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建築設計×BIM入門|Vectorworksではじめる3D設計の第一歩

1. はじめに

建築設計の現場では、図面の正確性や作業の効率化がますます求められています。こうした背景の中で注目されているのが「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」です。

BIMとは、建物に関するさまざまな情報を3Dモデルに集約し、設計から施工、運用管理まで一貫して活用する仕組みのこと。これまでのように2D図面だけで設計を進めるのではなく、立体的なモデルに建材の種類やコスト、施工手順などの情報を加えて管理するのが特徴です。

特に、関係者全員が同じモデルを共有することで、設計ミスや伝達漏れを減らし、建築プロジェクト全体の効率を大きく向上させる効果が期待できます。

本記事では、BIMの基本的な考え方を押さえつつ、初心者でも導入しやすいBIM対応ソフト「Vectorworks(ベクターワークス)」を使って、どのように3D設計を進めていけるのかを丁寧に解説していきます。

2. BIMの基本概念と建築設計における役割

BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)は、単なる3Dモデルの作成ツールではありません。BIMの本質は、建物を構成するあらゆる要素に「情報」を持たせることで、設計から施工、運用管理までを一貫して支える「情報プラットフォーム」として機能する点にあります。

たとえば、壁・柱・窓といった部材一つひとつに、サイズや材質、メーカー名、コストなどの属性情報を付加することで、モデル全体が「設計図」であると同時に「データベース」としての役割を果たします。

このように、BIMは建物のライフサイクル全体にわたり活用できるため、設計の精度向上や情報の一元管理、工期の短縮やコスト削減など、さまざまな面でメリットが生まれます。特に近年では、BIMの導入が大規模プロジェクトや公共事業において推奨・義務化されるケースも増えてきており、建築設計のスタンダードとして定着しつつあります。

ここでは、BIMが建築設計にどのような価値をもたらすのか、従来の設計手法との違いを踏まえながら、その意義を見ていきましょう。

2.1. 情報の一元管理で設計ミスを削減

従来の2D設計では、図面の種類ごとに異なるファイルを手作業で整合させる必要があり、少しの変更でも図面全体にわたって修正作業が発生するため、ミスや伝達漏れが起こりやすいのが課題でした。

一方、BIMを導入すると、3Dモデルを中心にすべての情報が一元化されて管理されます。たとえば、ある部屋の寸法を変更した場合、それに連動して関連する平面図・断面図・立面図なども自動で更新されるため、図面間の食い違いがなくなり、設計ミスのリスクを大幅に軽減できます。

さらに、モデル上に埋め込まれた情報は、設計者だけでなく施工者や発注者、管理担当者など、関係者全員で共有可能です。これにより、プロジェクトに関わる全員が「同じ情報を見て、同じ前提で判断」できるようになり、コミュニケーションロスのない設計・施工体制を築くことができます。

2.2. プロセス全体の効率化と時間短縮

BIMの導入によってもたらされるもう一つの大きなメリットが、プロジェクト全体の「効率化」と「時間短縮」です。

設計段階では、空間の構成や建材の配置を視覚的に確認しながら設計を進められるため、意思決定のスピードが向上します。また、変更点がリアルタイムでモデルに反映されることで、手戻り作業が激減し、短期間での設計修正にも柔軟に対応できます。

さらに、数量拾い出しや積算作業も自動化が可能となるため、これまで手作業で行っていた業務にかかる時間や労力を大幅に削減できます。設計図と数量表が一致しているため、見積もりの正確性も高まり、コスト管理の精度も向上します。

BIMは、設計の質を高めると同時に、作業効率の最大化とコストコントロールを実現する強力なツールとして、建築設計における新たなスタンダードになりつつあります。

3. Vectorworksの概要と特徴

引用:https://www.vectorworks.co.jp/function/release/20241025vw2025.html

Vectorworks(ベクターワークス)は、建築設計、インテリア、ランドスケープ、舞台照明など、幅広い分野で活用されているBIM対応の設計ソフトウェアです。設計者の創造性を支える柔軟な操作性と、豊富なツール群を兼ね備えており、特に意匠設計を重視する建築士やデザイナーに人気があります。

このソフトは、2D作図と3Dモデリングの両方を高いレベルで扱えることが特徴で、設計初期のスケッチから詳細図の作成、さらにはレンダリングやプレゼン資料の作成まで、すべてを一つのプラットフォーム上で完結できます。

