3D都市モデルは土木設計にどう活用できる?PLATEAUの特徴と活用例を解説
1. はじめに
土木設計では、道路や橋梁などのインフラを計画・設計する際に、周辺の建築物や地形、既存道路、土地利用を立体的に把握することが重要です。
しかし、従来の平面図や航空写真だけでは、高さや傾斜、建築物との位置関係が分かりにくく、周辺環境を具体的にイメージしづらい場合があります。
こうした課題の解決に向けて注目されているのが、3D都市モデルです。国土交通省が推進する「PLATEAU」は、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を進めるプロジェクトです。公開されたデータは、都市空間の可視化や各種シミュレーションの基盤として活用できます(参照*1)。
2. 3D都市モデルの基本とPLATEAUの概要

2.1. 3D都市モデルとは何か?
3D都市モデルは、建築物や道路、地形などの都市空間を構成する地物を三次元で表現したデータです。単なる3D画像ではなく、建物の用途や高さなどの属性情報を持たせられる点に特徴があります(参照*2)。
土木設計やインフラ設計では、地形データが整備されている場合に起伏や高低差を確認したり、建物の配置を可視化したりすることで、周辺環境を直感的に把握できます。
2.2. 国土交通省が推進するPLATEAUプロジェクト
PLATEAUは、国土交通省がさまざまな主体と連携し、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を推進するプロジェクトです(参照*1)。
全国各地の都市・地域についてデータが公開されており、ブラウザベースのウェブアプリケーション「PLATEAU VIEW」では、公開対象地域の3D都市モデルを確認できます(参照*3)。
公開されたデータは公共分野に限らず、民間企業や研究・教育機関なども利用できます。PLATEAUでは、都市計画、防災、環境、モビリティ、コンテンツ開発など、幅広い分野の活用事例が公開されています(参照*4)。
2.3. 3D都市モデルと他のデータモデルとの比較
3D都市モデルとBIM/CIM、GIS、点群データは、扱う対象や主な用途が異なります。それぞれの特徴を整理すると、以下のようになります。
| データ・手法 | 主な対象 | 主な用途 |
| 3D都市モデル | 都市・地域全体 | 周辺環境の把握、可視化、シミュレーション |
| BIM/CIM | 建築物・土木構造物 | 設計、施工、維持管理 |
| GIS | 地理空間情報 | 位置情報の管理、分析 |
| 点群データ | 現況の形状 | 対象物の詳細な形状把握 |
3D都市モデルは、個別の構造物を詳細に設計するというより、建築物や道路、地形などを都市・地域のスケールで把握する用途に適しています。
3. 3D都市モデルの土木設計での活用メリット
3.1. 周辺環境の立体的把握
3D都市モデルを活用すると、建築物、道路、地形、土地利用など、対象地域に整備された情報を高さ方向も含めて把握できます。
交通量は常に含まれる情報ではないため、交通状況を検討する場合は、道路交通調査やセンサーなどから取得したデータを別途重ね合わせます。また、正式な干渉判定や日影評価には、精度を確認した設計データと専用の解析が必要です。
3.2. 計画案の比較と選定
複数のルート案や構造案を3D都市モデル上に重ねることで、周辺建築物や地形との位置関係を比較しやすくなります。
道路の見通しや交差点形状なども確認できるため、設計案を選定する際の判断材料として活用できます。
3.3. シミュレーションの基盤
3D都市モデルに浸水、人流、交通量などの情報を組み合わせることで、防災計画や交通解析などに活用できます。PLATEAUでも、3D都市モデルを活用した防災、都市計画、モビリティなどのユースケースが公開されています(参照*4)。
また、景観解析や騒音解析などの専用ツールと組み合わせることで、土地利用計画やインフラ設計を多角的に検討するための基盤として利用できます。
3.4. 関係者への説明と合意形成
3D都市モデルで計画内容を可視化すると、図面に慣れていない住民や地権者、自治体の担当者にも内容を伝えやすくなります。
設計変更や道路拡幅、防災対策などを立体的に示すことで、関係者間の認識共有や合意形成を支援できます。
