ジェネレーティブデザインによる構造最適化とは?仕組み・進め方・活用事例を解説
1. はじめに
製造業の設計では、さまざまな要件を同時に満たすことが求められます。例えば自動車部品やロケット部品では、軽量化と強度の両立が必要になる場面も少なくありません。従来は、設計者が形状を検討して荷重解析を行い、その結果をもとに修正を重ねる作業が一般的でした。しかし近年では、ジェネレーティブデザインと呼ばれるAI設計の手法を活用する動きが広がっています。
ジェネレーティブデザインを使うと、設計目標や制約条件に基づいて複数の設計候補を生成し、それぞれを比較検討できます。Fusionでは、構造荷重や拘束条件、材料、製造方法などを設定し、条件に応じた設計候補を生成できます。構造性能だけでなく、材料や製造方法も考慮しながら複数の候補を探索できる点が特徴です。
本記事では、ジェネレーティブデザインと構造最適化の関係について解説します。さらに、Fusionの実例を挙げながら、設計自動化の流れや活用事例を具体的に紹介します。ジェネレーティブデザインを設計プロセスの効率化や製品開発のスピード向上にどのように活用できるのか、理解を深める参考にしてください。
2. ジェネレーティブデザインによる構造最適化とは

引用:https://www.autodesk.com/jp/design-make/articles/generative-design-in-manufacturing
2.1. ジェネレーティブデザインの基本
ジェネレーティブデザインとは、コンピューターを用いて設計目標や制約条件を設定し、複数の設計案を自動生成する考え方です。従来の設計では、設計者が一つずつ形状を作成し、強度や製造性を確認しながら設計を進めていました。一方、ジェネレーティブデザインでは、設定された目標を満たす形状を探索します。
Fusionのジェネレーティブデザインでは、質量の最小化や剛性の最大化といった目標を設定でき、安全率や質量目標、変位などに制限を設けることも可能です(参照*1)。こうした設計条件に加えて荷重や拘束条件などを設定しながら、目的に応じた設計候補を探索します。
設計者だけでは発想しにくい革新的な形状が生まれることもありますが、コンピューターはあくまで設計候補を提示する役割を担います。最終的な適用可否を判断するのは人間であり、CAE解析や実験評価を組み合わせながら、より適した設計へと近づけていきます。
2.2. 構造最適化の概要
構造最適化とは、構造部品の重量や剛性、強度などの性能を、設定した目的や制約条件に応じて最適化する設計手法です。シェイプ最適化やトポロジー最適化も関連する手法であり、荷重や拘束条件などを考慮しながら、目的に適した構造や形状を検討します。
構造最適化の目的は、軽量化だけではありません。例えば、騒音や振動の低減など、別の性能を重視する場合もあります。目標が明確であれば、「材料を削減しながら所定の変形量を守る」「製造方法を考慮しながら強度を高める」といった形で、設計条件を設定できます。こうした柔軟な最適化プロセスは、製造業における設計品質や製造性の向上につながります。
少し難しく感じるかもしれませんが、重要なのは荷重や拘束条件などを適切に設定することです。これらの条件をもとに最適化を行い、目的に適した構造や形状を検討していきます。
2.3. ジェネレーティブデザインと構造最適化の結びつき
ジェネレーティブデザインでは、構造性能だけでなく、材料や製造工程に関する条件も考慮できます。Fusionでは、積層造形、フライス加工、2軸切削、鋳造などの製造方法と、それぞれの製造拘束を指定できます(参照*2)。製造方法によって異なる条件を設定することで、実際の製造プロセスを考慮した設計候補を探索できます。
構造最適化とジェネレーティブデザインは密接に関連していますが、同じ概念ではありません。Fusionのジェネレーティブデザインでは、構造性能に関する条件に加えて、複数の材料や製造方法を設定し、それぞれの条件に応じた複数の設計候補を探索・比較できます。そのため、構造最適化を活用しながら、より幅広い条件から設計候補を検討する手法の一つとして捉えると分かりやすいでしょう。
さらに、Fusion 360では複数の設計案を比較しやすいため、設計候補の生成から評価までをスムーズに進められます。製造方法の違いに応じた形状パターンを比較しながら、より適した設計を検討できる点も大きな特長です。
3. Fusionでのジェネレーティブデザインの進め方

引用:https://www.autodesk.com/jp/design-make/articles/generative-design-in-manufacturing
Fusionでジェネレーティブデザインを進める際は、設計条件を設定したうえで候補を生成し、比較・検証していきます。基本的な流れは次のとおりです。
- 設計対象と設計空間を準備する
- 構造荷重を設定する
- 構造拘束を設定する
- 設計基準と製造方法を設定する
- 設計候補を生成・比較する
- 設計を調整・検証する
3.1. 設計対象と設計空間の準備
ジェネレーティブデザインを行う前に、まずCAD上で設計対象となる部品モデルを用意します。続いて、ジェネレーティブデザインで使用するデザインスペースを設定し、最終形状に含める「保持ジオメトリ」や、材料を生成しない「障害物ジオメトリ」などを指定します。
