AutoLISP移行ガイド|AutoCAD 2026での互換性と変更点を解説
1. はじめに|AutoLISP移行の重要性とは?
AutoCAD 2026は後方互換を維持していますが、運用面ではUnicode前提とセキュリティ強化(SECURELOAD/TRUSTEDPATHS)の影響により、これまで問題なく動いていたAutoLISPが「読み込めない」「文字化けする」といった形でつまずくことがあります。特に、外部LISPの配置場所や文字コードが混在している環境では、移行直後に不具合が表面化しやすくなります。
本記事では、移行作業で混乱しやすいポイントを次の3つに絞って整理します。
- Unicode前提での文字列処理・ファイル入出力
- SECURELOAD/TRUSTEDPATHSによる読み込み制御
- Desktop/LT/Webのエディション差による制限
対象は、既存のAutoLISP資産をAutoCAD 2026へ移行する担当者(社内・外注)です。ゴールは、移行前に「動かない原因」を設定側(セキュリティ/パス)とコード側(Unicode/依存機能)に切り分けられる状態を作ることです。最後のチェックリストを使い、安定運用に必要な確認項目を抜け漏れなく押さえてください。
2. AutoCAD 2026の新機能とAutoLISPの互換性

AutoCAD 2026は、従来の後方互換性を維持しながらも、内部仕様にいくつかの新要素を取り入れています。ユーザーインターフェースの改善や新コマンドの追加に加え、AutoLISPの実行環境にも細かな変更が含まれている点が特徴です。
注目すべきは、Unicode対応やセキュリティ強化がAutoLISPの動作にどの程度影響するかという点です。大きな破断点は設けられていませんが、細部を見落とすとスクリプトがエラーを起こしたり、過去バージョンを前提としたコードが正しく動作しなくなる可能性があります。そのため、まずは「AutoLISPがどこまで従来どおり動くのか」を整理することが重要です。
後述のチェックリストを使えば、確認すべきポイントが明確になります。具体的には、(1)Unicodeを含む文字列やファイル入出力の確認、(2)SECURELOADやTRUSTEDPATHSの設定確認、(3)LISPSYS(AutoLISP/Visual LISPの動作モードや、コンパイル形式(例:Unicode/MBCS FAS)に関わる設定)の確認などが挙げられます。このように、後方互換を保ちながらも必要最小限の調整が求められる点を意識しましょう。
■ 移行時に確認する順番(実務フロー)
- 文字列・ファイル入出力(Unicode前提)の有無を洗い出す
- SECURELOAD/TRUSTEDPATHSの設定を現行環境で確認する
- LISPSYSの値を確認し、チームで運用を統一する
- Desktop/LT/Webの実行環境差で適用範囲を整理する
結果として、「従来のコードもそのまま動くはず」という前提を保ちやすい一方で、今回のバージョンで生じる細かな変更を見落とすと、作業効率の低下につながる可能性があります。細部を理解し、AutoCAD 2026 DeveloperやObjectARXヘルプのドキュメントを定期的に確認することが大切です。
2.1. 後方互換の基本と内部仕様の変更
「後方互換」とは、過去のバージョンで動作していたプログラムを、新しい環境でも原則として動作させる方針を指します。AutoCADでは、AutoLISPの中核部分を大きく変えずに発展させてきた経緯があり、長年のユーザー資産を守る取り組みが続けられています。
一方で、内部仕様は少しずつ変更されており、特に文字列処理やファイル入出力に関するルールには変化があります。とくに日本語処理では、日本語ファイル名の扱いが旧バージョンと異なる場合があり、Unicode対応への移行が必要となるケースもあります。
こうした変更を見落とすと、一部の関数が想定外の挙動を示す可能性があります。影響を受けやすいのは、内部でファイルパスや文字列操作を行う関数です。たとえばファイル読み込み関数では、文字コードの違いによりファイルを認識できないといった問題が起こることがあります。
重要なのは、これらの内部仕様変更は大規模なものではないという点です。しかし、細部では不整合が生じやすくなります。日常的に多くのAutoLISPスクリプトを使用している場合は、コード全体を一度点検し、問題が発生していないかを確認することが大切です。