4. 具体的な3D都市モデルの活用例

4.1. 道路・交差点の計画
道路の線形や交差点案を周辺施設とあわせて3D表示すると、見通しや周辺建築物、歩道との位置関係を確認しやすくなります。
交通量や車両挙動を検討する場合は、交通データや専用の解析機能を組み合わせます。
4.2. 橋梁・高架構造物の計画
橋梁や高架構造物では、周辺の道路、地形、建築物との高さ方向の位置関係を確認できます。
橋脚配置の初期案や完成後の景観を比較する際にも活用できますが、正式なクリアランス確認には測量成果や詳細設計モデルが必要です。
4.3. 造成・都市開発の検討
造成や都市開発では、土地の高低差や周辺道路との接続状況を可視化し、造成計画や道路配置の複数案を比較できます。
環境調査や解析結果を重ね合わせることで、土地利用案を多面的に検討するための資料としても利用できます。
4.4. 防災・復旧計画
防災分野では、浸水想定区域や浸水シミュレーションの結果と、建築物、道路、避難施設などの位置関係を3D上で確認できます。PLATEAUでは、浸水リスクの可視化をはじめとする防災分野のユースケースも公開されています(参照*4)。
さらに、別途用意した被害情報や施設の重要度を重ね合わせることで、避難計画や復旧方針を検討するための資料として活用できます。
主な活用分野を整理すると、以下のようになります。
| 活用分野 | 主な活用内容 |
| 道路・交差点 | 線形案や交差点配置、周辺施設との位置関係の確認 |
| 橋梁・高架構造物 | 高さ方向の位置関係、橋脚配置、景観の確認 |
| 造成・都市開発 | 高低差、道路接続、土地利用案の比較 |
| 防災・復旧 | 浸水区域、避難経路、復旧方針の可視化 |
5. PLATEAU・InfraWorks・Civil 3Dの役割と使い分け
5.1. PLATEAUの役割
PLATEAUは、国土交通省が推進する3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクトです。
公開された3D都市モデルは、建築物や道路などの現況を都市スケールで把握する基盤として利用できます。ただし、PLATEAU自体に詳細設計機能はありません。
5.2. InfraWorksの機能
InfraWorksは、Autodeskが提供するインフラ計画・設計ソフトウェアです。建築物や周辺環境を含む広域な3Dモデル上で、道路や橋梁などの構想・概略案を検討できます。
Autodeskの比較ページでは、設計案のモデル化や解析、可視化に加え、交通・モビリティシミュレーションや視線解析などの機能が紹介されています(参照*5)。PLATEAUデータを利用する場合は、形式変換や座標調整、必要範囲の切り出し、軽量化が必要になることがあります。
5.3. Civil 3Dの詳細設計への貢献
Civil 3Dは、Autodeskが提供する土木設計ソフトウェアで、道路、造成、排水などの設計に利用できます。
地形モデル、線形・縦断・横断、コリドーモデル、設計図書の作成や数量算出などに対応しています。また、InfraWorksで検討した対応データを受け渡し、詳細設計へ展開できます(参照*5)。一方、PLATEAUデータは、無加工のままCivil 3Dへ連携できるとは限りません。
5.4. 3者の使い分けと連携
3者の役割を整理すると、以下のようになります。
| ツール・データ | 主な役割 | 主に利用する段階 |
| PLATEAU | 都市スケールの現況や周辺環境の把握 | 調査・初期検討 |
| InfraWorks | 構想・概略設計、設計案の比較、可視化 | 計画・概略設計 |
| Civil 3D | 線形、縦横断、造成、排水、図面作成 | 詳細設計 |
データを受け渡す際は、ファイル形式、座標参照系、高さ基準、データ量などを確認します。各工程で使用するデータや担当範囲を整理しておくことも重要です。。
6. 3D都市モデル利用時の注意点

6.1. 整備地域とデータ年度の確認
PLATEAUの3D都市モデルは、地域ごとに整備範囲、データ取得年度、収録地物、LODなどが異なります。すべての地域で同じ内容のデータが整備されているわけではありません(参照*6)。
また、データは整備時点の都市空間を表しているため、取得年度によっては現在の建物配置と異なる場合があります。
