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デジタルツインは都市計画でどう使われている?自治体事例から見るPLATEAUの実際

1. はじめに:なぜ今「自治体×都市計画×デジタルツイン」なのか

近年、都市計画は扱う情報や検討条件が増え、自治体には「限られた人員でも、わかりやすく検討し、説明できる仕組み」が求められるようになっています。そうした中で、3D都市モデルのオープンデータ化が進み、国土交通省が主導する取り組みも後押しとなって、都市の現状だけでなく、条件設定に基づく将来像を疑似的に可視化・比較する方法が整ってきました。

都市計画では、街並みの見え方や建物高さの制限など、専門外の人にも伝わる形で合意形成を進めることが欠かせません。しかし、2D図面や平面的な資料だけでは、地域住民や関係者が完成イメージを共有しづらく、説明に時間がかかる場面もありました。そこで注目されているのが、仮想空間と現実世界を結びつけて検討を支える「デジタルツイン」の考え方です。

デジタルツインは、景観の可視化だけでなく、防災計画の検討や再開発のシナリオ比較などにも応用でき、災害リスクの把握や意思決定の説明に役立つ可能性があります。なかでも、自治体での活用が広がりつつあるのが「PLATEAU(プラトー)」です。3D都市モデルを共通仕様で整備・公開することで、自治体や関係者が同じ土台で検討しやすい環境づくりが進められています。

本記事では、デジタルツインを単なる流行語として扱うのではなく、自治体が都市計画にどう取り入れているのかを、具体的な事例をもとに整理します。防災と都市計画の接点、東京都をはじめとした大規模自治体の動きにも触れながら、期待できることと現実的な課題(データ更新・体制・人材など)を分けて解説します。

2. デジタルツインとは?都市計画分野での基本的な考え方

引用:https://www.ntt.com/bizon/glossary/j-t/digital-twin.html

デジタルツインとは、現実の都市をデータとして仮想空間上に再現し、計画検討やシミュレーションに活用する考え方です。都市計画分野では、3D都市モデルを基盤として、建物や道路、インフラを立体的に把握し、関係者間で共通認識を持ちながら検討を進めるための手段として位置づけられています。

重要なのは、都市計画におけるデジタルツインが「都市をリアルタイムに完全再現すること」を目的としていない点です。実務では、再開発案の比較や景観検討、防災シミュレーションなど、検討テーマに応じて対象範囲や精度を限定して使うケースが一般的です。たとえば、建物高さの変更による街並みの変化や、洪水時の浸水範囲と都市構造の関係を確認するといった使い方が想定されます。

一方で、デジタルツインを導入すれば都市計画が自動化されるわけではありません。多くの自治体では、補助事業や実証段階として活用が進められており、意思決定や合意形成そのものは、あくまで人が行う必要があります。効果を引き出すためには、解決したい課題を明確にしたうえで、必要なデータ整備や運用体制を段階的に整えることが前提となります。

3. PLATEAUとは何か|自治体向けデジタルツイン基盤の位置づけ

引用:https://www.mlit.go.jp/plateau/

PLATEAU(プラトー)は、国土交通省が主導して進めているプロジェクトで、日本全国の都市を対象とした3D都市モデルを整備・公開し、自治体や民間企業が活用できるオープンデータとして提供しています。都市デジタルツインを進めるための共通基盤として位置づけられており、建物や道路といった空間情報を、一定のルールに基づいた形式で扱える点が大きな特徴です。

PLATEAUの重要な役割の一つは、3D都市モデルを共通仕様で整備・公開することで、自治体や関係者がデータを活用・連携しやすい環境を整えている点にあります。これまで多くの自治体では、それぞれ独自の方法で3Dデータを作成してきたため、地域をまたいだ比較や、都市計画と防災、再開発など異なる分野の情報を組み合わせた検討が難しいケースも少なくありませんでした。PLATEAUの整備が進むことで、こうした課題が緩和され、都市計画や防災計画、再開発の検討に必要な基礎情報を、共通の土台で扱いやすくなりつつあります。

一方で、PLATEAUを導入すれば都市計画が自動的に進む、というわけではない点には注意が必要です。PLATEAUが提供しているのは、あくまで高品質な3D都市モデルと、それを活用するためのデータ基盤です。都市計画における意思決定や合意形成そのものは、自治体職員やコンサルタント、建設・建築関係者など、人が主体となって行う必要があります。PLATEAUは、その検討プロセスを可視化やデータ共有によって支援し、効率化や理解促進を後押しする存在だと捉えるのが適切でしょう。

また、PLATEAUは各自治体が自らの目的に応じて拡張しやすい設計となっています。そこに民間企業が提供するシミュレーション技術や、用途に特化したアプリケーションを組み合わせることで、景観検討や防災対策、まちづくりの検討をより具体的かつ実践的に進めることが可能になります。PLATEAUは単体で完結する仕組みではなく、さまざまな技術や取り組みと連携しながら活用していくことで、自治体の都市計画を支える基盤として力を発揮していくものといえます。

