今流行りの画像生成AIの作り方をざっくり解説
最近はさまざまな画像生成AIを使ったアプリやサービスがリリースされ、一般の人でも目的やスキルに応じて選択できるようになりました。このようなAI技術は、デザインやアート、広告、ゲームなど、さまざまな分野で活用されており、その可能性はますます広がっています。
ところで、この画像生成AIってどうやって作られるのでしょうか?本稿ではその流れをざっくりと紹介していきたいと思います。
この記事でわかること
・画像生成AIの基本概念について
・画像生成AIの作り方
・画像生成AIの応用と今後の展望
画像生成AIの基本概念
画像生成AIとは
画像生成AIとは、人工知能を用いて新しい画像を生成する技術のことです。これには、既存の画像を基に新しい画像を生成する方法や、全く新しいデザインを生み出す方法があります。
この分野を飛躍的に進化させた最も有名な技術の一つに、「Generative Adversarial Networks(GANs)」があります。GANsは、2つのニューラルネットワーク(生成モデルと判別モデル)が競い合いながら学習することで、高品質な画像を生成する技術です。
画像生成AIの歴史と進化
画像生成AIの研究は、2000年代初頭から始まりましたが、特に2014年にIan Goodfellowらによって提案された「GANs」の登場により、急速に進化しました。
GANsの登場以前は、画像の生成には多くの時間とリソースが必要でしたが、GANsにより効率的かつ高品質な画像生成が可能となりました。その後、「StyleGAN」や「DALL-E」などの新しい技術が次々と開発され、画像生成の精度や多様性が飛躍的に向上しました。*注1
画像生成AIの活用例
画像生成AIは、さまざまな分野で活用されています。例えば、デザインやアートの分野では、AIを用いて独自の作品を生成することが可能です。
また広告業界では、商品やサービスのビジュアルを自動生成することで、マーケティングの効率化を図っています。さらにゲーム業界でも、キャラクターや背景の自動生成により、開発コストの削減やクリエイティブの向上が実現しています。
画像生成AIの作り方
では、この画像AIを作成する手順について、簡単な概略を説明していきましょう。あくまで「ざっくりとした」流れを紹介するまでに留めておきますので、実際に取り組むにはさらに詳しい記事や参考書を参照してください。
必要なツールと環境
画像生成AIを作成するためには、いくつかのツールと環境が必要です。まず、「Python」は多くのAIライブラリが対応しているため、基本的なプログラミング言語として推奨されます。また、「TensorFlow」や「PyTorch」といったディープラーニングのフレームワークも必要です。
TensorFlowは、2015年にGoogleが開発した機械学習のソフトウエアライブラリであり、ニューラルネットワークの構築や訓練ができるシステムの要求に対応できます。
「DistBelief」という、先行する開発基盤の汎用性の低さを改善し構築されたのが「TensorFlow」であり、その性能の良さからこの分野で最も有名なフレームワークの一つとなりました。*注2
PyTorchは、Facebookが開発を主導したPython向けの機械学習ライブラリです。コードの書きやすさに特徴があり、Python機械学習ライブラリとして、開発者から高い人気を誇っています。*注3
これらのツールをインストールするためには、「Jupyter Notebook」などの開発環境を整えることが重要です。Jupyter Notebookは、ブラウザ上で動作する対話型実行環境であり、リアルタイムでプログラムの実行結果が表示されるなどの優れた特徴があります。
ただし、あまり大規模な開発には適しておらずプロトタイプ構築や小規模システムの構築などを主として利用されています。大規模な開発をするのであれば、IDEやスクリプトベースの開発環境を選択することになります。
また、「Google Colab」などを利用すれば、このような開発環境に必要なツールがすでにインストールされていますので、すぐに開発を進めることができます。*注4
データセットの準備
画像生成AIを効果的に学習させるためには、大量の画像データセットが必要です。データセットは、既存のオープンデータセットを使用するか、自分で収集することが可能です。とはいうものの、数十万件もの画像データを自分で準備するのは大変です。
データセットの品質や多様性は、生成される画像の質に大きく影響するため、できるだけ多様なデータを収集することが重要です。
このようなことから、さまざまな研究機関から誰でも利用できるようなデータセットがいくつか公開されています。著名なデータセットとしては「CIFAR-10」や「ImageNet」などがあります。*注5
モデルの構築とトレーニング
次に画像生成モデルを構築し、トレーニングを行います。ここでは、「GANs」を例にとって説明していきましょう。
GANsは、生成モデルと判別モデルの2つのネットワークで構成されます。生成モデルは、新しい画像を生成する役割を担い、判別モデルは生成された画像が本物か偽物かを判断します。この2つのモデルが互いに競い合いながら学習することで、生成モデルの精度が向上します。
生成モデルは、ランダムノイズデータから画像を生成していきます。最初は意味のある画像は生成できませんが、学習を繰り返すことによって徐々に目的の画像に近づいていきます。
判別モデルは教師の役割を担います。生成モデルによって作られた画像を評価し、この2つのAIが連携することによって、より良い成果が出せるようになるのです。
構築する大まかな手順としては、まず生成モデルと判別モデルのアーキテクチャを設計します。次に、トレーニングデータを使用してモデルを学習させます。この際、トレーニングのパラメータ(例:学習率やバッチサイズ)を適切に設定することが重要です。学習が進むと、生成モデルは徐々に高品質な画像を生成できるようになります。