2.2. LISPSYSと実行環境の違い
AutoCADにはLISPSYSというシステム変数があり、AutoLISP/Visual LISPの実行やロードに関する動作モードに影響します。移行時はまず現在のLISPSYS値を確認し、チーム内で運用を揃えたうえで、スクリプトが想定どおり動作するかを検証することが安全です。
LISPSYSの値を変更すると、ロード時の挙動や動作モードに差が出る場合があります。初期設定のままで問題ないケースもありますが、トラブル対応時には「現在のLISPSYS値」と「影響する範囲」を把握しておくと原因特定がスムーズになります。
また、LISPSYSはUnicode対応の扱いとも関係します。古い資産をそのまま移行すると、文字列処理やファイル入出力で想定外の挙動が出る可能性があるため、「Unicodeを含む文字列」「日本語パス」「ファイルの読み書き」を重点的にテストすることが重要です。長期的に互換性を確実に保ちたい場合は、Unicode前提の運用に合わせて、LISPSYSを含む関連設定を移行方針に沿って整備しておくことが望ましいといえます。
3. Unicode対応とその影響
近年のAutoCADでは、Unicode前提の運用を意識することが、AutoLISP移行時のトラブル回避につながります。とくに影響が出やすいのは、日本語パスや文字列処理、ファイル入出力です。従来のANSIやShift JISなどに依存した運用では制約がありましたが、Unicodeへの移行により多言語文字列を扱いやすくなっています。
一方で、運用を安定させるには、ソースの保存形式(エンコード)をチーム内で統一し、AutoCADで問題なく読み込める形で管理することが重要です。古いLISPファイルに日本語コメントが含まれる場合など、環境によっては文字化けが起こることがあるため、実機での確認が必要になります。
また、コード内で異なる文字コードが混在すると、動作の成否が判断しにくくなります。複数名でAutoLISPを編集する場合は、従来の設定のまま修正が入ることで、読み書き処理で予期しないエラーが発生しやすくなるため、変更点と運用ルールを共有し、Unicode移行の方針を揃えることが大切です。
3.1. Unicode対応の具体的変更点
Unicode導入の大きな利点は、世界中の文字を一つの体系で扱えることです。近年のAutoCADではUnicode対応が進み、AutoLISPもUnicodeを前提に運用できる場面が増えています。
ただし、Unicode対応の範囲は環境設定(例:LISPSYS)にも影響されます。そのため「2026で最適化された」と断定せず、移行時にはソースをUTF-8で保存して文字化けが起きないか、日本語パスや文字列を含む処理が想定どおり動くかを実機で確認することが安全です。旧バージョンで作成したプログラムが文字化けする場合でも、ソースコードのエンコードをUTF-8に変更することで解決することがありますので、早めの確認が有効です。
また、日本語処理では半角と全角の扱いなど、細かな差異が出る可能性もあります。たとえば文字数カウント処理では、旧仕様と結果が異なる場合があるため、修正の際には十分なテストを行うことが重要です。
ファイル名やパスに日本語を含めるケースも多いですが、Unicode対応の強化により、以前より扱いやすくなることが期待できます。過去にファイル名の文字化けで問題があった場合は、移行後に改善する可能性があるため、テスト環境で事前に確認しておくと安心です。
3.2. 実務での注意点
移行後はUnicode前提で動作確認を行う姿勢が重要です。まずソースコードの文字コードをUTF-8に統一し、ファイル入出力で文字化けが起きないかを確認します。特に日本語ファイル名や日本語文字列を含むスクリプトは、読み書きのテストを重点的に行い、旧ANSI前提のコードが混在していないかも点検します。
海外メンバーと共同作業を行う場合は、相手側の環境も考慮が必要です。半角カタカナや特定の文字が正しく扱えない可能性があるため、複雑な文字の使用を避けるなど、運用上の注意を揃えておくことが有効です。
最後に、Unicode前提のコードは将来のAutoCAD仕様変更にも対応しやすいとされています。今後のアップデートとの相性も考え、Unicode前提での運用を継続できる形に整えていくことが望まれます。
■ Unicode移行で影響が出やすいポイント
| 観点 | 典型的な症状 | 確認すべきこと |
