設計業務におけるRPAの効能とは?
RPA(Robotic Process Automation)は、ルーチンワーク化を自動化し、業務効率化に貢献する仕組みです。企業内で発生するさまざまな事務作業を自動化でき、主にホワイトカラーの生産性向上、人手不足対策として注目されています。しかし、一部の業務では導入が難しいといった声も聞こえてきます。そのひとつが「設計業務」です。果たしてRPAの設計業務の自動化は、どのように実現されているのでしょうか。
この記事では、以下3点を解説しています。
・RPAが得意とする業務の特徴
・設計業務にRPAを適用するときの問題点
・設計業務におけるRPA導入の事例
RPAを適用しやすい業務とその効能
RPAは、非常に優秀な業務効率化ツールですが、万能ではありません。
そこで、まずRPAの得意な業務を整理していきます。
RPAが得意とする業務の特徴
・一定のルールに従い、繰り返し行われる業務……請求書の発行や申請など
・構造化されたデータを扱える業務……紙や表計算ソフト上のデータを社内システムに入力する業務など
・特定の業務用アプリケーションを使用する業務……OSやクラウドサービスからのオフィスソフトを使用する業務など
・業務プロセスが標準化、定型化されている業務……定期的な報告書の作成業務など
こういった業務ではRPAによる自動化で業務効率を上げやすく、導入も比較的容易です。また、導入後には、次のような効果が期待できます。
RPAの導入により期待できる効果
・人件費削減……RPAの導入で、特定の業務にかかる人件費を6割~9割削減可能
・業務処理時間の短縮……勤務時間内の手入力⇒24時間365日位稼働の自動入力により、業務間のリードタイムを短縮
・ケアレスミス及びヒューマンエラーの削減
・余剰人員を高付加価値業務へ投入……いわゆるルーチンワーク化しやすい雑務から社員を解放し、高付加価値な知的労働に人的リソースを投入できる
・迅速かつ柔軟なリソース調整……雇用や解雇を発生させずに作業に必要なリソースを追加できる
このようにRPAは、コストを削減しつつ人手不足や雇用調整のデメリットを克服できるという強みを持っています。では反対に、RPAが不得意とする業務はどのようなものなのでしょうか。
「設計業務」にRPAは適用できるのか?
RPAは、「複雑かつ高度な判断」を繰り返す業務への適用が難しいという側面があります。その代表例が「設計業務」です。設計部門のコア業務ともいえる「設計業務」は、RPAの導入が難しくなりがちです。
例えばCADソフトを使った設計業務では、CADソフトの特殊性や随所に挟まれる設計者の判断、緻密な設計ルールが存在します。これらは、RPA導入の障壁になる可能性が高いでしょう。
ただし、設計部門という単位で見れば、RPAが得意とする業務は少なくありません。生産管理システムへ部品情報を登録したり、各種帳票を基幹システムへ入力したりとった業務は、RPAで効率化できる部分です。したがって、設計部門のコア業務である設計業務は人が行い、その周辺業務をRPAで自動化し、部門全体のパフォーマンスを上げるという施策が有効だと考えられます。
設計業務におけるRPAの導入事例
ゴミ焼却プラントや真空プラントなどを制作する産業機械メーカーA社では、RPA自動化ソリューション「Automation Anywhere」を使い、設計業務を自動化しています。
産業機器メーカーA社における設計業務効率化のステップ
1.ベンダーから提供された画像認識ソリューションで紙ベースの設計図面を電子化
2.Automation AnywhereをベースにしたRPAソリューションで、電子化前後の処理や確認作業、データベース化を自動化
3.設計図面画像の中から図番に相当する画像を抽出し、図番の文字列を読み取ることでデータ抽出作業を効率化
RPA導入によって期待できる効果
・紙ベースの設計図面で進めていたワークフローの効率改善、業務自動化
・将来的に、コグニティブ技術(非構造化データを認知できる技術)を組み合わせ、電子化された図面データの類似検索を可能とする
このように設計部門の核である設計業務自体よりも、データ検索・抽出・類似検索機能を強化することで生産性向上を目指しています。紙ベースの図面を電子化する作業に画像認識ソリューションを使用し、RPAとうまく組み合わせながら設計業務を効率化していることがポイントです。
まとめ
設計業務のように、RPA単体では効率化が難しい業務分野であっても、諦める必要はありません。むしろ、自動化が難しい分野にこそ、大きな改善ポイントが隠されているかもしれないのです。また、RPAは業務プロセスの棚卸・整理・分析をしっかりと行えば、複雑な業務にも対応できるポテンシャルを持っています。「思考・判断」は自動化できなくても、そこに至る準備は自動化できるからです。
設計業務のように自動化が難しい業務であっても、「部門単位」にまで視野を広げ、効率化の道を探ることが重要だといえるでしょう。
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