Revitで始めるファイルベースのワークシェアリング|中央モデル運用とトラブル防止ガイド
1. はじめに
Revitでチーム設計を進めるとき、避けて通れないのが「ファイルベースのワークシェアリング」です。
同じ社内ネットワーク(LAN)上で複数人が同じプロジェクトを触る場合、中央モデルとローカルファイルをどう運用するかで、プロジェクトの安全性と効率が大きく変わります。
一方で、拠点が地理的に離れていたり、在宅メンバーが多かったりする場合は、ファイルベース方式だけでは限界が出てきます。そうしたケースでは、Autodesk Docs や BIM Collaborate Pro などのクラウドベースのワークシェアリングも含めて検討することが重要です。
本記事では、Revitのファイルベースのワークシェアリングをテーマに、
- 中央モデルとローカルファイルの基本的な考え方
- ワークセットの管理方法
- ネットワーク環境やアクセス権限の整え方
- 中央モデル破損や同期エラーを防ぐための運用ルール
といったポイントを、実務目線でわかりやすく整理します。
複数人が同時に作業する環境では、明確なルールがないと、要素の競合や同期エラーが頻発しがちです。そこで本記事では、わかりやすいフォルダ構成の例や、毎日のローカルファイル再作成(最低でも週1回の更新)といった、すぐに真似できる具体的な対策も紹介します。
リモートワークや分散型チームであっても、社内LANやクラウド環境を適切に使い分ければ、Revitで安定した共同作業を続けることができます。自社のワークフローに合ったワークシェアリング運用のヒントとして、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
2. ファイルベースのワークシェアリングとは?
ファイルベースのワークシェアリングとは、Revitで作成したプロジェクトファイル(RVT)を、LAN内の共有フォルダや社内ファイルサーバーに配置し、チーム全体でひとつの中央モデルを共同で扱う仕組みのことです。各メンバーは中央モデルを元に自分用のローカルファイルを作成し、そのローカルファイル上で作業した内容を、一定のタイミングで中央モデルに同期(Sync with Central)して反映させます。
この方式の大きなメリットは、専用のサーバーアプリケーションや複雑なシステム構成を用意しなくても、比較的シンプルな構成でRevitの共同作業環境を立ち上げられる点にあります。社内LANとファイルサーバーがあればすぐに始められる一方で、ファイルベースであるがゆえに、ネットワーク遅延への配慮やアクセス権限の設定、バックアップ運用など、いくつか守るべきルールを怠ると、モデル破損や同期エラーといったトラブルが発生しやすくなります。
また、ファイルベースのワークシェアリングを理解するうえでは、「中央モデル」「ローカルファイル」「Workset(ワークセット)」という3つの概念が中心的な役割を果たします。それぞれの役割と運用ルールを正しく理解し、LAN環境下でチームメンバー同士がスムーズにRevitの共同作業を行えるようにすることが重要です。拠点が地理的に離れている場合には、ファイルベース方式だけにこだわらず、クラウドベースのワークシェアリングとの組み合わせや切り替えも含めて、最適な運用方法を検討する必要があります。
2.1. 中央モデルの基本概念
中央モデルは、設計事務所やプロジェクトチーム全体で共有する「親ファイル」のような存在であり、Revitプロジェクトのマスターデータを担うファイルです。BIM 360やAutodesk Docsといったクラウドサービスを使わず、LAN環境や社内ファイルサーバーだけでワークシェアリングを行う場合、この中央モデルが協働作業の中心となります。
具体的には、通常の単独作業用として作成されたRevitプロジェクトを開き、Revitの「共同作業を有効化」機能を使ってワークシェアリングをオンにしたうえで、ネットワーク上の共有フォルダに「中央モデル」として一度だけ保存します。これがデータ一元管理の核となり、メンバー全員はこの中央モデルを参照・基準として作業を進めていきます。日々の編集は中央モデルに直接行うのではなく、必ずローカルファイルを介して行う、というのがファイルベース運用における基本ルールです。