| 日本語パス | ファイルを認識できない | 日本語パスでの実機テスト |
| 日本語コメント | 文字化け | UTF-8保存に統一 |
| 文字列処理 | 文字数結果が異なる | テストデータで比較検証 |
| チーム編集 | 環境ごとに動作差 | エディタ設定の統一 |
4. SECURELOADと信頼パスの設定

AutoCAD 2026の大きなテーマの一つが「AutoCADのセキュリティ強化」です。なかでもAutoLISP実行時に影響を受けやすいのが、SECURELOADとTRUSTEDPATHSの仕組みです。これらは外部から読み込むLISPファイルの安全性を確保するための機能で、設定が適切でないと「読み込めない」というエラーの原因になります。
実務でよくあるのは、「新しい環境に移行したら、これまで動いていたLISPが突然ブロックされる」というケースです。多くの場合、SECURELOADの値が高めに設定されているか、読み込み先フォルダがTRUSTEDPATHSに登録されていないことが原因です。セキュリティ対策としては重要ですが、仕組みを理解していれば多くのトラブルは回避できます。
AutoCAD 2026および2026ベース製品では、PROJECTAWARE=1のときSECURELOADは読み取り専用となり、値は2に固定されます(信頼する場所以外からの読み込み制限が強制されやすい状態になります)。まずはPROJECTAWARE/SECURELOAD/TRUSTEDPATHSをセットで確認することが確実です。移行後に警告やブロックが増えた場合は、SECURELOADとTRUSTEDPATHSを確認しましょう。新しいフォルダを追加する際は、安全性を確認したうえで適切にTRUSTEDPATHSへ登録します。
■ 設定の関係整理
- PROJECTAWARE = 1
→ SECURELOADが読み取り専用になりやすい - SECURELOAD
→ TRUSTEDPATHSを参照して読み込み可否を判断 - TRUSTEDPATHS
→ 「信頼する場所」のみ登録する
以下のポイントを押さえれば、セキュリティを確保しつつ必要なAutoLISPスクリプトを問題なく読み込めます。トラブル発生時は、まずこれらの設定を確認するのが近道です。
4.1. SECURELOADの基本と動作レベル
SECURELOADは、AutoCADがLISPファイルなどを読み込む際の安全性を制御するシステム変数です。値は0~2の範囲で設定でき、数値が大きいほど制御が厳しくなります。
たとえばSECURELOADを2に設定すると、TRUSTEDPATHS(信頼する場所)に登録されていない場所からの読み込みが制限されます。フォルダが適切に登録されていない場合、警告やブロックが発生しやすくなります。新しく入手したLISPや自作スクリプトでも、保存場所が登録されていなければ警告が表示されます。
一方で、リスク回避のためにSECURELOADを0にすると、どの場所からでもスクリプトを読み込めるため危険です。企業ネットワークや外部ファイルを扱う環境では、SECURELOADを適切に設定し、不審なファイルを事前にブロックする仕組みを活用するほうが安全です。
このように、動作レベルは利便性と安全性のバランスを考えて選ぶ必要があります。信頼できるファイルはあらかじめ設定を整え、AutoCADの安全機能を有効に活用しましょう。
4.2. TRUSTEDPATHSとの関係
TRUSTEDPATHS(信頼する場所)は、「このフォルダ内のスクリプトは安全である」とAutoCADに認識させる機能です。SECURELOADが有効な環境では、信頼する場所に登録されていないフォルダからの実行は基本的に制限されます。
TRUSTEDPATHSには、信頼するフォルダをセミコロン区切りで登録します。※TRUSTEDPATHSは「信頼する場所(Trusted Locations)」の指定であり、サポートファイル検索パスとは目的が異なります(SECURELOADはTRUSTEDPATHSを参照して読み込み可否を判断します)。
状況によっては、設定の読み取り専用化やPROJECTAWAREによる補助設定が関係することもあります。ネットワークドライブ上の共有フォルダを利用する場合は、社内で安全が確認されたフォルダのみに限定することで、ウイルスやマルウェア混入のリスクを抑えられます。