日本語にも完全対応しており、国内の設計事務所や建設会社でも導入が進んでいます。教育機関での採用も多く、将来を担う若手建築士の育成にも役立っている点も注目されています。

ここでは、VectorworksがBIMツールとしてどのような特徴を持ち、なぜ多くの設計者から選ばれているのかを詳しく見ていきましょう。

3.1. 柔軟な操作性と直感的なインターフェース

Vectorworks最大の強みは、直感的に扱えるユーザーインターフェースと柔軟な操作性にあります。アイコン中心のメニュー構成や、ドラッグ&ドロップによる図面編集など、初めて使う人でも比較的スムーズに操作を覚えられる設計になっています。

2Dと3Dを同時に扱える点も大きな魅力です。たとえば、平面図を作成しながらリアルタイムで3Dビューを確認することができ、空間のイメージを視覚的に把握しながら設計を進められます。3Dモデリングが苦手な方でも、最初は2D作図をベースに設計を行い、あとから立体化していくスタイルも可能です。

また、オブジェクトの属性や寸法はパレットで細かく設定・調整できるため、設計の自由度が高く、変更作業にも柔軟に対応できます。ユーザーの習熟度に応じて段階的に機能を使い分けられる点も、初心者から上級者まで幅広く支持されている理由の一つです。

3.2. BIMソフトとしてのVectorworksの魅力

Vectorworksは単なる作図ツールではなく、BIMソフトとしての多彩な機能を備えています。3Dモデルに構成部材の情報を付加する「情報モデリング機能」はもちろんのこと、図面とモデルの連動、自動集計、IFC形式でのデータ連携など、実務に直結する機能が充実しています。

たとえば、壁や床などの建築部材に対して、材質や厚み、断熱仕様といった属性を設定しておくことで、数量拾いや性能シミュレーションが自動化できます。これにより、設計だけでなく積算や省エネ検討など、設計プロセス全体の質とスピードが向上します。

さらに、各種プレゼンテーション機能にも優れており、モデルからリアルなパースやアニメーションを生成して、施主や関係者にわかりやすく提案できます。VRやARとの連携も可能で、将来的な拡張性にも優れている点が高く評価されています。

建築設計にBIMを導入したいが、あまり複雑な操作や高額なライセンスには抵抗がある──そんな方にとって、Vectorworksはちょうど良いバランスを持った選択肢といえるでしょう。

4. Vectorworksではじめる3D設計の基本

Vectorworksでは、建築設計に必要な2D図面の作成はもちろん、3Dモデルの構築も同じソフト内でスムーズに行えます。BIM設計においては、2Dと3Dの連携が非常に重要ですが、Vectorworksならその両者を高いレベルで統合しながら、直感的に設計を進めることができます。

たとえば、まず平面図や立面図を描き、その図面をもとに3Dモデルを自動生成することが可能です。逆に、最初に3Dでボリュームモデルを作成し、それをもとに2Dの図面を展開していくアプローチも選べます。この柔軟性が、さまざまな設計スタイルに対応できるVectorworksの強みといえるでしょう。

また、設計中の各部材や空間は、常に立体として把握できるため、スケール感や納まりの確認もしやすくなります。BIM設計に不慣れな初心者でも、段階的にモデリングを学びながら、徐々に3D空間での設計思考を身につけることができます。

ここでは、Vectorworksで3D設計を始めるうえでの基本的な考え方と、初心者に役立つ操作の流れを紹介します。

4.1. 2D図面から3Dモデルへ移行する考え方

多くの設計者は、まず平面図や断面図などの2D図面を描くことからプロジェクトを始めることが一般的です。Vectorworksでは、こうした2D図面に高さや厚みといった情報を追加することで、そのまま3Dモデルとして展開することができます。

たとえば、壁を描く際にその高さや構造情報を設定しておけば、自動的に立体的な壁オブジェクトとして生成され、立面図や断面図にも反映されます。これは、手間をかけずに設計の整合性を保てる大きなメリットといえるでしょう。

さらに、天井高や階高などのストーリ情報を設定しておくと、複数階にわたる設計でもレベル間の関係を管理しやすくなります。これにより、設計変更があっても修正箇所を最小限にとどめながら、スムーズに全体モデルを更新できます。

