SOLIDWORKS SimulationXpressで十分?シミュレーション機能を比較
1. はじめに
製品開発において、設計の初期段階で部品の構造や強度を素早く評価できることは、開発の効率化や品質の向上に直結する重要な要素です。たとえば、初期段階で問題の兆候を発見し、早期に修正できれば、余分な試作や設計手戻りを防ぐことができ、コスト削減にもつながります。
しかしながら、市販されている構造解析ツール(CAEツール)は種類も多く、それぞれ解析精度・対応対象・使いやすさに違いがあるため、「自社の業務にどのツールが最適か」が判断しにくいという声は少なくありません。
その中で注目されるのが、SOLIDWORKSに標準搭載されている無料の解析機能「SimulationXpress」と、より本格的な解析が可能な有償版「SOLIDWORKS Simulationシリーズ(Standard、Professional、Premium)」の違いです。
SimulationXpressは追加ライセンスなしで使える簡易的な構造解析機能ですが、実際の業務において「この機能だけで十分か?」「どのタイミングで上位版が必要になるか?」という判断が重要になります。必要以上のコストをかけずに設計業務を最適化するには、それぞれの機能と制約を正しく把握しておくことが欠かせません。
本記事では、「SimulationXpressで何ができて、何ができないのか?」という視点から、その基本機能の解説と上位版との比較を行い、どのようなタイミングでより高度なシミュレーション機能の導入を検討すべきか、またSimulationXpressが特に効果を発揮するシーンはどこかを、実務に即した視点で整理していきます。
機械設計や製品開発、または新しい材料や構造の初期検証を担当する設計者・エンジニアの方にとって、本記事がシミュレーションツール選定の一助となれば幸いです。
2. SimulationXpressの概要と基本機能
引用:SOLIDWORKSヘルプ:https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/cosmosxpresshelp/c_Overview_of_SOLIDWORKS_SimulationXpress.htm
SimulationXpressは、SOLIDWORKSに標準で搭載されている構造解析ツールです。言い換えれば、CAE(Computer Aided Engineering)ツールの入門機能として位置付けられており、単純な部品の静的解析を行うことで、開発初期段階における簡易的な強度チェックに適しています。
このツールの大きな利点は、SOLIDWORKSを日常的に使っている設計者や開発担当者が、CAEに関する専門的な知識がなくても、直感的に応力の評価ができる点にあります。解析の自由度がある程度制限されている代わりに操作はシンプルで、短時間で解析結果にたどり着けるのが特徴です。
さらに、SimulationXpressは追加ライセンスを必要とせず、SOLIDWORKSを所有していればすぐに利用できるため、初期投資を抑えたい企業やチームにも導入しやすい環境が整っています。新たな材料の基本的な強度特性を確認したり、設計案の大まかな問題点を素早く洗い出すといった用途で、十分に活躍する機能です。ただし、シミュレーションの機能範囲は限定的であるため、自社の設計要件に適合するかどうかは、事前の確認が不可欠です。
この章では、SimulationXpressの主要な特徴について、「静的解析の基本的な仕組み」と「ユーザーインターフェースの使いやすさ」という2つの視点から、具体的に解説していきます。
2.1. 何ができる?基本的な静的解析の紹介
SimulationXpressの中心的な機能は、部品を対象とした線形静的解析です。有限要素法(FEM)を使って、応力や変形量、安全係数といった情報を数値およびグラフィカルに表示することが可能です。
この機能によって、例えばブラケットやフック、支持金具のような比較的シンプルな部品に対して、設計した形状がどの程度の荷重に耐えられるかを簡単にチェックできます。使用環境が限定される状況下で、数十〜数百Nクラスの荷重に対する強度確認を行うには十分な機能といえるでしょう。特に設計初期の段階では、ざっくりとした目安を把握する目的に適しています。
ただし、解析可能なのはあくまで静的かつ線形の条件に限られます。つまり、材料が大きく変形するようなケースや、衝撃・振動といった動的な条件下での解析には対応していません。さらに、材料が塑性域に達するような非線形な特性や、疲労や温度変化といった影響を加味した解析もサポートされていないため、こうしたケースに対応するには、上位のSimulation StandardやProfessional、Premiumといったライセンスの導入が必要になります。