この仕組みはAutoCAD LTの特性とも関連します。LT版ではAutoLISPの対応状況が一部異なりますが、安全性を確保する考え方は共通しています。どのエディションでも、ファイルの保存場所や読み込み権限に注意が必要です。
一見手間に感じるかもしれませんが、TRUSTEDPATHSを適切に運用すれば動作は安定します。不要な警告が減り、必要なAutoLISPだけを安全に実行できるため、特に企業環境では重要な要素といえます。
4.3. 「読み込めない」時の確認ポイント
移行直後や新しいファイルを入手した際に「読み込めない」というエラーが出ることは珍しくありません。まずはSECURELOADやTRUSTEDPATHSの設定を確認しましょう。パスの入力ミスや、異なるPCでネットワークパスを参照しているなど、わずかな違いが原因になることもあります。
次に、AutoCAD LT 2026のAutoLISP制限を理解しているか確認してください。LT版ではフルバージョンと比べ、ActiveXに制限があるなどAutoLISP機能に差があります。そのため、対応していない関数を使用していると、読み込み以前に動作しない場合があります。
さらに、セキュリティソフトやOSのフォルダ権限など、AutoCAD以外の要因も考慮が必要です。外部サイトからダウンロードしたLISPファイルは、OS側でブロックされることがあります。属性を解除し、安全性を確認してから使用しましょう。
最後に、AutoCAD 2026の互換性の観点から、過去バージョン専用のスクリプトでないかも確認します。複数環境で動作検証を行うことで、原因を早期に特定しやすくなります。
読み込めない場合のチェック項目
- SECURELOADの値を確認
- TRUSTEDPATHSに対象フォルダが登録されているか
- パスの誤記(全角/半角・区切り記号)
- LTの場合:ActiveX依存(vl-load-com等)の有無
- OSやセキュリティソフトによるブロックの確認
5. AutoCAD LT 2026でのAutoLISP対応
AutoCAD LTは、いわゆるLight版として、コストを抑えつつ2D設計に特化した機能を提供する製品です。長年、「LT版でAutoLISPは使えるのか?」という点は多くのユーザーの関心事でした。AutoCAD LT 2026では、基本的なスクリプトをある程度実行できるようになった一方で、依然として一部機能には制限があります。
■ LT版でのAutoLISP利用の目安
| 区分 | 内容の目安 |
| 動作する可能性が高い | 図面内で完結する軽量処理(レイヤー操作、寸法、簡易編集) |
| 制限される可能性が高い | 外部アプリ連携(ActiveX/COM、vl-load-com利用) |
特に注意すべきなのは、ActiveXを利用した拡張スクリプトです。AutoCAD LTでは、Excel/Wordなど外部アプリ側のActiveX(タイプライブラリ)連携はサポートされていません。そのため、外部アプリ連携を前提に(vl-load-com)を使用したり、外部COMを操作する目的のスクリプトは、LTでは期待どおりに動作しない可能性が高くなります(※AutoCAD内部で完結する処理は別途検証が必要です)。一方、図面の読み込みや寸法調整、レイヤー操作程度であれば実行可能な場合もあります。
そのため、作成・入手したAutoLISPファイルがActiveX依存かどうかを早い段階で確認することが重要です。依存している場合は、フル版へ切り替える、代替関数を検討するなど、実務上の運用方法を見直す必要があります。
このようにLT版の特性を理解すれば、作業効率化に活用することは可能です。LTでも動作する軽量なスクリプトを使えば、コストを抑えながらAutoLISPの活用範囲を広げることができます。
5.1. LT版でのAutoLISPの利用について
以前は「LT版ではAutoLISPは使えない」という認識が一般的でしたが、現在はバージョンによって対応範囲が異なり、用途によっては限定的に利用できるケースがあります。たとえば、カスタムマクロから簡易処理を呼び出したり、バージョンによっては純粋なLISP関数のみ利用できる場合があります。
ただし、過度な期待を持つのではなく、自身の業務内容を整理し、「必要な関数がLT環境で動作するか」を見極めることが重要です。複雑な3D操作や外部アプリ連携が必要であれば、フル版AutoCADの利用が現実的です。