このように、2D作図の延長として3Dを活用できる設計フローは、BIM初心者にとって非常に取り組みやすく、無理なく3D設計に移行できる方法といえるでしょう。

4.2. モデリングツールの種類と特徴

Vectorworksには、多彩なモデリングツールが用意されており、さまざまな形状や構造を柔軟に表現できます。建築分野でよく使われるのは、壁ツール・床ツール・柱ツール・屋根ツールなどの専用オブジェクトで、それぞれのツールはあらかじめ建築的な属性を備えているため、設計時の設定や調整がスムーズに行えます。

たとえば壁ツールでは、外壁・間仕切り・耐火仕様などの設定が簡単に行えるほか、断熱材や仕上げ層の構成も編集できるため、実際の施工に近い精度で設計することができます。窓や扉もドラッグ&ドロップで簡単に配置でき、開閉方向や仕様も自在に変更可能です。

また、自由な形状を作りたい場合には、NURBS(ナーブス)や押し出し、ブーリアン演算などの高度な3Dモデリング機能を活用することも可能です。これにより、曲面や不整形な構造、ディテールの細かいパーツまで表現の幅が広がります。

こうしたツールを適切に使い分けることで、設計の自由度と生産性の両立が実現でき、デザインの質を高めながらBIMとしての情報管理も効率的に行うことが可能になります。

5. 2D図面と3Dモデルの連携

Vectorworksを使ったBIM設計の大きな利点のひとつが、3Dモデルと2D図面との自動連携です。従来の2D CADでは、平面図・立面図・断面図などを個別に描いて整合性を保つ必要がありました。しかしVectorworksでは、3Dモデルをベースに各種2D図面を自動的に生成・更新できるため、作図作業の効率が格段に向上します。

たとえば、建物の壁の位置や高さを3Dモデル上で修正すれば、それに応じて平面図や断面図も自動で更新されます。これにより、図面の整合性を手作業で確認する必要がなくなり、設計ミスや修正漏れのリスクが大きく軽減されます。

また、2Dの注釈や寸法線も各図面ビューごとに個別に設定できるため、用途に応じた見せ方が可能です。プレゼン用のビジュアル重視の資料から、施工用の詳細図面まで、目的に応じたアウトプットが効率よく作成できます。

このように、Vectorworksでは2Dと3Dを単に併用するのではなく、「連携」させて一元管理できるため、建築設計プロセスの大幅な効率化と品質向上につながるのです。

5.1. 平面図から3Dモデルへの展開方法

設計を始める際、多くの設計者はまず平面図を描くことから着手します。Vectorworksでは、その2D図面をもとに簡単な操作で3Dモデルを構築できる仕組みが整っています。

たとえば、部屋の間取りを示す壁のラインを描き、そこに高さや厚みなどの情報を加えるだけで、3D上に壁が立ち上がります。ドアや窓の位置も平面図上で配置し、必要に応じて種類や寸法を調整すれば、リアルな空間として立体的に再現されます。

また、複数階建ての建物では「ストーリ設定(階層構造)」を活用することで、各階ごとの高さや構成を統一的に管理できます。これにより、階高の変更や構成の見直しが発生しても、全体モデルへの影響を自動的に反映させることができるのです。

この段階で、レイヤーやクラスによる図面の整理も重要になります。図面要素を的確に分類・整理しておくことで、あとからモデルを編集する際も作業がスムーズになり、共同作業時の混乱も防げます。

平面図から3Dモデルへの移行プロセスは、VectorworksがBIMツールとして真価を発揮する場面であり、従来の2D設計スタイルから自然に3D設計へと移行できる合理的な流れを提供してくれます。

5.2. 断面図・立面図の自動生成

BIMソフトウェアの大きな魅力のひとつに、3Dモデルから断面図や立面図を自動生成できる機能があります。Vectorworksでは「ビューポート」と呼ばれる仕組みを使って、指定したモデル部分を切り出し、任意の角度や位置で2D図面として配置できます。

たとえば、建物を縦にカットして断面図を作成する場合、どの位置で切るかを指定すれば、その断面に存在する壁・床・天井・設備などがモデル情報に基づいて正確に表示されます。立面図も同様に、外壁や開口部の構成が3Dモデルの情報から自動で図面化され、修正のたびに手描きし直す必要がありません。

これにより、設計変更が生じた場合でも、モデルを修正するだけで関連する図面すべてが自動的に最新状態に保たれ、修正作業にかかる時間と手間を大幅に削減できます。

さらに、ビューポートごとに注釈や寸法を追加できるため、図面としての完成度も高めやすくなっています。これは設計者にとって大きな安心材料となり、BIMの効果を最も実感しやすい場面のひとつといえるでしょう。

