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SolidWorks SimulationXpressとは?できること・制限・使い方を解説

1. はじめに

製品開発のスピードが求められる現代では、設計段階の早い時点で「強度」や「変形」といった性能を把握しておくことがますます重要になっています。もし設計の終盤で問題が発覚してしまうと、大幅な手戻りや追加コストが発生することも珍しくありません。そのため、初期段階で簡易的なシミュレーションを行い、設計ミスを早めに見つけておくことが、効率的な開発に直結します。

こうしたニーズに応えるツールのひとつが、「SolidWorks SimulationXpress(シミュレーションエクスプレス)」です。これは、CADソフトSolidWorksに標準で搭載されている、初心者向けの無料強度解析ツールです。部品単体に対して、応力や変形を手軽にチェックできる機能が備わっており、複雑な設定なしに解析をスタートできます。

本記事では、SimulationXpressで「何ができて、何ができないのか」を分かりやすく整理し、実際の使い方や注意点までをやさしく解説します。これからCAE解析を始めたい方や、SolidWorksをもっと活用したい設計者、教育現場で基礎から学びたい方にも役立つ内容です。

SimulationXpressの活用を通じて、設計初期から強度の問題を見える化し、開発の質とスピードを一段階高めてみませんか?

2. SolidWorks SimulationXpressとは?

引用:https://blogs.solidworks.com/tech/2017/09/solidworks-simulation-vs-simulationxpress.html

2.1 基本概念と機能の紹介

SolidWorks SimulationXpressは、SolidWorksに標準搭載されている簡易的なCAE(Computer Aided Engineering)ツールで、初心者でも扱いやすいのが特長です。より高度な解析機能を備えた「SolidWorks Simulation Standard」「Simulation Professional」「Simulation Premium」といった上位版に対して、SimulationXpressはその入門的な位置づけとなっています。

このツールでは、線形静解析を主な対象としており、力を受けた部品がどのように応力を受け、どれくらい変形・変位するかを、視覚的に確認できるようになっています。解析結果は、自動でレポートとしてまとめられるため、設計チーム内での情報共有や、上司・関係者への説明資料としても活用しやすい点が魅力です。

操作の流れもシンプルで、SolidWorksで作成した3Dモデル(単一部品)に対して、材料を指定し、荷重や固定条件などの拘束を設定し、あとはソフトが自動的にメッシュを生成して解析を実行してくれます。結果として、応力や変形の分布を画面上で確認でき、どこに負荷が集中しているのか、どの部分が変形しやすいかを直感的に把握できます。

また、SimulationXpressを使うことで、設計の早い段階で強度上の問題点に気づくことができるため、必要に応じて材質の見直しや形状の補強を行うなど、設計の質を向上させることが可能です。CAEの知識がなくても使える操作性と、無料で手軽に導入できる点から、多くの設計者にとって頼れる解析の第一歩となっています。

2.2 SolidWorksにおける位置づけ

SimulationXpressは、SolidWorksに組み込まれた「部品単体」の強度検証に特化したツールです。アセンブリ全体に対する解析や、複数部品の接触・干渉に関する評価などは行えず、あくまで単体モデルでの基本的な静的解析を対象としたツールという位置づけです。

このように解析範囲は限定されているものの、SolidWorksの中でCADと連携してリアルタイムに解析ができるという点は大きな強みです。外部ソフトを起動することなく、設計作業の延長線上で強度のチェックをすぐに行えるため、設計者自身が日常業務の中で自然にCAE的な視点を取り入れることができます。

そのため、SimulationXpressはCAE初心者が解析に慣れる入り口として非常に有用です。また、個人ユーザーや学生の間でも活用されており、教育現場では有限要素解析の基本を学ぶ教材として使われることもあります。たとえば、簡単な部品をモデル化し、その応力分布や変形をSimulationXpressで可視化することで、実験結果との比較や理論との照らし合わせがしやすくなります。

このように、SimulationXpressは高度なCAEの代替というより、「まず試してみる」「すぐ確認する」ことを重視したツールです。導入のハードルが低く、設計と解析を自然に結びつける役割を果たしており、SolidWorksにおける重要なサポート機能のひとつといえるでしょう。

