致命的な失敗を防ぐ、ハインリッヒの法則とは
ハインリッヒの法則という言葉、一度は耳にされたことがあるかも知れません。
ハインリッヒの法則とは
アメリカの保険会社で技術・調査部の副部長をしていたハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが、1928年の論文で主張した災害防止に関する統計から導き出された法則と言われています。
5000件の労働災害を調査し、1個の重大事故の背景に、29個の軽い事故があり、さらにその背景には事故にならなかったものの、見過ごしていれば大事故につながった事例が300個あるという規則性を述べたものです。1:29:300の法則とも呼ばれていますね。
このハインリッヒの法則、1世紀近くたった今でも災害防止の指標として広く知られているわけですが、今日では工事現場や医療現場の事故防止など限定的な範囲だけでなく、解釈は他の多くの職業にも当てはめられて重宝されています。
ハインリッヒの法則活用事例
たとえばネットワークエンジニアなど作業ミスの防止という観点から、1つの障害から逆算し、次に重大な障害を起こさないためのミス防止マニュアルを自社バイブルとして活用している会社もあります。
会社の存亡にかかわる1つの重大な危機的局面に対し、その背景の29個の軽微な事故、そしてその背景にある顧客からのクレームや、見過ごされてきた事故につながるであろう従業員のミスを集め、その改善から会社を立て直そうとする事例もあります。
日々の業務の中でミスを減らすために
当然のことながら、従業員のミスや顧客に対する不行き届きは会社の売上が下がる要因です。
そうしたリスクヘッジを行うためには、日々の業務の中でミスを改善するシステムを作っておくことが重要となります。
一つ事例を挙げると、たとえば毎週1回、決まった時間にミスや気づいたことを報告する機会を設けるというものです。
会議を招集し、一枚の紙を配り、そこに以下の事柄を買いてもらいます。
- 会社や業務中の出来事
- 他部門で起こったこと
- 通勤中の出来事
- 飲食店を利用していた時
- 買い物をしていた時
- お客様から聞いた話
- 同業者から聞いた話
- その他仕事に関係する出来事
など。
これらのトピックについて、以下を具体的に記述してもらいます。
- これは危ないなと思った出来事
- 危ないと思った理由
- 最悪の場合何が起きたか
- なぜこのようなことが起きたのか
- 次回このような出来事が起きないようにするために何をすべきか
書き終えたら、リーダーが回収し一つ一つ読み上げていきます。
その中で特に気になったものがあれば、それを書いた人に具体的な内容について発表してもらいます。
共有とエスカレーションの重要性
たとえばスーパー。レジ係りのパートが、仕事中、お客様が買おうとしていた油揚げがカビていて、それをたまたまバーコードを通すときに見つけたという出来事の報告を受けたとします。
もしも、こうした報告の場がなかったとしたら、そのままパートの心の中にしまわれ、報告されなかったかも知れません。パートは新しい商品と交換すればそれでよし、と思っているかもしれませんし、実際そう思っている可能性が高いのです。
もし従業員の教育が不十分であれば、最悪の場合その商品をそのままスルーしてしまう可能性もあります。
あるいはそもそもカビが見つからず、お客さんがそのまま持ち帰っていたかもしれません。
いずれにしても、店がカビを見つけられえず、家に持ち帰ったお客さんが見つけ、それを外部にリークすることは十分に考えられます。
この問題で致命的なケースとは、会社の信用問題への追及です。
カビたものをそのまま売っていた、なんてことが発覚すればマスコミに報道され、ネットで叩かれ、売上がガタ落ちする、そんな事態さえ招きかねません。
たかがレジ係のパートの声とはいえ、お客さんにもっとも近い位置で仕事をするのが彼らです。非常に貴重な意見なのは間違いないでしょう。
どんな仕事でも、1週間に一度、こうした意見を集約し、社内の人間に意識づけしておけば致命傷となる重大な事故やミスが発生する可能性は、完全にゼロになることはありませんが確率的に低くすることはできます。
まとめ
1:29:300の、「300」に相当する出来事やその萌芽をエスカレーションするシステムを社内に作っておくと、会社をより良くするためのヒントをいつでも手に入れることができます。