中央モデルを運用するメリットは、ファイルベースでありながら、チーム全員が常に同じ最新の設計情報を共有できることにあります。一方で、誤って中央モデルをそのまま開いて編集・上書きしてしまうと、同期の仕組みが崩れたり、バックアップの整合性に問題が生じたりするリスクがあります。中央モデルは「直接触らない」ことを、チーム全体の共通認識として徹底しておくことが非常に重要です。
2.2. ローカルファイルとその役割
ローカルファイルは、各作業者が中央モデルを自分のPCにコピーして作成する「個人用のRevitファイル」であり、日常の編集作業はこのローカルファイル上で行います。中央モデルを開く際に、「このファイルをローカルとして開く」「新しいローカルを作成」といったオプションを選択するだけで、自動的にローカルファイルが生成されるため、特別な操作を覚える必要はありません。
ローカルファイルを用いる主な理由は、安全性とパフォーマンスの両面でメリットがあるからです。中央モデルを直接編集してしまうと、ネットワーク遅延が大きい環境では操作レスポンスが極端に低下したり、同期中の通信エラーやアプリケーションのクラッシュによって、中央モデルそのものが破損する危険性があります。ローカルファイル経由で作業を行うことで、実際の編集処理の多くは自分のPC上で完結し、中央モデルとは「変更点の同期」という単位でデータをやり取りできるようになります。
この同期(Sync with Central)を怠らず、一定の間隔でこまめに行うことで、他のメンバーが行った修正内容も自分のローカルファイルに取り込みやすくなり、結果として要素の競合や上書きミスを大幅に減らすことができます。ローカルファイルのサイズが大きくなりすぎたり、何日も古いまま使い続けたりすると、不具合が発生しやすくなるため、必要に応じて新しいローカルファイルを作り直す「リフレッシュ手順」を取り入れることが推奨されています。
2.3. ワークセットの重要性と管理方法
ワークセット(Workset)とは、Revitプロジェクト内の要素を論理的なグループとしてまとめ、表示・編集・所有権を管理するための仕組みです。複数人が同じモデルを同時に編集する場面では、ワークセットを上手に活用することで、「誰がどの部分を担当するのか」を明確にし、不要な競合や取り合いを防ぎやすくなります。
たとえば、意匠・構造・設備といった専門分野別にワークセットを分けたり、建物の階ごとやゾーンごとに分割したりすることで、「この壁や床は意匠ワークセット」「この柱や梁は構造ワークセット」といった形で担当範囲を整理できます。Revitの画面上では、各ワークセットや要素が「Editable(編集可能)」「Not Editable(編集不可)」といった状態で表示され、自分が借用していない要素は編集できない仕組みになっています。ワークセットを適切に設計・運用することは、モデル全体のパフォーマンス向上や、トラブル防止に直結します。
また、ワークセットの所有権を長時間握りっぱなしにせず、作業の区切りごとにこまめに解放しておくことも大切です。長期にわたる作業が一段落したタイミングで一度同期し、借用中の要素を元に戻す運用を徹底しておくと、他のメンバーがスムーズに編集を引き継げます。こうした運用を怠ると、いつの間にか競合やロックエラーが増え、プロジェクト全体の作業効率にも悪影響が出てしまいます。チーム全体でワークセットの運用ルールを共有し、「どういう名前で、どの範囲を、誰が使うのか」をあらかじめ決めておくとよいでしょう。
3. ワークシェアリングの前に必要な準備
ファイルベースのワークシェアリングを安全かつ効率的に運用するためには、実際に作業を始める前の段階で、環境整備やアクセス制御をしっかり行っておくことが欠かせません。中央モデルをどのフォルダに配置するのか、共有フォルダのアクセス権限を誰にどこまで与えるのか、ネットワークの速度や安定性は十分か、といった点を事前にチェックしておくことが重要です。
この準備を疎かにすると、設計事務所内で毎日のようにトラブルが起こったり、最悪の場合には中央モデルの破損や頻発する同期エラーによって、プロジェクト全体がストップしてしまうこともあります。LAN環境下でRevitを円滑に運用するための「骨格」となる部分ですので、最初に時間をかけてルールを整備しておくことが結果として大きなコスト削減につながります。
また、リモートワークを推進するプロジェクトリーダーにとっては、ローカルファイルをどのようなフォルダ階層に格納するか、外部から接続する場合のVPNやセキュリティ設定をどうするか、といった点も見落とせないチェックポイントです。専用フォルダの設置や定期的なデータバックアップ計画の立案などを含め、本節では準備段階をどのように進めればよいか、その考え方と具体的なヒントを紹介していきます。