このような2Dと3Dの連携機能は、単に作図を効率化するだけでなく、設計の正確性と一貫性を維持するための重要な仕組みとして、多くの現場で活用されています。

6. BIM情報の付与と管理

BIMの本質的な強みは、単なる3Dモデルにとどまらず、そこに「情報」を付加して一元的に管理できる点にあります。つまり、形状だけでなく、部材の材質やメーカー、コスト、性能といった属性情報もあわせて保持し、それを設計や施工、維持管理に活かせるのです。

Vectorworksでは、オブジェクトに対して多様な属性情報を追加する機能や、外部データベースとの連携によって、より詳細かつ柔軟な「BIM情報管理」が可能となっています。必要な情報をあらかじめ整理し、入力項目を明確に定義することで、プロジェクト全体の運用効率が格段に向上します。

このような情報をモデルに組み込むことで、床面積の集計や建具リストの自動作成が容易になるだけでなく、数量積算や省エネ評価にも活用できます。さらに、関係者全員が同じ情報を共有することができるため、伝達ミスや手戻りのリスクも低減され、プロジェクトのスムーズな進行につながります。

ここでは、Vectorworksでどのようにして3Dオブジェクトへ情報を追加し、体系的に管理していくのかについて具体的に解説していきます。

6.1. オブジェクトへの属性情報の追加

Vectorworksでは、壁や窓、柱などの各オブジェクトをクリックすると、画面のプロパティパレットにさまざまな情報入力欄が表示されます。そこに部材の種類や仕上げ、断熱仕様、メーカー名などを細かく設定することで、単なる図形が「情報を持ったBIMオブジェクト」に変わります。

たとえば、壁に関しては、構造材の種類、断熱材のグレード、内外装の仕上げ、さらには耐火性能など、建築基準法や設計条件に応じた設定を行うことが可能です。こうした属性を正確に入力しておけば、積算ソフトやエネルギー解析ツールとの連携もスムーズに行えます。

さらに、オブジェクトに名前やID番号を設定することで、同じ部材を複数の場所に使用した際にも管理がしやすくなります。これにより、後から検索・抽出したり、数量を集計する作業も効率化され、プロジェクト全体の可視化と整合性向上に役立ちます。

情報をどのタイミングでどれだけ入力するかは、プロジェクトのフェーズや目的によって変わります。基本設計では簡易的な情報だけにとどめ、実施設計段階で詳細な品番や性能値を追加入力する、といった段階的な活用も効果的です。

このように、属性情報の付与はやや手間に感じるかもしれませんが、長期的に見ると設計の質を高め、後工程での修正や調整を大幅に削減できる重要なプロセスといえるでしょう。

6.2. 建材データベースの活用

Vectorworksでは、外部の建材データベースやメーカー提供のカタログデータを取り込むことで、実際の製品に基づいた設計を行うことができます。たとえば、断熱材の熱伝導率や防火パネルの耐火時間など、性能値を含んだデータをモデルに組み込むことで、より精度の高い設計が実現できます。

また、オンライン上には多くの建材メーカーが提供するBIMオブジェクトライブラリがあり、それらをダウンロードして活用することで、設計の手間を省きつつ、現実に即したプランニングが可能になります。カタログと連携した設計は、クライアントや施工者への説明にも説得力を与えるでしょう。

ただし、すべての情報を一度に詰め込みすぎると、モデルデータが重くなり、動作が遅くなる可能性もあります。そのため、情報の優先順位をつけて、必要に応じて段階的に追加していくことが、現実的でスムーズな運用につながります。

このように、建材データベースを有効活用することは、単なる作図作業を超えて、プロジェクト全体の計画精度と運用効率を高める重要な要素です。維持管理の段階まで見据えた設計を行うためにも、BIMモデルへの適切な情報追加は欠かせない工程といえるでしょう。

7. 効率的な設計フローの構築

BIMを活用した設計を実践していくうえで、多くの初心者がつまずきやすいポイントに「情報の整理方法」と「チーム内でのルールづくり」があります。BIMの操作方法自体は覚えたとしても、プロジェクトに関わる複数のメンバーがそれぞれ異なるやり方で作業を進めてしまうと、全体の整合性が取れず、かえって手戻りが増えてしまうことがあるのです。