表:PLATEAUでできること/できないこと

観点内容
提供されるもの共通仕様の3D都市モデル(オープンデータ) 
得意な役割可視化、データ共有、検討の共通基盤
自動化されない点都市計画の意思決定・合意形成
実務で必要なもの人による判断、運用体制、他システムとの連携 

4. 自治体におけるデジタルツイン活用事例(PLATEAU中心)

4.1. 都市計画・まちづくり検討での活用事例

引用:https://www.kke.co.jp/release/13685

自治体で見られる主な活用例

  • 再開発における複数案の立体比較
  • 建物高さ・配置変更による景観確認
  • 住民説明用の完成イメージ共有
  • 交通量・騒音などの試行的シミュレーション

自治体におけるデジタルツインの活用事例として、まず挙げられるのが、都市計画やまちづくりの検討段階での利用です。特に、再開発における複数のシナリオ比較や、街並み・景観の可視化といった用途で活用が進んでいます。PLATEAUの3D都市モデルを活用することで、建物の高さや配置を変更した際に、周辺環境がどのように変化するのかを立体的に確認できる点が特徴です。

たとえば、自治体が公共施設の再構築や移転を検討する場面では、デジタルツインを用いることで、住民説明の段階で「現行の配置」と「新たな配置案」を視覚的に比較できます。従来は図面や数値資料を中心に説明する必要がありましたが、3Dモデルを用いることで完成後のイメージを共有しやすくなり、住民の理解を助け、合意形成を進めやすくする効果が期待されています。

また、PLATEAU AWARDなどで紹介されている事例の中には、都市構造を変更した場合の交通量や騒音の変化を、実証的・試行的にシミュレーションする取り組みも見られます。これらの結果は、計画案そのものを決定するためだけでなく、複数案を比較検討する際の材料や、関係者への説明資料として活用されています。

さらに、まちづくりの検討段階では、密集市街地における防火対策や、商店街の活性化に向けた空間配置の検討など、幅広いテーマを視覚化することが可能です。こうした取り組みは、資料作成の効率化につながるだけでなく、職員や関係者が都市構造を理解するための学習素材として活用されるケースもあり、人材育成の面でも一定の効果が期待されています。

4.2. 防災・シミュレーションと都市計画の接点

引用:https://www.mlit.go.jp/plateau/use-case/uc23-02/

防災と都市計画は本来密接に関係していますが、従来はそれぞれが別の計画として検討されることも多く、災害リスク管理の視点が都市構造にどのように反映されているのかが分かりにくいケースもありました。こうした課題に対して、3D都市モデルを活用したシミュレーション技術が、防災分野を中心に活用される場面が増えています。

具体的には、洪水が発生しやすいエリアにおける浸水リスクの可視化や、防災計画と再開発計画を組み合わせて地域全体の脆弱性を検証する取り組みが挙げられます。PLATEAUの3D都市モデルを用いたシミュレーションでは、建物の形状や高さ、道路網との関係を含めて立体的に把握できるため、従来よりも俯瞰的な検討が可能になります。

さらに、地震被害の想定を3D空間で表現することで、どの地区を優先して避難経路として整備すべきか、あるいは耐震補強が必要な建築物が集中しているエリアはどこか、といった点を整理しやすくなります。こうした情報は、自治体内部での課題整理に役立つだけでなく、住民に対する防災意識の啓発や説明資料としても活用されています。

このような防災シミュレーションは、都市計画の複雑化に対応するための重要な補助ツールといえます。データの更新や他システムとの連携が適切に行われれば、より現実に即した、説得力のある都市計画や防災計画を検討しやすくなるでしょう。

5. 東京都の取り組みに見る自治体での現実的な使いどころ

国内でも大規模な自治体として、デジタルツインの活用事例が注目されているのが東京都です。東京都は、膨大な人口を抱え、用途や機能が複雑に入り組んだ都市構造を持つ一方で、再開発や防災対策など、長期的な視点での都市計画が求められています。こうした背景のもと、三菱総合研究所の資料などからも読み取れるように、都内の一部エリアを対象として、デジタルツインの活用可能性を検討する取り組みが進められています。

具体的な検討内容としては、PLATEAUの3D都市モデルを活用し、将来のまちづくりに関する複数のシナリオを比較する取り組みが挙げられます。たとえば、大規模ビルの建て替えや公共空間の再配置といった検討において、複数の案をデジタル上で可視化し、それぞれの影響を比較しながら検討するプロセスが試行されています。都市計画が高度化・複雑化するほど、関係する行政部局や外部機関も増えるため、共通の認識を持つための「共通言語」として3Dモデルが果たす役割は大きいといえます。

一方で、こうした取り組みがすべて順調に進んでいるわけではありません。都民への説明や理解をどの段階でどのように行うか、3D都市モデルをどの程度の頻度で更新していくのか、さらにデジタルツインを扱うための職員のスキルや体制が十分か、といった課題も指摘されています。加えて、予算確保や人材配置といった現実的な制約も大きく、現時点では全庁的な本格運用というよりも、「検討・試行段階」として位置づけられている側面が強いと考えられます。

