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ST-Bridgeとは?BIMのデータ連携を変える中立フォーマットを解説

1. はじめに

建設DXが注目される昨今、設計から施工に至る建築プロジェクト全体を通じて、BIM活用をいかに高度化できるかが大きな課題になっています。特に、建築構造設計の現場では、意匠と構造をつなぐデータ連携がスムーズにいかず、CAD/BIMソフト間でのモデル整合性に苦慮するケースが少なくありません。そこで登場したのが、構造設計BIMに特化したデータ交換フォーマットであるST-Bridgeです。ST-Bridgeは「中立フォーマット」として、図面やモデル情報を各種ソフトウェア間でやりとりしやすくすることを目的に開発されましたが、近年はST-Bridge Ver.2.1.0へと進化し、IFC連携機能とも相まって建設業界内外でその存在感を増しています。

しかし、どうしてST-Bridgeがこれほどまでに注目されるのでしょうか。第一の理由として挙げられるのは、構造モデルの再入力不要というメリットにより、プロジェクトマネージャーや設計者が作業効率を格段に上げられる点です。従来のデータ連携方法では、意匠モデルを受け取った構造担当者が新たに構造モデルを作成し直すケースが多く、情報欠損や誤入力が発生しやすい課題を抱えていました。しかし、ST-Bridgeを用いれば、意匠側で作成したモデルから必要十分な構造情報を取りこめるため、データの一貫性が保たれ、品質向上につながります。

そして第二には、国際標準IFCとの親和性により、今後ますます増えるであろう海外プロジェクトや複数国のチームが関わるケースでの展開が期待できることが大きいです。IFC4対応への道筋も見据えたST-Bridgeは、構造BIMと設備、意匠モデルとの統合を目指す動きの中で、建築分野の国際プロジェクトにも広く使える可能性を秘めています。さらにbuildingSMART Japanが中心となってバージョンアップを重ねているため、国内外の製品やソフトウェアが対応しやすい仕組みが整えられていることも魅力です。

プロジェクト全体にわたる効率化を求める建設プロジェクトマネージャーにとって、データ交換フォーマットの最適化は顕在ニーズの一つです。大規模なプロジェクトを淡々と進めるだけでなく、コスト削減や品質管理面で新たな付加価値を与える潜在ニーズも高まっています。ST-Bridgeなら、構造BIMの情報をスムーズにやりとりできることで、プロジェクト全体のリードタイム短縮や各ステークホルダー間の透明性向上にも寄与するでしょう。国際標準IFCに対応したグローバルなデータ連携を実現していくためにも、ST-Bridgeの存在はこれからますます重要性を増し、構造設計の未来を切り開いていくものと考えられています。

このように、ST-Bridgeは単なるファイル形式ではなく、建設DX時代の建築構造設計を深いところで支える要となり得る技術です。次章からは、その基本概念や開発の背景、さらにIFCとの関係などを掘り下げていきます。

2. ST-Bridgeの基本概念とその目的

ST-Bridgeは、構造設計BIMの領域でデータ連携を効率化する中立フォーマットとして開発・運用されています。そもそも建築構造設計においては、解析ソフトや3Dモデル作成ソフトなど、多彩なツールを併用しながらプロジェクトを進行する必要があります。しかし、ソフトウェア間でデータ形式が統一されていないと、やむを得ず作業を繰り返すことや、情報欠落を防ぐための追加チェックに多くの手間が発生してしまいます。新しいデータ交換フォーマットであるST-Bridgeは、こうした問題を解消し、建設プロジェクトをスムーズに回すためのプラットフォームとしての役割を果たしています。

ST-Bridgeの中立性は、単に複数のCAD/BIMソフトとやり取りできるだけでなく、XML仕様を採用することでデータの可読性や拡張性を高める点にも特徴があります。特定のベンダーによる独自フォーマットではなく、誰でも参照しやすい形式を選んだことで、モデリングルールの標準化やソフトウェア開発企業による対応もしやすくなりました。こうした要素が組み合わさることで、建築業界全体におけるBIM活用の質的向上だけでなく、さらなる業務効率の飛躍が期待されているのです。

