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鹿島建設が導入した四足歩行ロボ「Spot」の運用方法とその先進性

建設業界における昨今のテクノロジーのアップデートは、非常に目覚しいものがあります。

ソフトウェアからハードウェアまで、多くの部門の刷新が進んでいますが、鹿島建設はロボットの導入において、新しい試みに挑もうとしています。

それが、四足歩行ロボットである「Spot(スポット)」の導入です。

ボストンダイナミクスが開発した次世代のロボットと言われるSpotの導入は、鹿島建設に何をもたらしてくれるのでしょうか。

今回は鹿島建設がSpotを導入した背景や、Spot本体のポテンシャル、そしてSpotの運用方法についてご紹介していきます。

目次:
① ボストンダイナミクス社の最新型ロボットを導入
② 優れた性能を持つSpot
③ 高性能ロボットの導入は、建設業界を大きくアップデートするきっかけにも

鹿島建設が導入した「Spot」の概要

2020年2月、鹿島建設は自社webサイトにて、土木工事現場での運用に最適化させた四足歩行ロボット「Spot」の導入を発表しました。

鹿島建設 公式サイト:https://www.kajima.co.jp/news/press/202002/20c1-j.htm

ボストンダイナミクス社の四足歩行ロボット

今回鹿島建設が導入したロボットであるSpotは、アメリカのボストンダイナミクス社が開発する、最新の四足歩行ロボットです。

名前を聞いたことがなくとも、皆さんも一度はテレビやSNSで見かけたことがあるのではないでしょうか。

ボストンダイナミクス社 「 Spot」公式サイト:https://www.bostondynamics.com/spot

今回のSpot導入は、ソフトバンクグループとの共同で進められたプロジェクトで、世界的に見ても土木業界へのSpot導入は、非常に先進的な取り組みとなりました。

2019年12月より導入開始

鹿島建設によるSpotの現場への導入は、2019年12月より開始しています。

実証実験については2018年の11月に開始し、神奈川県の横浜環状南線 釜利谷ジャンクションのトンネル工事にて、適用可能性の検討が進められました*1。

実証実験の中で検証されたのは、360度カメラを搭載するカスタマイズされたSpotの運用です。

Spotを制御室から遠隔操作し、掘削箇所の写真撮影や映像確認、ポンプメーターなどの計器の確認を行い、人手を必要としない点検業務の実現可能性を明示しました。

また、Spotは遠隔操作だけでなく、自律走行も可能となっているロボットです。

実証実験においてはトンネル内部の自立走行による巡回を行い、新たな課題などの抽出にも貢献しています。

このような検証を経て2019年、Spotは導入に至りました。

Spotの特徴

実証実験において優れた能力を発揮したSpotですが、そのポテンシャルの高さは、プロトタイプの段階でも証明されてきました。

高い機動力

Spotの最大の魅力の一つは、高い走破性能と機動力にあります。

以下の映像を見てもらえばわかりますが、Spotは従来の四足歩行ロボットとは比較にならないほどの、安定した走行を可能にしています。

悪路や傾斜のある道は問題ではありませんし、多少の衝突などでは転倒することもありません。

ドアを開けての走行など、Spotが複数台集まることで、障害物を除去しながらの走行も可能になります。

汎用性にも優れる

また、本体上部にはカメラなどを取り付けられるマウントも二つ備えられているため、多用途での活躍も期待できます。

最大積載量は14キロと、多少の荷物であれば持ち運びも可能となるため、資材や工具の搬入にも使用することができるでしょう。

バッテリー問題などの課題も残る

ただ、Spotも完璧なロボットというわけではなく、いくつかの課題も残ります。

例えばバッテリー時間は最大90分と、長時間の連続使用は行えません。複数台をシフトしながら運用し、長距離の巡回などを行う必要がある点は見逃せません。

また、45度を超える高熱のエリアにおける活動はサポートされていない点も要注意です。

通常の自然環境ではあり得ないことですが、溶鉱炉の近くなど、高熱を発するエリアでの作業には向いていないことがわかります。

しかしそれを加味しても、Spotのポテンシャルは非常に高く、人間の業務を任せるに足る力を有していると言えるでしょう。

Spot導入の背景

鹿島建設がSpotの導入を開始したのはいくつかの背景があります。

建設業界における人材不足

一つは、労働人口の減少を理由とした、建設業界における人材不足です。

若い働き手が減りつつあり、熟練労働者も退職が迫る中、高いパフォーマンスを常に発揮してくれる人材が少なくなっています。

Spotのような高性能ロボットは、高いパフォーマンスを常に維持でき、定期メンテナンスによっていつまでも現場の最前線で活躍し、24時間働くことが可能です。

現場の作業効率は、Spotの登場によって維持されるどころか、さらなる改善が見込まれます。

自然豊かな環境における工事の効率化

トンネル工事のように、都市を離れた場所における大規模な工事は、重機の搬入や人材の確保にお金と時間がかかってしまうことがネックです。

しかしSpotの導入によって搬入や現場の管理などを遠隔から行えるようにすることで、少ない人材によって、工事を進めていくことが可能になります。

また、悪路の走破性の高さや、危険地帯における業務の代行も可能なため、人的資源を危険にさらしてしまうリスクも回避することができるようになります。

Spotが鹿島建設にもたらしてくれるもの

鹿島建設はSpotを導入することで、どのような恩恵を受けることができるのでしょうか。まとめて見ていきましょう。

管理業務の効率化による人材確保

一つは管理業務の効率化による、人材の有効活用です。

例えば人里離れた遠隔地において、複数箇所の点検を行う場合、従来の方法だと、一つ一つの箇所に作業員が赴き、確認作業を行う必要がありました。

しかしSpotを導入すれば、インターネットを通じてSpotにコマンドを送信し、自律走行による巡回を行ってもらうだけで済みます。

異常があれば速やかに報告してもらえるだけでなく、AI認識による確認漏れのリスクも著しく低下するため、作業効率は大幅に向上します。

このような時間のかかる作業を自動化することで、管理業務に当たっていた人員を、別の人手が必要な現場に配置し、人員不足を補うこともできます。

Spotの導入は、人材不足を補う上では重要な役割を果たすことが考えられるでしょう。

建設業界全体の安全性向上に貢献

また、Spotによって危険地帯での業務の遂行が可能になれば、作業員が身の危険に晒されることも減り、現場の安全管理も容易になります。

人員が不足してしまう原因となっているのが、事故による欠員、そして危険な業務を伴うというイメージによる、建設業会希望者の減少です。

Spotのようなロボットに、危険な業務は積極的に代行してもらうことによって、建設業界はより安全で重労働の少ない業界へとシフトすることができます。

建設業界がIT会社などと変わらない、デスクワークやエンジニアリングが主体の仕事場へとシフトすれば、志望者も増えていくことが見込まれます。

おわりに

これまで、建設業界は肉体労働が主体で、ハイリスク・ハイリターンなイメージがつきまとうこともありました。

しかし鹿島建設のように、Spotをはじめとする優れたロボットの導入により、危険で負担の大きな業務は次々と彼らに託されるようになりつつあります。

建設現場へのロボットの導入は、建設業界の働き方改革とイメージの刷新においても、大きな役割を担うことになるでしょう。

出典:
*1 鹿島建設「土木工事現場への適用性を高めた四足歩行ロボット「Spot(スポット)」を導入」
https://www.kajima.co.jp/news/press/202002/20c1-j.htm


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