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BIM普及に必要なLODの課題と実用例

LODとは何か聞いたことがない方もいると思います。簡単に言うとBIMデータの詳細度及び進捗度を表すものです。今回は設計の際にどのようにして利用するかを説明します。

日本におけるLODの現状

世界的にBIMの普及は進んでいますが、日本の普及は海外と比べて遅れています。BIMを使用した設計機会が少ないため、LODという概念も浸透していません。BIMを利用した建築設計効率化のため、施主・設計者・施工者・製造メーカーなどでBIMモデルの共有化が必要です。しかし、日本ではモデルの詳細度・進捗度を示すLODの標準的な仕様が定められていません。そこで海外におけるLODの仕様や日本の設計事務所・ゼネコンへのインタビューを元にした標準的仕様を(注1)日本におけるBIM活用プロジェクトでのLevel of Development(LOD)策定の実態よりご紹介します。

LOD100~500

LODのレベルは下記の6段階に分けられています。LODの後ろにつく数字が大きいほど詳細度が高くなります。

表2 LODの基本定義/Fundamental LOD Definitions※1

LOD定義
100LOD100のモデル・エレメントは幾何学的な表現ではない。コンポーネントの存在を示すための例として、他のモデル・エレメントまたはシンボルに付加された情報であり、形態、大きさあるいは正確な位置を示すものではない。LOD100のエレメントから得たいかなる情報も近似値であると捉えるべきである。
200LOD200のモデル・エレメントは一般的なプレースホルダである。これらはコンポーネントの代理であり、スペースを確保するためのボリュームと認識しても良い。LOD200のエレメントから得たいかなる情報も近似値であると捉えるべきである。
300メモや書き込み寸法等のモデル化されていない情報を参照せずに、設計されたエレメントの数量、大きさ、形態、位置、方向はモデルから直接測ることが可能である。
350近接あるいは隣接したエレメント同士を調整するのに必要なパーツがモデル化される。これらのパーツは支持材や接合部材などを含む。メモや書き込み寸法等のモデル化されていない情報を参照せずに、設計されたエレメントの数量、大きさ、形態、位置、方向はモデルから直接測ることができる。
400LOD400のモデル・エレメントは、これを製作するのに十分なディテールと正確さでモデリングされる。メモや書き込み寸法等のモデル化されていない情報を参照せずに、設計されたエレメントの数量、大きさ、形態、位置、方向はモデルから直接測ることができる。
500LOD500は実物と照合した表現であり、モデルの形状情報や属性情報のより高いレベルの発達を指示するものではないため、この仕様書ではLOD500を定義・図解しない。
図註「BIMForum LOD Specification(Version:2016)」pp.12-13を参照

表:※1同文献p.12より引用し「日本におけるBIM活用プロジェクトでのLevel of Development(LOD)策定の実態」筆者が和訳

和訳した上記の表のものだとイメージが難しいため、画像を用いて解説致します。
・LOD100
 LOD100はモデルの構成要素を表す情報です。下記画像のように形態や大きさ等正確には示していないため、あくまでも近似値であると捉える必要があります。寸法や位置はこの時点では未確定です。企画の段階で必要なレベルとされています。
・LOD200
 LOD200は置換可能な要素と言われており、要素からスペースを確保するためのボリュームとして認識できます。部材同士の干渉等、LOD100では検討できないことも可能ですが、LOD200もあくまでも近似値であると捉える必要があります。より詳しい検討はLOD300以降になります。基本設計に必要なレベルとされています。
・LOD300
 LOD300のモデルからは数量、大きさ、形態、位置、方向等の情報を直接測ることが可能です。実施設計に必要なレベルとされています。
・LOD350
 LOD350では近接・隣接する構成要素を調整するために必要なパーツがモデル化されます。それぞれの構成要素が孤立することはなく、どのように繋がっているかなど関係を表しています。
・LOD400
 LOD400では実際に施工する際に必要な情報もモデリングされます。施工の際に必要なレベルとされています。
・LOD500
 LOD500は実物と照合した表現とされています。LOD400よりもさらに詳細にモデリングされているものではないため、下記画像には図解されていません。

出展:Beating Chaos and Achieving Profits in BIM with LOD 350

実務でのLOD

LODとは何か、どのように分けられているかご説明しましたが、ここからは設計業務でどのように利用するかです。重要となるのは設計フェーズによってLODを定めること、設計者が複数人いる点です。
・納まり検討
 意匠、構造、設備設計はそれぞれ別の設計者が行います。設計フェーズにLODを定めることにより、部材同士の干渉などをチェックできます。最初から詳細に行えば良いというものではなく、最初はざっくり決めてその後詳細を詰めればよいのでLODが重要となります。
・見積もり
 設計の際に基本設計のみ、実施設計のみ、またはその両方を行うなどが考えられます。その際に依頼主との認識の違いにより多くの求められるものがあり、問題となる場合があります。原因として企業ごとに設計段階の定義が異なることが考えられます。LODの段階を予め定めておくことで曖昧な契約を未然に防ぐことができます。
・フェーズ別の作成者
 LOD100はAさん、LOD200はBさんLOD300はCさんといったように、フェーズごとでの設計者を分けることが可能です。痕跡として残すことができるためトラブルが生じた際に迅速に対応ができます。

まとめ

今回は段階ごとのLOD定義と、業務に用いた際のメリット等を紹介しました。設計フェーズごとに求められる情報量が異なるため、BIMモデルを作成するうえでLODは必要となってくる概念です。一方でLODに関する標準的な仕様も定まっていない状態で、BIMが普及しても企業ごとに異なっていては意味がないでしょう。LODの普及と定義付けは、BIM普及のために必要となります。

 

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参考文献
注1 日本における BIM 活用プロジェクトでの Level of Development(LOD)策定の実態
http://www.arch.titech.ac.jp/yasuda/thesis/2016thesis/hirano.pdf
注2 Beating Chaos and Achieving Profits in BIM with LOD 350
https://www.structuremag.org/?p=558

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