また、ST-Bridgeの策定・普及に力を入れているbuildingSMART Japanは、国際標準IFCを広く普及させてきた団体としても知られています。彼らが音頭を取ることで、国内の設計・施工・ソフト開発各社の協力体制が築かれ、最新バージョンであるST-Bridge Ver.2.1.0に至るまで持続的に改善がなされてきました。結果として、IFC4対応やさまざまな特殊構造対応にも積極的に取り組む方針が打ち出され、構造設計の未来を左右する大きな存在になりつつあります。

より具体的な思想やメリットは、以下の小見出しにて詳しく見ていきましょう。

2.1. ST-Bridgeとは何か?

ST-Bridgeとは、建築構造設計に特化したデータ連携のための中立フォーマットであり、主に意匠モデルを構造モデルに変換する際に必要な情報を正確かつ網羅的に伝えることを目的としています。建築や土木の大規模プロジェクトにおいて、多種多様なCAD/BIMソフトを利用する場合でも、ST-Bridge形式を介せば構造情報をスムーズにやり取りできるため、設計段階でのやり直しやトラブルの発生を大幅に削減できる利点があります。

たとえば、意匠設計者が作成したBIMモデルをもとに、構造担当者がST-Bridge形式でデータを取得し、同じモデルを解析ソフトへ投入するという流れが整うと、各フェーズ間のデータ整合性が保ちやすくなるのです。このようにスムーズな連携が成立すると、モデリングの再入力が不要になります。その結果、人的コストを抑えながら品質向上を図れるというメリットがあります。

さらにST-Bridgeの大きな特長の一つが、中立フォーマットを標榜しながらも、設計と解析の両面で必要とされる属性情報を詳細に扱う点です。梁や柱などの部材、荷重条件、接合部の情報など、構造設計に欠かせない要素を十分に反映できるため、後工程での情報追加や修正の手間を低減できます。これは、設計者と構造計算担当者、あるいは建設プロジェクトマネージャーが共同でモデルにアクセスし、一貫した情報を共有したいという顕在ニーズを満たす上でも大きなアドバンテージとなるでしょう。

2.2. 建築構造設計におけるST-Bridgeの役割

建築構造設計では、耐震計算や荷重解析など専門的な作業が数多く発生します。もし構造モデルが意匠モデルと切り離された状態で作成されると、新しい条件が追加されるたびにファイルを一から作り直したり、属性を手作業で入力したりする必要があり、非効率でエラーリスクも高いです。こうした状況を変革するのがST-Bridgeの主な役割です。

具体的には、ST-Bridgeを利用すると、意匠デザイナーや建築家によるBIM活用で生み出された空間情報やジオメトリを、構造計算に必要な部材情報や接合条件に適切に変換できます。バージョンアップを重ねているため、国内の主要ソフトウェアだけでなく、国際的に活用されるBIMツールに対しても柔軟な対応が可能です。これにより、国際プロジェクトへの参画時においても、国内外で利用するツールの差異を最小限に抑えられます。

またST-Bridgeは、国際標準IFCの開発方向性を意識しながら、構造BIMの部分にフォーカスして最適化されている点に大きな強みがあります。言い換えれば、IFCファイルだけでは表現しにくい構造要素や解析条件などを、ST-Bridgeが補完してくれるわけです。そのため、すでに一部でIFC連携機能との併用も進んでおり、さらにIFC4対応や、構造BIMと設備の統合を視野に入れた動向が全国的に注目されています。