また、公式ヘルプやフォーラムで最新情報を定期的に確認しておくと、自分の環境でどこまで対応できるか判断しやすくなります。LT版も年々改良されており、AutoCADの環境変化に合わせて仕様が更新されているため、古い情報とは状況が異なることもあります。
クライアントがLT版のみを使用しており、AutoLISPスクリプトを配布する場合は、事前に十分なテストを行い、「実行可能な部分」と「制限される部分」を明確にしておくことが大切です。
5.2. 制限事項と実務上の注意点
AutoCAD LTの特徴として、一部の開発機能が制限されている点が挙げられます。ActiveXの制限やVBA連携不可などがあり、短く単純なコードでも内部で特殊な関数を呼び出している場合は動作しないことがあります。
よくあるトラブルは、ActiveXオブジェクトを使用するスクリプトをLT版で実行しようとするケースです。図面属性を外部ファイルへ書き出す、他アプリケーションと連携するといった機能は、基本的にフル版AutoCADでのみ対応可能です。
実務では、大規模プロジェクトを外注や社内共同で進める場合、誰がフル版を使い、誰がLT版を使うかを早めに決めておくことが重要です。スクリプトの互換性を事前に確認しておかないと、「想定どおりに動かない」という問題が後から発生する可能性があります。
それでも、AutoCAD LT 2026で対応可能なAutoLISPの範囲内で活用できる作業はあります。作図や寸法入力の効率化、既存ファイル構成の整理などには十分役立てることができるでしょう。
6. AutoCAD WebでのAutoLISP実行

AutoCAD WebではLISPファイルを扱うことは可能ですが、デスクトップ版と同等に動作する前提で設計するのは安全ではありません。Web版はサーバーベースで動作し、PC依存の機能や一部拡張機能には制限があります。
■ Web版運用の基本方針
- 公式情報で対応範囲を確認する
- プラットフォーム非依存のAutoLISPに限定する
- 小規模スクリプトで段階的に検証する
という手順が現実的です。
特にファイル入出力や外部連携処理は制約が多く、大規模な自動化やActiveXを利用する処理はデスクトップ版に依存します。Web版は軽度な編集や補助的な自動化に留めるのが適切です。
今後のアップデートで機能拡張の可能性はありますが、現時点では「簡易作業はWeb」「高度な処理はデスクトップ」という使い分けが実務的です。
6.1. Web版でできること
AutoCAD Webはクラウド上で動作するため、インストール不要でどの端末からでも図面を開けるという利点があります。軽度な編集や寸法確認が可能で、外出先での急なチェックやレビューに適しています。
AutoLISPの観点では、Web版は利用できる機能に制約があるため、プラットフォーム非依存のAutoLISPを前提に考える必要があります。コマンドプロンプト経由で実行できる範囲の処理(オブジェクト作成・編集・情報取得など)であれば、小さなスクリプトから検証し、適用範囲を見極めるのが安全です。
一方で、ファイル入出力や外部アプリケーション連携には制約が多いのが現状です。活用する際は「Webでできること」と「デスクトップでしかできないこと」を切り分ける意識が重要です。
AutoCAD 2026の互換性という観点でも、ブラウザ環境向けの最適化は進行中です。今後の拡張に備え、公式サイトや開発ブログで最新情報を確認することが有効です。
6.2. デスクトップ版との違い
デスクトップ版はローカル環境にインストールして使用するため、フル機能を利用できる反面、マシンスペックの影響を受けたり、バージョンアップ時に個別の更新作業が必要になります。一方、Web版はサーバー側でバージョン管理が行われるため、常に最新状態を保ちやすいのが特徴です。
AutoLISPの観点で比較すると、デスクトップ版ではActiveXやObjectARXヘルプを参照しながら高度なスクリプトを作成できますが、Web版では制限が多く、一部の関数や外部連携機能が未対応です。大規模な自動化や外部リソースを利用する処理には、デスクトップ版が現実的です。
また、保存方法も異なるため、ローカルフォルダやネットワークドライブ上のLISPファイルをWeb版で直接扱うのが難しい場合があります。クラウドストレージの活用やアップロードなど、作業フローの工夫が求められます。
結果として、AutoCAD WebでのAutoLISPは補助的な位置づけと考えるのが適切です。軽量スクリプトの実行にとどめ、開発や本格的なテストはデスクトップ版で行う運用が一般的です。