そこで重要になるのが、設計の初期段階から全員が共通のテンプレートやライブラリを活用し、共通ルールのもとで作業する体制を整えることです。これにより、どのメンバーがどの作業をしても統一感が生まれ、BIMの協働設計に必要な基盤が築かれていきます。

Vectorworksは直感的に操作しやすい点が特長ですが、それだけに自由に作業しすぎてしまい、品質のばらつきが出ることもあります。設計品質を安定させるためには、操作面の工夫に加えて「チェック体制」や「情報の整合確認」も必要となります。

この章では、効率的な設計フローを実現するために有効なテンプレートやライブラリの使い方、さらにチームワークによる品質管理の考え方を解説していきます。

7.1. テンプレートとライブラリの活用

設計の効率化と品質の均一化を両立させるには、テンプレートやライブラリの活用が欠かせません。Vectorworksでは、図面の初期設定やレイヤー構成、クラスの命名規則などをテンプレートとしてあらかじめ定義しておくことができます。これにより、プロジェクトごとの準備作業がスムーズになり、ミスや手戻りも減らせます。

たとえば、「レイヤー名は階ごとに」「クラス名は部材の種類ごとに統一」といった基本ルールを設けることで、図面構成が一目でわかりやすくなり、他のメンバーが作業を引き継ぐ際にも混乱が起きにくくなります。

さらに、よく使用する建材・家具・設備などのパーツをライブラリとして保存しておけば、次回以降のプロジェクトで再利用しやすくなります。単に時間を短縮するだけでなく、設計の統一感やクオリティ維持にも貢献します。

テンプレートには、背景や縮尺の設定だけでなく、図面枠や表題欄、タイトル記入欄なども組み込めるため、プレゼン資料や提出図面のフォーマット統一にも役立ちます。繰り返しの作業を極力減らすことで、設計に集中できる環境を整えることができるのです。

このように、テンプレートとライブラリを戦略的に活用することで、プロジェクト全体の作業スピードが向上し、BIMによる設計の実践がより現実的かつ効果的なものになります。

7.2. チームでの作業分担と品質管理

BIMの大きな強みは、複数のメンバーが同時に一つのプロジェクトに関われる点にあります。しかし、それは裏を返せば「情報が錯綜しやすい」というリスクでもあります。特に、だれが何を修正したのかが曖昧になったり、他人の作業をうっかり上書きしてしまったりといったトラブルは、BIM導入の初期段階でよく起こりがちです。

このような事態を防ぐためには、作業分担を明確にし、あらかじめ役割ごとにファイルの管理ルールを定めておくことが重要です。たとえば、「意匠設計はAさん、構造はBさん、設備関係はCさん、データ統合はDさん」といった担当制を敷くことで、責任範囲が明確になり、作業効率と正確性が高まります。

また、定期的にモデル全体をレビューする時間を設けることも効果的です。外部の視点を取り入れることで、見落としやミスを早期に発見でき、品質の向上にもつながります。

さらに、ファイル名のバージョン管理や、修正履歴の記録など、細かな運用ルールも整えておくと安心です。こうした運用の積み重ねが、BIMプロジェクトをスムーズに進めるための土台となります。

BIM初心者であっても、チーム設計の仕組みと注意点を理解しておくことで、後の実務にすぐ活かせるようになります。個人作業からチーム作業へとステップアップしていく際には、こうした管理方法をしっかり押さえておくことが、成功へのカギとなるでしょう。

8. よくある課題と解決策

BIMを導入しようとした際、多くの現場で直面するのが「最初の壁」です。たとえば、ソフトの操作に不慣れで形状をうまく作れない、データの扱い方がわからない、社内全体での導入にハードルを感じる――といった悩みが挙げられます。特にBIMがはじめての方にとっては、3Dモデリングや情報管理の概念自体がなじみのないものかもしれません。

とはいえ、これらの課題は多くの設計者が一度は経験しているものであり、段階的に乗り越えていけるものでもあります。まずはできる範囲で取り組み、試行錯誤を繰り返すことで、自社に合った運用方法やルールが徐々に見えてきます。

幸い、VectorworksはBIM初心者にも配慮された設計となっており、操作マニュアルやチュートリアル動画、国内ユーザーの事例など、学習に役立つ情報が豊富にそろっています。つまずいたときには、こうしたリソースを活用することで早期の解決が期待できます。