2.3. 国際標準IFCとの比較

ST-Bridgeとよく比較されるのが、国際標準IFCです。IFCは建設DXの要として、意匠・設備・構造といった全分野の情報を包括的に扱おうとする規格ですが、使いこなすには各種要素の整理やソフトウェア側の実装が必要です。そして、構造設計に特化した部分まですべてカバーしようとすると、データ量が膨大になりがちで実運用における扱いの難しさも指摘されています。

一方ST-Bridgeは、構造設計BIMに照準を当てているゆえに、例えば構造解析や材料強度の設定など、より専門的な情報をきめ細かく記述する仕組みが備わっています。必要な項目を過不足なく定義しやすいという意味では、より実践的なデータ交換フォーマットと言えるでしょう。ここにIFC連携機能を組み合わせれば、外部の意匠モデルや設備モデルとの親和性を高めつつ、構造部分の情報はST-Bridgeを用いて正確に扱う、といった運用体系が可能になるわけです。

こうした点は、建築や土木のプロジェクト全体を監督する立場にあるプロジェクトマネージャーにとって魅力です。世界標準規格であるIFCを押さえながら、より専門的な構造設計情報についてはST-Bridgeを活用し、両者を連携することで、プロジェクト全体のデータ整合性と精度を一歩進めることができます。

2.4. buildingSMART JapanとST-Bridge

ST-Bridgeの策定と普及を主導しているのが、buildingSMART Japanという団体です。もともと国際的なBIM推進団体の日本支部として設立され、IFCをはじめとするオープンBIM規格の整備・普及を進めてきました。こうした取り組みの中で、構造設計BIM分野におけるデータ連携環境の進化が不可欠だとの認識が高まり、ST-Bridgeプロジェクトが推進されています。

開発プロセスでは、多くの設計会社やソフトウェアベンダー、研究機関が参加し、現場の声を積極的に取り入れながらバージョンアップを続けてきました。その成果がST-Bridge Ver.2.1.0であり、XML仕様による柔軟性やIFC連携機能の向上によって、利用者から高い評価を得ています。特に、SBDTやArchicad、GLOOBEといった主要ソフトウェアとの連携事例が示すように、国内外のツール間でのモデル連携がよりシームレスになったことは大きな進歩です。

このように、buildingSMART Japanという幅広い専門家集団がバックアップしている点は、ST-Bridgeの将来性を担保する上でも重要です。今後、新しいアップデートやIFC4対応が進むなかで、構造BIMと設備・意匠モデルとの統合がさらに強固になることが期待されています。

3. ST-Bridgeの進化:バージョンと新機能

ST-Bridgeはリリース当初から多くの設計者やエンジニアに支えられながら発展してきました。複雑な構造要素や新しい材料・接合技術にも対応できるよう、継続的にアップデートが行われてきた結果、現在ではVer.2.1.0に到達しています。特に近年は、国際プロジェクトにも対応したいというニーズや、構造設計BIMそのものが求める高度な情報連携が必要不可欠になっており、ST-Bridgeの役割はさらに大きくなりつつあります。

ここでは、ST-Bridgeのバージョン履歴と最新機能、そしてXMLベースによる柔軟性について掘り下げ、なぜこのフォーマットが建設DX時代において欠かせない存在となっているのかを明確にしていきます。

3.1. ST-Bridgeのバージョン履歴

ST-Bridgeの開発は、建築構造設計に従事する技術者の実務課題をきっかけに始まりました。初期リリースでは、梁や柱といった基本的な部材情報の連携に対応するところからスタートし、その後のバージョンアップで基礎やスラブなどの重要要素を次々に取り込み、実際のプロジェクトで使えるレベルへと段階的に改良が加えられてきました。実運用への適応を重視した結果、SBDTやGLOOBEと連携できる機能が整備され、国内の設計事務所やゼネコンでも活用が進んでいったのです。

また、近年のバージョンでは、各部材に設定される荷重条件や解析パラメータも明確に扱えるようになり、単なる意匠モデルから構造モデルへの変換にとどまらず、構造計算で発生する情報を相互に流通させる役割を担うようになりました。このような進化を経て、現在のST-Bridgeは、建築構造設計の主流BIMソフトにおけるデファクトスタンダードとして認知が高まりつつあります。