3. SimulationXpressでできること

引用:https://blogs.solidworks.com/japan/solidworks-blog/product/200514/

3.1 主要機能と解析の種類

SimulationXpressの最大の特長は、部品単体に対する線形静解析を簡単な操作で行えることです。線形静解析とは、部品にかかる力や圧力に対して、素材の性質が一定であると仮定し、小さな変形の範囲内で応力や変位を評価する手法です。主に、構造物が破損したり変形しすぎたりしないかどうかを予測する目的で使われます。

このツールで扱える解析対象は、単一のソリッドボディ(部品)に限られます。たとえば、1つのブラケットやフック、あるいはプレートなど、他部品との組み合わせを必要としないモデルに対して利用できます。解析では、力や圧力などの荷重をかける面や方向を指定し、同時に部品の固定面(拘束条件)も設定します。そのうえで材料を選択し、ソフトが自動でメッシュを生成して計算を実行してくれます。

SimulationXpressでは、応力分布や変形の様子を画面上で視覚的に確認できるため、どこに負荷が集中しているか、どの部位が弱いかを直感的に把握できます。さらに、解析結果を自動的にレポートとして出力する機能も搭載されており、設計の根拠資料やチーム内共有にも役立ちます。

また、操作はウィザード形式になっており、ステップバイステップで進められる点も初心者に優しい設計です。詳細なメッシュ設定や解析パラメータの微調整などは行えないものの、基本的な検証作業には十分対応でき、簡易的な強度確認には適したツールといえるでしょう。

3.2 具体的な活用例とメリット

SimulationXpressは、特に製品設計の初期段階における簡易な強度チェックに活躍します。たとえば、板金部品や軽量構造材などに力が加わったときに、どのくらい変形するか、安全率は十分かといった点を短時間で確認できます。結果をもとに、必要に応じて材料の変更を検討したり、リブ(補強)の追加を設計に反映したりすることで、設計の品質を高める判断材料になります。

このような「早期段階での検証」が持つ最大のメリットは、設計ミスを未然に防げることです。問題が試作段階で判明してしまうと、修正コストや時間的なロスが大きくなりますが、SimulationXpressを使ってあらかじめ確認しておけば、そうしたリスクを大幅に減らすことができます。

また、シミュレーションを取り入れることで、設計者自身が「どこが弱点か」「どの方向に変形しやすいか」といった構造的な視点を持てるようになり、設計の説得力が高まる効果もあります。解析結果に基づいた改善提案は、社内での意思決定をスムーズにし、より合理的な設計判断を促進します。

さらに、SimulationXpressは、形状変更が頻繁に発生する開発の初期フェーズで特に真価を発揮します。試作や加工に入る前に、複数の案を短時間で評価できるため、余分なコストをかけずに最適案を絞り込むことが可能です。高精度なCAEまでは必要ないが「ざっくりでも確認しておきたい」という場面で、非常に便利なツールと言えるでしょう。

4. SimulationXpressの制限事項

SimulationXpressは、SolidWorksに標準搭載された便利な解析ツールですが、あくまで「簡易的なCAE機能」にとどまるため、使いこなすにはその制限を正しく理解しておくことが重要です。基本的な強度解析には十分活用できますが、より複雑な解析や高精度な評価が必要な場面では、上位のCAEツールと比較して機能面での限界があります。

このセクションでは、SimulationXpressの具体的な制約について、「解析機能」「モデリング」「結果出力」の観点から詳しく解説します。できることとできないことを正しく区別しておくことで、目的に応じた適切な解析ツールの選択ができ、誤った使い方による時間や手間のロスを防ぐことができます。

まずは、解析機能に関する制限から見ていきましょう。

4.1 解析機能の制限

SimulationXpressで行える解析は、部品単体に対する線形静解析に限られています。つまり、動的な衝撃や振動を扱う動解析、素材の塑性変形を含む非線形解析、繰り返し荷重による疲労解析など、高度な物理挙動を含むシミュレーションは対象外です。

また、温度変化の影響を評価する熱解析や、複数の部品が相互に接触するようなアセンブリ解析も行えません。部品1つひとつの単純な構造確認には適していますが、構造全体の挙動や複合条件を検討したい場合には、上位のSimulation StandardやProfessional、Premiumなどへのアップグレードが必要になります。

さらに、SimulationXpressでは使用できる材料モデルにも制限があります。一般的な金属材料など、比較的シンプルな物性値に基づく解析には問題ありませんが、異方性を持つ複合材料やゴムのように非線形な挙動を示す素材、高温や湿度などの環境要因を考慮したシミュレーションには対応していません。