一方で、SimulationXpressに搭載されている簡易的な構造評価の仕組みは、設計チームの誰でも手軽に扱えるという点で、大きな利点です。複雑なメッシュ制御や境界条件の詳細設定といった要素はほとんど不要であり、SOLIDWORKS上でのCAD操作の延長として解析作業を行える点が、現場での使いやすさを高めています。
2.2. ユーザーインターフェースと操作の容易さ
SimulationXpressの操作画面は、SOLIDWORKSの既存UIと統一感があり、メニューからSimulationXpressを起動するだけで、ウィザード形式の操作ガイドがスタートします。解析に必要な手順が順を追って表示され、「拘束条件を設定してください」「荷重を設定してください」といった案内に沿って進めることで、初めて解析ツールを使う人でも迷わず操作できる設計になっています。
必要な操作ステップが最小限に絞られているため、モデル作成後にすぐ解析を行い、応力の集中しやすい箇所や変形の程度をその場で把握できるのは、実務上大きなアドバンテージです。設計→チェック→修正のサイクルが短くなり、作業効率の向上につながります。
ただし、UIが簡素であることは一長一短でもあります。操作が簡単な分、設定できる解析条件や対象は限定されており、アセンブリ解析や複数の拘束条件を含む複雑な状況には対応できません。この点は「専門的なCAEツール」というより、「設計者が初期段階で軽く試すための解析補助機能」としての役割を意識すべきです。
そのため、SimulationXpressは「できるだけ簡単に」「短時間で」「誰でもすぐに使える」ことを重視する現場に向いています。たとえば、専門部署に依頼するほどではないけれど、設計者がざっくりと強度確認したいという状況では、非常に効率的な選択肢といえるでしょう。
3. 上位版SOLIDWORKS Simulationとの機能比較
SimulationXpressと、SOLIDWORKS Simulationの上位版(Simulation Standard、Simulation Professional、Simulation Premium)とでは、対応できる解析の範囲や対象、分析の深さに明確な違いがあります。この章では、それぞれの機能の差を「解析の種類」「拘束や荷重条件の柔軟性」「結果出力と分析手法」の3つの観点から詳しく比較し、導入判断の材料になる情報を整理します。
上位版を導入する際に考慮すべきなのは、解析対象の複雑さや精度への要求、そして解析結果をどのように活用したいのかという点です。複雑な解析が可能になる一方で、習熟に時間がかかる場合もあるため、目的とリソースのバランスを見極めることが大切です。
また、社内の稟議や予算承認を通すうえでも、機能差が具体的にどう成果につながるのかを説明できることが重要です。この章では、SimulationXpressで不足する部分を可視化し、上位版でどのように補えるのかを明らかにしていきます。
3.1. 解析の種類と対象の違い
SimulationXpressでは、単一のソリッドボディ部品を対象に、線形静的解析のみを実行できます。これは、材料が弾性範囲内で荷重に反応し、変形が小さいことを前提とした解析であり、形状が単純で明確な応力状態を持つ部品には適しています。
一方、Simulation Standard以上の上位版では、アセンブリ構造全体に対して解析を行うことが可能です。さらに座屈解析や固有値解析、動的モーションの検証など、解析手法の幅が大きく広がります。
Simulation Professionalでは、熱伝導や振動、疲労といったより現実的なシナリオへの対応が可能となり、Simulation Premiumでは、非線形材料の挙動や複合材料の応力評価、時間依存のダイナミクスまで解析範囲が拡張されます。たとえば、温度変化による構造の変形や、繰り返し荷重による材料疲労といったテーマは、SimulationXpressでは対応できない領域です。
設計が複雑化し、応力が集中するような部位を高精度に把握したい、もしくは実運用に近い負荷条件を模擬したい場合には、SimulationXpressでは不十分であり、上位版の導入が強く求められます。解析の目的が明確になれば、どのレベルのシミュレーション機能が必要かを判断しやすくなるでしょう。
3.2. 拘束と荷重条件の適用範囲
