ソリッドワークス活用術|パターン化で繰り返し作業を自動化する方法
1. はじめに
設計業務では、同じ形状を何度も配置したり、似たような修正を繰り返したりする場面が少なくありません。こうした作業を手作業で続けていると、時間がかかるうえにヒューマンエラーのリスクも高まります。
そこで役立つのが「パターン化」という仕組みです。ソリッドワークスには、直線パターン・円形パターン・スケッチパターンなど、形状を効率よく繰り返し配置できる便利な機能がそろっています。これらを活用すれば、作業時間を大幅に短縮できるだけでなく、設計の精度や統一性も向上します。
さらに、マクロやプログラミング(SOLIDWORKS API)と組み合わせれば、複雑な形状や大規模アセンブリでも自動化が可能です。放熱フィンやギアの歯形のように要素が多い設計でも、短時間で正確に仕上げられます。
本記事では、ソリッドワークスに搭載されているパターン化機能の概要から基本操作、実務での活用例や注意点までをわかりやすく解説します。初心者の方はもちろん、効率化を求める経験者にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
2. ソリッドワークスのパターン化概要
ソリッドワークスには、設計者が同じ形状を効率よく繰り返し配置できる多彩な機能が備わっています。こうした「パターン化」を意識して使うことで、設計作業のスピードを高めるだけでなく、図面の精度や統一性を維持しやすくなります。
「パターン化」と聞くと難しそうに思うかもしれませんが、基本の考え方は単純で「繰り返したい形状をまとめてコピーする」というイメージです。従来のように手作業で1つずつ配置する必要がなく、一度ルールを設定してしまえば、ほぼ自動処理の感覚で短時間に整然と並べられます。
さらに便利なのは、配置後の修正が容易である点です。パターン化した形状は、基準となる設定を変更するだけで一括更新が可能です。そのため、設計変更が頻発する場合でも素早く対応でき、結果として大幅な時間短縮や手戻り削減につながります。
2.1. パターン化の基本概念
パターン化とは、ソリッドワークスで同じフィーチャーやボディを指定方向や角度に沿って繰り返し配置する機能を指します。
たとえば、直線方向に一定間隔で穴を複数あけたいときには「直線パターン」が有効です。また、回転軸を中心に円周上へ等間隔で並べる「円形パターン」は、ギアの歯やボルト穴の配置などに広く活用されています。
ほかにも、2Dスケッチ上の要素を並べる「スケッチパターン」や、完成した立体形状そのものをコピーする「ボディ/フェースパターン」など、目的や状況に応じて使い分けられる仕組みが用意されています。どの方法を選ぶにしても、基本は「ある形状を繰り返し複製する」というシンプルな考え方です。
この仕組みが重宝されるのは、手作業よりも圧倒的に早く、配置ミスなどのヒューマンエラーを防げるからです。設計の自動化や効率化を始めたい人にとって、最初に習得すべき機能のひとつといえるでしょう。
2.2. パターン化の主な利用シーン
代表的な利用例として、ボルト穴の配置が挙げられます。直線方向や円形方向にまとめて並べられるため、複数のボルトを一度に正確に配置可能です。
また、放熱フィンのように繰り返し形状が続く部品や、装飾パーツを規則的に並べたいケースでも効果を発揮します。さらに、円形パターンを応用すれば、ギアの歯形といった複雑で数が多い要素も短時間で再現できます。
もしこれを手作業でひとつずつ作成していたら、効率が悪いだけでなく設計精度も不安定になりがちです。パターン化を取り入れることで、設計効率は大きく改善され、作業者の負担も軽減されます。加えて、元となるフィーチャーの寸法や数値を修正すれば、自動的にすべてのインスタンスに反映されるため、設計変更にも柔軟に対応できます。実際の現場でパターン化が重宝されるのは、こうした「効率」と「柔軟性」を同時に実現できるからなのです。
3. ソリッドワークスで使えるパターン化の種類
ここからは、ソリッドワークスに標準で搭載されている代表的なパターン化の機能について詳しく解説します。基本的な操作方法は似ていますが、対象や活用シーンによって応用の仕方が少しずつ異なります。
イメージとしては「手作業で一つずつ並べる代わりに、コンピュータに配置ルールを教えて自動的に繰り返す」ようなものです。間隔や方向をソフトが正確に計算してくれるため、繰り返し数が多いほど効果を実感できます。
どのパターン機能を使うか迷ったときは、「並べたい対象がスケッチ要素か、3D形状か」「単体の部品かアセンブリ全体か」といった観点で判断するとよいでしょう。
3.1. 直線パターン
直線パターンは、指定した方向に一定間隔でフィーチャーを複数コピーできる機能です。
たとえば四角い板に複数のボルト穴を配置する場合、最初の穴を基準にして数や間隔、方向ベクトルを指定するだけで整然と並べられます。手作業で位置を合わせる必要がないため、効率が格段に向上します。
さらに、同時に二方向を設定すれば格子状(X軸とY軸の両方向)のパターンも作成可能です。数値入力だけで短時間に配置できるため、板金設計や機械部品の加工図面などで多用されます。