この章では、BIM導入において特に多い課題とその解決策について、実際の現場で役立つ具体的なヒントを交えてご紹介します。

8.1. 初心者が陥りやすい操作上の問題

BIMの学習を始めたばかりの方が最もよく直面するのが、基本ツールの扱い方に関するつまずきです。たとえば、壁ツールや窓ツールをうまく使えず、モデルが意図しない方向に伸びてしまう、オブジェクトの位置合わせに手間取る、といったケースは珍しくありません。

これを防ぐには、まずパラメータの設定方法やオブジェクトの特性をしっかり理解することが重要です。また、Vectorworksにはスナップ機能やグリッド表示、ショートカットキーなど、正確な作図を助ける機能が多く搭載されています。こうした基本機能をうまく活用することで、操作ミスを減らし、作業の効率も上がります。

さらに、設計が進むにつれてデータ量が増えると、ファイルが重くなることがあります。不要なオブジェクトを削除したり、テクスチャの解像度を適切に調整することで、動作の負荷を軽減することが可能です。

Vectorworksに特有の注意点としては、3Dビューポートを多数開いていると動作が重くなる場合があるため、必要に応じてビューを整理することも効果的です。

また、BIMの根本的な考え方に慣れていないと、属性情報の入力に一貫性がなくなってしまうこともあります。これを避けるためには、プロジェクト開始時から属性入力のルールを決めておくと安心です。情報管理のルール化は、後のデータ共有や修正作業の負担を軽減する鍵となります。

このように、操作上のミスや初期の混乱は誰もが通る道ですが、基本機能の理解と少しの工夫でスムーズに克服できます。焦らずに実践を重ねて、徐々に慣れていくことが成功への近道です。

8.2. パフォーマンスの最適化

3D設計において、動作が重くなることは避けられない課題の一つです。複雑な建物をモデリングしたり、高精度のレンダリングを行ったり、大量のオブジェクトや詳細な素材を扱えば扱うほど、コンピュータへの負荷は高まり、作業効率が落ちてしまいます。

この問題に対応するためには、まずレイヤーやクラスをうまく使い、不要な要素は非表示にしておくのが基本です。作業時には必要最低限の要素だけを表示することで、動作が格段に軽くなることがあります。

また、レンダリングの品質設定を状況に応じて切り替えるのも効果的です。作業中は「低品質」や「下書き表示」にしておき、最終的な提出段階で「高品質」に戻すという手法を使えば、処理時間を抑えつつ見栄えの良い成果物を作成できます。

ハードウェア面での対策としては、メモリ(RAM)の増設やGPU(グラフィックボード)の性能強化を検討することも視野に入れてよいでしょう。VectorworksをはじめとするBIMソフトはグラフィックス性能を多く消費するため、スペックの見直しが直接的な改善につながることもあります。

また、データの最適化手段として、定期的な保存やファイル分割、外部参照の活用も有効です。プロジェクトが大規模になるにつれて、こうした小さな工夫の積み重ねが、快適な作業環境を支える土台になります。

これらのパフォーマンス改善策を意識的に取り入れることで、BIM設計の負担を大幅に軽減し、スムーズな作業進行が可能になります。最終的には、BIMの効果を最大限に引き出すための重要なステップとなるでしょう。

9. 次のステップ:より高度な活用に向けて

基本的な3D設計や2D図面との連携、属性情報の管理といったBIMの初歩をマスターしたら、次に目指したいのは「高度な活用」です。Vectorworksには、より洗練された機能やプレゼンテーションに活用できるツールが豊富に用意されており、プロジェクトの規模や目的に応じて柔軟に発展させていくことができます。

たとえば、設計提案の段階で施主の理解を深めるために、リアルなレンダリングやウォークスルー動画を活用する手法が注目されています。また、近年ではVRやARといった拡張技術との連携も進んでおり、設計者と関係者とのイメージ共有をより直感的に、効果的に行えるようになっています。

Vectorworksはもともと操作性が高く、学習コストが抑えられているため、こうした先進機能へのステップアップも比較的スムーズです。また、必要に応じて機能拡張ができるプラグインの仕組みも整っており、自分の設計スタイルに合わせた柔軟なカスタマイズも可能です。

この章では、設計の質を高める「プレゼンテーション資料の作成方法」や、「VR/ARとの連携手法」など、BIMをより実践的に活用していくためのアイデアをご紹介します。