そのため、精度の高い結果が求められる製品開発や、安全性の厳密な評価が必要な業界では、SimulationXpressだけで完結させるのは難しいケースもあります。解析対象や目的に応じて、より高機能なCAE製品との比較・検討を行うことが不可欠です。

4.2 モデリングと結果出力の制約

SimulationXpressには、解析対象モデルの作成方法や結果の表示に関してもいくつかの制約があります。まず、メッシュのコントロールに関して自由度が低い点が挙げられます。解析に使用するメッシュの細かさや分割方法を細かく設定することはできず、システムが自動で生成するメッシュにある程度任せることになります。

このため、応力が集中しやすい角部や小さな穴など、局所的な形状の影響を正確に捉えるのが難しい場合もあります。解析精度を高めたい場合には、モデルそのものを簡素化したり、不要なディテールを排除しておくなどの工夫が必要です。

また、解析結果の可視化やレポート出力においても、カスタマイズ性は限定的です。SimulationXpressでは、結果表示として応力分布や変位の視覚化が可能ですが、表示形式の変更やグラフの詳細編集といった高度な出力設定は行えません。自動生成されるレポートは便利ではあるものの、より詳細な検討や報告用資料として使うには、上位のSimulationシリーズのような柔軟性が求められる場面もあるでしょう。

このような制限を理解したうえで、SimulationXpressはあくまで簡易解析や設計初期のスクリーニングツールとして活用するのが適切です。精密な解析結果が必要な場合や、複雑な構造の製品設計に携わっている場合には、機能の充実したCAEソフトとの組み合わせを前提にしたワークフローを検討することが賢明です。

5. SimulationXpressの使い方

引用:https://my.solidworks.com/reader/wpblogstech/2016%252F10%252Factivating-using-solidworks-simulationxpress.html/activating-and-using-solidworks-simulationxpress

SimulationXpressは、SolidWorksの設計環境内でそのまま使えるため、操作に慣れていればすぐに解析を始めることができます。ただし、スムーズに進めるためには解析に適したモデルを準備し、手順を正しく理解しておくことが重要です。

このセクションでは、SimulationXpressを実際に使用するための流れを、「準備段階」と「操作ステップ」、「結果の見方と活用法」の3つに分けてわかりやすく解説します。初心者の方でも迷わず操作できるよう、ポイントを整理しながら進めていきます。

5.1 事前準備と解析対象モデルの準備

まず最初に行うべきは、SolidWorks上で解析対象となる3D部品モデルを完成させておくことです。SimulationXpressはアセンブリには対応していないため、単体の部品モデルである必要があります。できるだけシンプルな構造で、解析に必要な面やエッジが明確に定義されていると、操作がスムーズに進みます。

特に注意すべき点は、「荷重や拘束をかける面が明確に設定できるかどうか」です。たとえば、1つの面が細かく分割されていると、同じ条件を複数の面に繰り返し設定する必要があり、操作ミスや手間が増えてしまいます。また、拘束を設定するためには、モデル内に固定可能な面や端部が必要です。

材料の設定も事前に確認しておきたいポイントです。SimulationXpressではSolidWorksに標準で登録されている材料データを使いますが、ヤング率やポアソン比などが必要な場合は、事前にカスタム材料を用意しておくと安心です。ライブラリに目的の材料がないときは、必要な物性値を調べて入力しておきましょう。

このように、解析を円滑に進めるためには、モデルの整理と材料情報の準備が非常に重要です。簡素かつ正確なモデルを用意しておけば、計算の安定性や結果の信頼性も高まり、全体の作業効率が向上します。

5.2 ステップバイステップ手順

SimulationXpressはウィザード形式の操作画面になっており、順を追って進めるだけで解析ができる設計になっています。以下では、基本的な解析の流れを7つのステップに分けて説明します。

