ジェネレーティブデザイン(Generative Design)とは?新たなAI活用の可能性を解説
AIの登場は人間のクリエイティブな仕事を奪うと危惧されていますが、実際のところはむしろクリエイティブの可能性を広める技術としても注目されており、正しい使い方を実践すれば強力なツールになることは間違いありません。
この記事ではそんなAIのクリエイティビティと共存するためのアプローチとして期待される、ジェネレーティブデザイン(Generative Design)の概要について、事例やソフトと合わせて紹介します。
目次:
- ジェネレーティブデザイン(Generative Design)とは
- ジェネレーティブデザインを採用するメリット
- ジェネレーティブデザインとトポロジー最適化の違い
- ジェネレーティブデザインを採用した事例
ジェネレーティブデザイン(Generative Design)とは
ジェネレーティブデザインは、人間がAIを使ってクリエイティブなアイデアを実現するためのアプローチの一種です。具体的には開発者が専用のソフトを用意し、設計要件を入力することでその要件を満たすいくつかのアイデアをAIに生成してもらうという設計手法となっています。
高度なプロダクトデザインを実施する場合、細かな要件が非常に具体的に定められているため、従来であれば設計者がその制限を踏まえてデザインアイデアを捻り出す必要がありました。
一方でジェネレーティブデザインにおいては、設計に関する要件をソフトに入力するだけで、AIが自動的にその要件を満たすデザインを複数検討し、短時間で生成してくれます。
高度なデザインを生み出すためには、複数のアイデアから最適なものを採用しなければなりません。
ジェネレーティブデザインにおいては複数のアイデアを瞬時に形にしてくれるので、開発者はその中から最適なデザインを選ぶことができます。
自らの手で修正するだけで要件を満たす、優れたプロダクトデザインを提出することが可能になるのです。
ジェネレーティブデザインはすでに複数の業界で採用されており、自動車や航空・宇宙など、最先端の研究開発が求められる現場でも成果を残しています。
ジェネレーティブデザインを採用するメリット
ジェネレーティブデザインを実装することで得られる具体的なメリットとしては、
- 大幅な生産性の向上につながる
- デザインコストの削減につながる
- 独創的なデザインを生み出せる
- 人材育成に貢献する
といったものが期待できます。順にその内容を見ていきましょう。
大幅な生産性の向上につながる
ジェネレーティブデザインの採用は、従来の設計デザイン業務に比べてはるかに高い生産性をもたらしてくれます。
厳しい要件を満たしたデザインの検討や具体化には、多くの時間や人手を必要とすることもあります。しかしジェネレーティブデザインの環境を整備すれば、大半の業務をコンピュータに任せ、人間はそこから最適なデザイン案を選び、簡単な修正を加えるだけで業務を完結できるでしょう。
また、デザインのパターンも必要に応じて実質無数に生成することができるので、アイデアが枯渇してしまうようなこともありません。デザインを具体的にするための多くの手間をAIが担当してくれるため、スピーディな業務遂行が実現するでしょう。
デザインコストの削減につながる
ジェネレーティブデザインの導入によって、生産性が向上するだけでなく、将来的なデザインコストの削減にも役立ちます。
ジェネレーティブデザインを実現するためには、専用の環境整備が必要にはなるものの一度導入してしまえば人件費の大幅な削減につながります。短時間で多様なアイデアを生み出し、製品に落とし込めるので、残業や複数のデザイナーや技術者の雇用に発生するコストを解消できるからです。
安価に質の高いデザインを生産する上では、ジェネレーティブデザインは不可欠な取り組みと言えるでしょう。
独創的なデザインを生み出せる
ジェネレーティブデザインは要件に則っているアイデアをただ生み出すだけでなく、時として人間が思い付かないようなデザインを生み出してくれることもあります。
どのようなデザインが生み出されるかは実際にタスクを与えてみるまでは分かりませんが、これまでの常識を覆すようなアイデアが生まれる可能性も十分にあるため、ユニークなアイデアが生まれず悩んでいる場合にも効果的です。
人材育成に貢献する
ジェネレーティブデザインの優れている点として、人材育成に貢献できる技術であることが挙げられます。
設計に当たっては簡単な数値入力を行うだけで実行でき、高度なアイデアを次々と生み出すことが可能です。生まれたデザイン案からどれが最もプロジェクトに適しているのか、何を修正すればより最適化が進むのかといった審美眼を磨くことにつながります。
ジェネレーティブデザインとトポロジー最適化の違い
ジェネレーティブデザインと似たような概念として、トポロジー最適化と呼ばれるものがあります。これはすでに作成した設計データをコンピュータに読み込ませ、要件に応じて不要な要素を自動で排除してくれるという技術です。
設計データの最適化につながるこの技術は、コンピュータの力でデザインを行うという点ではジェネレーティブデザインと同様ですが、アプローチの面で違いがあると言えるでしょう。
ジェネレーティブデザインはそもそもの設計データ作成をゼロから実行してくれる技術である一方、トポロジー最適化は既存の設計データをブラッシュアップするものだからです。
それぞれの技術では、活躍するシーンが微妙に異なる点を理解しておきましょう。
ジェネレーティブデザインを採用した事例
実際にジェネレーティブデザインを現場に採用している有名な事例としては、以下の2つの事例が挙げられます。
エアバス社
ドイツの航空機メーカーであるエアバス社のケースが挙げられます*1。同社では旅客機内のパーテーションデザインの刷新においてジェネレーティブデザインを採用し、従来の設計手法とは離れた独創的なデザインを実現することに成功しました。
従来のパーテーションよりも大幅に軽量化が行われたことで旅客機そのものの軽量化が実現したのはもちろん、従来通りの十分な強度を保ち、それでいて取り付けも簡素化されるという、次世代技術の導入に成功しています。
アンダーアーマー社
スポーツメーカーとして日本でも名高いアンダーアーマー社では、ジェネレーティブデザインと3Dプリント技術を掛け合わせた新しいスニーカーの開発を行っています*2。クッション機構に樹木の構造を取り入れたいというアイデアを形にすべく、要件をソフトに入力し、最適化されたデザインを生成することに成功しました。
結果、クッション性や安定性に優れた全く新しい構造を持つスニーカーの開発を実現するなど、抽象的なアイデアを具体化するような使い方にも対応していると言えます。
まとめ
この記事では、ジェネレーティブデザインとはどのような技術かを解説しながら、事例にも触れつつこのハイテクが持つ可能性について紹介しました。
ジェネレーティブデザインにはクリエイティブな仕事を奪う懸念もありますが、事例からもわかるように、正しく運用することで従来の工法や発想にはない、新しい創造的アプローチをサポートしてくれる技術であると言えます。技術を最大限活かすための使い方を検討し、現場への導入を進めましょう。
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出典:
*1 Autodesk「エアバスのジェネレーティブ デザイン」
https://www.autodesk.co.jp/customer-stories/airbus
*2 Autodesk「アンダーアーマーのジェネレーティブデザインと3Dプリントによる変革 」
https://www.autodesk.com/jp/design-make/articles/3d-printed-shoes-jp