具体的には、ボルト穴などの接続部分で形状や寸法を維持する必要がある箇所を保持ジオメトリとして設定し、部品や工具などとの干渉を避けたい領域は障害物ジオメトリとして設定します。こうした事前の整理は、生成される形状を適切な範囲に収めるために重要です。
設計対象の用途を理解し、どの部分を保持し、どの領域に材料を生成しないのかを整理することが、ジェネレーティブデザインを進めるうえで重要です。
3.2. 構造荷重の設定
次に、構造荷重を設定します。Autodeskによると、Fusionでは荷重を定義することで、設計対象が耐える必要のある押す、引く、ねじるといった力をシミュレーションできます。また、荷重はジェネレーティブスタディの設計要件の重要な要素であり、生成される結果の最終形状にも影響します(参照*3)。
そのため、実際の使用環境を想定し、荷重の向きや大きさを適切に設定することが重要です。複数の使用状況が想定される場合は、それぞれを荷重ケースとして設定します。
一つの条件だけを設定するのではなく、実際に想定される複数の使用状況を考慮することが重要です。設計案を比較する際にも、どのケースで大きな負荷がかかるのかを把握しやすくなります。
3.3. 構造拘束の設定
構造拘束は、設計対象がどのように固定されるのかを定義する設定です。Fusionでは、固定、ピン、摩擦なし、リモート拘束などを設定でき、荷重が加わった際のモデルの動きを制限できます。Autodeskは、構造拘束についてもジェネレーティブスタディの重要な設計要件であり、生成結果の最終形状に影響すると説明しています(参照*4)。
Fusion 360では、設計対象をどのように固定するかを指定できますが、固定しすぎたり、反対に固定が不足したりしないよう注意が必要です。例えば必要以上に固定すると、実際の取り付け状態とは異なる動きとなり、力の伝わり方が不自然な解析結果になることがあります。
部品の実際の取り付け方を確認しながら設定することで、誤った条件を設定するリスクを抑えられます。拘束条件を適切に設定することが、ジェネレーティブデザインを有効に活用するうえで重要です。
3.4. 設計基準と製造方法の設定
設計基準では、質量の最小化や剛性の最大化などの目標を設定し、安全率や質量目標、変位などの制限を指定します。こうした設計基準は生成される結果に影響するため、設計要件に合わせて適切に設定することが重要です。
また、Fusionでは、積層造形やフライス加工、2軸切削、鋳造などの製造方法を指定できます。製造方法ごとに必要な条件を設定することで、それぞれの製造プロセスを考慮した設計候補を探索できます。
構造性能だけでなく、実際に採用する製造方法も考慮して候補を比較することで、設計要件に適した案を検討しやすくなります。
3.5. 設計候補の生成と比較
条件の設定が完了したら、コンピューターによる設計候補の生成を実行します。複数の設計候補が生成され、質量、最大Von Mises応力、最小安全率、最大変位などの指標を確認できるため、それぞれを比較しながら適した方向性を見極めます。
一度に多くの候補が生成される場合もあります。そのため、すべてをそのまま採用するのではなく、数値指標だけでなく、形状の実用性や製造時のトラブルのリスクなど、複数の視点から評価することが大切です。
Fusion 360では、候補ごとに形状と数値パラメータを確認できます。結果を視覚的に把握しやすい一方で、実用に適さない形状が含まれる場合もあるため、必要に応じて候補を絞り込んでいきましょう。
3.6. 設計の調整と検証
最後に、生成した設計案の中から候補を選び、詳細なCAE解析やプロトタイプ製作などによる検証を行います。ジェネレーティブデザインの結果をそのまま採用するのではなく、設計の方向性を検討するための候補として活用することが大切です。
例えば、周辺部品とのクリアランスを確認したり、振動特性を改めて解析したりするなど、最終的な安全性や品質を確保する作業は設計者が担います。設計自動化は、あくまで設計候補を見つける段階を支援する手段です。
こうしたプロセスを踏むことで、複数の設計案を効率よく検討できるようになり、製品開発全体のスピード向上やコスト削減、市場での競争力向上につながります。
4. ジェネレーティブデザインとシェイプ最適化の違い
ジェネレーティブデザインと混同されやすい概念に、シェイプ最適化があります。Autodeskによると、Fusionのシェイプ最適化では、指定した拘束と荷重に基づいて部品の剛性を最大化し、その結果を設計改善のガイドとなる3Dメッシュとして利用できます(参照*5)。また、最適化結果だけでは荷重によって生じる応力を確認できないため、静的応力スタディなどを用いて、設計が動作荷重に耐えられることを確認する必要があります。
両者の主な違いを整理すると、次のとおりです。
| 比較項目 | シェイプ最適化 | ジェネレーティブデザイン |
| 主な考え方 | 荷重や拘束を考慮して形状を最適化する | 設計条件に基づいて複数の設計候補を探索する |
| 設計候補 | 最適化結果を設計の参考にする | 複数の候補を生成・比較する |