3.2. 最新バージョン2.1.0の新機能と改善点

ST-Bridge Ver.2.1.0では、より実務に即したデータ連携を可能にするための改善が多数盛り込まれています。まず大きな特徴として、国際標準IFCとの連携が一層強化され、モデル内の部材属性をより細かく同期できるようになりました。これにより、海外のソフトウェアを使うチームと国内チームが共同作業を行う国際プロジェクトでも、翻訳のような形で情報をロスするリスクが低減できるのです。

さらに、XML仕様としての拡張性が高まったことで、今後のアップデートや特殊構造対応にも柔軟に対応しやすくなりました。たとえば、従来難しかった複雑な接合部の定義や、新建材の扱いなどについても可変的に要素を追加できる改善が図られています。こうした機能向上により、設計と解析の連携フローがスムーズになり、品質向上と効率化が同時に進むことが期待されています。

3.3. XMLベースの利点と柔軟性

ST-BridgeがXMLベースを採用していることは、すなわちデータの可読性と拡張性に優れていることを意味します。XML形式であれば、人間がテキストエディタで中身を確認することが可能であり、不具合が起きた際に原因を特定しやすいというメリットがあります。また、特定のソフトウェアに依存せずに情報をやりとりできるため、ITベンダーや開発者が独自のプラグインや変換ツールを作りやすい点も見逃せません。

さらに、XMLは要素の追加・削除が比較的容易であるため、IFC4対応などの大きな更新にも柔軟に対処できます。これまでのバージョンアップでも、ST-Bridgeはユーザーの声を取り入れて多角的な拡張を実施してきました。連携ソフトの増加や処理速度の向上もXMLベースだからこそ実現しやすいと言えるでしょう。今後、構造BIMと設備モデルの統合がさらに進む中でも、XMLの柔軟性が最終的なデメリットを最小化する重要な鍵となるはずです。

4. ST-Bridgeの実用化と対応ソフトウェア

新しいデータ交換フォーマットがいくら優れていても、実務で使えるソフトウェアが少なければ普及は進みません。そこでST-Bridgeを支えてきた要素の一つが、多様な対応ソフトウェアの存在です。SBDT、Archicad、GLOOBEなど、設計事務所やゼネコン、施工会社が利用する主要なBIMツールが積極的にST-Bridgeとの連携を実装していることで、実際のプロジェクトで丁寧かつ効率的に活用できる環境が整っています。

特に日本国内では、GLOOBEのような国産BIMソフトに加え、大手設計事務所が開発するSBDTがST-Bridgeと深く結びついており、多部門とのコラボレーションを容易にしています。国際的にも利用されるArchicadが対応を進めているため、日本国外のプロジェクトとも連携が取りやすく、海外企業との協業を想定する建設プロジェクトマネージャーにとっては大きな利点となるでしょう。

5. ST-Bridgeのメリットと課題

ST-Bridgeは建設DX時代に求められる様々なニーズを満たす一方で、運用上の課題も残されています。メリットと課題を把握することで、プロジェクトマネージャーは適切な導入計画を立て、より高い効果を引き出すことができるでしょう。ここでは、そのメリットと課題を整理して解説します。

5.1. プロジェクト効率化に寄与するメリット

ST-Bridgeを採用する最大のメリットは、やはり構造モデルの再入力が不要になることでしょう。意匠モデルを基に構造要素を定義し、そのデータを解析ソフトへ流用することで、情報の重複入力を削減し、ヒューマンエラーのリスクも抑えられます。これにより、プロジェクトのリードタイムが短縮し、エラー修正のコスト削減が期待されるのです。