  1. アドインの有効化
    まず、SolidWorks上部のメニューから「ツール」→「アドイン」を開き、「SolidWorks SimulationXpress」にチェックを入れてアドインを有効にします。
  2. ウィザードの起動
    対象となる部品モデルを開いた状態で、メニューの「評価」タブからSimulationXpressを起動すると、ウィザードが立ち上がります。
  3. 拘束条件の設定
    次に、部品を固定する面や端部を選択して拘束条件を設定します。たとえば、地面と接して動かない部分など、現実の条件に近づけた設定が重要です。
  4. 荷重の設定
    荷重をかける面を選び、力や圧力の大きさと方向を入力します。SimulationXpressではトルク(モーメント)を直接指定する機能はありませんが、モデル形状や荷重のかけ方を工夫すれば、回転方向の力を近似的に再現できる場合もあります。回転支持を想定する際は、この点に注意が必要です。
  5. 材料の設定
    次に、使用する材料をライブラリから選択します。既存の材料がない場合は、カスタム材料を定義して使用することも可能です。
  6. メッシュの生成と解析実行
    解析に必要なメッシュは自動で生成されます。SimulationXpressではメッシュ細分の細かい制御はできませんが、部品サイズに応じて自動的に適切な要素が設定され、すぐに解析が始まります。
  7. 結果の確認
    解析が完了すると、画面上に応力分布や変位の状態が表示されます。どこに応力が集中しているか、変形が大きい箇所はどこかを色分けで視覚的に把握できます。

以上のステップに沿って進めれば、初心者でも直感的に解析が行える構成になっており、手軽に強度の確認が可能です。

5.3 結果の解釈と活用方法

解析が完了したら、次はその結果をどのように読み取り、設計に活かすかが重要です。SimulationXpressでは、応力分布図や変位図をもとに、荷重がどこに集中しているか、どの部分に変形が起きやすいかを視覚的に確認できます。

実際の設計では、部品の材料の許容応力と比較して、最大応力が安全な範囲に収まっているかを確認することが基本です。また、安全率の確認や変位量の把握も、剛性や耐久性を評価するうえで欠かせない指標になります。変位が大きすぎる場合には、リブの追加や材料の変更を検討する必要があります。

SimulationXpressには、解析結果をPDF形式で自動的にまとめるレポート作成機能も備わっており、検証内容を記録したり、設計チーム内で情報共有する際に便利です。このレポートには、材料情報・拘束条件・荷重条件・解析結果のサマリーなどが含まれており、再設計や改良のベースとして活用できます。

設計を修正したあとは、再度SimulationXpressで解析を行い、変更前と後でどのように応力や変位が変化したかを比較することも効果的です。このように、結果をフィードバックして改善を重ねることで、設計の完成度を高めるとともに、設計者自身の判断力や解析スキルの向上にもつながります。

また、こうした解析結果を会議やプレゼンで活用すれば、根拠ある設計提案が可能になり、社内外の関係者からの信頼性も高まるでしょう。

6. 実践的な活用のコツとよくある失敗例

SimulationXpressは、誰でも手軽に使えるシンプルな強度解析ツールですが、ただ使うだけではその真価を十分に発揮できません。特に設計の初期段階でどのように活用するか、またありがちなミスをどう防ぐかを理解することで、より実用的な解析ツールへと進化させることが可能です。

このセクションでは、SimulationXpressを最大限に活かすための実践的な工夫、使用時によくある失敗とその対処法、そして解析精度を高めるための具体的なアドバイスを紹介します。設計の現場で使えるリアルな知識として、ぜひ参考にしてください。

6.1 効果的な使い方と設計初期の活用

SimulationXpressを最も効果的に活用できるタイミングは、設計の初期段階です。まだ形状や材料が確定していないこの段階では、設計案を柔軟に変更できるため、仮設検証を繰り返すには最適なフェーズといえます。

たとえば、複数の形状案を短時間で3Dモデル化し、それぞれに同じ荷重や拘束条件を適用して解析を行えば、どの形状がより高い強度や剛性を持つかを比較できます。これにより、設計の方向性を早期に見極めることができ、手戻りのリスクを大幅に低減できます。

また、SimulationXpressは、CAEツールに初めて触れる初心者にとっても学習の入り口として非常に有用です。材料の違いによる変形の違いや、リブを追加することによる剛性向上の効果など、設計変更の結果が数値として現れるため、設計と解析の関係を直感的に理解できます。

このように、SimulationXpressは、設計案のスクリーニング、学習目的での実験的検証、設計者自身の判断力の強化など、幅広い場面で役立つ強力なサポートツールといえるでしょう。

