやすくなり、設計の品質向上につながります。また、AutoCADレンダリング機能やサードパーティのビジュアライゼーションツールを活用すれば、製品イメージをリアルに表現するプロモーション資料を作成するのも簡単です。
以上のように、AutoCAD 3D単独でも十分にCADモデリング技術を活かせますが、他ソフトとの連携を視野に入れることで、設計から製造、プレゼンテーションまで一気通貫の業務フローを構築できます。以下の小見出しでは、代表的な連携のヒントを紹介していきます。
6.1. 他CAD(Fusion 360やInventor)へのステップアップも視野に
AutoCADである程度3D設計に慣れてきたら、より高度なパラメトリックモデリングやアセンブリ管理が得意なFusion 360やInventorなどの3D CADソフトを導入するのも一つの方法です。これらは同じAutodesk製品ということもあり、操作の感覚が似ている部分が多いだけでなく、ファイルの互換性も確保されやすい利点があります。
例えば、Inventorは部品同士を組み付けるアセンブリ機能や、各パーツの動作解析に強みを持っています。一方Fusion 360はクラウドと連携しており、どこからでもアクセスできる利便性や、CAM・シミュレーション機能の統合などが特徴です。AutoCADで学んだ3D設計の基本があれば、これらへの移行もスムーズでしょう。
また、プロジェクト規模が大きくなったとき、アセンブリ全体の干渉チェックやリビジョン管理を行いたいケースも増えます。そうしたときに、「とりあえずAutoCADで3Dモデルを作る→Inventorで本格的にアセンブリ検討」という組み合わせは非常に有効です。いずれにしても、AutoCADの3Dスキルをベースに、他の3D CADツールへステップアップする道が開けることを覚えておくとよいでしょう。
6.2. 3Dプリントとの接続(STL出力)
3Dプリントを想定しているなら、AutoCADのモデルをSTL形式に書き出す手順を押さえておくことが必須です。押し出し操作や回転操作で作成したソリッドの表面は、STL出力時にポリゴンメッシュへと変換されます。このときモデルに欠陥があると、スライサーソフトでエラーが出たり、プリント中に形状崩れが起きたりするため、モデルの外観をソリッドの状態できちんと閉じた形にしておくのがポイントです。
AutoCADでデータを作成した後、Exportコマンドや“名前を付けて保存”からSTLを選ぶだけで基本的にはOKですが、メッシュの分割精度(ファセット数)を適切に設定する必要があります。高精度にしすぎるとファイルサイズが肥大化し、逆に低精度だとプリント面がガタガタになる可能性があるので、試作品の目的に合わせて設定を微調整するとよいでしょう。
試作したデータを実際に立体化してみると、画面だけではわからなかった不具合や寸法の誤差を体感的に把握できます。こうしたプロトタイプ検証サイクルが素早く回せる点が3Dプリントの魅力ですので、ぜひAutoCAD 3Dモデルとの接続を活用してみてください。
6.3. 簡易レンダリングや可視化ツール
AutoCADにはシンプルながらも便利なレンダリング機能が備わっていて、質感や光源を設定するだけで、ある程度リアルな見た目の3Dモデルを可視化できます。たとえば、金属やプラスチック素材を指定すると、シェーディングが変化して実物に近づいた印象を得られます。プレゼンテーション資料や社内レビュー時に、「これが今設計している部品の完成イメージです」と示すのに役立つでしょう。
さらに、簡易版のレンダリング以上のリアリズムを求めるなら、外部の可視化ツールやレンダリング専用ソフトを使う選択肢もあります。たとえば、KeyShotやV-Ray、Lumionなど、多数のレンダリングエンジンが市場に存在します。AutoCADデータを中間ファイル(DWG、FBXなど)で書き出し、これらの専門ソフトで照明や背景を細かく設定すると、フォトリアルなイメージが得られるため、顧客へのプレゼンやWebカタログ用の素材として大いに有効です。
最適な方法はプロジェクトの要件次第ですが、3Dモデルを単に設計に使うだけでなく、見せ方にも意識を向けることで、ビジネスチャンスが広がる可能性があります。AutoCADによる3D設計が単なる試作段階にとどまらず、ビジュアルとして完成度の高い成果物にまで発展できる点は大きな強みといえるでしょう。
7. まとめ:今日からできる3Dへの一歩
2D図面に慣れた方にとって、AutoCADでの3Dモデリングは最初こそ新しい概念が多く戸惑うかもしれません。しかし、すでに正確な作図や寸法管理のスキルを持っているからこそ、その経験は3Dでも大いに活かされます。
この記事では、基本となる押し出し(EXTRUDE)や回転(REVOLVE)、ブーリアン演算などを中心に、3D設計の要所を解説してきました。どの操作も、シンプルな形状から少しずつ実践を積み重ねていくことで、確実に感覚を掴んでいくことができます。
はじめは箱や円柱のような単純なモデルから始めて、ナビゲーションバーやビューキューブで視点を変えながら操作に慣れていくのがおすすめです。UCSの扱いや寸法管理など、最初は難しく感じる要素も、試行錯誤するうちに自然と使いこなせるようになるでしょう。
重要なのは、「完璧を目指す」よりも「少しずつ慣れていく」ことです。小さな成功体験を重ねることで、3Dへの苦手意識は次第に消えていきます。困ったときには、Autodeskの公式チュートリアルやユーザーによる動画解説など、豊富な学習リソースを活用するのも良い方法です。
まずは一歩、AutoCADで3Dモデリングに挑戦してみましょう。2Dでは見えなかった可能性が、きっとその先に広がっているはずです。
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参考情報
・Autodesk:AutoCAD 3 D の機能と概念 【 初心者向け 】
https://www.autodesk.com/jp/solutions/autocad-3d
・Autodesk:AutoCAD 3D 作図方法 | 動画で学ぶ基本の3D機能
https://www.autodesk.com/jp/solutions/autocad-3d-video
・Autodesk:AutoCAD 2025 ヘルプ | 概要 – 3D オブジェクトをモデリングする
https://help.autodesk.com/view/ACD/2025/JPN/?guid=GUID-9DACE807-BC9D-4357-B47E-C6199F6AF1A2