3.1. 推奨されるフォルダ構成と設置場所
まず押さえておきたいのは、中央モデルをどのフォルダに配置し、その周辺フォルダをどのような階層で構成するかという点です。一般的には、設計事務所のファイルサーバー上に「プロジェクト名/Models/Central」などのディレクトリを設け、その中に中央モデルを配置する運用がよく採用されます。このように場所と階層を明確にしておくことで、誰が見ても迷わない構成にできます。
さらに、ローカルファイルを一時的に保管する専用フォルダを各PC上に用意しておくと、不要なアクセス競合や誤操作を防ぎやすくなります。中央モデルは、OneDrive や Dropbox といったクラウド同期フォルダではなく、LAN 上の共有フォルダに置くのが原則です。クラウドストレージは、中央モデルそのものの保存場所とするのではなく、アーカイブや成果物の配布用として限定的に活用するほうが安全です。 そのうえで、ローカルPCへの自動バックアップ設定や、スナップショット取得の仕組みなども併せて検討しておくと、いざというときの復旧がスムーズになります。
フォルダ構成の一例としては、「/プロジェクト名/01_Central」「/プロジェクト名/02_WorksharingTest」「/プロジェクト名/03_Backup」のように番号付きで階層を分けておく方法があります。こうして用途ごとにフォルダを分離しておくと、「どこに何を置くのか」が明確になり、新メンバーが参加した際にも説明がしやすくなりますし、チーム全体での混乱も減らすことができます。
3.2. アクセス権限の設定
中央モデルを保存している共有フォルダに書き込み権限がないと、ローカルファイルから中央モデルへ同期を行おうとしてもエラーが発生し、作業が先に進まなくなってしまいます。一方で、権限をむやみに広く与えすぎると、重要なファイルが誤って削除されたり、意図しない変更が加えられたりするリスクも高まります。プロジェクトチームごとに適切なアクセス制御を設定することが、安定運用のための前提条件です。
たとえば、Revitを日常的に操作する設計担当者には読み書き権限(変更権限)を付与し、図面の閲覧のみを行う発注者側や一部の外部協力会社には読み取り専用権限にとどめる、といった役割に応じた権限分離が有効です。誤操作による中央モデル破損からの復旧には時間と手間がかかるため、プロジェクトメンバーが増える前の段階で、どのグループにどの権限を与えるかを整理しておくことをおすすめします。
また、バックアップフォルダへのアクセス権限も見落としがちなポイントです。トラブル発生時にはバックアップデータからの復元が必要になるため、IT管理担当者だけしか触れない状態だと復旧プロセスが遅れてしまう可能性があります。復元作業を行う可能性のある担当者には必要な権限を付与しつつ、誰でも自由に削除や変更ができてしまわないよう、適切な範囲で権限を分配しておくとスムーズです。
3.3. ネットワーク環境の最適化
ファイルベースのワークシェアリングでは、ネットワークの速度と安定性が、共同作業の快適さと安全性を大きく左右します。特に、VPNを経由して社内ネットワークにアクセスしている場合や、Wifi中心の環境で運用している場合には、中央モデルへのアクセスに時間がかかったり、同期途中でネットワークが遮断されてしまうリスクが高くなるため、事前の確認と対策が欠かせません。
中央モデル破損のリスクをできるだけ抑えたいのであれば、大容量データのやり取りに強い有線LAN環境で作業を行う構成が理想的です。ネットワーク遅延が大きい環境では、同期のたびに待ち時間が増え、ローカルファイルの更新タイミングと他メンバーの作業内容がずれやすくなり、その結果として競合やエラーの発生確率が高まってしまいます。また、ウイルス対策ソフトやセキュリティソフトがRevitファイルへのアクセスを監視しすぎることで、パフォーマンス低下や予期せぬエラーを招くケースもあるため、必要に応じて例外設定を検討することも重要です。
プロジェクトリーダーの立場からは、ワークシェアリングを本格運用する前に、メンバーの使用しているネットワーク回線や接続方法を確認しておくことが大切です。場合によっては、高速回線の導入や、リモート接続の方法を見直す提案が必要になるかもしれません。チーム全体の作業効率やRevitのパフォーマンス向上のためにも、可能な範囲で安定したネットワーク環境を整備することが、トラブルの少ない運用への近道です。