6.3. 実務での使い分け
実務でどちらを使うかは、社内ルールやプロジェクト規模、チームのスキルに応じて判断します。現場での簡単な寸法修正であればWeb版で十分対応できますが、大規模な自動処理が必要な場合はデスクトップ版が前提となります。
特にAutoLISPの変更点の検証やデバッグは、Web版では制限により詳細が確認しづらい場合があります。そのため、テストから本番まで効率よく進めるには、従来どおりデスクトップ版を利用するほうが確実です。
将来的にWeb版の機能拡張が進み、ブラウザ上で高度なLISPが実行できる可能性もあります。時期は不明ですが、アップデート情報を継続的に確認し、早めに検証環境を整えることが重要です。
最終的には、両者の違いを理解したうえで場面ごとに使い分けることが最適です。出先での小規模作業はWeb、社内での本格作業はデスクトップという運用が現実的です。
7. AutoLISP移行チェックリスト
■ AutoLISP移行チェック(2026向け)
| 項目 | 目的 | まず行うこと |
|---|---|---|
| Unicode | 文字化け防止 | UTF-8統一+日本語パステスト |
| SECURELOAD | 読み込み制御確認 | 値の確認 |
| TRUSTEDPATHS | 信頼場所整理 | 必要最小限登録 |
| ActiveX依存 | LT/Web対策 | vl-load-com等の有無確認 |
| Web利用 | 適用範囲整理 | 軽量スクリプト検証 |
AutoCAD 2026へ移行するにあたり、重点的に確認すべき項目をリスト化しました。特にUnicode関連の修正や、セキュリティ設定に漏れがないかを把握することが重要です。
以下の項目を参考に、移行前のコード点検や設定確認を行ってください。早い段階で問題を見つけられれば、修正や復旧にかかるコストを抑えられます。
このチェックリストは基本項目を整理したものです。独自プログラムを多用している場合は、追加で確認すべき点が出てくる可能性もあります。ただし、まずは共通の基準として活用することで、AutoCAD 2026との互換性に対する不安を軽減できるはずです。
実務では、チームメンバーや外注先にもこのリストを共有し、移行作業を円滑に進められる体制を整えることが効果的です。
7.1. Unicode前提コードの確認
後から発生しやすい文字化けやファイルパスエラーを防ぐため、ソースコードや保存ファイルの文字コードが統一されているか確認します。
ANSIやShift JISなどの旧形式が混在していないか、過去バージョンで作成したLISPをそのまま使用していないかを重点的にチェックしてください。
保存形式をUTF-8に変更し、文字列リテラルやコメントに日本語を含む場合は、正しく表示されるかテストすることが重要です。
また、チーム内で使用するテキストエディタが異なる場合にも注意が必要です。利用環境を把握し、設定を統一しましょう。
7.2. SECURELOAD設定の確認
外部ファイル読み込み時のセキュリティレベルを把握するため、システム変数SECURELOADの値を確認します。
プロジェクト全体で推奨設定を決め、厳しすぎて動作しない、あるいは緩すぎてリスクが高い状態にならないように管理しましょう。
動作確認の際は、SECURELOADを一時的に1や2に設定してテストする方法も有効です。読み込めない原因が設定にあるかどうかを切り分けやすくなります。
正式運用時には、不要な場所からのLISP実行を許可しないようにすることも忘れないでください。
7.3. TRUSTEDPATHSの確認
TRUSTEDPATHS(信頼する場所)の登録状況を整理しておくと、後の混乱を防げます。
特にネットワークドライブを指定する場合は、フルパスで正しく登録されているか、メンバー全員にアクセス権があるかを確認してください。
読み込みエラーが出るLISPファイルは、そのフォルダがTRUSTEDPATHSに登録されていないケースが多く見られます。適切に追加設定を行うことで解決することも少なくありません。
また、セキュリティの観点から、不要なフォルダを増やさず、本当に必要な場所だけを登録することも重要です。
7.4. ActiveX依存の有無の確認
AutoCAD LTの特性でも触れたように、LT版ではActiveXに制限があるため、スクリプトが正常に動作しないことがあります。
