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ジェネレーティブデザインとは 建設分野における活用事例を紹介

次々と登場するコンピューターを活用した設計プロセスのひとつが、ジェネレーティブデザインです。
建設分野においても設計者を助ける優れた手法として注目を集めています。
ジェネレーティブデザインは、設計者の工数を大きく削減できる可能性を秘めた設計手法です。
2024年の時間外労働の上限規制適用を控えている今、押さえておくべき設計プロセスといえるでしょう。

そこで、この記事ではジェネレーティブデザインとは何かについて解説します。
また、建設分野における活用事例も紹介するので、ぜひご覧になってみてください。

ジェネレーティブデザインとは

それではさっそくジェネレーティブデザインとは何かについてみていきましょう。
どのように活用したら設計の効率化や高品質化に繋がるかをイメージしてみてください。

ジェネレーティブデザインの特徴

ジェネレーティブデザインとは、コンピューターに設計目標・機能・空間条件・材料・製造方法・コストなどの条件を与え、数百、数千個の設計案を作らせる設計プロセスです1。 ジェネレーティブデザインでは、設計者がプロトタイプとなる設計案を提示する必要がありません2。
そのため、設計者が基本設計を行う前の最初期から導入できることが大きな特徴です。

従来のプロセスでは、設計条件をまとめたあと、スケッチや模型、3Dモデルなどを大きな労力をかけて作成し、比較検討を行っていました。
ジェネレーティブデザインでは、いくつもの案をスケッチでひねり出すことなく、考えうる設計案をコンピューターが提示してくれます。

設計者の設計に対するアプローチが大きく変わる革新的な設計プロセスといえるでしょう。

ジェネレーティブデザインのメリット

ジェネレーティブデザインには、さまざまなメリットがあります。
ここでは、建設業において効果が大きい3つを紹介します。

設計の質の向上*3

ジェネレーティブデザインでは、コンピューターの力で数百~数千個もの設計案を作成・評価・改良し、設計の質の向上に役立てることができます。

従来は設計者のマンパワーや想像力の問題から、多くても数十個の提案が限界でした。
ジェネレーティブデザインを使えば、簡単により多くの選択肢を作る出すことができ、幅広い選択肢からよい案を選べます。
また、それぞれの設計案の評価を高速で行えるのも特徴です。
空間の利用の仕方、コミュニケーションの取り方、光・空気環境、外部環境との関わり方などをグラフやイメージで効率的に評価できます。

従来の手法では時間がかかっていた単純作業をコンピューターで高速処理できるのもジェネレーティブデザインの魅力のひとつです。
設計者はその時間をクリエイティブな時間にあてることができます。
たとえば、階段の仕様が法基準に適合しているかのチェックはコンピューターに任せ、ホールの演出などに集中できるようになるでしょう。
設計者の時間を作るという観点からも、ジェネレーティブデザインは質の向上に貢献するといえます。

コストの削減*2

ジェネレーティブデザインでは、最適化設計によるコストの削減が期待できます。
数多くの設計案の中から必要な材料が少ない案を選択できるからです。
空間構成とあわせて評価することで、コストパフォーマンスを重視しながら良質な空間を演出できるでしょう。

材料が少ない案を採用することによるメリットは、コストの削減だけではありません。
軽量化による耐震性の向上、CO2排出量の削減など、さまざまな効果を期待できます。
近年は、建築主が巨大地震や、環境配慮設計、サステナブル建築に大きな関心を持っているケースが増えています。
これらの関心に対して説得力のある回答を用意できることは、設計者としての強みになることでしょう。

今までにないデザインの創出

ジェネレーティブデザインでは、従来よりもはるかに多くの設計案を生み出す中で、今までにないデザインが創出されることがあります*3。
設計者のプロトタイプを必要とせず、与条件から設計案を生み出すジェネレーティブデザイン特有の強みといえるでしょう。
このような新しいデザインの評価・改良を繰り返すことで、最適な設計に近づくことが可能です。