6.2 よくある失敗とその対策

SimulationXpressを使い始めたばかりのユーザーによく見られる失敗の一つが、「拘束条件や荷重の設定ミス」です。例えば、本来固定されるべき面が設定されておらず、解析空間内で部品が自由に動いてしまうと、現実とはかけ離れた無意味な結果が出てしまうことがあります。

また、荷重の方向や大きさが実際の使用条件と異なる場合、正しい設計判断につながらず、かえって誤解を招くリスクもあります。拘束条件や荷重を設定するときは、製品の使用環境や取り付け方法などをできるだけリアルに想定しておくことが大切です。

もう一つありがちなミスは、過度に細かいメッシュを意図的に指定して解析時間が長くなるケースです。SimulationXpressではメッシュの細分化には制限があり、細かくしすぎても大きな精度向上は得られない場合があります。必要以上に細かくすることで解析時間が伸びるだけでなく、モデルが複雑な場合には計算エラーの原因にもなります。

こうした失敗を防ぐには、「解析条件を現実に即した内容に設定する」「結果に対して常に妥当性の確認を行う」といった基本を徹底することが重要です。SimulationXpressはシンプルなツールであるからこそ、使い方次第で結果の信頼性が大きく左右されることを意識しておきましょう。

6.3 精度向上のポイント

SimulationXpressで得られる解析結果の精度を高めるには、モデルや材料、解析条件の整備がカギとなります。まず大前提として、モデルには不要な複雑形状を含めないよう注意しましょう。細かな穴やフィレットなどのディテールは、メッシュ生成の際に不均一さを招き、局所的な解析誤差の原因となります。

解析の目的が強度の比較や傾向の把握であるなら、シンプルで本質的な構造のみを残したモデルに整理しておくことが効果的です。これにより、メッシュの生成も安定し、解析時間と精度のバランスが取りやすくなります。

次に、材料データの設定も精度に大きく関わります。SimulationXpressに用意された標準ライブラリを使うだけでなく、可能であれば実際に使用する材料メーカーが提供している正確なヤング率やポアソン比のデータを反映させると、信頼性の高い解析結果が得られます。

さらに、解析結果を確認する際には、表示された応力や変位が常識的な範囲内かどうかを冷静に見極める習慣をつけましょう。たとえば、特定の部位に極端に高い応力が集中している場合は、モデル形状や拘束の誤りが隠れているかもしれません。違和感を覚えたときは、設定内容やモデル形状をもう一度見直すことが大切です。

このように、SimulationXpressを精度高く使いこなすためには、準備・確認・改善のサイクルを地道に回す姿勢が不可欠です。初心者向けのツールであっても、適切な使い方を徹底すれば、製品開発の質とスピードを着実に向上させる武器になります。

7. 上位版Simulationとの比較

SimulationXpressはSolidWorksに標準搭載されている便利な解析機能ですが、その一方で、解析対象や機能にはいくつかの制限があります。そのため、より複雑なシミュレーションやアセンブリの評価が必要な場合には、上位版のSimulation製品へのアップグレードが現実的な選択肢となります。

このセクションでは、SimulationXpressと上位エディション(Simulation Standard/Professional/Premium)の主な違いについて整理し、それぞれの機能やコスト面でのバランスを比較します。また、実際にアップグレードを検討すべきタイミングや判断基準についても具体的に解説します。導入前に機能と費用のバランスを理解することで、失敗しないツール選定が可能になります。

7.1 機能比較と価格のバランス

SimulationXpressの最大の魅力は、「SolidWorksユーザーであれば追加費用なしで利用できる」というコストパフォーマンスの高さにあります。応力解析や変位解析など、基本的な強度評価をすぐに始められるため、簡易な検証には非常に適しています。

しかし、上位版のSimulation製品に移行することで、扱える解析の幅や精度は大きく広がります。たとえばSimulation Standardでは、複数の部品を含むアセンブリ解析や、より詳細な拘束条件設定、複合的な荷重条件の適用が可能になります。さらにSimulation Professionalでは、熱伝導や疲労解析、落下シミュレーションなど、現実に近い複雑な環境を再現できます。Simulation Premiumになると、非線形材料や大変形の解析、振動モード解析など、高度な工学的評価が行えるようになります。

