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3D点群データとARのシステムが活用される新ビジネス領域と事例

3D点群データを用いると、工事現場や工場、インフラ設備などさまざまな構造物が3D情報として取得可能です。
この技術を用いて3D情報を活用したARシステムの構築や運用が始まっています。
この記事では、ARやVRが利用されている業界の例や建築、インフラ設備の保守点検への活用事例について紹介します。

AR・VRの市場は拡大傾向

アメリカのリサーチ会社であるIDCの調査によると、世界のAR・VR関連支出は2022年時点で138億ドル(約1.8兆円)に達していると報告されています。
この傾向はさらに拡大し、2026年には509億ドル(約6.9兆円)に増加するものと推計されているのです。(*1)

VRやARのデータ構築方法

VRやARのデータを構築する際は、まず3次元空間の中に対象となる建物などをデザインして盛り込まなければなりません。
例えば、建物の3Dモデルを構築する方法は、以下のように大きく2つあります。
自由な構造物を作成したいのか、実際の構造物について確認を行いたいのかにより3D形状を作成方法が異なります。

3次元空間内で最初から構造物を作成する
3Dカメラやレーザースキャナーなどで測量した3D点群データをもとに3D化

3D点群データシステムの活用が期待されている業界

ARは、さまざまなビジネスドメインで活用が進んでいます。
建築物や観光地の3次元点群データを収集・蓄積してバーチャルシティを作るのはもちろん、ここでは、ARシステムの活用が期待されているビジネス分野について簡単にご紹介します。

建築、土木
・工事現場の映像と施工する建築物の3Dデータや地質や図面をAR上で合成

住宅・リフォーム
・施工パターンをAR表示して意思決定を促す

製造
・作業手順説明、出荷後の商品追跡、技能教育、遠隔作業支援

観光
・アニメの聖地巡礼で現地と作品中のシーンを重ねる
・歴史的建造物の遺構や街並みを昔の様子と重ねる

特に静岡県では3次元点群データがオープンデータ化されており、鉄道会社の保守に留まらず観光誘致、移動ニーズを考慮したMaaSプロジェクトの実証実験に役立てられています。(2)(3)

流通・運輸・物流業界
・商品タグを読み取り、梱包済みの箱に入った商品をAR上で確認
・AR情報をもとに遠隔地からサポートを受けてピッキングを実施
・トラックの積載状況を3Dの点群データとしてリアルタイム送信し、トラックの空きスペース活用や積み残しの抑制に活用

美術館・博物館・アート展示
・遺構に当時の再現画像を重ねて表示
・AR上で美術工芸品などを動かす

建築確認のリモート化を支援するARシステム事例

どの分野でもDX分野の技術革新が行われていますが、3D点群データとAR技術との組み合わせは建設業界でも加速しつつあります。

ここでは検査業務におけるDXの導入事例として、清水建設が行っている点群とARを用いた確認検査支援システムについて詳しくご紹介します。

清水建設のDXを用いた業務効率化の段階

清水建設の、確認申請業務の効率化に関する取り組みは2020年からはじまっていて、現時点では第三段階まで行われています。

第一弾:BIMデータを活用した建築確認システム
第二弾:BIMデータとARを活用した中間検査のリモート化(遠隔臨場)システムの開発

参考:建築工事の中間検査をリモートで行う?BIMやARを活用した事例について

第三弾:確認検査支援システム

建築確認は担当者の負担が大きい

何か建物を建築しようとする場合、建築主は建物の規模に応じて定められている中間検査や完了検査を受けなければなりません。

2022年5月には、国土交通省が「デジタル技術を活用した建築基準法に基づく完了検査の立ち合い遠隔実施について」(*4)を通知しています。
この指針によると建築現場に検査を受けるための補助者と検査者がいれば、現場担当者が検査現場以外の場所からリモートで対応が可能です。

清水建設が開発したシステムを用いると、日々行われる建築確認の中間検査や完了検査が遠隔でできるようになります。
普段の工事に関わる工事監理業務についても応用できるため、複数の現場を担当する施工管理者や設計者の負担を軽減することが期待されているのです。

確認検査支援システムの具体的な構成

完了検査等は実際の建築物が設計どおりできているかの確認を行います。
清水建設では設計にBIMを活用しているため、BIMのデータを実際の建物の情報との整合性を取らなければなりません。

そこで、ARを用い、BIMの情報を建物の形状を重ね合わせてタブレットの画面にAR表示させて確認するシステムを構築したのです。

BIMの情報は、ゲームエンジンであるUnity Reflect(Unity)を用いてリアルタイムに可視化できるように処理します。

一方建物の情報は、LiDARスキャナを用いて点群データで取得します。
必要な箇所にレーザーを照射すると、各々の点群から精密な3次元形状が生成可能です。

参考:点群データとは?収集する仕組みと建築業界でも注目される理由をご紹介

清水建設のシステムでは、点群をCGのように可視化するだけでなく、点群から得られた建物の映像にBIMの3D映像をAR検査ツールで重ね合わせているのです。

さらに、AR画像をテレビ会議や5G映像伝送システムを用いると遠隔地からも簡単かつリアルタイムに情報共有が可能です。

BIMと点群を用いたARシステムの効果

清水建設が開発したARシステムでは、ARの3次元空間上に点群データとBIMデータを同時に重ねられます。
そのため、以下の点で検査対象部位の視認性が高度化しました。

許容値から外れている部位の可視化
法で定められた形態制限空間の可視化と整合性の確認
奥行き方向など視点を自由に移動させて立体的に検査が可能

このようなシステムがあれば、施工の状況に関する質疑等に十分適切に応答できます。
躯体や仕上げ、設備機器などの検査にかかる負担が大幅に軽減できるようになりました。

レーザー計測による点群データの活用や通信速度、BIM、AR技術の向上により、さまざまなシステムが実現できるようになりました。

インフラ設備の保守・点検作業のARシステム事例

保守・点検の分野でも点群とARの活用が進んでいます。
中部電力では、保守・点検作業を支援するARシステムの検証を行っています。

屋外設備の保守点検は作業条件が異なる

屋外における変電所設備の保守・点検作業の場合、日差しが強いとタブレットの表示がそもそも見えないなど、昼夜の明暗差や天候、日照などの影響を受けるという課題があります。

作業員が一定の情報を確認できれば、それだけ作業員の安全確保に役立ちます。

3D点群データを活用した情報をAR表示

AR技術を使った設備点検システムでは、屋外で行われる変電所の保守・点検向けに、設備の場所や操作手順などをタブレットにAR表示させています。

点群データから得られた変電所の画像でデジタルツインを構築しています。
AR画像は適宜補正を行い、ARの表示や作業者を目的の設備に誘導する機能の精度向上を図っています。

まとめ

ARは、従来アニメやCGのキャラクター、テクスチャなどを実際のサイズで再現して表示させる技術がよく知られています。
これに加え、昨今では3D点群データで現場の状況を正確に取得する技術や5Gの高速伝送技術の発展により、遠隔地で必要な情報を確認して判断するARシステムも日々増えてきています。

シミュレーションやデジタルツインを用いた保守点検は、さまざまな分野への応用が可能で、今後さらなる活用の拡大が進められているのです。

 

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参考URL
*1 https://www.moguravr.com/vr-ar-mr-weekly-news-22-12-3/
*2 https://www.mlit.go.jp/toshi/tosiko/content/001475585.pdf
*3 http://www.nilim.go.jp/lab/jbg/smart/SC_CASES_V1_0_SML.pdf
*4 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001482718.pdf

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