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建築BIM加速化事業とは。国土交通省が推し進めるBIM事業をご紹介。

建築BIMの設計・施行への導入は大企業では進んでいるものの、下請けや外注先の中小事業者へはなかなか浸透していません。初期投資がネックとなって、建築BIMの導入が進んでいないという面もあります。この記事では国土交通省が実施している建築BIM加速化事業についてご紹介します。
  
 この記事を読むと以下の3つのことがわかります。
(1)建築BIM加速化事業とは
(2)補助の内容について
(3)今後のBIM活用について

建築BIM加速化事業とは

建築BIM加速化事業とは、国土交通省が令和4年度2次補正予算のうち国費80億円を使って新たに創設した事業です。

官民連携のデジタルトランスフォーメーション投資を推進する環境整備を図るため、一定の要件を満たす建築物を整備する新築プロジェクトにおいて、複数の事業者が連携して建築BIMデータの作成等を行う場合に、その設計費及び建設工事費に対して国が民間事業者等に補助を行うものです。*1

特に、BIMの活用があまり進んでいない中小事業者を対象として建築BIMを活用する事業を促進する狙いがあります。プロジェクトの代表となる事業者の登録は2023年3月末までの予定でしたが2023年9月末まで延長されましたのでまだ間に合います。

建築BIM加速化事業導入の背景

国土交通省は建設業界の特徴・課題として以下の4つを挙げています。

・建設技能労働者の高齢化
労働力の25%以上が60歳以上となっているものの若手入職者の数は不十分であり、近い将来の労働力不足が確実視されています。

・生産性の低さ
建設業全体の労働生産性は全産業平均を1000円以上も下回っています。

・長時間労働
建設業全体の月当たりの労働時間は240時間を超えており、年間にして全産業平均よりも340時間以上長く働いていることになります。

・企業規模
建設業全体と建築設計業は従業員数が20人未満の事業者が全体の95%を占めています。

このような課題に対する解決策のひとつとしてBIMの活用を進めます。BIMの普及によって、設計段階の生産性および質の向上、竣工後の運用の効率化と高度化を図ります。

補助の内容について

次に補助の具体的な内容についてご紹介します。

建築BIM加速化事業の補助金について

まず建築BIM加速化事業の補助金について説明します。

対象となるのは、BIMライセンス費用、BIMコーディネーター費用、BIMモデラー費用等になります。具体的には次のようなものが対象になっています。*2

BIMライセンス費用
・BIMソフトウェア利用費(ビューワーソフト、アドオンソフト の利用費、BIMモデルを利用するためのPC・タブレット・ ARゴーグル等周辺機器のリース費等を含む)
・CDE環境(共通クラウド)構築費・アクセス費

BIMコーディネーター費用
・BIMコーディネーター人件費・委託費
・BIMマネジャー人件費・委託費
・BIM講習に要する委託費・人件費・諸経費

BIMモデラー費用
・BIMマネジャーをサポートするBIMモデラー委託費

補助の対象となるソフトウェアや関連機器は次の条件に該当するものになります。

  1.  建築物の、部材等の属性データを含む3次元データを、設計・施⼯段階で作成するためのソフトウェアとその機能を拡張するためのソフトウェア
    2. 1のソフトウェアで作成した3次元データをインポートし、設計あるいは施⼯に関連する⾏為に活⽤することができるソフトウェア
    3. 1、2のソフトウェアを使⽤するために必要な機器で、主としてデータの作成または表⽰を⾏うためのもの

したがって、2次元データや属性データを含まない3次元データを作成するソフトウェアや維持管理のみに使われるソフトウェア、模型の作成・部材の製造・印刷を行うための機器は補助の対象外となっています。例えばRhinoceros、Solidworks、AutoCADなどの3D CADソフトウェアや3Dプリンターは対象外です。
ソフトウェアのサブスクリプション費用やCDE環境構築費用も補助することから、新築プロジェクトをきっかけとして事業者を長期的に支援しようとしていることがわかります。

また、延べ面積別に補助の設計費と建設工事費の上限額がそれぞれ定められています。
例えば1,000m²以上10,000m²未満のプロジェクトであれば、設計費の上限は2,500万円、建設工事費の上限は4,000万円です。
補助金はかなり余裕をもって設定されているようです。

