技術者に「マネジメント力」は必要か?
技術者もベテランともなってくれば、「マネジメント力が必要」と言われるようになる機会が増えるだろう。
特に受託開発をやっている人々は転職の際などに「リーダー経験」を問われることが多く、リーダーとしての技能や考え方を身につけるように言われることが徐々に増えてくるとおもわれる。
だが、本当にリーダーとして働くことが重要なのだろうか。一介の技術者のままではダメなのだろうか。
この素朴な疑問に対して回答するのはそれほど簡単ではない。もうすこし、「リーダー」と「一介の技術者」について考える必要がある。
単純に考えれば、「リーダーになるコース」と、「スペシャリストとして一人ではたらくコース」の両方のキャリアを会社で用意できればいいのだが、現実にはそうなっていない。
なぜかといえば、現状多くの会社で「スペシャリストコース」に進む人が、「リーダーになれなかった人」のコースだからだ。ちょうど文系に進んだ人が文系に言った理由を「数学ができなかったから」と答えるのと同じく。
したがって、実際にはベテランの技術者には3種類ある。
・リーダーとなり、マネジメントを行う人
・スペシャリストとして技術者一本で行く人
・上のどちらにもなれない人
リーダーはIT企業においては通常、10人に一人程度の割合である。多くの人を束ねて成果を出す能力は人類史以前から必要とされた能力であり、今もなお高く評価される能力だ。したがって給与も高めに設定できる。
ではスペシャリストとして一人で仕事を行う人はどうだろうか。単純に考えれば、リーダーと同じだけの給与をもらうためには同じくらいの成果が必要とされるから、人の10倍の生産性を実現できていれば、スペシャリストとしてリーダーと同程度の給与を受け取ることができるだろう。
だが、そんな人は少ない。せいぜい100人に1人といったところだろう。
だから、自分の給与を手っ取り早くあげようと思ったら、リーダーを目指すのが最も効率が良い。リーダーになる方が、スペシャリストとなるよりも数倍、可能性が高いからだ。
困るのは、「どちらにもなれない人」だ。果たして彼らは何を目指すべきなのか。
昔ながらの大企業では「窓際族」というものがいて、仕事がなくても会社に来てぶらぶらしていた。彼らのようにはなりたくないだろう。今の世の中ではそもそも、会社にそんな余裕もない。
だから、彼らには「ニッチ戦略」と、「リーダー補佐」をおすすめする。
ニッチ戦略は、「会社のなかで、特定の分野で知られるようになる」こと。
リーダー補佐は、「リーダーの意図を誰よりもよく汲めるようになること」
実際、大企業においてはこのような生存戦略が各所で用いられ、全体としてまとまりを保っている。
いずれにせよ、自身の独自性を打ち出せない限り、技術者はキャリアに行き詰まる。自分の適性をよく考え、選択してほしい。