Apple Pencil、グラフィック制作ツールの可能性
デジタルデザインの黎明期には、デザイナーはベジェ曲線をマウスで操れるようになることが、グラフィックデザイン入門の試練でした。しかし現在、スタイラスペンで自由に図形を描けます。手書き入力のインターフェースが標準化しつつあります。
とはいえ、紙にドローイングするように、完璧なデジタル描画ができるとはいえません。タブレットの液晶にイラストを描くときには、紙に描くときとは違和感があります。描画されるまでのレイテンシー(遅延)もストレスになります。
iPad Pro 2の登場とともに、新型Apple Pencilの期待が高まっています。今後は、紙に描くときと同じ感覚で、デジタル描画ができるようになるかもしれません。そこで、グラフィック制作ツールとして、ワコムのタブレット+スタイラスペン、iPad Pro+Apple Pencil、Surface Pro+Surfaceペンを比較してみました。
専門的で幅広いワコム製品
プロからアマチュアまで、マンガ家やイラストレーター、デザイナーに高く評価されているのが、ワコムの製品群です。
液晶ペンタブレットとしてはCintiqブランドがあり、フルHDの描画が可能、27インチの大画面モデルもあります。2048レベルの筆圧によるスタイラスペンや、ファンクションキーなど生産性を高める機能を備えています。OSはWindowsとMac OSのどちらにも対応しています。
CintiqはPCとUSB接続で使う周辺機器ですが、MobileStudio Proは独立したクリエイティブ専用のタブレットです。IntelのブロセッサおよびNVIDIA Quadroのグラフィックスを採用、 3Dカメラを搭載しています。CADエンジニアや3Dクリエイターが、デスクトップ環境にとらわれることなく、タブレットを外に持ち出して仕事や創作に取り組むことができます。
液晶にペンで描かずにパッドを使う周辺機器は、Intuosブランドで展開しています。プロ仕様から入門機まであり、Intuos Pro Paper Editionでは、好きな用紙に描いたスケッチをデジタル化することが可能です。Paper Edition以外では、画面と手元の入力端末が別々のため、操作感はマウスに近いといえるでしょう。
iPad Pro+Apple Pencilのねらい
職業として専門的にイラストやデザインに携わるひとや、趣味を究めたいひとにとって、ワコム製品は魅力があります。豊富なラインナップがあり、スタイラスペン自体もさまざまな種類を選ぶことができます。デザイン専用のタブレットを製品化して、周辺機器のメーカーからの脱却を試みているようです。
ワコムの製品展開に加え、Windows環境でも遜色のないクリエイティブが可能になった現在、クリエイターには誇り高きステイタスがあったMacは、危機に瀕している印象があります。このように考えると、アップルがクリエイティブブランドの復権をめざして投入したツールがiPad Pro+Apple Pencil、という位置づけではないでしょうか。
しかしながら、現状はiPad Proだけの専用ツールで、あまり認知されていません。店頭でみかけても影が薄い存在です。
iPad Pro は12.9インチと9.7インチの大きなRetinaディスプレイにより、精細な表現力があります。Apple PencilはBluetoothでiPad Proと通信し、1秒間に240回の速度でペン先をスキャンし、入力の反応を高めています。
以前から言われてきましたが、アップルの強みはiPhone、iPadなどで慣れ親しんだiOSを搭載し、OSとハードウェアとアプリを統一して開発できることです。登場して間もないApple Pencilは、まだその実力を開花していない製品なのかもしれません。
Surface Proという選択肢
しかし、OSとハードウェアとアプリを統一して開発できる意味では、マイクロソフトの進撃も見逃せません。Surface Pro 4はノートPCにもタブレットにも使うことができるパワフルな性能をアピールしています。
Officeなど事務系のアプリケーションを使う印象が強いSurface Pro 4ですが、オプションのSurface ペンは1024 段階の筆圧検知で自然な書き心地を実現しました。ペン先キットとして、2H、H、HB、Bの4種類を取り換えられます。
アプリケーション上でペンの太さや硬さを設定すればよいといえますが、物理的に弾力感が変わることで、直感的な書き心地が変わります。今後、クリエイティブ制作ツールとして、アップルの驚異になる可能性を秘めています。
プロの創造性に応えるスペックを
アマチュアのイラスト作品がWebサイトで何万アクセスもの人気を集め、プロ並みのWebサイトをデザイナー以外の学生が作り、3Dプリンタからオリジナルの造形物を出力するなど、クリエイティブの裾野が広がっている時代です。
しかしながら「Pro」と銘打たれた製品は、高度なビジネス利用にも耐えられるスペックが必要ではないでしょうか。グラフィックデザインはもちろん、CADエンジニアやアーティストにも満足できるような機能や性能を持った、スタイラスペンとタブレットの登場が楽しみです。
株式会社キャパでは、アプリの企画・開発についてご相談を承っています。
アプリを作りたいので、具体的な提案が欲しい。頭の中にあるアイデアを本当に実現できるのか知りたい。予算内に収まるのか?
などのお客様のご相談に、親身に応じます。
アプリ開発:実績のご紹介