Fusion 360で実現可能なジェネレーティブデザインとは?
CAD・BIM活用は今や設計業務におけるスタンダードとして定着しつつありますが、これらの可能性をさらに引き出せる技術の一つに、ジェネレーティブデザインと呼ばれるものがあります。
従来の設計手法とは一線を画するジェネレーティブデザインは、どのような点で優れているのでしょうか。この記事ではジェネレーティブデザインの概要について解説しつつ、Fusion 360におけるジェネレーティブデザインの運用について解説します。
目次:
- ジェネレーティブデザインの概要
- ジェネレーティブデザインのメリット
- Fusion 360について
- Fusion 360で使えるジェネレーティブデザイン機能
ジェネレーティブデザインの概要
ジェネレーティブデザイン(Generative Design)は、生成AI技術を活用した自動生成によるデザイン技術のことです。
デザイン業務はクリエイティブな工程が発生するため、従来の作業労働の自動化に特化したロボットやAIでは代替が不可能とされてきた分野です。しかし近年の急速な生成AI技術の進歩に伴い、デザインそのものを自動化し、創造性が必要な箇所を最小限に抑えることで、デザイン業務の効率化に成功しています。
ジェネレーティブデザインはそんなデザインの自動化・最適化手法を取り入れている技術で、あらかじめ制約や条件を指定することで、それに基づいた望みのデザインを複数提示することができます。
これまでは一つのデザインを考えるのに何人ものデザイナーを用意したり、何時間も設計に費やしたりすることが求められてきましたが、ジェネレーティブデザインはこれらの負担を一度に解消するポテンシャルを秘めている技術です。
ジェネレーティブデザインのメリット
ジェネレーティブデザインの実装は、デザイナーや企業にさまざまなメリットをもたらします。具体的にどのような利点が期待できるのか、ここで確認しておきましょう。
短時間で複数のデザインを生成できる
ジェネレーティブデザインの最大の強みは、短時間で多くのデザインを生成することができる点です。
デザインにはこれまで多くのリソースを投じて、ようやく1つか2つが完成するということが珍しくありませんでしたが、ジェネレーティブデザインは要件を伝えるだけで、数時間の間に理想のデザインをいくつも完成させることができます。
デザインのために長い時間をプロジェクトの中で割く必要性が小さくなるので、スケジュールの短縮に貢献します。
従来より質の高い提案が可能になる
デザイン業務にAIを導入するのは、質の低下を招くのではという懸念の声が聞こえてくることもありますが、ジェネレーティブデザインの場合は正しく活用することで、むしろ質の高い提案をコンスタントに発揮するのに役に立ちます。
ジェネレーティブデザインは、プロジェクトの要件に応じたデザイン案を短時間で生成できますが、AIから出力されたものをそのまま使う必要はありません。
デザイナーはジェネレーティブデザイン機能を使い、生成されたものから勝手の良さそうなものを選び、ブラッシュアップを行うことで、提案することができます。
これまではゼロイチのデザイン業務に時間を割いていたのが、この段階を自動化し、ディテールの品質向上に時間をかけることができるようになるため、説得力のある提案をクライアントなどに行えるというわけです。
また、まだデザイナーとしての経験が浅い若手人材でも、コンスタントに品質がある程度保証されたデザイン案をジェネレーティブデザインツールを使って出力できるので、それをブラッシュアップするだけでプロレベルの提案が行えます。
結果、デザイナー人材のスキル向上を促し、人材不足を早期に補えるのも魅力です。
コスト削減につながる
デザイナーの数が少なくとも業務を遂行できる環境の整備にジェネレーティブデザインは役に立つため、人件費を抑えたプロジェクトを実現できます。
また、プロジェクトの遂行に必要な日数も短く抑えられるので、やはり人件費などのコスト削減に貢献するのがポイントです。
Fusion 360について
ジェネレーティブデザインを運用するためには、専用のツールを現場に導入しなければなりませんが、その代表格とも言えるのがFusion 360です。
Fusion 360は、Autodesk社が開発・提供している高機能CADソフトです。製造業向けのプロダクトデザインに特化した製品となっており、その使いやすさが高く評価され、国内外を問わず多くの企業に採用されています。
プロダクトデザインそのものを実行するのはもちろんのこと、複数の製造方法を評価して、製品の耐久性やパフォーマンスを改善するためのソリューション発見にも役立てられる製品です*1。
また、拡張機能であるAutodesk Fusion Simulation Extensionを導入すれば、パーツ性能や製造可能性の解析機能、およびジェネレーティブ デザインの高度な機能を追加できるなど、拡張性にも富んでいるのが魅力です*2。
Fusion 360で使えるジェネレーティブデザイン機能
Fusion 360は、高度なジェネレーティブデザイン機能が使えるという点も評価されています。
他の機能と同じようにFusion 360ではジェネレーティブデザインを実行できるため、利用ハードルが低く、気軽に使ってみることができ、すでに同製品を利用している場合は慣れた操作で運用を開始できるでしょう。
Fusion360では、細かく設計するデザインの要件を順序立てて整理しながら、生成手続きを進められるのが特徴です。
ジオメトリの選択、荷重と拘束の設定、材質と製造方法の設定を行うことで、最適化されたデザイン候補から選択が可能です。
ジェネレーティブデザインをFusion 360で利用するメリットの一つに、利用の手順が極めてシンプルであることも挙げられます。難しいモデリング操作を覚える必要がなく、簡単な入力作業で理想のデザインをすぐに仕上げられるのが強みです。
ただ、Fusion 360のジェネレーティブデザイン機能の利用にあたっては、その計算コストをクラウドクレジットで支払う必要のある、従量課金制が採用されています*3。
システム利用負担が利用のたびに発生することは、覚えておきましょう。
まとめ
この記事では、ジェネレーティブデザインとは何か、Fusion 360の主な機能はどんなものかについて解説しました。
Fusion 360ではジェネレーティブデザインを使いやすい形で提供しており、誰でも気軽にそのポテンシャルを体験することができます。
利用に際しては従量課金となっているものの、一度試してみる価値はあるでしょう。
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出典:
*1 Autodesk「Fusion 360」
https://www.autodesk.co.jp/solutions/generative-design/manufacturing
*2 Autodesk「Fusion Simulation Extension」
https://www.autodesk.co.jp/products/fusion-360/simulation-extension
*3 MONOist「「Fusion 360」のジェネレーティブデザイン機能を使ってみよう)」
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1908/19/news013_4.html