3.2. 円形パターン
円形パターンは、回転軸を基準にして円周上にフィーチャーを配置する機能です。参照ジオメトリ(平面や軸)を使った設定もできるため、ギアやフランジ、ホイールなど、円周に沿った繰り返し形状の設計に最適です。
操作は直線パターンと似ていますが、方向指定の代わりに回転軸を選び、繰り返す角度や個数を入力します。プレビューで確認しながら数値を調整すると、仕上がりをイメージしやすくなります。
効率的に作業できるのはもちろん、直線パターンと同じ操作感で使えるため習得しやすいのも特長です。ただし、回転軸を誤って選ぶと意図しない結果になるので、特に慣れないうちは必ずプレビューを確認しましょう。
3.3. スケッチパターン
スケッチパターンは、2Dスケッチ上の要素を複製したいときに役立ちます。小さな穴や長方形を複数並べる場合などに便利です。
手順はシンプルで、スケッチモードで対象となる図形を選び、直線方向や円形方向の配置を指定するだけです。押し出しなどの3D化を行う前にスケッチ段階で並べておけば、後の工程を一括処理できるため効率的です。
また、スケッチパターンは単なるコピーだけでなく、寸法を段階的に変化させる場合や曲線に沿って並べる場合にも応用可能です。その際には「可変パターン」や「カーブ駆動パターン」と組み合わせることで、より高度な設計自動化を実現できます。
3.4. フィーチャーパターン
フィーチャーパターンは、押し出し・切り取り・リブなど、完成したフィーチャー単位でコピーを行う機能です。3Dモデルの形状をそのまま繰り返すため、スケッチに戻らずにパターンを作れる点が特長です。
ある程度形状が完成した後に、追加で繰り返し配置を増やしたい場合に特に有効です。また、パターンはシードとなるフィーチャーの結果を複製する仕組みなので、設計変更時は元の寸法を修正するだけで全体が更新されます。
加えて、「ジオメトリパターン」オプションを利用すれば、フィーチャーを再計算せず形状をコピーとして高速に配置できます(可変パターンでは使用不可)。これにより計算負荷を軽減しつつ、設計精度を高められます。
3.5. ボディ/フェースパターン
ボディ/フェースパターンは、完成したボディや特定の面(フェース)を基準にコピーする方法です。独立した複数のボディをまとめて扱いたいときに便利で、同じ部品形状を1つのパートファイル内に効率よく配置できます。
特にフェースパターンは、対象面を繰り返すだけで位置合わせを簡略化できるため、複雑な形状の配置に有効です。ただし、同一トポロジのフェース集合を対象にする必要があり、境界をまたぐと失敗する場合があります。周囲との干渉や基準面の取り方に注意することが重要です。
これらを適切に活用すれば、大規模なアセンブリや特殊形状のモデルでも、繰り返し作業を大幅に削減できます。
3.6. アセンブリパターン
アセンブリパターンは、組み立て済みの部品やサブアセンブリをまとめて繰り返し配置するための機能です。たとえば、ボルトとナットのセットを一括で並べたいときに非常に便利です。
最大の特長は、パート単体ではなくアセンブリ全体の構造を保ったままコピーできる点です。これにより、部品間の参照関係を維持したまま、ミラー機能などともスムーズに組み合わせられます。大規模設備や複雑な配管周辺の設計などでも大きな効果を発揮します。
ただし、複数のコンポーネントを同時に扱うため、参照関係が複雑になりやすい点には注意が必要です。設計変更が生じた場合に備え、基準面や座標系を適切に設定しておくことで、トラブルを未然に防ぎやすくなります。
4. 基本操作手順と実務での活用例

ここでは、ソリッドワークスでパターン化を行う際の基本的な操作手順を整理し、その後に実際の設計や製造現場で役立つ典型的な事例を紹介します。操作自体は直感的に行えますが、設定の要点を押さえておくことで、より効率的に使いこなすことができます。
一般的に、パターン化を始める前には基準となるフィーチャーや方向軸を正確に準備しておくことが重要です。最初の指定が曖昧だと、その後の工程でエラーが出たり、意図通りに反映されなかったりする原因となります。
実際の設計業務では、放熱フィンの溝やボルト穴の並び、リブ構造の繰り返しなど、あらゆる場面でパターン化が活用されています。必要に応じてテンプレート化しておけば、複数プロジェクトで再利用でき、手戻りを減らしやすくなります。
4.1. 操作手順の基本
パターン化の最初のステップは、「繰り返したい対象を選ぶ」ことです。対象がフィーチャーなのか、スケッチ要素なのか、あるいはボディ全体なのかによって、使用する操作アイコンやコマンドが少しずつ異なります。
次に「パターンの種類」を選択し、配置方向や回転軸を指定します。直線パターンでは方向ベクトルが必要になり、円形パターンでは回転軸を定義します。さらに、間隔や個数、角度などの数値を入力して配置条件を設定します。
最後に「プレビュー」を表示して配置結果を確認し、問題がなければ確定します。必要に応じてミラー機能を組み合わせたり、パターン数を可変にしたりすることも可能です。加えて、SOLIDWORKS APIやマクロを利用すれば、バッチ処理のように一括で自動化できるため、大規模な設計作業にも対応できます。