4. 実践編:中央モデルとローカルファイルの運用手順

ここからは、実際にファイルベースのワークシェアリングを運用する際の具体的な手順について解説していきます。「ワークシェアリングの有効化」「中央モデルとしての保存方法」「ローカルファイルの作成と同期」といった基本的な流れを一通り理解しておけば、Revitでの共同作業がぐっとスムーズになります。
ワークセットの管理方法や同期を行うタイミングを誤ると、要素の競合が起きやすくなるだけでなく、バックアップファイルが乱立したり、どのファイルが最新なのかが分かりにくくなったりと、運用面での混乱も生じやすくなります。後ほど紹介するトラブル回避策もあわせて確認しながら、チーム内で分かりやすい運用ルールを作り、できるだけシンプルなワークフローを目指しましょう。
毎日のように繰り返す基本操作だからこそ、手順そのものはできるだけ直感的で、覚えやすい形になっていることが望ましいといえます。複雑な設定や煩雑なコミュニケーション手順は、現場の負担となり、かえってミスを誘発します。本章では、実務でそのまま使えるレベルの手順に絞って整理していますので、自社のルールづくりのたたき台としてもぜひ活用してみてください。
4.1. ワークシェアリングの有効化
まず最初のステップは、対象となるプロジェクトファイルでワークシェアリングを有効化することです。Revitでプロジェクトファイルを開いたら、「共同作業」タブからワークシェアリングを有効化する操作を行います。この操作によって、ワークセット機能が使用可能となり、中央モデルとローカルファイルを区別して扱えるようになります。
既存のRevitファイルであれば、そのまま「ワークシェアリングを有効化」ボタンを押すだけで構いません。そのうえで、新たにワークセットを作成する際には、意匠・構造・設備などの専門分野ごとにおおまかに分けるのか、階別・ゾーン別に細分化するのかといった方針をチームで検討しながら設定していきます。プロジェクトの規模やメンバー構成に応じて無理のない単位で分割しておくと、後々の管理やトラブル対応が格段にやりやすくなります。
ワークセットの初期設定が完了した段階では、まだ中央モデルは確定しておらず、ローカルファイルも存在しません。次のステップとして、このワークシェアリングが有効になった状態のファイルを、ネットワーク上に「中央モデル」として保存する手順へと進みます。
4.2. 中央モデルの保存と管理
ワークシェアリングを有効にしたファイルを、ネットワーク上の共有フォルダに「中央モデルとして保存」することで、ファイルベースの共同作業が正式にスタートします。保存先は、前述のフォルダ構成で用意した共有フォルダを指定し、プロジェクトメンバー全員がアクセスできる場所とすることが原則です。ファイル名には「Central」や「CM」といったキーワードを含めておくと、複数ファイルが並んだときにも中央モデルを一目で識別しやすくなります。
このときに重要なのは、中央モデルを直接開いて編集しない習慣を、チーム全員で徹底することです。中央モデルをそのまま開いて作業を続けてしまうと、他のメンバーがローカルファイルから同期できなくなったり、意図しないロック状態が発生したりするおそれがあります。また、保存のたびにバックアップが自動生成されるしくみのため、中央モデルをむやみに開いて上書きし続けると、ファイルサーバーの容量を圧迫する原因にもなりかねません。
管理面では、プロジェクトごとにバックアップ世代数を[ファイルのオプション]などから適切に設定し、古くなったプロジェクトについては中央モデルとそのバックアップフォルダをセットでアーカイブ用フォルダへ移動しておくとよいでしょう。バックアップフォルダ内の個々のファイルを手動で削除したり、名前を変更したりすると、復元機能が正しく動作しなくなるおそれがあるため避けるべきです。古い中央モデルがファイルサーバー上に大量に残っていると管理も煩雑になりますので、「どの時点まで残すか」をあらかじめ決めておき、定期的に整理・アーカイブする運用を心がけるのがおすすめです。
4.3. ローカルファイルの作成と同期