| 材料 | 設定した材料をもとに検討する | 複数の材料を含めて検討できる |
| 製造方法 | 製造方法の比較を主目的としない | 製造方法を考慮して候補を探索できる |
このように両者には違いがありますが、得られた形状をさらに解析・調整し、最終的な設計につなげる点は共通しています。どちらの場合も、安全性や製造性の要件を満たしているかを検証し、最終的な判断や必要な調整を設計者が行うことが重要です。
5. ジェネレーティブデザインによる構造最適化の活用事例
5.1. General Motors:シートブラケットの事例
General Motorsは、Autodeskとの共同プロジェクトでシートブラケットの再設計にジェネレーティブデザインを活用しました。Autodeskによると、150以上の設計候補が生成され、その中から従来のシートブラケットより40%軽量で20%高強度の設計が選ばれています。さらに、従来8つの部品で構成されていたシートブラケットを1つの部品に統合しました(参照*6)。
この事例は、強度と軽量化を考慮しながら複数の設計候補を探索し、さらに部品の統合につながる設計を検討したジェネレーティブデザインの活用例として参考になります。
5.2. 九州大学:ロケット部品の事例
九州大学の学生による宇宙開発プロジェクトPLANET-Qでは、Fusionを活用してロケットの設計・解析・製造に取り組んでいます。2024年のロケットではジェネレーティブデザインを使って燃料バルブシステムを再設計し、バルブユニットを約6kgから約2kgへ軽量化しました。さらに、フレーム単体では約100gから19.8gへと約80%軽量化しています(参照*7)。
PLANET-Qはマッハ域への到達と高度10kmを目標としており、その実現には推力向上と大幅な軽量化の両方が必要とされています。ジェネレーティブデザインによる燃料バルブシステムの再設計は、ロケットの軽量化に取り組んだ具体的な事例です。
この事例から、ジェネレーティブデザインは自動車部品だけでなく、ロケットのように軽量化が重要となる設計にも活用されていることが分かります。
5.3. Volkswagen:自動車部品の事例
Volkswagen Group of Americaは、強度を維持しながら車両の重量と材料を削減する方法を検討するため、ジェネレーティブデザインを活用しました。Fusion 360を使って複数の製造方法を検討しながらホイールの設計を進め、最終的にホイール重量を18%削減しています(参照*8)。
構造上の要件だけでなく、実際の製造方法も考慮しながら設計候補を検討した、ジェネレーティブデザインの活用事例です。
Volkswagenの事例は、自動車部品の軽量化と材料削減を目的として、ジェネレーティブデザインを活用した具体的な事例として参考になります。
5.4. Evolve:電動ハイパーカー部品の事例
Evolveは、電動ハイパーカーの部品設計において、CNCフライス加工を考慮したジェネレーティブデザインを活用しました。強度、性能、剛性などの要件に加え、CNC加工に適した条件を設定して設計候補を検討し、最終的な部品は従来の設計から40%軽量化されています(参照*9)。
この事例から、ジェネレーティブデザインは積層造形だけでなく、CNC加工を前提とした設計にも活用できることが分かります。
このように、電動ハイパーカーの部品設計においても、ジェネレーティブデザインを活用して軽量化と製造条件を考慮した設計が行われています。
ここまで紹介した4つの活用事例を整理すると、次のとおりです。
| 事例 | 設計対象 | 主な成果・特徴 |
| General Motors | シートブラケット | 150以上の設計候補を生成し、従来比40%軽量・20%高強度の設計を選定。8部品を1部品に統合 |
| 九州大学 PLANET-Q | ロケット部品 | バルブユニットを約6kgから約2kgへ軽量化。フレームは約100gから19.8gへ軽量化 |
| Volkswagen | ホイール | 複数の製造方法を検討し、従来のホイールから18%軽量化 |
| Evolve | 電動ハイパーカー部品 | CNCフライス加工を考慮した設計により、従来設計から40%軽量化 |
6. ジェネレーティブデザインによる構造最適化のメリット

ジェネレーティブデザインによる構造最適化のメリットは、軽量化や材料削減だけではありません。設定した荷重や拘束条件、設計目標などに基づいて複数の設計候補を生成できるため、人間だけでは発想しにくい形状も含めて比較検討できます。
また、積層造形や切削加工、鋳造などの製造方法を考慮した設計候補を探索できる点も特徴です。重量や強度、安全率などの指標を比較しながら、構造性能と製造性の両面から適した案を検討しやすくなります。
7. 構造最適化にジェネレーティブデザインを活用する際の注意点
7.1. 適切な荷重・拘束条件の設定
まず押さえておきたいのが、実際の使用環境に即した荷重や拘束条件を設定することです。入力する条件が現実と大きく異なっていると、得られる設計結果の信頼性も低くなってしまいます。
実際の使用環境に合わせて複数の荷重条件を設定し、取り付け方法も正確に反映したうえで解析を行う必要があります。条件設定を誤ると適切な設計案が得られないだけでなく、その後の検証で大きな手戻りが発生する可能性があります。