SimulationXpressでは、拘束条件は「完全固定」のみで、荷重の種類も基本的には「力」や「圧力」に限定されます。このため、現実の製品に見られるような複雑な支点の挙動や、熱・振動などの影響を組み合わせたシナリオには対応できません。
たとえば、部品の一部がローラーやピンで支持されている構造や、ねじれや回転を伴う荷重がかかる設計、摩擦やすきまを伴う接触面など、現実的な設計状況を再現するには、より柔軟で詳細な条件設定が必要になります。
上位版では、これらの複雑な拘束や荷重条件を細かく設定することができ、トルクや温度、接触条件(固定/滑り/すきまあり)なども正確に再現できます。たとえばボルト締結部の荷重伝達や、接触する板金部品のすきま・滑り挙動といった細部の力学的影響を捉えることが可能です。
そのため、複数の部品が連携して力を受ける構造や、精密な動作を求められる製品設計においては、SimulationXpressの機能では再現が難しく、上位版での解析が必要不可欠になります。設計要件を再現するにはどこまでの自由度が必要かを見極めることが、適切なツール選定につながります。
3.3. 結果表示と詳細な分析オプション
SimulationXpressでは、出力される解析結果は主に「応力分布」「変位量」「安全係数」に限られており、表示もシンプルです。メッシュの制御や結果のカスタマイズ性はほとんどなく、あくまで「ざっくり確認する」ための設計支援ツールといえます。
それに対して上位版では、より多面的な評価が可能です。たとえば、X・Y・Z方向の変位量を個別に評価したり、応力の種類(主応力、ミーゼス応力など)を切り替えたり、さらに応力の履歴やひずみの分布まで詳細に確認することができます。
また、カスタマイズ可能な解析レポートの自動生成や、結果のアニメーション表示、複数の解析結果の横並び比較なども可能となり、設計案の妥当性をチーム内で検証する際にも大きなメリットがあります。これにより、設計レビューの質が上がり、意思決定のスピードも向上します。
SimulationXpressでは得られない深い洞察を得られるという点で、上位版の分析機能は設計最適化の取り組みを強力に後押ししてくれます。応力の数値を知るだけでなく、その原因や改善案まで導き出すには、より高度な可視化と分析手法が必要になる場面が多く存在します。
4. SimulationXpressが適している使用シナリオ
ここまでSimulationXpressの機能と制限について整理してきましたが、機能が限定的だからといってSimulationXpressが不要なツールであるわけではありません。むしろ、使い方次第では非常に効果的に活用できるケースも数多く存在します。特に、構造が比較的単純で使用環境が限定されている部品や、設計初期段階での仮説検証を重視する設計フローでは、SimulationXpressの利便性が際立ちます。
たとえば、「まずは社内で簡単に確認したい」「厳密な解析は外注する予定だが、その前に基本的な強度を把握しておきたい」といったニーズは少なくありません。重要部品だけを重点的にチェックし、それ以外は設計者レベルで簡易的に確認するスタイルは、業務効率の面でも理にかなっています。
また、製品開発の初期フェーズでは、アイデアの妥当性をざっくりと確認し、必要があれば早めに修正に着手することが、後工程の負担を減らす鍵となります。SimulationXpressは、そうした「スピード感」と「コスト意識」を両立した判断支援ツールとしての役割を果たすことができるのです。
この章では、SimulationXpressが実務で特に効果を発揮しやすい2つの典型的なシナリオを取り上げ、それぞれの活用イメージを具体的にご紹介していきます。
4.1. 単純な部品の解析に最適
SimulationXpressが最も効果を発揮するのは、シンプルな形状で負荷のかかり方も明確な部品を対象とした設計検証です。たとえば、L字金具や支柱ブラケット、カバー部品といった単体構造の部品であれば、想定荷重に対して十分な強度があるかどうかを素早くチェックすることができます。
特に設計者が「この厚みで本当に大丈夫だろうか?」と感じたとき、CADでモデルを作成した直後にSimulationXpressで応力状態を可視化すれば、過剰設計や強度不足といった問題に早い段階で気づくことが可能です。安全係数の視覚化によって、判断が感覚に頼らず、数値に基づいたものになるのも大きなメリットです。
また、大規模な製品では部品数が多くなるため、すべての部品に対して詳細な解析を行うのは非現実的です。そうした場面では、SimulationXpressを使って多数の部品を効率的にスクリーニングし、重要度の高い箇所のみを上位版や外部CAEツールで精査するという分業スタイルも非常に有効です。