利用を始める前に、主に以下の項目を確認しておくことが大切です。
- 対象地域の整備状況
- データの取得年度
- 収録されている地物
- 整備されているLOD
- 現在の状況との違い
6.2. LODと精度の理解
LODは、建築物や道路などの地物を、どの程度詳細な形状で表現するかを示す指標です。建築物では、単純な立体として表現するモデルや、屋根形状などを表現するモデルがあり、整備されているLODは地域や地物によって異なります(参照*2)。
ただし、LODは形状表現の詳細度を示すものであり、測量精度そのものを表す指標ではありません。詳細設計や施工に利用する場合は、配布データの品質を確認し、必要に応じて現地測量、公共測量成果、点群データなどを併用します。
6.3. 詳細設計でのデータ併用
3D都市モデルには、地下埋設物、交通動線、地質調査結果などが十分に含まれない場合があります。
概略検討やシミュレーションには3D都市モデルを使い、詳細設計では測量成果、点群、地質情報、施設台帳などを設計ソフトと組み合わせて利用します。
6.4. データ形式と座標系の確認
PLATEAUの3D都市モデルはCityGMLを中心とした形式で提供されており、利用するソフトウェアによっては、OBJやFBX、GIS対応形式などへの変換が必要です(参照*7)。
また、座標参照系や高さ基準が異なると設計モデルと正しく重ならないため、以下の項目を確認します。
- ファイル形式
- 座標参照系
- 単位
- 高さ基準
6.5. 利用目的の明確化
3D都市モデルを導入する際は、防災計画、周辺環境の確認、道路計画など、利用目的を明確にします。
目的に応じて必要なデータ形式や精度を選び、関係者間で共通認識を持つことが重要です。
7. PLATEAUデータを土木設計に利用する流れ
PLATEAUデータを土木設計に利用する際は、主に以下の流れで進めます。
- PLATEAU VIEWで対象地域を確認する
- 必要なオープンデータを入手する
- データ形式や座標参照系を確認する
- 必要に応じてデータを変換・軽量化する
- 設計モデルと重ね合わせる
- 設計案の比較や説明に活用する
以下では、それぞれの手順を詳しく説明します。
7.1. PLATEAU VIEWでの地域確認
まずは「PLATEAU VIEW」にアクセスし、対象地域の3D都市モデルをブラウザ上で確認します(参照*3)。
ただし、PLATEAU VIEWはデータを閲覧・確認するためのアプリケーションです。実際に利用できるデータの整備年度や収録内容は、公式のOpen Dataページや配布データの情報もあわせて確認します(参照*6)。
この確認を怠ると、設計の前提条件にずれが生じ、後工程で手戻りが発生する恐れがあります。
7.2. 必要データの入手
PLATEAUの3D都市モデルは、公式Open Dataページから案内されている「G空間情報センター」のPLATEAUオープンデータポータルで入手できます(参照*6)。エリアごとにファイルが分かれている場合もあるため、対象地域のデータを選んで取得します。
利用時には、対象データのライセンス、出典表示、商用利用、再配布などの条件を確認することが大切です。
必要に応じて、GISデータベースや自治体のオープンデータから人口分布や防災情報などを取得すると、より多角的な検討が可能になります。
7.3. データ形式の確認と変換
ダウンロードした3D都市モデルは、設計ソフトやシミュレーションツールでそのまま利用できるとは限りません。利用するソフトウェアや目的に応じて、データ形式の変換や必要範囲の切り出し、データの軽量化などが必要になる場合があります。
また、座標参照系や高さ基準の設定を誤ると、3D都市モデルと設計モデルが正しい位置に重ならないことがあります。変換前には、元データと利用するソフトウェアが採用している座標参照系や単位、高さ基準を確認することが重要です。
変換先の形式は、利用目的や使用するソフトウェアによって異なります。建築物などの3D形状を可視化ツールで扱う場合はOBJやFBXなどへ、GISで位置情報や属性情報を扱う場合はGeoJSONやSHPなどへ変換する方法があります(参照*7)。
ただし、形式を変換すると、CityGMLが持つ3D形状や属性情報の一部が失われる可能性があります。必要な情報を整理したうえで、利用目的に適した形式と変換方法を選ぶことが重要です。