中央モデルを作成したあとは、各メンバーが実際の作業に使うローカルファイルを作成し、そのローカルファイル上で日々の編集作業を進めていきます。手順としてはシンプルで、中央モデルを開く際に「ローカルへ保存」や「新しいローカルを作成」といったオプションを選択するだけで、各自のPCにローカルファイルが自動的に生成されます。こうして作られたローカルファイルが、中央モデルへの変更を送るための「作業用窓口」となります。
ローカルファイルで作業を進めたら、プロジェクトの規模やチームの人数にもよりますが、15分から30分程度の間隔を目安に、こまめに中央モデルとの同期を行うことをおすすめします。また、少なくとも1日に1回は、すべてのメンバーが中央モデルと同期を行う運用にしておくと安心です。 これにより、誰かが大きな変更を行っていた場合でも、自分のローカルファイルに素早く反映されますし、逆に自分の修正内容もチーム全体に共有されます。ローカルファイルが破損したり、長期間更新されないまま放置されると、要素の競合が起きやすくなるため、同期のタイミングや頻度についてはチーム内で共通認識を持っておくことが重要です。
一日の終わりには必ず中央モデルへ同期してからRevitを終了し、次に作業を再開するときにローカルファイルが古くなっていると感じたら、新しいローカルファイルを作り直すことを推奨します。理想的には、毎日新しいローカルファイルを作成するのがベストプラクティスとされています。 ローカルファイルを定期的にリフレッシュすることで、バックアップやトラブルシューティングが行いやすくなり、ファイルベースのワークシェアリング環境を長期にわたって安定して運用し続けることができます。
5. トラブル防止と対処法
ファイルベースのワークシェアリングは、Revitの機能の中でも比較的手軽に始められる方式ですが、ネットワーク環境や作業ルールの整備が不十分なまま運用してしまうと、中央モデルやローカルファイルに思わぬトラブルが発生することがあります。特に複数メンバーによる同時編集が行われる現場では、要素のロック状態の理解不足や、更新・同期のし忘れによる競合が起こりやすく、「なぜか保存できない」「同期エラーが頻発する」といった状況に陥りがちです。
ここでは、中央モデルの破損やローカルファイルの不具合を未然に防ぐためのポイントと、万が一トラブルが起きてしまった際に素早く復旧するための基本的な手順を整理して解説します。あらかじめチーム内で共有し、定期的に振り返りを行っておくことで、設計プロセスを止めることなく、プロジェクトを安定して前に進めることができるようになります。
Revitのトラブルシューティングは一見すると複雑に感じられますが、原因をたどっていくと、その多くは「運用ルールが曖昧」「設定が適切に行われていない」といったヒューマンエラーに起因するものです。逆に言えば、いくつかの基本的な予防策さえしっかり押さえておけば、大きなトラブルを回避でき、ストレスや復旧コストを大幅に削減することができます。
5.1. 中央モデルのトラブルシューティング
中央モデルが正しく同期できなくなったり、ユーザーがアクセスできなくなったりする背景には、多くの場合ネットワーク切断や通信エラー、同期中・保存中の強制終了などが関わっています。また、誤って中央モデルを直接開き、そのまま編集・保存を繰り返してしまった結果、ロック状態が解消されない、他のユーザーがローカルファイルから同期できない、といった状況に陥るケースも少なくありません。
対処法としてまず検討すべきなのは、Revitが自動的に生成している「バックアップファイル」からの復元です。Revitでは中央モデルのバックアップ世代数を設定することができ、適切に設定しておけば、問題が起きたタイミングより前の状態に戻せる可能性があります。重大なトラブルに備え、プロジェクト開始時にバックアップの世代数や保存場所を確認・調整しておくことが大切です。また、「監査(Audit)」機能を利用してモデルを開くことで、破損した要素や不整合なデータを検出し、自動的に修復できる場合もあります。
何より重要なのは、中央モデルには極力直接触れず、必ずローカルファイル経由で作業を行うという基本原則を徹底することです。そのうえで、同期中にPCをシャットダウンしたり、エラーが表示されたにもかかわらず無視して作業を続行したりしないことも大きなポイントです。小さな注意を怠らず、異常があれば一旦同期を中断して原因を確認する習慣をつけることが、中央モデルを長く安定して運用するためのカギとなります。
5.2. ローカルファイルの更新と競合回避