このように、構造が単純で、応力状態の複雑性が低く、主に静的荷重の評価が目的である場合には、SimulationXpressだけで十分な効果が得られるケースが多く見られます。簡易チェックを積極的に取り入れることで、全体としての設計精度とスピードをバランス良く両立させることができます。
4.2. 設計初期の迅速なフィードバックに
製品開発において、初期段階での問題発見がいかに重要かは、設計現場で働く多くのエンジニアが実感していることと思います。設計が進んだ後の修正は、図面変更や部品再製作、工程見直しなど多くのコストと時間を要するため、なるべく早い段階で設計上の弱点を把握しておくことが、プロジェクト全体の成功に直結します。
SimulationXpressは、操作がシンプルで解析までのステップが少ないことから、「とにかく早くチェックしたい」という状況に非常に適しています。特別なトレーニングを受けなくても使えるため、CAE専任者に依頼するまでもなく、設計者自身が短時間でおおよその強度状況を確認することが可能です。
また、新しい材料の導入検討や、既存部品の代替設計といった場面でも、まずはSimulationXpressを使って初期の傾向を掴み、「使えそうかどうか」をすばやく判断することができます。仮に問題が見つかれば、その段階で上位のSimulation機能や他のCAEツールでより詳細な検証に進めばよく、開発リソースの無駄を避けられます。
アイデア段階の構造や仕様を「ざっくり評価する」ためのツールとしてSimulationXpressを活用することで、試作前の設計リスクを早期に洗い出すことができ、開発全体のスピードアップにも貢献します。上位版が不要なケースにまで高機能なツールを適用するのは、コスト面で過剰投資になりがちであり、SimulationXpressとの使い分けを意識することが実務的には非常に有効です。
5. 上位版の導入を検討するタイミング
引用:SOLIDWORKSヘルプ:https://www.solidworks.com/ja/media/solidworks-simulation-datasheet
SimulationXpressは、軽量かつ直感的に使える解析ツールとして多くの場面で活用できますが、実務が高度化するにつれて「このツールでは不十分ではないか」と感じる場面も出てきます。部品設計がシンプルな段階を超え、複雑な条件下での構造評価や、設計精度をさらに高めたいといったニーズが生まれてきたときには、より高機能な解析ツールへの移行を検討すべきタイミングです。
本章では、SimulationXpressからSimulation Standard、Professional、Premiumといった上位バージョンへのステップアップを検討する際に着目すべき具体的な状況を2つに分類して解説します。それぞれの導入判断には、開発コスト、試作の手間、人材の技術レベルといった複数の要素が関係します。投資対効果を見極めるうえでも、どのような局面で上位版の価値が発揮されるかを把握しておくことは重要です。
また、社内でのライセンス取得やツール導入の稟議を通すためには、SimulationXpressでは対応できない課題と、上位機能によって得られる具体的なメリットを整理して説明できることが求められます。この章で示す判断基準を参考に、自社にとっての最適なタイミングを見極めてください。
5.1. 複雑なアセンブリや高度な解析が必要な場合
製品設計が進むにつれ、部品単体ではなく複数部品が連携する構造、すなわちアセンブリ単位での応力状態や構造全体の動作を検証する必要性が高まってきます。SimulationXpressは単一のソリッドボディ部品しか解析対象にできないため、この段階に達した時点で機能的に限界を迎えることになります。
たとえば、ある部品が隣接する構造物とどう接触するか、複数の締結部でどのように荷重が伝わるか、構造物全体としてどこが最も弱いかといった視点での解析には、Simulation Standard以上の環境が求められます。接触解析や拘束条件の多様な設定が可能になることで、現実の組立状況により近いシナリオを再現することができるようになります。
さらに、Simulation ProfessionalやPremiumに進むことで、熱負荷や振動、衝撃といった外部環境要因、繰り返し荷重による疲労といった長期使用下の影響まで踏み込んだ解析が可能になります。これは、製品信頼性の評価において極めて重要なステップです。
こうした解析を都度外部に委託することも可能ですが、案件数が増えたり、検証頻度が高まるようであれば、社内でのCAE内製化を進めた方が長期的にはコストと時間の両面でメリットが大きくなります。特に開発スピードが求められる現場では、上位版の導入がプロジェクト全体のリードタイム短縮にもつながるでしょう。