9.1. プレゼンテーション資料の作成

設計内容を施主や関係者に伝える際、視覚的にわかりやすいプレゼン資料は欠かせません。Vectorworksには、プレゼンテーション用の専用シートが用意されており、3Dモデルから生成した立面図・断面図・パースなどを見やすくレイアウトできます。これにより、複数の視点から設計意図を明確に伝えることが可能になります。

配色やマテリアル設定を工夫すれば、専門知識のない方にも空間のイメージを直感的に伝えることができます。実際、クライアントにとっては「図面を見る」よりも「イメージを見る」ほうが理解が早く、意見交換もスムーズに進むケースが多いのです。

また、複数のカメラアングルを設定し、それらを連続再生して建物内を移動するように見せるウォークスルー動画を作成すれば、プロジェクトの魅力をさらに引き立てることができます。こうした動画はWeb会議や営業ツールとしても活用でき、プレゼン力の向上に直結します。

リアルな表現を実現する高品質レンダリング機能も魅力の一つで、仕上げ材や照明効果の再現性が高く、仕上がりをイメージしやすい資料を作成できます。設計の説得力を高めると同時に、施主からの信頼感アップにもつながるため、積極的に活用していきたい機能です。

9.2. VRやARとの連携可能性

BIMの高度活用として注目を集めているのが、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)との連携です。Vectorworksの3Dモデルは、外部のビジュアライゼーションツールや専用アプリと連携することで、よりリアルな体験型プレゼンテーションに進化させることが可能です。

VRを使えば、施主や関係者が完成前の建物内部を実寸スケールで歩き回るように確認できます。これは図面やパースでは伝えきれない空間の広がりや天井高、動線計画などを直感的に体験できるため、設計意図の共有が格段にスムーズになります。

一方、ARはタブレット端末やスマートフォンを用いて、現実の空間に3Dモデルを重ね合わせて表示できる技術です。たとえば、建設予定地にiPadをかざしながら建物を表示すれば、周囲とのバランスや配置感をその場で確認することができます。現場での説明や施主との打ち合わせでも活躍するシーンが広がっています。

こうしたVR/ARの導入は、かつてはハードルが高く感じられたかもしれませんが、近年は対応ソフトや機器の進化によって、比較的容易に活用できるようになってきました。Vectorworksでも、対応プラグインやエクスポート形式の整備が進んでおり、今後ますます導入しやすくなると期待されています。

高度なBIM活用としてのVR/AR体験は、設計の表現力を飛躍的に高めるだけでなく、クライアントとの信頼関係構築にも貢献する有力な手段です。最初はプレゼンツールとしての導入から始め、将来的には設計検討や合意形成の手段として本格的に活用していくのも良いでしょう。

10. まとめ

本記事では、BIMの基本的な考え方から始まり、Vectorworksを活用した実際の3D設計の進め方や、情報の扱い方、チームでの運用方法に至るまで、初心者でも理解しやすいよう順を追って解説してきました。

BIMの最大の利点は、設計から施工、管理までの「建築設計プロセス」全体にわたって情報を一元管理できることにあります。これにより、手戻りや伝達ミスを減らし、業務全体の効率を高めることが可能になります。そして、VectorworksはそのBIM導入のハードルを大きく下げてくれる頼もしいツールの一つです。

2D図面と3Dモデルの連携、属性情報の追加による「BIM情報管理」、テンプレートやライブラリの活用による作業効率化、さらにはチーム全体でのコラボレーションの促進など、実務で使える具体的な機能も多数存在します。

もちろん、操作に慣れるまでにはある程度の学習時間が必要であり、BIM導入時にはパフォーマンスやデータ管理の面で課題に直面することもあります。しかし、段階を踏んで経験を重ねていけば、必ず成果を実感できるようになります。今ではネット上の学習リソースも充実しており、初心者でも一歩一歩確実にステップアップできる環境が整っています。

今後、建築業界全体がさらにデジタル化を進める中で、BIMの理解と活用は避けて通れない重要なスキルとなるでしょう。早い段階で習得しておけば、時代の流れに乗って設計者としてのスキルをより高めることができます。

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<参考文献>

Vectorworks Japan

https://www.vectorworks.co.jp/

Home | Vectorworks University

https://university.vectorworks.net/

技術調査:BIM/CIM関連基準要領等(令和7年3月) – 国土交通省

https://www.mlit.go.jp/tec/tec_fr_000158.html

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