より具体的には、
・ジェネレーターとディスクリミネーターの構築: 基本的なニューラルネットワークを定義
・損失関数とオプティマイザの設定: GANのトレーニングに必要な損失関数とオプティマイザを設定
・トレーニングループの実装: ジェネレーターとディスクリミネーターを交互にトレーニングするループを実装
という手順で進んでいきます。*注6
※損失関数(Loss Function):機械学習や深層学習のモデルがどれだけ正確に予測できているかを評価するための指標です。平均二乗誤差(Mean Squared Error, MSE)、平均絶対誤差(Mean Absolute Error, MAE)、クロスエントロピー損失(Cross-Entropy Loss)などいくつかの損失関数が存在しています。
※オプティマイザ(Optimizer)は、機械学習や深層学習においてモデルのパラメータを調整して、損失関数(誤差関数)の値を最小化するアルゴリズムのことです。SGD(Stochastic Gradient Descent)、ミニバッチ勾配降下法、モメンタム(Momentum)などの種類があります。*注7
画像生成AIの応用と今後の展望
クリエイティブな応用例
画像生成AIは、クリエイティブな分野で広く応用されています。例えば、アーティストはAIを使用して、新しいスタイルやデザインを探求することができます。
またファッションデザイナーは、AIを用いて新しい服やアクセサリーのデザインを自動生成し、効率的なプロトタイプ作成を行っています。映画やゲームの制作では、背景やキャラクターの生成にAIが活用され、制作時間の短縮とコスト削減が実現されています。
商業的な応用例
商業分野でも、画像生成AIは多くの可能性を秘めています。広告業界ではAIを用いて、ターゲットオーディエンスに合わせたビジュアルコンテンツを自動生成させることで、マーケティングの精度が向上しています。
また不動産業界では、AIを用いて物件の内装イメージを生成することで、顧客に視覚的な提案を行い、販売促進に役立てています。
このように、少し前までは研究段階だった画像生成AIは、すでに現実世界で広く活用されるまで進化しています。商業ベースはもちろん、スマホアプリなどホビーユースでも広く応用されており、もはや「なくてはならない技術」の一つになりました。
今後の展望と課題
画像生成AIの技術は急速に進化しており、今後もさらなる発展が期待されます。しかし、技術の進化に伴い、いくつかの課題やリスクも浮上しています。
例えば、生成された画像の著作権や倫理的な問題、フェイク画像の悪用といったリスクが考えられます。これらの課題に対しては、技術の進化とともに適切な法規制や倫理的なガイドラインの整備が必要でしょう。
【まとめ】
画像生成AIは、クリエイティブな分野から商業分野まで、さまざまな応用が可能な技術です。その基本概念や作り方を理解することで、初心者でも自分で画像生成AIを作成し、活用することができます。今回はかなりざっくりと画像生成AIを自分で構築する手順について紹介してみました。初心者向けのチュートリアルも数多く出されていますので、この分野の技術者を目指す方などは一度チャレンジしてみると良いのではないでしょうか。
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■参考文献
注1
MIT TECHNOLOGY REVIEW Japan 「35歳未満のイノベーター35人 2017」イアン・グッドフェロー
https://www.technologyreview.jp/l/52980/ian-goodfellow/スキルアップAI Journal 「StyleGANとは|近年最も注目を集める画像生成モデル」
https://www.skillupai.com/blog/tech/gan-tips/
注2
Udemyメディア 「【TENSORFLOW入門】特徴や使い方をわかりやすく解説!」
https://udemy.benesse.co.jp/data-science/ai/tensorflow.html注3
Udemyメディア「【入門編】PyTorchとは何か?インストールから実装までわかりやすく解説」
https://udemy.benesse.co.jp/development/python-work/pytorch.html注4
ビジPy 「図解!Jupyter Notebookを徹底解説!図解!Jupyter Notebookを徹底解説!(インストール・使い方・起動・終了方法)」
https://ai-inter1.com/jupyter-notebook/
注5
@IT 「CIFAR-10:物体カラー写真(乗り物や動物など)の画像データセット」
https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2006/10/news021.html
注6
Hakky Handbook 「ディープラーニングによる画像生成とファインチューニングの具体的な手法とツールの紹介」
https://book.st-hakky.com/purpose/image-generation-fine-tuning-deep-learning-optimization-examples/TensorFlow Core 「初心者のための TensorFlow 2.0 入門」
https://www.tensorflow.org/tutorials/quickstart/beginner?hl=ja
注7
@IT 「損失関数(Loss function)とは? 誤差関数/コスト関数/目的関数との違い」
https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2104/15/news030.html
TEN FIVE 「Optimizer~AI開発を効率的に?」
https://10-5.jp/blog-tenfive/1693/