建築BIM加速化事業の補助を受ける条件

補助を受けるためには次のような条件を満たす必要があります。

・2023年度末までの基本設計・実施設計・施工のBIMモデル作成であること
・補助を受けようとする全事業者が、建築BIM活用事業者宣言を行うこと
・代表事業者が協力事業者の建築BIMの導入を支援し、BIMモデルを作成すること
・建物要件としては延べ面積が 1,000m²以上、地階を除く階数が3以上、耐火建築物等又は準耐火建築物等であること、建築物エネルギー消費性能基準に適合していることなど

また補助を受けるための事業者登録、交付申請、完了実績報告には期限がありますのでスケジュールをよく確認しておきましょう。

今後のBIM活用について

最後にBIMの社会実装が進んだ近い将来における、BIMの活用方法についてご紹介します。*3

BIM確認申請

・建築確認のオンライン化
電子申請の導入により、従来の紙申請と比べて、申請にかかる時間を削減し、問合せ対応の省力化などが期待されます。

・確認用CDEの活用
BIMデータの属性情報から審査に必要な情報を自動抽出したり、わかりやすく統一的に表示したりします。そうすることで申請書作成にかかる手間と時間を削減し、審査する側の図面間整合性確認を省略します。

維持管理・運用

・PM/BM/FMの高度化・効率化
PM(Property Management)とは不動産オーナーに代わって、賃料回収や修繕計画の作成、事務作業などの不動産経営の業務を行う経営・管理業務のことです。
BM(Building Management)とは建物自体の管理に関する業務のことで、清掃や点検、警備を含みます。
FM(Facility Management)とは保有する物件を長期的な視点をもって管理・運用し、より収益性の高い資産にしていく経営業務のことです。具体的には民泊へのリフォーム提案や収益性向上のための設備導入や更新が挙げられます。
センサーやカメラと連動した設備制御、維持管理ソフトや他データベースと維持管理BIMデータを連携させることで建物の維持管理におけるマネジメントを高度化・効率化します。そうすることで不動産価値の向上も見込めます。 

・既存建築物でのBIM活用
既存建築物についても、簡単な方法でBIM構築する手法を確立し、ひとつの建物に限らないで、建物群やエリアマネジメントによって効率的に運用します。

加工機械への連動とプレファブリケーションへの応用

・製造CAD/CAMへの連携
BIMモデルから加工リストや加工バラ図を抽出・作成し、製造CAD/CAMと連携させて部材加工を行います。加工機械と連動して製造を行うことで、製作期間や製作ミス、現場加工の手間を低減し、施工を効率化します。

・プレファブリケーションの実施
BIMモデルをプレカット加工機械やオフサイトの組立機械などと連携させます。資材を正確な数量で発注することができる、資材精度が向上する、施工が効率的で安全性が向上する、廃材の量が減少するなどのメリットがあります。

データ連携

・PLATEAU・不動産IDとの連携
国土交通省は建築BIM加速化事業と同時に PLATEAU の整備、活用、オープンデータ化や不動産IDの整備を促進する事業を進めています。建築BIMとPLATEAU、不動産IDを連携させることで、デジタルツイン上で計画・設計に必要な情報等へ容易にアクセスできるようになります。その結果、設計・建設等の生産性や建物・屋外空間の質が向上し、都市開発が加速化します。

・BIM以外のソフトウェアとの連携
不動産、交通、物流、観光、エネルギーなどの他分野との連携による新たなサービスの創出が見込めます。例として建物の内外を自律して移動できるドローンを利用した物流サービスが挙げられます。

まとめ

建築BIM加速化事業には、建設業と建設設計業の大多数を占めている中小事業者でのBIM活用を促進し、BIM活用を急速に進める狙いがあります。BIMの社会実装が実現し、まだ十分に活用されていないBIMの真価が発揮される場面が次々と現れることが期待されます。

 

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*1 建築BIM加速化事業実施支援室 「TOP」
https://bim-shien.jp/

*2 国土交通省「建築BIM活用プロジェクト概要」
https://bim-shien.jp/wp-content/uploads/2023/02/R4-5_bim_gaiyou.pdf

*3 国土交通省「建築BIMの意義と取組状況について」
https://bim-shien.jp/wp-content/uploads/2023/01/R4-5_bim_igitotorikumi.pdf

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