また、ジェネレーティブデザインはオープンイノベーションに適しています*2。
クラウド上で扱うジェネレーティブデザインを多くの設計者や技術者に公開すれば、さまざまなアイディアが生まれます。
ときにはお互いの技術をコラボレーションさせて新たな技術に繋げることも可能です。
世界全体の技術革新に貢献する技術といえるでしょう。

建築分野におけるジェネレーティブデザインの活用事例

ここからは、建設分野におけるジェネレーティブデザインの活用事例を紹介します。

オートデスク社のオフィス・研究所の設計*3

オートデスク社は、トロントのオフィス・研究所の設計にジェネレーティブデザインを取り入れています。
ジェネレーティブデザインができるソフトウェアを提供するオートデスク社が、自ら新たな設計プロセスを実践したプロジェクトです。

当プロジェクトの特徴は、仕事用スペース、アメニティスペース、情報交換スペース、専用オフィスといった要素で構成される10,000通りの設計案を作成していることです。
これらの案を評価・発展させ、6つの設計目標を達成する最適な設計を選び出しています。
ここで、6つの設計目標とは、仕事のスタイルの好み、デスクの配置の好み、気が散る要素の抑制、互いのやり取りのしやすさ、採光、外の眺めです。
仕事のスタイルと場所の好みは社員からデータを収集し、評価に役立てています。

この手法により、設計者と建物利用者が建物の機能やプロジェクトの目的について話し合うことが可能になったとされています。
また、設計の意図をオープンにすることで使用開始後のモニタリングができるようになり、次の設計に向けた“生の声”の収集ができているのがメリットです。

大和ハウス工業の集合住宅の計画*4

大和ハウス工業は、工業化住宅を得意としています。
コア事業である戸建て住宅の設計の自動化は難しいとされるなか、ジェネレーティブデザインとの出会いで光明がみえたとのことです。

同社は、前述したオートデスク社のトロントオフィス・研究所の設計手法を参考に、狭い土地における良質な開発を支援するシステムを開発中です。
このシステムの狙いは、営業・設計の両面にあるとしています。

営業面のメリットは、営業担当者がシステムを自分で操作して結果を出力できるようになることで、クライアントに早く設計案を提示できることです。
従来は設計案の提示に最大5営業日程度が必要でしたが、よりスピーディーな対応が可能になります。

設計面のメリットは、オーソドックスなプランに加え、意外性のあるプランを提示できることです。
デザインに慣れると整形な建物を設計しがちですが、ジェネレーティブデザインでは建物が敷地に対して斜めに配置されるようなひと味違ったデザインが生まれます。
このような意外なデザインもジェネレーティブデザインによる面白い効果であるとしています。

また、クライアントの要望に応えられない場合に、設計案を手軽に作成して説明できるのもメリットとのことです。
従来は問題点を口頭で説明するだけでしたが、設計案を使って問題点を説明することで、納得感に繋げられるだろうとしています。

大和ハウス工業は、2019年の大型台風の被災地における応急仮設住宅の建設にもジェネレーティブデザインを取り入れており、先進的な設計プロセスが注目を集めています*5。

おわりに

近年、ジェネレーティブデザイン、トポロジー最適化、生成AIといった新しい設計手法が注目を集めています。
なかでも、ジェネレーティブデザインはケーススタディの質を向上させる設計プロセスです。
設計の基本ともいえる比較検討を助けるプロセスなので、ぜひ使ってみてください。

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*1
(参考) AUTODESK「ジェネレーティブデザイン」
https://www.autodesk.co.jp/solutions/generative-design
*2
(参考AUTODESK「 ジェネレーティブデザインとは?その全容と製造における活用方法・事例」
https://www.autodesk.com/jp/design-make/articles/what-is-generative-design-jp
*3
(参考) AUTODESK「ジェネレーティブデザインの本質に迫る P.4~6」
https://bim-design.com/uploads/AEC_Generative_Design_eBook.pdf
*4
(参考) AUTODESK「集合住宅の計画にジェネレーティブデザインを活用する大和ハウス工業の先進的な取り組み」
https://www.autodesk.com/jp/design-make/articles/daiwa-house-generative-design-jp
*5
(参考)大和ハウス工業株式会社「設計革命の先駆者であれ」
https://www.daiwahouse.co.jp/innovation/soh/vol11/

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