東京都のように都市規模が大きく、扱うデータ量や検討範囲が広い自治体ほど、デジタルツインを都市計画に活用することへの期待は高まります。その一方で、導入や運用には相応のコストや高度な技術が求められるのも事実です。そのため、国の補助事業の活用や、専門性を持つ民間企業との連携を前提に、段階的に取り組みを進めていくことが、現実的な使いどころといえるでしょう。

6. 自治体が都市計画でデジタルツインを使う際の注意点

デジタルツインを都市計画に取り入れる際、最も現実的な課題となるのが、データ更新と運用コストです。3D都市モデルは、建物の更新や土地利用の変化が反映されなければ、景観検討や防災シミュレーションの信頼性が低下します。初期導入だけでなく、継続的に更新・管理できる体制を前提に検討する必要があります。

また、活用フェーズを整理しないまま導入を進めると、期待した効果が得られないケースも少なくありません。合意形成や複数案の比較検討を目的とするのか、将来的な都市構造の検証まで視野に入れるのかによって、必要なデータの粒度や運用方法は大きく異なります。「どの業務で、どこまで使うのか」を事前に定義しておくことが重要です。

さらに、庁内外でのデータ連携も注意点の一つです。部署ごとにデータ形式や管理方法が異なる場合、デジタルツインを共通基盤として活用しにくくなります。導入前の段階で、データ管理の責任範囲や連携ルールを整理しておくことが、実務での定着につながります。

7. 今後の展望|都市計画とデジタルツインはどう進化するのか

都市デジタルツインは、現在は試行・実証段階にある自治体が多いものの、今後はデータ標準化や連携基盤の整備が進むことで、実務での活用範囲が徐々に広がっていくと考えられます。特に、PLATEAUのような共通基盤を前提に、分野ごとのシミュレーションや分析を組み合わせる形が主流になる可能性があります。

技術面では、シミュレーションやAI解析の進化により、複数の計画案を短時間で比較・検討する支援ツールとしての活用が進むと見られます。一方で、地域特性を踏まえた判断や合意形成といった領域は、引き続き人の関与が不可欠です。

リアルタイム性の高い都市デジタルツインを目指す場合には、IoTや交通データなどの継続的な収集・運用が必要となり、コストや体制面の負荷も増加します。そのため、自治体ごとの規模や目的に応じて、実務で効果が見えやすい用途から段階的に活用を広げることが、現実的な進め方といえるでしょう。

8. まとめ|自治体事例から見えるPLATEAUと都市計画の現在地

本記事では、デジタルツインと都市計画の関係性を整理し、その中核を担うPLATEAUの位置づけや、自治体における現実的な活用のあり方について見てきました。デジタルツインは、すでに複数の自治体で試行的に導入されており、都市の状況や課題を立体的に可視化することで、防災計画との連動や再開発の検討、合意形成の支援といった場面で活用され始めています。

一方で、実務への導入にあたっては、予算の確保や人材育成、データ更新を継続するための体制づくりなど、乗り越えるべき課題が多いのも現実です。都市構造が複雑で変化のスピードが速い大都市であればあるほど、デジタルツインを安定して運用するためには、部局を横断した連携や継続的な投資が欠かせません。PLATEAUは都市デジタルツインを支える基盤として大きな役割を果たしていますが、その価値を最大限に引き出せるかどうかは、自治体や地域コミュニティの主体的な取り組みに委ねられています。

重要なのは、デジタルツインに過度な期待を寄せるのではなく、合意形成やシミュレーションといった実務で効果が見えやすい領域から段階的に活用を広げていくことです。そうしたプロセスを通じて、デジタルツインに対する誤解を解消し、都市計画の複雑化に現実的に向き合うための道具として定着させていくことが求められています。

今後は、より精度の高い3D都市モデルを活用したシミュレーションや、標準化されたオープンデータの充実が進むことで、都市計画におけるデジタルツインの役割はさらに広がっていくでしょう。建設・建築関係者や行政職員に加え、地域住民を含む多様なステークホルダーがその可能性を共有し、活用していくことで、都市計画のあり方そのものも少しずつ進化していくと考えられます。

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<参考文献>

PLATEAU [プラトー] | 国土交通省が主導する、日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト

https://www.mlit.go.jp/plateau

自治体、民間事業者、PLATEAU AWARD受賞者が3D都市モデルを活用した取り組みや作品を紹介 | Journal | PLATEAU [プラトー]

https://www.mlit.go.jp/plateau/journal/j061

Project PLATEAUのご紹介及び東京都における活用可能性|三菱総合研究所

https://info.tokyo-digitaltwin.metro.tokyo.lg.jp/docs/kentoukai01_phase2/dt_kentouphase2_01_05.pdf

PLATEAU(プラトー)を活用した事例7選!災害や都市計画へ活用可能

https://lipronext.com/knowledge/plateau-example

令和7年度 研究開発等計画|都市デジタルツインの実現|令和7年4月国土交通省

https://www8.cao.go.jp/cstp/bridge/keikaku/r5-28_bridge_r7.pdf

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