マーケティングは「社員」から始まる
消費者の好みや嗜好に合わせた商品を作り、いかに他の商品と差別化させて、独自のポジションを築いていく。
これがマーケティングの本質だった時代は、もうとっくに終わっています。
また、製品の価値を高め、社会をより良くするための製品を作り、新しい技術をフルに使って、マスとなる消費者に商品を提案する。
この現代的なマーケティングのスタイルもある種、古くなりつつあります。
マーケティングの変遷
2010年にフィリップ・コトラーが提唱し、日本にも広がったマーケティング3.0。この言葉は一般化こそしていないものの、マーケティングに携わっている人間には周知の概念となっています。
マーケティング3.0とは、時代とともに変化するマーケティングのスタイルを指したものです。
マーケティング1.0とは戦前・戦後から高度成長期が終わるあたり、1970年ごろまでのマーケティングを指します。
マーケティング1.0では、すべては製品中心、製品をより多く販売することに傾倒し、製品開発を重視し、機能的な価値の提案のみを消費者に対して行う、いわばエゴイスティックなマーケティング手法と言っても良いでしょう。物が欲しい、買いたい、と考えている「であろう」不特定多数の消費者にそのニーズを満たす製品を作る形です。
1970年代以降、一通りの物欲が満たされた消費者は商品を買う際に吟味するようになります。これがマーケティング2.0を誕生させます。
マーケティング2.0は、消費者志向で、とにかく消費者を満足させる商品を作ることが求められてきました。ターゲットとしての消費者は、自分で商品を選ぶマインドとハートを持っているため、機能面だけでなく感情面への訴求が求められます。1対1の関係性が、商品を開発するメーカーと消費者の間に生まれていき、売り手となる側は消費者をつなぎとめるための施策を練る必要がでてきます。
その最たるものが、同じような商品を作るライバル企業との差別化です。以前よりもよりポジショニングがシビアに求められるようになったのが、このマーケティング2.0の時代です。
マーケティング3.0
現在はマーケティング3.0の時代と言われています。それを助長したのが、市場の成熟、社会問題の顕在化、SNSの発達です。
主役は消費者ではなく、その商品の価値がすべて。価値とは商品の社会的な価値です。というのも世界をより良い場所にするための商品であり、消費者ではなく全人的に存在としてみているため、共感が重視されます。
商品や企業のビジョンに共感してくれた人々に対し、機能性に優れていることはもちろん、感情的・精神的なつながりを感じることのできる商品を提案する形、それがマーケティング3.0です。消費者との交流も多数対多数、つまり企業と消費者の関係ではなく、企業は商品の開発者として存在し、消費者と消費者の交流をサポートする立場へと変化しています。
このようなマーケティング3.0で重視されるのはブランドアイデンティティに加え、ブランドイメージ、ブランドインテグリティ(誠実な対応力)です。この3つが揃っていないと消費者はついてこないのです。
マーケティング4.0の時代を先取りするために
いずれはマーケティング4.0の時代がやってくる。それは間違いないでしょう。マーケティング4.0の時代の主役は、消費者でもメーカーでもありません。メーカーのなかの、個性を持った社員たちが主役となるとコトラーはのべています。
つまりは、社員がどんな商品を作りたいか、それによって何が実現でき、どのように社会貢献できるか、というスタートラインになります。
いままでは企業という大きなくくりで同様の試みが行われてきましたが、それが個人のレベルに降りていく形です。
企業のリソースを利用した自己実現なるものが重視される世界が来ることが予想される…そうなれば、マーケティングは企業が独占して知識を蓄えるものではなくなります。個人に権限を与え、自由にリソースを動かし、より良い社会貢献を目指して、それにふさわしい商品を作っていく。
誰もが発信者となれるスキルが身に付けば、その企業は金太郎あめのように、どんな商品をプロデュースしても同じように満足を届けられる会社になるでしょう。
まとめ
もはや製品コンセプトがしっかりしていればいい、企業ビジョンがあれば大丈夫、という時代でもありません。モノを売るための構造が変化していく。ここを敏感に感じ取り、社員教育にこれからのマーケティングを取り入れていくべきではないでしょうか。