5.2. リアルな使用条件を模倣する解析が求められる場合
製品の設計や検証において、実際の使用環境を想定した条件を再現することは非常に重要です。たとえば、自動車、航空機、産業機械などでは、設計上想定される物理的影響が複合的かつ動的に作用します。温度変化、振動、衝撃、摩擦、気圧、風圧といったさまざまな要因を組み合わせて、現実に近い条件下での耐久性や動作特性を解析できることは、品質保証の面でも不可欠です。
SimulationXpressでは、こうした複雑な使用条件を模倣するための解析機能が存在しないため、設計上のリスクを十分に把握するには不十分です。たとえば、温度上昇により変形が生じる可能性、衝撃荷重で部品が破損するリスク、摩耗による部品劣化などの検討が必要な場合には、Simulation ProfessionalやPremiumの導入を前提とした体制構築が必要となります。
また、物理的な試作を最小限に抑え、仮想的に検証と改良を繰り返す“バーチャルプロトタイピング”の考え方を導入する企業にとっても、SimulationXpressでは限界があります。上位版を活用すれば、各種物理影響を加味した解析を繰り返し実行でき、試作の手戻りやコストの削減、そして市場投入までのリードタイム短縮といった面で大きな成果が期待できます。
たとえば「熱と振動が同時にかかる状況で安全性を確保したい」「異なる材質同士の接触状態を正確に再現したい」といった高度な要求が現場から出ている場合には、それはSimulationXpressの限界点を示すサインです。こうしたニーズが明確になった段階こそが、上位版への移行を本格的に検討すべき適切なタイミングといえるでしょう。
6. まとめ:あなたのニーズに最適な選択を
本記事では、SOLIDWORKSに標準搭載されているSimulationXpressの特徴と制限、そして上位版であるSimulation Standard、Professional、Premiumとの機能差を比較し、それぞれの導入判断に必要な視点を整理しました。
改めて要点を振り返ると、SimulationXpressはあくまでも単一部品の静的解析に特化した簡易ツールであり、アセンブリの構造解析や、振動・衝撃・熱などの動的な物理現象、さらには非線形材料の評価や接触条件の詳細な再現には対応していません。
それでも、設計初期段階で部品に対するおおまかな応力傾向や強度バランスを把握するには十分な機能を持っており、CAD操作の延長で解析を試せる手軽さは、設計プロセスのスピードと効率を大きく高める武器となります。SimulationXpressは、必要最小限の投資で設計品質の底上げを図りたい場合において、非常に価値ある選択肢となるでしょう。
一方で、設計がより複雑化し、より現実的な条件下での構造・性能検証が必要となる段階においては、上位版Simulationの導入を前向きに検討すべきです。部品間の接触関係や複数荷重の同時作用、材料特性の変化や長期耐久性評価など、精度と信頼性を要求される解析を内製化したい場合には、上位版の機能が持つ分析力と柔軟性が不可欠となります。
たとえば、新規採用材料の性能を熱や繰り返し荷重の観点から多面的に評価したい、あるいは実際の使用環境に近い条件でアセンブリの動作を検証したいといった要求がある場合には、SimulationXpressをステップとした上位版への段階的な移行が、最も現実的かつ費用対効果の高い選択となります。
重要なのは、解析の高度さではなく、「自社の業務にどの程度のシミュレーションが必要なのか」という現実的なニーズを基準に判断することです。無理に高機能なツールを導入する必要はありませんが、逆に機能が足りないまま業務を続けることは、品質リスクや開発効率の低下を招くおそれがあります。
本記事を通じて、SimulationXpressとその上位機能の違いを理解し、現場で求められる解析レベルと照らし合わせながら、最適な選択を考える一助としていただければ幸いです。設計精度と業務スピード、そして予算やリソースのバランスを見極めながら、長期的にメリットを得られるシミュレーション環境の整備を目指してください。
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参考情報
・SOLIDWORKSヘルプ
https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/sldworks/r_welcome_sw_online_help.htm
・SOLIDWORKS Simulation