ローカルファイルを長期間更新しないまま使い続けていると、中央モデルとの整合性が徐々に崩れ、同期の際にエラーや競合が発生しやすくなります。すでに誰かが編集し、中央モデルに反映している要素を、別の人が「古いローカルファイル」の状態のままで上書きしようとすると、「他のユーザーが編集しています」「要素が借用されています」といったメッセージが表示され、作業が一時的に止まってしまうことになります。
このような状況を避けるための基本的な対策は、作業を始める前に必ず新しいローカルファイルを作成するか、少なくとも中央モデルと同期して最新状態に更新してから編集を開始する、というルールをチーム内でしっかり決めておくことです。理想的には毎日ローカルファイルを作り直すのがベストプラクティスとされており、最低でも週に一度や、タスク単位で作業がひと段落したタイミングではローカルファイルを更新する運用にしておくと安心です。 こうした運用を続けることで、Revit メンテナンスの負担が減り、中央モデルとの同期も常に取りやすくなります。
もし競合エラーが発生した場合は、メッセージ内容をよく読み、ワークセットや要素の所有権を解除するのか、相手ユーザーの同期完了を待つのか、といった対応を状況に応じて選択することが重要です。一方的に上書きしようとせず、チャットツールや社内メッセージを活用して「今から同期します」「〇〇ワークセットを一度解放してもらえますか?」といったやり取りを行うことで、双方の作業を止めずにスムーズな進行がしやすくなります。
5.3. ワークセットの効果的な管理
ワークセットを適切に管理できていないと、競合を防ぐことが難しくなるだけでなく、モデルの軽量化や表示制御といった面でも支障が出てきます。特に大規模プロジェクトでは、どの要素がどのワークセットに属しているかをチーム全体で共有できていないと、意図せず他メンバーの編集領域に手を入れてしまい、「編集権限を奪う」「いつの間にかロック状態が変わっている」といったトラブルを引き起こす要因になります。
解決策としては、まずワークセットのネーミングルールを明確にし、誰が見ても役割が分かる名前を付けることが挙げられます。例えば「Architecture_Exterior」「Architecture_Interior」「Structure_Frame」「MEP_Main」など、専門分野や用途が一目で理解できる名称にすることで、「この要素はどこに属させるべきか」「どのワークセットを開いて作業すればよいか」が直感的に判断できるようになります。同時に、メンバー全員が自分の編集中のワークセットを常に意識する運用を心がけると、不要な取り合いを防ぎやすくなります。
また、プロジェクトの進行に伴って不要なワークセットが増え続けると、表示・非表示の切り替えが複雑になり、作業効率も低下します。定期的に運用状況を見直し、使われていないワークセットの統合や整理を行うことも重要です。あわせて、「作業が終わったら対象ワークセットを閉じる」「編集権限を“編集可”のまま長時間放置しない」といった基本的なルールをチーム全体に周知することで、ワークセットに起因するトラブルを大幅に減らすことができます。
5.4. フォルダとファイルのアクセス問題解決
ファイルベースでワークシェアリングを進めるときに、現場で特に多く見られるトラブルのひとつが、「中央モデルを開いたら読み取り専用になってしまう」「アクセス権限が不足していて同期が実行できない」といったアクセスまわりの問題です。社内のファイルサーバーやローカルNASを利用している場合、スタッフの異動や新規メンバーの追加に伴ってアクセス権限の設定変更が追いつかず、いつの間にか必要なメンバーが書き込み権限を持っていなかった、というケースもしばしば発生します。
シンプルかつ効果的な改善策としては、プロジェクト開始時に「権限管理の担当者」と「設定内容」を明確にしておき、共有フォルダに対するチェックリストを用意することが挙げられます。たとえば、「対象フォルダに読み書き権限が付与されているか」「ウイルス対策ソフトやセキュリティソフトがRevitファイルを誤検知していないか」「Windowsのオフラインファイル機能などが悪影響を与えていないか」といった項目を定期的に確認し、問題が発生した際にはまず権限設定やフォルダロックの状態を疑う習慣をチーム全体に根付かせます。