また、モデル連携の精度が高まることで、同じデータセットを複数の部門や協力会社と共有しやすくなります。例えば、意匠・設備・構造の各部門が共通情報を把握しやすくなるため、社内外のコミュニケーションも円滑化します。グローバルな建設プロジェクトに参加する場合であっても、国際標準IFCと併用しながらST-Bridgeを使い分ける運用により、海外チームと国内チームとの間で発生しがちなデータ変換ロスを減らせる点も大きいです。

さらに、XML仕様を採用していることから、将来的なアップデートや特殊構造対応にも柔軟に拡張できるのはメリットの一つです。たとえば、新しい建材が登場した際や、より精密な解析手法が求められるときも、ST-Bridgeファイルの項目を追加・変更することでスムーズに対応できます。これは、プロジェクト規模の拡大やニーズの多様化に備えたいプロジェクトマネージャーにとって魅力的なポイントと言えるでしょう。

5.2. 現在の課題とその解決策

一方、ST-Bridgeを実務で活用する際の課題としては、モデリングルール標準化と人材育成の問題がしばしば挙げられます。いくら優れた中立フォーマットがあったとしても、各ソフトウェアでモデルを作成する際のルールが明確でなければ、不要な属性が含まれたり、意図したとおりに属性が変換されなかったりする可能性があります。これを防ぐには、プロジェクトの初期段階で「ST-Bridge用のモデリング指針」を関係者全体で共有し、整合性のとれたデータ作成に努める必要があります。

さらに、ST-Bridgeを読み書きできる人材が十分に育っていないケースでは、運用ノウハウが偏りがちで、多忙な現場に導入しにくいという問題も指摘されています。これを解消するために、建設会社や設計事務所が合同で研修や実践Webセミナーを開く、あるいは業界団体やbuildingSMART Japanが提供するガイドラインを活用するといった具体的な施策が必要でしょう。また、特殊構造対応やIFC4対応が進む中で、ソフトウェア側の更新に追随するためにも、継続的な情報収集と学習が重要となります。

最終的には、こうした課題をクリアすることによって、ST-Bridgeのポテンシャルを最大限に引き出し、建設DXにおける効率化と高品質の両立を実現できるはずです。

6. ST-Bridgeの未来展望と国際的な活用

ST-Bridgeは国内の設計・施工業界を中心に普及が進んできましたが、今後はIFC連携機能の強化によって国外との連携が益々拡大していくと期待されています。欧米やアジア圏の大手設計・建設企業もBIM活用を推進しており、グローバルプロジェクトに参加する機会が増加するなかで、ST-BridgeとIFCの組み合わせは有効なアプローチとなるでしょう。

ここでは、将来的なアップデートや国際プロジェクトへの応用を視野に入れた展望を、具体的に掘り下げていきます。

6.1. IFCとの統合と将来のアップデート

ST-Bridgeは、国際標準IFCとどのように共存・統合していくのかが大きな焦点です。これまでにも、IFCファイルとST-Bridgeを相互変換するツール開発が進められてきましたが、今後はさらに安定した連携方法が期待されています。特にIFC4対応に関しては、構造BIMと設備モデルとの統合を図るためにも重要なポイントとなるでしょう。

ST-Bridgeという独自フォーマットが進化することで、国際市場における日本の建設会社や設計事務所の競争力が高まる可能性があります。なぜなら、IFCを補完する専用フォーマットがあれば、構造設計のより細かな部分を確実に伝えられるからです。こうした連携の充実が、混在する国際標準や複数ソフトウェアの壁を乗り越える道筋にもなり得ます。今後のバージョンアップで追加される機能や改良点は、必ずや世界各地で行われるプロジェクトでも活かされるでしょう。

6.2. 国際プロジェクトでのST-Bridgeの可能性

グローバルに展開される大規模建設プロジェクトでは、国や地域によってベースとなる言語や建築基準が異なります。しかしながら、構造計算や安全性に関わる根本的な要件は共通部分が多く、そこをデータ連携でカバーする仕組みとしてST-Bridgeは非常に有用です。