7.2. 生成された形状の検証
ジェネレーティブデザインで生成された形状を、そのまま量産に使用するのは避けましょう。設計者が内容を確認し、追加の解析や試作による検証を行うプロセスが重要です。
例えば、応力集中が生じていないか、振動特性に問題がないかなど、CAE解析や試作品のテストを通じて細部を確認します。設計者が解析結果や実際の挙動をもとに調整し、製品として成立する状態まで仕上げることが必要です。
7.3. 製造可能性の確認
設計案の比較で良好な数値を示していても、必ずしも現場で簡単に製造できるとは限りません。例えば複雑に入り組んだ形状の場合、切削加工では工数や工具コストが増加する可能性があります。
量産規模や工作機械の性能、材料費などを考慮しながら、全体としてメリットがあるかを見極めることが欠かせません。製造可能性を十分に確認しないと、実際の製造段階で新たな問題が生じる場合があります。
7.4. 設計者の役割の理解
ジェネレーティブデザインは万能な解決策ではなく、あくまで設計候補の幅を広げるための手段です。コンピューター上で得られた候補を適切に評価し、必要に応じて方向を修正するには、設計者の知見が欠かせません。
つまり、「AI設計があれば、人間の仕事が不要になる」というわけではありません。設計者の判断力や発想力、これまでの経験を組み合わせることで、製品開発におけるジェネレーティブデザインの効果をより活かせるようになります。
8. まとめ
ジェネレーティブデザインは、荷重や拘束条件に加え、製造方法や材料なども考慮しながら、最適化された複数の設計候補を生成するAI設計手法です。構造最適化と深く関わりながら、より幅広い条件を考慮して設計を検討できる点が特徴です。
General Motorsや九州大学、Volkswagen、Evolveなどの事例からも分かるように、軽量化と強度の両立など、設計最適化におけるさまざまなメリットが示されています。ただし、最終的な判断は設計者が行うため、生成された結果を検証し、必要に応じて調整することが欠かせません。
今後、CADやCAE技術がさらに発展することで、ジェネレーティブデザインを活用した製品開発はより身近になるでしょう。設計工程の効率化や製品性能の向上を図るための手段として、ジェネレーティブデザインの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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<参考文献>
(*1)Fusion ヘルプ | 設計基準 | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/fusion360/JPN/?guid=GD-DESIGN-CRITERIA
(*2)Fusion ヘルプ | [ジェネレーティブ デザイン]作業スペースで製造方法を指定する | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/fusion360/JPN/?guid=GD-SPECIFY-MFG-METHOD
(*3)Fusion ヘルプ | [ジェネレーティブ デザイン]作業スペースの構造荷重 | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/fusion360/JPN/?guid=GD-STR-LOADS
(*4)Fusion ヘルプ | [ジェネレーティブ デザイン]作業スペースの構造拘束 | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/fusion360/JPN/?guid=GD-STR-CONSTRAINTS
(*5)Fusion ヘルプ | シェイプ最適化スタディ | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/fusion360/JPN/?guid=SIM-SHAPE-OPTIMIZATION
(*6)General Motors | Generative Design in Car Manufacturing | Autodesk
https://www.autodesk.com/customer-stories/general-motors-generative-design
(*7)Kyushu University | Autodesk Fusion | Autodesk
https://www.autodesk.com/customer-stories/kyushu-university-story
(*8)Volkswagen | Generative Design For Auto Lightweighting | Autodesk
https://www.autodesk.com/customer-stories/volkswagen-generative-design
(*9)Evolve | Generative Design | Autodesk
https://www.autodesk.com/customer-stories/evolve