また、中央モデルを本来置くべき共有フォルダではなく、誤って自分のローカルフォルダやクラウド同期フォルダに保存してしまっているケースも見受けられます。この場合、他のメンバーからは中央モデルとしてアクセスできず、「誰のファイルが正なのか」が分からなくなる原因となります。常に「中央モデルはファイルサーバー上に一元管理されているか」「共有パスは全員で共通化できているか」を確認する癖をつけるだけでも、多くのアクセス関連トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
6. 実務での運用テクニックとチームルール
ファイルベースのワークシェアリングを現場でスムーズに回していくためには、技術的な設定だけでなく、チーム内で共有する運用ルールやモデルの軽量化に関する工夫が欠かせません。特に、拠点が分散していたり、リモートワークを取り入れているプロジェクトでは、「誰がいつ同期するのか」「どのワークセットをどのように使うのか」といった事前の取り決めが、そのままプロジェクトの混乱防止やトラブル発生率の低下につながります。
また、長期間にわたって同じ中央モデルを運用していると、リンクファイルやビュー、不要な要素が蓄積し、モデル全体が重くなっていく傾向があります。モデルが肥大化すると、同期に時間がかかるだけでなく、Revit自体の動作が重くなり、作業効率が目に見えて低下してしまいます。定期的なメンテナンスを習慣として組み込むことで、データ一元管理に伴うストレスを軽減し、ワークシェアリング環境を長く健全な状態に保つことができます。
この章では、実務の中ですぐに取り入れやすいチームルールの例と、モデルをできるだけ軽量な状態に保つための具体的な対策を紹介します。どれも特別なツールや高度なスキルを必要としない方法ばかりですので、自社の規模やプロジェクトの特性に合わせてアレンジしながら、自分たちなりの「運用ガイドライン」として整備してみてください。
6.1. チーム内のコミュニケーションとルール設定
チームが物理的にバラバラの場所で作業を行うリモート環境や、複数拠点にまたがるプロジェクトでは、コミュニケーション不足がワークシェアリングトラブルの大きな要因になりがちです。「誰かが今まさに同期しているのに、別の人も同時に大きな変更を同期してしまう」「どのワークセットが借用中なのかが共有されていない」といった状況は、小さなすれ違いからすぐに発生します。
そこで有効なのが、チャットツールやビデオ会議システムを活用し、「いつ」「誰が」「どの範囲を」同期・編集しているのかを、声掛けベースで共有するルールをつくることです。典型的なルール例としては、「1日2回(午前と午後の決まった時間)に全員が同期する」「週1回は必ずローカルファイルを再作成する」「ワークセットの借用リクエストがあれば、チャットで一言通知する」といったものが挙げられます。こうした取り決めを実践することで、設計プロセスの見通しが良くなり、不要な待ち時間や不安感が大きく減っていきます。
さらに、トラブルが発生した際の連絡・対応手順を事前に決めておくことも重要です。たとえば、「中央モデルが壊れた疑いがある場合は、すぐにバックアップ担当に連絡する」「復旧作業中は新たな同期や編集を一時的に停止する」「復旧完了後に、どのバックアップから戻したかを全員に共有する」といったフローを文章化しておけば、いざという時にも慌てず冷静に対処できます。
6.2. モデルの軽量化とメンテナンス
大規模なBIMプロジェクトでは、進行するにつれてモデルが次第に肥大化し、同期時間の増加やRevitの動作遅延といった形で、チーム全体の生産性に影響が出てくることがあります。こうした状況を防ぐには、定期的なメンテナンスを行い、不要なデータを整理してモデルを軽量な状態に保つことが重要です。
具体的な対策としては、まず「用途が終わった2Dビューや3Dビューをパージ・削除する」「重複しているCADリンクや不要になったリンクファイルを一元化・整理する」「使用頻度の低いワークセットは閉じて表示負荷を減らす」といったメニューが挙げられます。また、Revit バックアップの世代管理が多すぎてストレージ容量を圧迫している場合には、週単位やマイルストーン単位で古いバックアップをアーカイブフォルダへ移動したり、圧縮形式で保存し直したりすることで、サーバーの負荷を軽減できます。