たとえば、ある国の設計チームがArchicadやRevitなどで意匠モデルを作成し、ST-Bridgeを介して日本の構造設計チームが解析や補強案を検討し、最終的にはIFCファイルに統合して全体モデルを完成させるといったワークフローが考えられます。こうした連携は、単純にファイルを交換するだけでなく、リアルタイムのコラボレーションを促進します。さらに、ST-Bridgeの/XML仕様やIFC連携機能の強化によって、今後は設計フェーズと施工フェーズの情報断絶を最小限に抑えられるようになるでしょう。

このように、ST-Bridgeは建設プロジェクトマネージャーが国際プロジェクトを効率的かつ高品質で進めるための強力なツールとして、今後ますます需要が高まると考えられます。

7. まとめ:ST-Bridgeが切り開く新たな構造設計の可能性

ST-Bridgeは、構造設計BIMの分野においてデータ連携を変革する中立フォーマットとして大きく進化し続けています。中立性と拡張性に富むXML仕様を選択したことで、建築構造設計の現場で重要となる部材情報や荷重条件、解析パラメータなどを詳細に扱うことが可能になりました。これは、構造モデルの再入力不要によってプロジェクト効率化を進めたい、あるいは大規模プロジェクトにおける品質向上を求めるという顕在ニーズに応えるだけでなく、国際プロジェクトへの対応や建設DX全般の推進という潜在ニーズにも寄与します。

さらに、ST-Bridge Ver.2.1.0においてIFC連携機能が一段と充実したことで、日本国内のみならず海外のBIMソフトウェアとの結びつきにも明るい展望が開けました。ArchicadやGLOOBE、SBDTなどの主要ソフトがST-Bridgeをサポートすることで、他分野との連携をよりシームレスに実現できるようになり、全関係者が共通のモデルを参照しながらプロジェクトを前進させられる体制が築けます。また、buildingSMART Japanが中心となってバージョン更新と周辺ツールの開発を重ねていることから、今後も特殊構造対応やIFC4対応が進むと予想されます。

こうした動きは、プロジェクトのコスト削減や納期短縮といった面で即効性を発揮するだけでなく、建設プロジェクトマネージャーのリーダーシップやチーム全体のコミュニケーションにも良い影響を与えるでしょう。最終的に、プロジェクト全体のエラーを減らすことで信頼性が高まり、より多くの案件を効率的にこなせる体制が整っていきます。持続可能性や環境配慮の観点からも、データの一貫性が高いBIMワークフローは無駄な資材や労力を削減し、よりスマートな建設プロセスを実現できます。

今後の建築・土木業界における課題としては、モデリングルールの標準化と人材育成が引き続き重要なテーマになるでしょう。しかし、これらの課題を乗り越えてST-Bridgeが普及・発展すれば、国際標準IFCとの相互補完関係が一層強まり、設計の質とスピードを同時に高める革新的な手段として定着する可能性があります。つまり、ST-Bridgeは単なるファイル形式を超えて、未来の構造設計を支える基盤技術として、国内外のプロジェクトにおいてより多くの恩恵をもたらす存在になっていくのです。

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<参考文献>

・一般社団法人buildingSMART Japan「情報連携マップ 2024」

https://www.building-smart.or.jp/wp-content/uploads/2024/07/%E6%83%85%E5%A0%B1%E9%80%A3%E6%90%BA%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%972024.pdf

・一般社団法人buildingSMART Japan「構造設計小委員会」

https://www.building-smart.or.jp/meeting/buildall/structural-design/

・一般社団法人buildingSMART Japan「ST-Bridge XML ファイル仕様書(ver.2.1) 」

https://www.building-smart.or.jp/wp-content/uploads/2023/05/ST-Bridge2.1_XML%E4%BB%95%E6%A7%98%E8%AA%AC%E6%98%8E%E6%9B%B8ver.2.1.0.pdf

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