4.2. 実務での具体的な活用例
代表的な活用例のひとつがボルト穴配置です。多数の穴を板に等間隔で並べたいとき、直線パターンを使えば一瞬で配置でき、設計変更時もピッチや個数を変えるだけで反映されます。試作や量産設計のどちらでも時間短縮に直結します。
放熱フィンのような繰り返し構造も、パターン化を利用すれば簡単に作成可能です。従来のように一つひとつ溝を作る必要がなくなるため、手作業でのミスを防ぎつつ、設計精度を高められます。さらに、円形パターンを応用することで、ギアの歯形のように多数の要素が必要な部品でも短時間でモデリングできます。
アセンブリパターンは、大型機械に多数のボルトセットを組み付ける際などに特に有効です。一度設定すれば、30個や50個といった大量のボルトとナットをまとめてコピーでき、大幅な設計効率化と作業時間削減を実現できます。
5. パターン化でよくあるトラブルと対処法
パターン化は設計作業を効率化するうえで非常に便利な機能ですが、使い方を誤ると意図しない方向にコピーされてしまったり、インスタンスを大量に生成して処理が重くなったりすることがあります。便利さの裏に、いくつか注意すべき落とし穴があるのです。
たとえば直線パターンや円形パターンでは、指定する方向や回転軸を誤ると、形状が思った通りの位置に並ばず、修正に余計な時間を取られることがあります。こうしたトラブルを避けるためには、確定する前に必ず「プレビュー」で確認する習慣を持つことが重要です。
さらに、大量の要素をパターン化した場合、画面表示が遅くなったりカクついたりすることがあります。その際は、「ライトウェイト表示」や「大規模アセンブリモード」を活用すると負荷を軽減できます。また、作業途中では一時的にパターン数を減らしておき、最終的な出図段階で正しい数に戻すと効率的です。
加えて、参照面や基準軸の設定が不安定だとエラーの原因になります。パターンを適用する前に、安定したスケッチパラメータや基準をしっかり整えておくことが、トラブル回避につながります。こうした小さな工夫を積み重ねることで、パターン化をより安心して活用できるようになります。
6. パターン化を使いこなすコツ
パターン化を効果的に活用するためには、部分的な操作だけにとらわれず、設計全体を見据えて基準を作ることが大切です。途中で参照元が変わったとしても対応できるように、あらかじめ基準面や基準軸を正確に設定しておけば、後から修正が必要になった際のコストを大幅に抑えられます。
また、設計テーブル(エクセルの表など)と連携させることで、寸法やパターンの間隔を数値入力で直接管理できます。インスタンス数をまとめて変更したい場合には、可変パターンやテーブル駆動パターン、さらにはSOLIDWORKS APIを利用すると効率的です。これらを組み合わせれば、試作品の設計や特殊な応用設計にも柔軟に対応でき、設計標準化の推進にも大きく貢献します。
さらに、アセンブリパターンを扱う際には、部品点数をむやみに増やしすぎない工夫も欠かせません。アセンブリ全体が重くなりすぎると、編集や修正がスムーズに進まなくなります。そのため、一部の要素だけをパターン化する方法や、ミラー機能を併用して部品数を半減させる工夫が有効です。こうした小さな最適化を積み重ねることで、大規模な設計変更でもストレスなく対応できるようになります。
7. まとめ
パターン化は、ソリッドワークスを使った設計を効率化するうえで欠かせない強力な機能です。直線パターンや円形パターン、フィーチャーパターン、アセンブリパターンなどを状況に応じて使い分ければ、作業時間の短縮と設計精度の向上を同時に実現できます。
操作自体は複雑ではなく、一度使ってみれば「繰り返し作業の手間が大幅に減る」というメリットをすぐに実感できるでしょう。放熱フィンやギアの歯形、ボルト穴の配置といった幅広い設計シーンで活用できるのも魅力です。
さらに今後は、マクロやSOLIDWORKS APIといった自動化ツールを組み合わせることで、より大規模で複雑な設計にも対応できるようになります。デザインライブラリやテンプレートの活用と合わせれば、設計プロセス全体をより洗練させることも可能です。
繰り返し要素を見つけたときこそ、パターン化の出番です。小さな工夫を積み重ねることで、設計業務は驚くほどスムーズになり、より創造的な作業に時間を割けるようになるでしょう。ぜひ日々の設計に取り入れて、その効果を体感してみてください。
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<参考文献>
パターンのパターン化(Patterns of Patterns) – 2026 – SOLIDWORKS ヘルプ
https://help.solidworks.com/2026/japanese/SolidWorks/sldworks/t_Patterns_of_Patterns.htm
SOLIDWORKS API – 2026 – SOLIDWORKS ヘルプ
https://help.solidworks.com/2026/japanese/SolidWorks/sldworks/c_solidworks_api.htm