バックアップ運用に関しては、「定期的に中央モデルをデタッチし、新しい中央モデルとして保存し直す」方法も効果的です。これにより、古いバージョンの履歴や不要になった履歴データの負担を減らすことができ、長期にわたって同じモデルを運用する場合の安定性向上につながります。ただし、デタッチと新中央モデル作成はプロジェクトに大きな影響を与える操作でもあるため、実施するタイミングや手順を事前にチームで共有し、バックアップ取得とセットで慎重に進めることが大切です。
7. クラウドベースのワークシェアリングとの比較
ファイルベースで中央モデルを運用する方法に加え、RevitにはAutodesk DocsやBIM 360(BIM Collaborate Pro)といったクラウドベースのワークシェアリング手法も用意されています。これらのサービスでは、クラウド上にモデルを配置し、インターネット経由で複数メンバーが同じモデルにアクセスできるようになるため、大規模チームや外部協力会社を含めたコラボレーションに適しているケースが多く見られます。
たとえば、海外拠点や遠隔地にいるチームメンバーが参加するプロジェクトの場合、ファイルベースの運用ではネットワーク遅延やVPN経由の通信により、同期時間が長くなったり、接続が不安定になったりする懸念があります。一方、クラウドベースの仕組みであれば、Autodesk側のサーバーが地理的に分散配置されていることも多く、接続場所によってはファイルベースより快適なレスポンスで作業できる可能性があります。
もっとも、ファイルベースのワークシェアリングにも明確な利点があります。代表的なものとしては、小規模な設計事務所でも社内LAN環境とファイルサーバーさえあればすぐに導入できることや、クラウドサービスのサブスクリプション費用を抑えられることなどが挙げられます。プロジェクトの規模やメンバー数、外部との連携の有無、リモートワークの比率などを踏まえながら、「どのプロジェクトにはどの方式が適しているか」を見極めて選択するのがベストプラクティスと言えるでしょう。「そろそろクラウドへ移行を検討したい」と感じている場合は、費用や設定の手間だけでなく、セキュリティ要件や社内のITリテラシー、プロジェクト管理の負担なども含めて総合的に比較・検討することをおすすめします。
8. まとめ
本記事では、ファイルベースのワークシェアリングを安全かつ効率的に運用するために必要な基本概念から、準備段階のポイント、実務で役立つ運用テクニック、そしてトラブル発生時の対処方法までを幅広く解説してきました。Revitの共同作業を円滑に進めるためには、中央モデルとローカルファイルの役割を正しく理解し、ワークセット管理・フォルダ構成・アクセス権限といった細かなルールを確実に整えることが欠かせません。
特に、リモートワークを含む分散型チームを率いるプロジェクトリーダーにとっては、同期のタイミングやコミュニケーション方法、ネットワーク環境の最適化などをあらかじめ整理しておくことが、設計プロセス全体の安定性と効率向上につながります。また、ローカルファイルの再生成やモデルの軽量化といった日常的なメンテナンスを習慣化することで、長期運用におけるファイルベース共有の信頼性をより高めることができます。
さらに、大規模プロジェクトや遠隔地との連携が必要な場合は、Autodesk Docs や BIM 360 といったクラウド型ワークシェアリングを選択肢に入れることも有効です。一方で、LAN環境とファイルサーバーがあればすぐに始められる手軽さは、ファイルベース方式ならではの大きな魅力です。
ぜひ、本記事で紹介した運用ルールやトラブル防止策を参考に、自社のワークフローに合ったワークシェアリング環境を整え、Revit活用のベストプラクティスを築いてみてください。設計チーム全体の生産性向上につながるはずです。
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<参考文献>
ヘルプ | ワークシェアリングについて | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/RVT/2026/JPN/?guid=GUID-0FC44807-DF06-4516-905A-4100281AC486
ヘルプ | ファイルベースのワークシェアリングとサーバベースのワークシェアリング | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/RVT/2026/JPN/?guid=GUID-C7A92F0C-39FE-4CCF-B0BE-6F1F6067E2B9