フル版を使用している場合でも、将来のアップデートでActiveX関連仕様が変わる可能性があるため、該当処理がないか確認しておきましょう。
(vl-load-com)などの関数を使用している場合、ActiveXを利用している可能性が高いです。代替方法がないか検討することも一案です。
外部アプリ連携を多用している場合は、AutoCAD WebやLT版との違いを理解しておかないと、移行時に支障が出る可能性があるため注意が必要です。
7.5. Web利用予定の有無の確認
AutoCAD Web版の機能は拡張されていますが、デスクトップ版との違いは依然として大きいのが現状です。
プロジェクトの一部をWebで行う予定がある場合は、対応関数のみで構成した軽量スクリプトを別途用意する方法も考えられます。
たとえば、レイヤー制御のみを行う補助的なLISPを準備しておけば、外出先や急な修正時にWeb版でも活用できます。
Webとデスクトップを完全に同一にすることは難しいため、「Webで行う作業」と「デスクトップで行う作業」をあらかじめ分けておくことが重要です。
8. まとめ|AutoLISPの今後と持続可能性
AutoCAD 2026では、後方互換の方針を維持しながらも、Unicode対応やセキュリティ強化の影響により、設定や運用ルール次第で挙動に差が出る場面があります。将来の方針はアップデートによって変わる可能性があるため、移行時には現行バージョンの公式ヘルプや開発者向け情報をもとに、動作条件を確認することが重要です。
ActiveXの制限やWeb版対応など、エディションごとの違いも確実に存在します。大規模なプロジェクトに着手する前に、使用するエディションや必要な機能を整理し、想定される課題を事前に確認しておく姿勢が求められます。
また、AutoCADの仕様変更履歴を継続的に確認することで、影響を受けやすい関数や新機能を早期に把握し、自身のプログラムへ反映しやすくなります。その積み重ねが、変更への柔軟な対応と作業効率の維持につながります。
最後に、本記事で整理したAutoLISP移行のポイントを、チームや外注先とも共有してみてください。情報を共有することで移行時のトラブルを抑え、プロジェクト遅延のリスクを減らすことができます。AutoCADの定期アップデートを正しく理解しながら、継続的で安定したCAD運用を目指していきましょう。
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❷BIMを活かすためのツール紹介
❸DXレポートについて
❹建設業界におけるDX
<参考文献>
AutoCAD 2026 Developer and ObjectARX ヘルプ | 概要 - AutoLISP の互換性 | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/OARX/2026/JPN/?guid=GUID-31FD1A96-C002-434E-8684-63D50BE0CF94
AutoCAD 2026 ヘルプ | SECURELOAD (システム変数) | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/ACD/2026/JPN/?guid=GUID-541566C6-2738-49DD-87C3-C1490E924A02
Autodesk Developer Blog : Working with Unicode Text: Reading from and Writing to Files
https://blog.autodesk.io/working-with-unicode-text-reading-from-and-writing-to-files/
Autodesk Developer Blog : AutoCAD Web:AutoLISP 機能
https://blog.autodesk.io/autocad-webautolisp-capabilities/
AutoCAD LT 2026 ヘルプ | 関連する開発者リファレンス(AutoLISP) | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/ACDLT/2026/JPN/?guid=GUID-7884190F-4603-4E9F-8FB3-0D683BD7C4C9