データ変換時には、主に以下の点を確認します。
- 必要な3D形状が保持されているか
- 属性情報が失われていないか
- 座標が正しく変換されているか
- 必要な範囲に切り出されているか
- データ量が利用環境に適しているか
7.4. 設計モデルとの重ね合わせ
PLATEAUデータを設計業務で利用する場合は、まず利用するソフトウェアが扱える形式へ変換し、座標参照系や単位、高さ基準などを調整します。そのうえで、InfraWorksなどの可視化・計画ツールで設計案と組み合わせたり、Civil 3Dで作成した設計モデルと同じ座標上で比較したりします。
これにより、周辺の地形や建築物と設計案の概略的な位置関係や、景観への影響を初期段階で確認しやすくなります。ただし、設計寸法や構造物のクリアランスなどを正式に確認する際は、精度が保証された測量成果や詳細設計モデルを使用する必要があります。
データを受け渡す際は、使用したデータの整備年度や変換方法、座標参照系、精度などの条件を関係者間で共有します。こうした前提条件を明確にしておくことで、位置ずれやデータの解釈の違いを防ぎやすくなります。
7.5. 可視化・比較・説明の利用
最後に、完成した3Dモデルを活用して、設計案の比較や関係者へのプレゼンテーションを行います。3Dモデルを用いることで、住民説明会や社内会議でも内容を理解しやすくなります。
例えば防災分野では、想定浸水区域と建物の位置を重ね合わせることで、どの程度の被害が想定されるかを可視化できます。こうした視覚的な資料は、計画内容の説明や合意形成に役立ちます。
このようなメリットを活かしながら、3D都市モデルを取り入れたプロセスを継続的に改善していくことが重要です。
8. まとめ
3D都市モデルは、都市全体の周辺環境を立体的に把握し、土木設計、都市計画、防災などに活用できるデータ基盤です。
ただし、詳細設計に必要な測量精度を保証するものではありません。目的に応じて、測量成果、点群データ、InfraWorks、Civil 3Dなどを組み合わせ、データ形式や座標系を確認して利用することが重要です。
PLATEAUの3D都市モデルを適切に活用することで、計画案の比較や可視化、関係者への説明を支援できます。
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❷BIMを活かすためのツール紹介
❸DXレポートについて
❹建設業界におけるDX
<参考文献>
(*1)About | PLATEAUとは | PLATEAU [プラトー]
https://www.mlit.go.jp/plateau/about
(*2)TOPIC 1|3D都市モデルでできること[2/2]|3D都市モデルの特徴と活用法 | How To Use | PLATEAU [プラトー]
https://www.mlit.go.jp/plateau/learning/tpc01-2
(*3)PLATEAU VIEW App | 3D都市モデルをWEBで体感する | PLATEAU [プラトー]
https://www.mlit.go.jp/plateau/plateau-view-app
(*4)Use Case | 3D都市モデルを活用したソリューション開発の事例紹介 | PLATEAU [プラトー]
https://www.mlit.go.jp/plateau/use-case/
(*5)Civil 3D と InfraWorks の比較 | 土木設計ソフトウェアの比較 | Autodesk
https://www.autodesk.com/jp/compare/civil-3d-vs-infraworks
(*6)Open Data | 3D都市モデルオープンデータ | PLATEAU [プラトー]
https://www.mlit.go.jp/plateau/open-data/
(*7)TOPIC 3|3D都市モデルデータの基本[4/4]|CityGMLの座標・高さとデータ変換 | How To Use | PLATEAU [プラトー]
https://www.mlit.go.jp/plateau/learning/tpc03-4
(*8)Libraries | 資料ライブラリー | PLATEAU [プラトー]
https://www.mlit.go.jp/plateau/libraries/