もちろん、上位版にはそれぞれライセンス費用が発生しますが、開発の規模や解析精度への要求度に応じて検討することで、費用対効果の高い選択が可能です。製品ライフサイクル全体で考えたとき、試作コストの削減や設計品質の向上によって、投資以上の成果が得られるケースも少なくありません。

たとえば、比較的単純な形状の製品で、初期設計の確認だけが目的であれば、SimulationXpressでも十分です。一方、実使用環境での複雑な荷重を再現したい場合や、アセンブリ全体の応力分布を把握したい場合には、上位版を使うことでより信頼性の高い設計判断が可能になります。

7.2 アップグレードの判断基準とタイミング

SimulationXpressから上位版へのアップグレードを考える際、最も重要なのは「解析で解決したい課題が、Xpressの機能範囲を超えているかどうか」という点です。たとえば、部品単体ではなく複数の部品間の接触状態を評価したい場合や、ネジやボルトを介した締結力の影響を確認したいといったケースでは、SimulationXpressでは対応できません。

また、温度変化や繰り返し荷重による疲労評価、落下衝撃を再現した解析などが求められる場合も、より高度な機能を持つSimulation ProfessionalやPremiumの導入が必要です。信頼性や安全性の検証が製品開発において重要な要素となっている業界では、こうした解析が不可欠となる場面も多くあります。

アップグレードのタイミングとしては、SimulationXpressを使っていて「もっと詳細な解析がしたい」「複雑な拘束条件を設定したい」と感じたときが一つの判断基準になります。また、プロジェクトの内容が変化し、扱う製品の複雑さや精度要求が高まってきたときにも、システムを見直す絶好の機会となるでしょう。

さらに、学生時代にSimulationXpressで解析に慣れ親しんでいた方が、企業での実務において「より実用的な解析」を必要とした場合にも、段階的な移行は非常にスムーズです。まずはSimulationXpressで基礎を学び、実務に即した複雑な解析ニーズが出てきた段階で上位版に切り替えることで、費用を抑えつつスキルとニーズの両方に応える運用が実現できます。

導入コストやライセンス管理の負担も踏まえたうえで、チームや経営層と情報を共有しながら、慎重かつ計画的にアップグレードを検討することが、最適なCAE運用につながる第一歩となるでしょう。

8. まとめ

SolidWorks SimulationXpressは、SolidWorksに標準搭載されている無料の強度解析ツールであり、部品単体の線形静解析をシンプルな操作で実施できる点が最大の特徴です。応力や変位の解析を通じて、設計段階での問題を早期に発見し、製品品質の向上や開発コストの削減に貢献する強力なツールとなります。

特に、設計初期における仮設検証や設計案の比較、CAE初心者の学習用途などにおいては、SimulationXpressは非常に有効です。CADと連携しながら直感的に解析ができるため、設計者自身が手を動かして解析と設計改善を同時に進める文化を根付かせる手助けにもなります。

ただし、アセンブリ解析が行えない、メッシュや材料設定の自由度が限られているといった明確な制約もあるため、解析の目的や製品の複雑さによっては、上位版のSimulationシリーズを検討する必要が出てくるでしょう。高度な熱解析や動的荷重の再現など、よりリアルなシミュレーションが求められる場面では、適切なタイミングでツールをステップアップする判断も重要です。

SimulationXpressは、CAE導入の第一歩として非常に優れた選択肢であり、使い方次第で設計精度や開発スピードの向上につなげることが可能です。今回ご紹介した活用方法や注意点を参考に、ぜひ自社の設計プロセスや学習活動に取り入れてみてください。
設計の質を高めることができれば、それは最終的に製品の信頼性やユーザー満足度の向上にもつながるはずです。

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<参考文献>

SOLIDWORKS SimulationXpress オプションの概要(Overview of SOLIDWORKS SimulationXpress) – 2025 – SOLIDWORKS ヘルプ

https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/cosmosxpresshelp/c_Overview_of_SOLIDWORKS_SimulationXpress.htm

SOLIDWORKS SimulationXpress の使用 – 2025 – SOLIDWORKS ヘルプ

https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/cosmosxpresshelp/c_Using_SOLIDWORKS_SimulationXpress.htm

SOLIDWORKS Simulation | SOLIDWORKS

https://www.solidworks.com/ja/product/solidworks-simulation

トレーニング | MySolidWorks

https://my.solidworks.com/training/catalog/?category=f%2Fproduct%2Fsimulationxpress

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